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君と君の身体とバレンタイン。



!歪んだ話と、(ちょっとした)グロテスクな表現が苦手な方はレッツまわれ右!



















好きな子を泣かせたいと思うのは、歪んだ愛情ってやつなのかな。
でも、小学校以来ずっと一緒だった幼馴染の泣き顔を一度も見たことのない僕は、
「それって幼馴染としてどうなの?」とか「やっぱり、幼馴染としては君の全部を知りたい」とか
思っちゃうんだよね。

・・・やっぱり、それってイケナイことなのかなあ?




「けーちゃんっ、おーはよ!」

朝の登校時、見慣れた後ろ姿を人ごみに垣間見た僕は、走ってその背中に全身でぶつかっていった。
僕より少し背の高い君は、きれいな黒髪を冬の冷たい風になびかせていたね。
そういう姿がなんだかむしょうに目についちゃって、こうやっていたずらしたくなっちゃうんだ。

「どわっ」

変な言葉とともになんとか姿勢を保った僕の幼馴染こと、けーちゃんはすぐさま振り返って僕の顔を睨む。
この顔は、もう何千回とみてきたなあ。

「てめえは、朝一番で死にてえらしいな」

目つきの悪い視線でジッと見られると、どうしてだろう。
なんか、すごい胸の奥がザワザワするんだ。
怖いとは思わない。僕以外の周りの人間は、怖いっていうけど。
ムカつく?――もっと、思わないな。
じゃあ、この他と違った感覚はなんて表現すればいいんだろう。

この感覚を初めて知ったのは、・・そう。小学6年生の時。
あの頃も、変わらず僕を睨んだり怒ったりするけーちゃんの目がすごい好きで、僕はもっと怒ってほしくて、
ついついけーちゃんのいやなことをしちゃったんだ。

今も、そのくせが残ってるんだろうな。
この何にも変えられない快感を、僕の身体はすっかり覚えてしまっているらしかった。


「あはは、ごめんね。それよりね、けーちゃんさ」

やだー。と、女子がひそひそ声で話す声が聞こえる。
ひそひそ声って、けっきょく全然ひそひそできてない。
これでもかってくらい、よく耳に届いちゃう。
この声は、うちのクラスの内山さんと田沼さんかな。

それで、その内容っていうのがこうなワケ。
「・・あの人、そ。なんで―――くんは、あんな不良と仲いいのかしら?」
「きっと、あいつに弱みでも握られてんのよ。じゃなかったら、あんな不良と仲いいわけないじゃん。
あの2人じゃ、人間のレベルが違いすぎるし」

クスクス。笑う声。

女子って、どうしてあることないことこうやって考えられるんだろうね。
僕自身、モテる自分は嫌いじゃなかったけど、こういう感覚は理解できないや。

今の、けーちゃんにも聞こえたのかな?


「俺、行くから」

横顔、不服そう。

そういう顔も好きだけど、僕を置いてさっさと学校に向かっちゃう君は嫌いだな。


「ちょっと、けーちゃんってば!」

追いかける僕。
横顔、にやり。

こういうとき僕が追いかけなかったら、けーちゃんは後からいつも以上に冷たくなるのを僕は知ってる。
君は無神経にやってるんだろうけど、それってきっと君の心と一緒なんだよね。
僕が離れていったら、君はきっとどんどん心が冷たくなっていって、やがて凍っちゃうんだろうな。
そんなけーちゃん、僕はちょっとだけ見てみたい気がしていた。




4限終了後の昼休み、僕とけーちゃんが教室でお昼ご飯を食べていた時のこと。
うちのクラスの男子が、すごい血相で教室に駆け込んできた。


「内山と田沼の下駄箱に、動物の死骸が入ってたんだってよ!」

お昼時の教室は、その一言により一斉に空気が淀んだ。
女子がきゃあきゃあ喚く声、男子の動揺を隠し切れない焦りの声。
この場に内山さんと田沼さんはいなかったから、きっと職員室にでもよばれているんだろうな。
きっと、一生忘れられないような出来事になったんだろうね。

