TRIO op.120 (ピアノ三重奏)

(好みの演奏にはジャケット画像を、そのなかでの1番の好みの演奏には、さらに★★★をつけてあります)
キャスリーン・ストット / プリア・ミッチェル / クリスティアン・ポルテラ
Kathryn Stott (Pf) / Priya Mitchell (Vl) / Christian Poltera (Vc) / (CHANDOS)

よく歌い、よく流れる美しい演奏である。ダイナミクスも広く鳴らすところはよく鳴らす。推進力がありためるような所がなく一気に突っ込んでいく思い切りの良さもある。ピアノ・ヴァイオリン・チェロのバランスがとてもよく美しくブレンドされた響きが随所に聴かれる。1楽章全般、特に2楽章のコーダがとても美しい。この場面はフォレの作品の中で最も好きな場面の一つであり、この演奏はやや速すぎる演奏なのだが、この場面では本当に美しく感動してしまう。3楽章は鋭利なリズムが強調されコミカルさをも感じさせる演奏。勢いもあるがやや音楽が細切れになっており、前2楽章の伸びやかで流れる美しさはやや後退してしまっているのが残念。しかし初めて聴くひとにも充分その素晴らしさがわかる素敵な演奏である。
トリオ・フォントネ 
Trio Fontenay / (WARNER CLASSICS)

/ドイツ人によるフォレというのに驚く。フォレのような「フランス」でしかないような音楽に共感し、演奏する団体があるとは!
1楽章のゆったりした入り、それを丁寧に展開していく。フレーズはおおらかだが伸びやかというよりはじっくりと展開していく感じ。ただ、これを最終楽章までやられてしまうと、ちょっとくどいかなとも思う。フォレの音楽にはおおげさすぎる表現をしている感があり、それがこの音楽の持つ軽やかさを犠牲にしているのが残念。
トリオ・ド・フランス 
Trio de France / (Green Door)

ゴーチェ氏(V)、レヴィ氏(C)、ジョワ氏(P)のトリオは日本では全くといってほど知られていない、つまりこれは稀少盤ということらしい。1958年録音ということなので音質はやや古いが、演奏自体は驚くほど素晴らしい。落ち着きがあり且つ流れがあり、3拍子の気持ち良いテンポ感を持つ1楽章、ダイナミクスレンジが広く歌い切る感動的2楽章、躍動感があり、流れの中にしっかりと「かど」をつけるメリハリのある3楽章は全て理想的。色合いという面ではくすみを感じるが、その「くすみ」のある音楽が表面的華やかさに惑わされず、音楽そのもの、つまりフォレが選んで紡いだ音の連なりで聴き手の心を揺さぶる。
ジャン・ドワイヤン / パスキエ三重奏団 
Jean Doyen (Pf) / Le Trio Pasquier / (ERATO)

一度手放したCD。長い年月をかけてまた戻ってきた。リマスタリングされ、音質も向上し聴き易くなっていた。
演奏はとても丁寧で、ひと昔の演奏にありがちないろいろな意味での「曖昧さ」はない。特に強調する事もないが、それでいて各声部の大切な、時にはカノンのように、時には重なりあいながら現われるフレーズは聴こえてくる。演奏それ自体は現代的でありながら、実際に聴こえてくる音楽の雰囲気は古風であり、それがなんとも言えない味わいのある演奏になっている。特に2楽章は素晴らしく、他の演奏にくらべかなり遅いテンポで進めていくが、それは一つ一つのフレーズを聴き手にじっくり聴かせ耳の奥にしみ込ませるためであるかのようである。3楽章もややゆっくりだがピアノは一つ一つの音の粒が良く分離し、弦は細かい音符も余裕を持って音楽的に歌う。ユボー盤と対極にある演奏で、ユボー氏が「攻め」の演奏であるならばこちらは「守り」の演奏。しかし守りからうまれる音楽は深く優しく味わい深い。ラストの落ち着いた高揚感・幸福感は絶品。
アンドレ・プレヴィン / フェリ・ロート / ジョセフ・シュスター
Andre Previn (Pf) / Feri Roth (Vu) / Joseph Schuster (Vc) / (SONY)

当時「現代で最も偉大な四重奏団のリーダー」といわれたロート氏、トスカニーニ、ワルター、カラヤン各氏らに絶賛されたシュスター氏、そして若きプレヴィン氏による三重奏曲の演奏となれば期待が高まるのは当然である。しかしこのアルバムはメンデルスゾーンがメインであり、このフォレは「おまけ」であったようだ。説得力をもった音色や歌い回しなどはさすがではあるが、それは各演奏家の資質でありこの曲と調和しているかはまた別である。当時レパートリーとして定着していなかったこの曲をプレヴィン氏が見つけてきて録音をしたようで、その目のつけどころはフォレのファンとしては嬉しいが、作品に共感し共鳴していないのはとても残念である。やっつけでありながら形になっているのはさすが「プロ』であるが、この演奏からこの作品の素晴らしさを聴き取る事はできない。メンデルスゾーンの演奏と聴き比べるとその違いを痛感させられる。
フロレスタン・トリオ 
The Florestan Trio / (hyperion)

