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キスの代わり



昨日の夜は、稜の部屋で稜と一緒に寝た。
いつものように、いろいろセクハラ的なイタズラをされ続けて、ろくに寝てないのも事実。
だから、今はもう昼なわけで。

でも、まだ僕は眠かった。
隣では、静かに寝息をたてている稜がいる。

「かわいい・・かも」

無防備に眠る稜がなんだか可愛いくて、思わず笑ってしまう。
ちょっとした出来心から、稜の柔らかい前髪をよけ、額にキスをしてみた。

「いた・・っ」

イタイ。
稜の額に唇が当たった途端、僕の唇は小さな痛みをうけた。

口元に触れてみると、下唇に小さなできものができていた。
どうりで痛いはずだ。

鏡で見てみようと、稜のベッドから体を起こそうとしたとき。

「・・・やり逃げかよ、兄者?」

今まで寝てたはずの稜が、僕の腕を掴んでニヤリと悪巧みたっぷりの笑みを浮かべていた。
つまり、寝たフリだったってことだ。

「ちょっ・・!」

つかまれていた腕をグイッとひかれ、僕はベッドに倒れ込んでしまった。

「これって、誘い受けデスカ?兄者も、大それたコトするよーになったな」

倒れ込んだ僕の身体に跨って、稜は耳元でいやらしく呟いた。

「ち、違う・・っ!」
「シてほしーんだろ?ちゃんと、口で言わなきゃわかんないって」

そして、僕の不意をついて、キスしてきた。

「痛・・っ」
「・・ん?」

また、唇が痛む。
僕が声をあげたせいか、稜はいささか驚いているようだった。

「なに?どーしたんだよ、これ」

できものの部分を優しく親指で触れて、稜は首をかしげた。
その間も、じくじくと傷口が痛む。

「わかんない。なんか、気付いたらできてて・・」

さっきの痛みのせいで、不覚にも目の奥が熱くなる。
ここで泣いたら、稜に弱みを握らせるも同然。
絶対、泣いたりするもんか。

「・・じゃあ、今日は口にはキスできないな」

そういって、パジャマごと胸の辺りまで思いっきりたくし上げられる。
その後の行きつく先は、もう・・ワカッテル。

「んっ・・」

稜の柔らかい唇は僕の乳首をきつく吸って、僕の気持ちをじわじわと高ぶらせていった。
悔しいけど、・・・・・気持ちいいから仕方ない。

「今日はココを兄者のクチビルだと思って、優しくしてあげますからねンv」
「バ、カっ・・」

わざとらしい甘ったれた口調でそう言われた僕は、なにか言い返そうとしたけど、その行動もあっけなく、ただ乳首をくすぐったいくらいに弄ばれただけだった。

そして、ベッドに散らばるようにして広がった僕の髪を、稜は手にとって遊び始める。

「いっつも思うんだけどさ。兄者って、なんでこんな髪キレイなわけ?」
「ちょ、っと・・」

なんだか焦らされてるようで、気分が悪かった。
・・・てゆーか、稜は僕のことをカンペキに焦らしてるんだ。

「・・なんだよ、兄者?」

顔だけはいい稜は、僕に向かって整った唇でニヤリと笑みをおくってきた。
・・稜は、ズルイ。

「焦らさないでよ・・っ」

対する僕は、怒りの視線を速達で稜に送りつける。
現に、稜にほだされた今の僕には、これが精一杯だったわけで。

「・・すっげー可愛い。抑えられなくなるからやめて」

当然、稜には軽くかわされる。
しかも、バカップルのごとく額をツンとつつかれる始末。

きっと稜がそんなことをしてくるからだ。
僕は何を思ったのか、気恥ずかしいにも程がある言動を自然と口にしていた。

「抑えなきゃ・・・いーじゃん・・」

口が無心のうちにそういっていただけであって、決して僕が思ってたわけじゃない。
・・そんなの、認めない。

「そんなナマイキな口きくと、あとでコーカイするぜ・・?」
「・・後悔なんかしない」

これじゃあ、どっちが兄貴だかわかんないなと思っていた途端に、稜は早くも僕の鎖骨に唇を当て、そこから丹念に僕の身体にイタズラをしていった。

・・・・・・・早速、僕の脳裏には後悔という2文字がよぎっていた。









END









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