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サンタさんのイタズラ



今日は12月25日。
世はクリスマスだなんだと騒ぎ立てているが、俺はとくになんの予定があるわけでもなくリビングでテレビを見ていた。

自慢なわけでもないが、休みに入る前に何人かの女子に「25日遊ぼうよ!」とお声がかかったものを丁重にお断りを入れた。
俺はそこまでイベントごとを重視しないし、付き合ってもいない女と出かける趣味もない。
今年は唐沢もバイトが入っていると言っていたし、弥栄は内藤とデート、熊田は家でのクリスマスパーティー。
いつもつるんでる奴らもこんな感じに予定があったわけで、まあ必然的に俺はこうして暇なわけである。


ピンポーン

とくに興味もないバラエティ番組を聞き流しながらぼうっとしていると、家のチャイムが鳴った。

「おにーちゃん、出てー」

キッチンで何やら奮闘している妹、さちの声が聞こえた。
クリスマスだからと、料理に精を出しているのだろう。

小さくため息をつきながら、そのままリビングを出る。
年末にかけて部活もないし、身体がなまりそうだなとかそんなことを考えながらのたのた歩いて、玄関に向かった。

ガチャっと鍵を回して、ドアを開ける。


「メリークリスマース!」

耳障りなデカい声と、胸元に押し付けられた何やら角ばったもの。これは箱か?
いきなりのことに声も出なく、そのままの流れでそれを受け取る。
そして、目の前を見た。

「・・・・・お前、何してんの」

なんだ、俺は気でもおかしくなったのか。
そこには目が痛くなるような赤服に、ふわふわした白いファー。
そんなサンタの格好をした唐沢が立っていたのだ。

「大和ー、お前クリスマスなのにいつもと変わんねーなー。たまには笑顔出血大サービスとかど?
女子が喜ぶぜ、きっと。あ、俺にはそういうのいんねーから。お前の満面スマイルとかサブイボもんだわ」

唐沢こそ格好以外はいつもと何も変わらないマシンガントーク健在で、なんというかある意味安心した。
クリスマスだ年末だといってしおらしくなる男ではない。

「はいはい。・・で?なんだよこれは」

半強制的に押し付けられた箱を見ながら、唐沢に問う。
その箱はわりと平べったい形で、持った感じはどことなく温かかった。

「イケメンサンタからのプレゼント」

サンタ服でニカニカと笑ってそう言う唐沢は、なんかこう・・悔しいことになかなか可愛かった。


「おにーちゃんおそーい。なんだったの?」

ドアを開ける音と共にさちの声が聞こえて、そのままパタパタとスリッパをならしながらこちらに近づいてくる。

「あーっ!竜也くんだー!待ってたよっ」

そして、唐沢の姿を見つけるなりキャッキャしながら走ってきて、気づけば勢いのままに唐沢に抱きついていた。
さちは家にきた唐沢と何回か顔をあわせていて、けっこう仲がよかったりする。

「おー、さち久しぶりじゃん!またおっぱいデカくなった?」

「もーなにいってんの。竜也くん、セクハラだよ」

唐沢の発言に少し顔を赤らめながら、慌てて離れるさち。
おい唐沢、中3の思春期まっただ中な妹をあんまりからかってやるな。

「つか、”待ってた”って何?」

さちの口ぶりからして、どうやら唐沢が我が家に来ることは意図的なことだったらしい。

「一昨日たまたま竜也くんに会ったとき、25日はピザ屋で配達してるって聞いたの。
だから頼んじゃったんだー。竜也くんのサンタさんのコスプレも見たかったしね」

なるほど、そういうことだったのか。
さちもたまには気がきくな。
そう内心見直しているなんてことは、まあ唐沢にも妹にもバレまい。
俺は、ポーカーフェイス(唐沢には仏頂面と言われるが)が得意らしいからな。

「そーいうこと。あ、2500円になりまーす」

はい、と俺の前に手のひらを出す唐沢。
俺は訝しげな顔で唐沢を見返す。

「・・おい、プレゼントじゃなかったのかよ」

「サンタさんもこれが仕事なの。トッピング多めにしといてやったから許せ」

しぶしぶ俺のポケットマネーからピザ代を支払う。
まったく、とんだサンタだな。


「じゃ、俺まだ配達あるから行くわ」

俺につり銭を渡し、「さちもまたなー」とか手をひらひら振って、踵を返す。

「おつかれさん」

そう返して、ドアを半分以上閉めた時だった。
外側から突如出現した手が、ドアを押さえこんできた。


「・・あ。今年いい子にしてた大和くんにプレゼントな」

いつの間にか・・・目の前に唐沢の目があって。
そして、気づいた時には額の辺りからチュッという音が聞こえていた。


「は・・」

ワケがわからず、そのままドアノブを放すとドアは重みによって勝手に閉まっていった。
外からは「よいクリスマスをー」という奴の声と、遠ざかっていく足音が聞こえる。

俺はそのまま、頭を抱え込むようにして玄関にへたりと座り込んだ。


「おにーちゃん?」

ドアの影で何があったのかなんてことは、さちは知る由もない。
様子がおかしな兄を、さぞかし変なものを見るような目で見ていることだろう。

だが、妹よ。
おにいちゃんはあのちゃらんぽらんなサンタから、とんでもないイタズラをされたのだ。
普段からスキンシップの多いあいつからしたら、なんともないことなんだろうな。
それでも俺にはたまらない。本当に正直のところ、お前のサンタ服もデコチューもたまんなかったよ。

きっとこの顔の熱さから言っても、俺の顔はトナカイの鼻のように真っ赤なことだろう。
それでもまあ、たまにはポーカーフェイスを崩したっていいだろ?

だって、今日はクリスマスだから。








END




はい、今回も大和は竜也に振り回されてましたねw
無自覚で大和を振り回す天然チャラ男な竜也をかくのが好きなので、
ついいつもこんな感じのオチになりがちです‥。
大和の妹はクラスで人気者の美少女ロリ^q^


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