主題と変奏 作品73
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| ポール・クロスリー | ||
| Paul Crossly / (CRD) | ||
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すべての音がコントロールされ、透明感のある演奏になっている。繊細でクリアな弱音、決して乱暴にならないフォルテ、ルバートにも嫌みがなくコントロールされている。クロスリー氏の演奏は学者っぽいとおっしゃっていた方の「感じ」がわかるようだ。僕がクロスリー氏の演奏を好むのは、一歩引いたうえで美しさを追求するような姿勢、そしてそれが成功しているため。そう考えると、頭脳明晰の学者肌の人なのかもしれない。
この演奏を聴くと、同じ調性のために単調に陥る心配より、一つの調性、一つの主題でもこれだけ多彩な音楽が作れることに驚きを覚える。 クロスリー氏に少ないもの、それは暖かさだろうか。あまりに透明度の高い演奏なので冷たい水のイメージをもってしまう。でも好きであることには変わりはない。 |
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| ジェルメーヌ・ティッサン - ヴァランタン | ||
| Germaine Thyssens-Valentin / (TESTAMENT) | ||
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決して派手な演奏ではない。特別に各変奏に性格を与えているわけではない。どちらかというと同じ色合いで、同じテンションを保った演奏である。変奏それぞれから主題を引き出し、それを暖かく柔らかな音色で装飾していく。もう少し厳かに、もう少し華やかに、もう少し煌めくように、そういうことを望んではいけない。聴き込めばこの演奏がそういうことを全く必要としていないことを聴き手に伝えてくれる。
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| ジャン・ドワイヤン | ||
| Jean Doyen / (ERATO) | ||
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ドワイヤン氏のどの演奏にも言えるが、たっぷりとした音量で演奏している。最後の変奏を除いて調性が変わらないため、演奏に変化を持たせないと単調になりかねないがドワイヤンは優しさを、激しさを、落ち着きを、繊細さを各変奏に与えることで変化を与えている。優しさが第1、第9変奏に、落ち着きが最後の変奏に聞かれる。僕が一番好きなのは第3、第4変奏。大抵続けて演奏されるのだが、ドワイヤン氏は情熱的に演奏していており、聴くたびに「かっこいい」と感じる。激しさは第10変奏も同じ。落ち着いたテンポ感がどっしり感を加えている。
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| ロイ・ハワット | ||
| Roy Howat / (ABC Classics) | ||
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| とても冷静な演奏である。とはいっても無表情というわけではなく、充分に美しい。それぞれの変奏を性格分けをしそのアイデアの豊かさを聴かせるのではなく、主題がこのように変化をしていきますという紹介をしているような感じである。歌いすぎず、繊細すぎず、優しすぎず、激しすぎずではあるが、一つの作品としてのまとまり感は高い。 | ||
| エルヴェ・ビロー | ||
| Herve Billaut / (LYRINX) | ||
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ビロー氏の他の曲の演奏から察すると、特に速いパッセージの連続する変奏ではピアニスティックな部分が強調され、ややせわしなく進むのだろうと思っていたのだが、その予想は裏切られた。非常に落ち着いており、あらゆるフレーズがバランス良く重なりあい、とても上品で美しい演奏に仕上げている。遅い曲はだれることなく速い曲は落ち着いており、それをこの使用しているピアノの鳴りを無理なく利用して美しい音楽に仕上げている。最後の2つの変奏の軽やかさと落ち着きが自然で素晴らしい。 | |
| ヴラド・ペルルミュテール | ||
| Vlado Perlemuter / (Nimbus) | ||
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この「主題と変奏」はペルルミュテル氏の演奏が良いらしい。どこで見たか聞いたか忘れたが・・・ そんな名盤であるなら、いつでも手に入るだろうと思って、購入を伸ばし伸ばしにしていた。 聴いてみて、なぜ早く聴かなかったかと思うような素晴らしい演奏。この曲はタイトルが示すように、主題があり、それを変奏していく。当然各変奏の中には主題が姿形を変えながらも存在しているわけで、その弾き分けが演奏の善し悪しを決める。僕が今まで聴いてきたものは、豊かな音、色彩的な音、各変奏の明確な性格わけをしているもので、それはそれでとても素晴らしい。が、このペルルミュテル氏のように、その変化させられた主題をこれほどまでにクリアに弾いているものは初めてだった。当たり前の演奏なのだろうが、一番大切なことを思い出させてくれたような演奏である。豊かな音の中から浮かび上がる主題、縦の響きと横の線のすばらしい融合。それに加えてこの演奏には暖かさと、フォレの音楽に対する共感が聞こえる。 |
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| ジャン・ユボー | ||
| Jean Hubeau / (ERATO) | ||
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![]() ★★★ |
落ち着きがあり、決して怒鳴らない。抑制された表現がピアノの音色の美しさを素直に伝えてくれる。時には軽やかで、時には滑らかで、時には激しくなるが、すべてが自然ですべてが美しくすべてが優しい。これを「・・・が足りない」などとしか聴けないのだとしたら、ユボー氏のこの演奏は聴かない方がよい。僕にとってはこれ以上の「主題と変奏」はないといってもよいくらい素晴らしい演奏であり、静かにけれども深く感動させてくれる演奏はない。上記ペルルミュテル盤では「・・・当然各変奏の中には主題が姿形を変えながらも存在しているわけで、その弾き分けが演奏の善し悪しを決める・・・」と書いたが、この演奏はそのような事をせずとも作品自体の素晴らしさをそのまま演奏すればそれでよいということに気付かされる。その「そのまま演奏」は極めて難しい事なのだが・・・ | |
| イヴォンヌ・ルフェビュール | ||
| Yvonne Lefebure / (fy) | ||
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やや速めのテンポが流れをよくしてはいるが、やや荒い演奏である。多少の傷もあり特に第5変奏の傷は残念である。各変奏曲に変化を付けそれぞれの特色を前面に出そうとしているのがよくわかるが、やや不自然に感じなくもない。単にこれは好みの問題であり演奏の善し悪しではない事はもちろんであるが。
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