ドビュッシー、ラヴェルとのカップリング。
とても上品な演奏。柔らかいピアノの伴奏に自然に柔らかくチェロが乗り、同じように柔らかくヴァイオリンが重なっていく。その柔らかさを保ちながら淀みなく音楽は進められていく。しなやかな表現が自然なうねりを生みその雰囲気のまま全楽章が奏でられる。1楽章は柔らかく、2楽章は穏やかだが決して緩慢ではないテンポの中で丁寧に一つ一つの音を大切に、3楽章は柔らかさはそのままにしながらも躍動的なリズムで演奏されている。旋律をとても大切にした演奏に感じる。それがこの作品にたくさんの旋律が存在し、それが時には独立し、時にはお互い歌いあい、時には重なり合っていることを気付かせてくれる。惜しいのは3楽章でヴァイオリンがかなり怪しいピッチで演奏している所がある。ここはかなりつらい。それがなければ素晴らしい演奏なのだが。
ジャン・ユボー / レイモン・ガロワ - モンブラン / アンドレ・ナヴァラ
Jean Hubeau (Pf) / Raimond Gallois-Montbrun (Vl) / Andre Navara (Vc) / (ERATO)


★★★
こんな演奏を聴きたかった。もうすばらしいの一言。フォレの作品自体も、その演奏も。決して演奏スタイルは新しいものではないが、音楽そのものをここまで引きだし、線の細く見えるこの作品が、なんと豊かに響くことか!フォレが音を削って削ってここまでシンプルにしたために、すべての音が豊かに響き、意味をもって聴き手に迫ってくる。ナヴァラ氏のチェロが、ガロワ・モンブラン氏のヴァイオリンが、ユボー氏のピアノがフォレを歌う。鬼気迫るような、それでいて落ち着いたテンポで進む1楽章、後期のフォレの作品の特徴の一つと思われるフレーズの反復が、一回ごとに胸に迫るような2楽章、落ち着きと軽快さを持った3楽章。この演奏に勝るものはあるのだろうか。
ジャック・ルヴィエ / ジャンージャック・カントロフ / フィリップ・ミュラー
Jacques Rouvier (Pf) / Jean-Jacques Kantorow(Vu) / Philippe Muller (Vc) / (DENON)

ドビュッシー、ラヴェルとのカップリング。
さわやかな演奏で、ぐいぐい通していくような演奏。テンポもやや速め。あまり晩年だから深みをとか、若い頃の作品だからさわやかにとか言うようなことにこだわりはないが、この三重奏は少しゆっくりのテンポ(特に2楽章)のほうが好き。少しすっきりしすぎているように感じる。3楽章はテンポの速さとテクニカルさと、さらりとした表現がとてもうまくいっていると思う。
でもこのCDは、ラヴェルが一番素晴らしい。
エリック・ル・サージュ / ピエール・コロンべ / ラファエル・メルラン
Eric Le Sage (Pf) / Pierre Colombet (Vl) / Raphael Merlin (Vc) / (ALPHA)


★★★
奇を衒うことなく真正面から作品をとらえた演奏。3つの楽器バランスが良く、フレーズの掛け合いが良く聴こえてくるために、他の演奏よりも多彩。
落ち着いたテンポで入るピアノは滴り落ちるような雨音のよう、続いて陰りのある主題がチェロで滑り込んでくる。その音楽は流れているのに、雰囲気は落ち着いているというにはやや重くウェット。第2主題は長調で歌われるが、心打たれるような悲痛さを感じさせる。何度がおとずれる高ぶりは、しかし決して怒鳴ったり感情をむき出しにすることはない。その秘め抑えたものが余計に心に訴えてくる。「短調は暗く長調は明るい」というシンプルな発想ではなく、全体的曲想にあった音調が長調・短調関係なく選び出されていると言ったら良いのだろうか。うまく説明できないが、フォレの特に後期作品は多彩であっても色彩豊かとは意味合いが異なり、「きれい・汚い」や「明るい・暗い」のような視覚的なものをイメージできる音ではなく、感覚に伝わってくる音楽なのだと思う。だから取っ付きにくく感じる人もいるのだろうと・・・。2楽章は長調。これは落ち着きから幸せな方向へ少しずつ心が解放されていくような音楽。3楽章でようやく単純に音の戯れに身を預けて聴くことができる音楽へ。何を話しているかはわからないがそれぞれの楽器同士で会話をしているような感じ。そういったものをこの演奏は全て露にし、考えさせ、感じさせ、そしてこの曲の素晴らしさを伝えてくれる。特に3楽章ではピアノの細かいパッセージを弾き飛ばさず、そこから新たなモチーフの存在を露にするなど読みも深い。音の戯れは抜群のテクニックにより余裕と遊びがあり、軽快。そして聴いているあいだはいろいろなことを考えさせるのだが、聴き終えたあとにはこの作品に出会えた幸せだけが残るという、美しく素敵な演奏である。

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