教えて?
時の運は、突然やってくる。
まさかこんなことが起ころうとは、誰も予知できなかっただろう。
「なんつーか・・、こんなこと頼んで悪ィ・・」
俺の家に、弥栄がゲームをしにきたとき。
いきなり、弥栄が俺に頼み込んできたこと・・それは。
俺に、キスの仕方を教えて欲しい。
・・とのことだった。
弥栄には彼女がいる。
その彼女とは、まだお子ちゃまの可愛いキスしかしたことがないらしい。
でも、弥栄は「男として俺がリードしないといけねえのかも」との考えで、ここまでに至ったという。
弥栄を好きな俺のキモチから言ったら、相当複雑だけど、・・まあ、これを利用しない手はないと開き直ったプラス思考な俺。
「いーわヨ、弥栄クン。・・じっくりたっぷり教えてやんよ」
正座をして、俺の前に座る弥栄。
なんか、緊張してるみたいだ。
なんだこのいきもの、ちょーかわええ。
「あ、あのさ!このこと、俺と竜也だけの秘密にしてくれよなっ」
そんな弥栄に近づこうとすると、弥栄はそれを制すようにそう言った。
・・秘密。
なーんか、超いい響きだよな。
「なんで?」
俺はイジワルだから、ワザとそうやって弥栄をいじめる。
なぜかって?
アンサー。そのときの、弥栄の表情が可愛いから。
「だって、なんかかっこわりーじゃん!友達にキスの仕方教えてもらったとかっ」
さわり心地の良さそうな頬っぺたを赤くして、必死にものをいうこの姿。
小動物系男子代表以外の何ものでもねーだろ。
「ハイハイ、わーってるよ」
その紅い頬に右手で触れると、弥栄の華奢なカラダがぴくりと動いた。
「目、閉じて」
「・・、」
弥栄が、ゆっくりと目を閉じた。
女みたいに長い睫毛が、目の下に陰をつくる。
また弥栄に邪魔される前に、俺は一回触れるだけのキスをした。
やっぱり、すごく柔らかい。
これが「マシュマロ」みてえっていうんだろーな。
「・・終わった?」
数センチの顔の距離で、そう聞いてくる。
・・・あー、これが「キス」だと思ってるわけだ。
Dちゅーとか、なんも知らないわけね。
これは、なんとも教え甲斐がありそうだ。
「終わりじゃねーよ・・、」
また唇を重ね合わせる。
熱くなった弥栄の唇は、こう動いた。
「さっきと一緒じゃんか・・?」
「全然ちげーんだなあ」
そして、舌を入れる。
噛み合わせの良さそうな弥栄の歯を、無理矢理舌で抉じ開けて、奴の舌を探す。
「っ・・、」
・・見つけた。
俺が絡めとろうとすれば、舌を引っ込めようとする。
おいおいおい。それじゃ、教えられねーだろ?
「ん・・っ、」
Tシャツを左手でたくし上げて、そのまま背をたどる。
弥栄はびっくりしたようで、そっちに気をとられている隙に、俺は奴の舌に自分の舌を絡ませた。
生暖かいその舌は、やがて逃れようとする事をやめ、おずおずと俺の舌に自分のものを絡ませてくる。
その動きからは、「これでいーのかな」という迷いが伝わってきて、たまらなく愛しくなってしまった。
時々漏れる弥栄の喘ぎ声も色っぽい。
だから俺は、自分の理性を失わないように必死だった訳で・・。
「・・・・・・、」
暫く経って唇を離してやると、弥栄はぽやんとしながら俺の顔を見つめていた。
内心、俺ってばドキドキ。
「・・なによ?」
「・・キスって、こんなに気持ちいんだ・・。」
とか、小言みたいに呟く。
どうやら、俺とのキスがお気に召したらしい。
「ま、人にもよるけどな」
「竜也は、うまい・・よな?」
ドッキューン。
今の、見事に俺のツボど真ん中に入りました。
完ぺき、弥栄かわいいです。
「俺は、プロ級。弥栄クンもせいぜい励みなサイ」
そういい奴を演じる俺だけど、心の中では「今のまま可愛いキスをしててくれ・・」と祈る俺だった。
END