事例紹介〜暴力団との関係を断つには〜
〜「断ち切る勇気」より〜____
(全国暴力追放運動推進センター発行)
_体験談と暴力団への対応__
◆断ち切る勇気
◆決断の時
◆暴力団に負けない勇気

断ち切る勇気
 私は、平成13年当時、K陸運株式会社の代表取締役を務める傍ら、周辺に所在する運送業者で組織する組合の代表理事を務めておりました。
 当時私共の組合では、組合が所有しております土地と建物の一部をS運輸という会社にトラックターミナルとして貸していたのです。
 ところが、平成13年の夏ころに、この組合の土地建物のすぐ隣にOという男が土地を購入し、家を建て家族で引っ越してきたのです。
 Oという男は、引っ越してきた当初私共組合に挨拶にきて、暴力団の名称の入った名刺を差し出しながら「今度、隣りに引っ越してきたものです。よろしくお願いします。」などと愛想よく話してきたので、私は、暴力団と言ってもOは常識のある人間なんだと安心したのです。
 しかし、そんな私の思いは、見事に裏切られ、Oが引っ越してきてしばらくしたころ、S運輸の営業所長から「えらいことですわ、隣りに引っ越してきたOが、私の営業所にきて『トラックの音がうるさくて寝られへん、夜の仕事を辞めろ。』など怒鳴り込んできました。」と言ってきたのです。
 常識で考えれば、トラックターミナルがあることを知って引っ越してきたのですから、Oの方が我慢するのが当然の話ではあったのですが、相手は暴力団員であり、S運輸の営業所長としても言い返すことが出来る筈もなく、トラック運転手に夜の仕事を自粛するよう指示をしたそうです。
 その後、O側は益々エスカレートして、トラック運転手に対して、嫌がらせをしたり、挙げ句の果てには、S運輸の営業所長に「5,000万円で儂の家を買い取れ。」などと法外な要求をしてきたそうです。
 私は、Oの問題を何とかしなければ、今後Oが何を言ってくるのか分からないと考え、平成14年4月に組合の理事会を開くことにしたのです。
 ところが、理事会当日、組合理事4人が組合の事務所に集まったところ、Oがその子分と思われる暴力団員風の男2人を引き連れてやってきて、私ら理事に対し「S運輸は話しにならん、組合で儂の家を5,000万円で買い取れ。」と要求をしてきたのです。
 この時私は、全く受け入れられる話ではないと思ったものの、その場ではっきり断ると何をされるかと思い、Oらに対し「組合員とも相談しないと返事が出来ませんので検討させて下さい。」などとその場しのぎの返事をし、Oも「ええ返事を待ってるで。」などと言って子分2人と引き上げて行きました。
 理事の中には、後々のトラブルや後難を恐れてOの家を購入してはどうかという意見もあったのですが、5,000万円などという金額はどう考えても高すぎました。かといってOが組合の隣接地に住む以上、Oらが組合員に対し危害を加えてくるかも分からないという恐怖心がありました。
 しかし、私には、暴力団は一度要求を受け入れると次々に新たな要求を繰り返してくるということが分かっていましたので、これはもう警察に助けてもらうしか方法はないと考え、知り合いの弁護士を通じて、警察に相談することにし、警察に対して、これまでの経緯を説明したところ、警察では、OらがS運輸の事務所に乗り込んで、営業所長を脅した行為を暴行・脅迫事件として立件し、Oらを逮捕してくれました。
 ただ、Oらは逮捕されたものの、いずれは家に帰ってくると心配していたところ、思ったとおり、二ヶ月程してOらが、保釈され家に帰って来ることになったのです。
 そうしたところ、警察は、私達の心配を吹き飛ばす、今度は、Oらが私達組合に不当要求をしてきた行為をとらえて、Oらに対し中止命令を発出し、不測の事態を考えて組合事務所の周辺を警戒してくれたのです。
 その後、Oは弁護士を通じて、土地家屋を買い取って欲しいと言ってきたのですが、この時の価格は当初の価格の半額という好条件であり、組合としては、既存の所有地の隣接地で利用価値も高く、また別の暴力団員が入居してくる可能性もありましたので、直ぐに買い取ることに決めました。
 この様にして、警察が暴行・脅迫事件の犯人としてOらを逮捕したうえ、中止命令を発出してくれたことにより、その後相手方からの嫌がらせは一切ありませんでした。
 今回の件では、約半年の間、暴力団からの不当要求に思い悩んでいた訳ですが、今から思うと、もっと早い段階で警察に相談したら良かったと思います。
 私は、今回の件を教訓にして、今後も暴力団員からの不当な要求に対しては、断固拒絶し、いち早く警察に相談し解決していきたいと思っています。
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