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僕の犯した罪



その行為が禁忌だという事位、わかっていた。
でも僕はそれを十分承知で、その禁忌を犯した。


[僕の犯した罪]





玄関を開ける音、そして階段を駆け上がる音がいつもより早かった。
時間も、いかにも寄り道しないで帰ってきましたーといった時間。
嗚呼、今日が「終わりの日」なんだ、とどこか冷静な頭の片隅で思った。
そしてその直後、荷物を持ったまま勢い良く僕の部屋のドアを開けた弟が、立っていて、彼の表情は怒りの感情に満ちていた。

「兄貴、俺の言いたいこと、わかるよな?」

「ああ。」

僕は、表情だけは崩さずに、短く返事を返した。
この状況は何度もシュミレーションして、上手く表情を作る練習をしてきたから。
そして僕が眉一つ動かさず放った言葉に、彼は僅か悲しそうに顔を歪ませた。

「2年間、良くやったなぁ、兄貴。弟にヌき合いのお遊び教えて、ずっと続けて、楽しかったかよ? ・・・2年前、中1の時俺が兄貴に言った言葉、覚えてる?」

弟は、開けたときとは打って変わって静かにドアを閉め、
その場に大きなスポーツバッグをどさりと降ろし、こちらへ向かってきた。

「・・・覚えてる。」

はーと息をついて言葉を紡いだ。
でも実はこんな少ない言葉も、返すのが精一杯だった。
胸の鼓動は不安か、期待か。

「今もそうだ。でも今の俺には憎悪って感情もプラスされてんだぜ。」

と、冷めた笑いで僕の体を椅子から離し、そのまますぐ横のベッドに投げた。
途端、弟の体が上に覆いかぶさって、

「ん・・・んむ・・・っ・・・!」

口の中に何かを入れさせられる。
舌で喉に押し込まれ、反射的にごくり、と飲みこんでしまった。

「俺の気持ちを弄んだ罰だ。覚悟しろよ?」

*** *** *** *** ***


最初は媚薬だと思っていたそれは、いわゆるしびれ薬のようなものだった。
それは弟が一回ベッドから降りた時、俺になにもしなかったのがいい証拠だ。

「兄貴の体に傷、付けたくないから・・・俺は兄貴とずっと恋人になりたかった。」

僕の方こそ、恋人になりたかった。ずっと実の弟と繋がりたいと望んでいた。
だから、あの時、お前が

「俺は兄ちゃんが好き。愛してるんだ。だから、恋人になってほしいんだ!」

って言ってきた時、心臓が止まるかと思った。
でも、弟の気持ちが「おままごとの恋」なのだと、きちんと理解していた。
そして理解していながら、ヌき合う気持ち善さを教えて、刷り込みの様に、その行為を繰り返した。
せめてあいつが僕と違って女の子に、普通の恋をするまで、体だけでも縛りたかった。
実の弟に抱かれたがっている様な淫乱で変態な僕には、そんな方法しか浮かばなかったから。

「兄貴、いくよ?」

「あっ・・・はっ・・・ン・・・」

ひんやりとした液体が臀部に垂れ、僕は尻の穴をひくつかせた。
弟が僕の中に入れた1本目の指は比較的すんなりと入っていった。
さっき、されるがままの状態で浣腸されて、直腸洗浄されて、緩んでたんだろう。
と冷静に考察なんかしていたら、急に下半身がじわじわと熱に蝕まれていく。

「へっ?・・・は、ぁっ・・・な、何で?・・・んんっ・・・」

熱に逆らえず必死に体に力を入れようとするが、適わない。

「ローションが媚薬入りなんだ。期待してたんでしょ?その期待に答えてあげたんだよ?」

と、僕の両足を開き、膝を胸に付く位まで曲げられる。
全てがさらされているんだと思うと、また、下半身が疼いた。

「変態だねー、兄貴。でも、可愛いよ。」

「んなっ・・・そんな事・・・言うの・・・・・まるで・・・っ・・・」

恋人同士、と言いかけて止めた。
そんなのありえないんだ。
僕と違って、男らしい、逞しい肌。
バレンタインは毎回2桁数はチョコを貰う。
今迄、誰かに恋をして、目が覚めてしまわなかったのが不思議な位、弟はもてていた。
好きで、好きで、好きで。

でもどうしようも無い。

「まるで?」

続きを聞いてきたのを遮る様に、続きをせがむ。

「なん、でもなっ・・・入れて・・・お願っ・・・えい、いちっっ・・・!」

ち、の時、つつっと口端からよだれが零れ落ちた。
拭おうにも体が動かないから、どうしようも無い。

「っ・・・誘い上手だなっ・・・兄貴・・・」

苦しそうな言葉と共にジジっとチャックの音がして、
衣擦れの音がした直後、
長年切願していた瞬間が来た。
栄一のどくどくと脈打つペニスがずぶずぶと僕のナカに挿れられていく。

「アっ・・・あああああっ・・・!」

願いが叶った喜びと、質量の大きさによる痛みと、前立腺を抉らえた快感に、僕は発狂したかの様な声を上げながら、泣いてしまった。

「兄貴・・・ヤベぇよその顔・・・そこらの女なんか目じゃ無ぇぜ・・・?」

甘いバリトンで囁かれて背に手を伸ばしかけて、止める。
僕と栄一は恋人じゃない。
栄一は馬鹿な夢から覚めたんだ。
だから、最後の、仕返し、なんだ・・・。
でも何度思い込もうとしても喜びは消えなくて。
僕はやっぱりおかしいんだ。と、胸の中に締め付けられる様な感覚がした。