騒がしい教室の中でも、僕とけーちゃんの周りの空気だけはいつもとかわらなかった。


「・・動物って、なんだろーな」

購買の焼きそばパンを一口食べた後、興味なさげにけーちゃんは呟いた。
僕は、にっこり笑って教えてあげる。


「子猫だよ」

僕の言葉に、一瞬顔をあげたけーちゃんは「そか」といってまたパンを食べ始めた。
・・あ、けーちゃん。焼きそば落ちたよ。




僕の学校は、選択科目で体育と美術が選べる。
けーちゃんは体育を選んでよくさぼってるけど、美術を選んだ僕も実はさぼってるんだ。

学校指定のカバンからとりだしたデジタルカメラのピントを、倉庫の脇でサボってるけーちゃんにあわせる。
このカメラ、けっこう遠くまでズームして撮れるんだ。これ買うために、一生懸命バイトしたんだから。

もう何か月も、このカメラでけーちゃんを撮ってきてるけど、僕の方を向いてくれてる写真は1枚もないんだ。
だって、けーちゃんは撮らせてくれないし、そしたら自動的にそっぽをむいてるけーちゃんばっかりが集まった。
それでもいいんだ。もう、アルバム何冊になったんだろう。
このアルバムを見たら、けーちゃんはきっと驚くんだろうな。

そんな顔も、見てみたいな。




今朝は途中で話が途切れちゃったけど、今日はバレンタインだよって言おうと思ってたんだ。
だからね。大好きなけーちゃんには、とびっきりのプレゼントを用意したんだよ。


「なん、だよ・・これ」


僕のプレゼントに、けーちゃんはすごくびっくりしてるみたいだった。

放課後のだれもいない教室のロッカーの中。
僕に促されたけーちゃんは、しぶしぶロッカーを開けた。

開けたとたんに飛び出したものは、力なく目の前のけーちゃんにぶつかり、そして床に転がった。


僕はその「もの」の中心を力いっぱいたくさん踏みつぶして、最後に笑った。
どんなに踏みつけても、これはもう動かないんだなあ。
くたっと動かないままで、まるで人形みたいだ。
そう思ったら、なんだかおかしくて笑ってしまったんだ。


「これ、誰″だよ・・?」

頭部に白い布をテルテル坊主みたいに括りつけたから、これの顔がわからないんだね。
でも、この学生服には見覚えがあるんでしょう?


「ゆき、こ――――・・?」


すっかり顔の白くなったけーちゃんが、床に膝をつく。

この女、他校のくせにけーちゃんにずっと言いよってきてて、すごく目障りだったんだ。
ずっといっしょだった僕がそう感じてたんだもん。もちろん、けーちゃんもそう感じてたんだよね?


「けーちゃん・・どうしたの?――なんで、泣いてるの?」


初めてみた、けーちゃんの泣き顔。
ずっと見たかった、けーちゃんの泣き顔。

それは、思っていたよりもはかなくてもろいものだと思った。




「お前には、――――一生わからねえよ・・」


それから、けーちゃんは声を出さずに泣き続けた。




次の日の朝、僕を起こすかあさんの声はひどく弱っていた。
その声に不審がって起きてみると、かあさんは泣いていた。



「・・・・けいちゃんが、亡くなったんですって」


こんなことをいうかあさんが嫌いになった。


けーちゃんが、僕を置いて死ぬわけないでしょう?
けーちゃんが、僕になにもいわないでいなくなるわけないじゃないか。


かあさんがいう所によると、けーちゃんは自分の部屋で白い布を頭にかぶせたまま、
思いっきり首を紐で縛って死んだらしい。
つまりは、―――――自殺。

まるで、あの女と同じような死にかた。
どうして、あんな女と同じようにしんだの?

・・僕を、おいて。



「これ、あなたへの手紙ですって」


簡素な封筒に入ったそれは、まだ誰も開けていなかったようで、糊づけがびっちりとされていた。
そして、乱雑な字で僕への宛て名が書かれていた。

僕は、ふるえる手でその封を切り、中の手紙をとりだした。


大好きなけーちゃんが、しんじゃった。
僕だけのけーちゃんが、いなくなっちゃった。



かなしいのは、僕だけだったのかな?
泣いてるのは、僕だけ?

けーちゃんは、僕と離れてさびしくないの?





だって、手紙には――――――・・・・・。
















END





聖なるバレンタインを前に、こんな病み病みss申し訳ない・・orz
しかし、私の大好物「ヤンデレ」を一回はかいてみたかったのです。
ヤンデレって、切なくて痛くて可哀想な恋だと思うんですよね。
それをうまく表現できてないのはご愛嬌ということで!←











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