4日後
朝起きてリビングに行ったら、テーブルの上にやたら目立つピンクの箱が置かれていた。
ほんとに小ぶりなものだけど、それはよく見るとすぐに“ある”イベントを想像させるハート模様の包装紙であることがわかった。
・・おかしいな、今日は2月18日なんだけど。
「・・あ、真崎。おはよ。」
眠そうに目を擦りながらリビングに入ってきた真崎に、朝の挨拶。
俺はさきほど淹れたコーヒーをイスに座りながら飲んでいた。
「・・・・はよ、」
寝ぼけているのか意図的なのか、真崎はぼそっとそう返しただけでそのままキッチンに入っていく。
「ポットに余ってるコーヒー飲んでいいよ。」
たしかキッチン台に置いたままのコーヒーポットには、まだ一杯分くらい残っていたはずだ。
「んー・・、」
適当な返事をして、ポットとマグカップを持って、またリビングへと戻ってくる真崎。
それをテーブルの上に置くと、真崎は俺の向かいに座った。
一瞬視線が俺の脇に置かれているピンク色の箱に泳ぐが、とくに何も言わずにコーヒーを注いでいた。
俺と同じ色のマグカップが自然に並んでいて、なんだか少し照れくさい。
しかし、真崎のやつ。
これは自分から言う気・・ないな。
「なあ、真崎。」
頑固な真崎に、優しい俺は助け舟を出してやることにした。
「これ、もしかして俺にくれるのか。」
トン、とピンク色の箱に指で軽く触れる。
真崎の顔色はとくに変わらなかったが、俺と目を合わせることはなんとなく避けているようだ。
「・・ん、まあ…。なんとなく買ったんだけど、渡すタイミングなくて・・今日になっちった。」
ちらりと俺を見た真崎の目は、俺と目が合った瞬間に照れくさそうに伏せられてしまう。
この4日間、いつ俺にチョコを渡そうかと密かに迷っていた真崎のことを考えると、たまらなくおかしくて・・可愛い。
ついでに、こんなあからさまなパッケージのチョコをレジに並んで買う真崎を想像しても以下同文。
真崎翔太という男は、ほんとにいつも俺を楽しませてくれる。
「いつだっていい。真崎から貰うものは、なんだって嬉しい。」
そう言って笑うと、今度こそ真崎は隠し切れないほどに顔を赤らめた。
信じられないと言った顔で俺を見て、こんな羞恥は耐えられないと言った風にこう叫んだ。
「ば、バカ言ってんじゃねーよ!ホワイトデーのお返しは、倍返しだかんな!」
恥ずかしさのやり場がなかったのか、目の前のマグカップの中身を思いっきり飲み干そうとした真崎。
もちろんそれは熱々のコーヒー。
熱い熱いと騒ぎ立てる真崎に笑いながら布巾を渡してやる。
今日は2月18日。
それでも俺にとっては、最高のバレンタインデーの始まりだった。
END
遅れたのをいいことにこんなSSを書いてみました。
まだギリギリいける・・と信じてる(白目)
本人たちが楽しけりゃバレンタインデーなんだ!4日すぎてたって・・(´;ω;`)