「ハッ・・・・はぁっ・・・っぅっ・・・」

入れられた質量に慣れた頃を見計らうようにして、栄一が腰を動かしはじめた。
ずちゅっずちゅっという水音と自分の喘ぎ声と栄一の荒い息しか聞こえない。
強姦まがいの事をされながらも、僕は、目の前にいる弟の熱に浮かされているカオに、どうしよもなく、見惚れていた。

「兄貴、も、俺・・・!」

「ん・・・!ナカっナカに・・・出してっ・・・!一緒に・・・イ、こ?」

涙はやっぱり止まらなくて、そんな僕に同情したのか、栄一は僕の体を強くぎゅっと抱きしめて、
ペニスを激しく奥に打ち付けた。

「はぁっ・・・!大きくなった・・・え、いちのっ、くっ、も、イクっ・・・イっちゃうっ!」

僕と栄一の間でペニスが擦れて、後ろからも弟のペニスが僕の内壁を擦り、
前と後ろを攻められて、絶頂を迎えたと思った時には意識が飛んでいた。

*** *** *** *** ***


あたたかくて、手だけ、ひんやりして気持ち良い・・・
目を開けると、栄一の心配そうな顔のドアップが視界に写った。
びっくりして小さく悲鳴を上げると、弟の眉間にさらに皺がよった。

「ごめん・・・もう、兄貴、こんな事・・・しないから・・・その・・・ほんとごめん・・・」

苦しそうな顔をして握った僕の手をさらに強く握り締めた。
さしずめ今のリアクションを誤解でもしているんだろう。
・・・そんな事、ある訳無いのに。
真夜中で、しんと静まっていて、まるで世界がこの部屋だけみたいだ、と、錯覚を起こす。
そして、いまなら良いかな・・・と、
僕は、薬がまだ少しだけ残っている自らの体を起こし、
栄一に、最初で、たぶん最後の、唇と唇をあわせるだけの軽い、けど、ある意味重たいキスをした。

「あ、ああ、兄貴!?」

さっきまでそれ以上の事をしていたのに、弟の顔は茹蛸っていう表現がぴったりな位、真っ赤になった。
普段ムースで固めている髪は、今はありのままの姿をしていて、触ると、柔らかな感触がする。

「も、目ぇ、醒めたんだろ? ごめん今まで騙してて。もう少ししたら、僕、もう、此処、出てくから、心配しないで、彼女とか連れてきな?」

寂しさを紛らわすため栄一の髪を撫で続けた。
これはずっと前から決めていた事。
栄一が、この悪夢みたいな行為から目が醒めたら、僕は邪魔者だから。
邪魔者はいなくなった方が良い。
彼女・・・も自分で言ってて傷ついたけど、ありえない話じゃないし、むしろ無い方が不自然だ。
血がつながってるとは思えないほど、
僕は貧相で、
栄一はカッコいい。

「あ、にき・・・?何言って・・・」

「ごめ、僕兄ちゃんなのに、おっお前が好きで・・・欲情して・・・き、気持ち悪いと思ったかもしんないけど・・・っごめん、今までごめんなさっ・・・ごめんなさいっ」

栄一の顔が見れなくて、僕は髪に手をやったまま布団に顔を埋めた。
そしたら布団から栄一の匂いがして、また、涙がぼろぼろ出てきた。

ぐいっ、と、髪を撫でていた手を引っ張られて、顔を上げると顎に手が添えられて、
今度は、栄一から、キス・・・をされた。
たっぷり5秒はしてた気がする。
唇がはなれたら、お互いに荒い息をして、その様子に僕と栄一は、笑った。

「俺、怒ってたんだ。兄貴は俺で遊んでんのかっ、て・・・でも兄貴にそんな事できるわけない、とか、でもじゃあなんでこんな事するんだろう、とか色々考えて頭ぐちゃぐちゃになって、結局・・・あんな事して、でももう謝んねえよ。これで俺と兄貴が同じ気持ちって事がわかったんだから。」

「じゃ、まだこうしていられるの・・・?」

「まだ、じゃ無くてこれからずっと。 だから引っ越すんだったら俺も一緒に住むし、兄貴に女の影なんか見えたら、女殴ってお仕置きだかんな?」

「・・・っ、うんっ・・・」

今度は僕が茹蛸みたいになって、

僕らは「幸せ」っていうものにゆったりと浸った。
でも僕の頭にはちょっぴり「お仕置き」期待と不安がよぎってしまった。





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's endの暁センカ様から頂きました、素敵すぎ小説です!
も、もう、かなり萌えた・・!
こんな素敵なものを受け取った私は、世界一の幸せモンだー!
やっぱり、兄弟っていいよね。
禁忌だし、近親相姦だし、萌えの原点だしetc..
行き違ってた思いが通じ合って、本当によかった・・・!
私も、暁さんを見習って素敵な小説をかけるようになるよ!(珍しく前向きな感じで
本当に、素敵な小説をありがとうでした(^^)










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