星野明日香編


600ヒットリクエスト作品

 

 

ピピピピピピッ!

カチャ

部屋中に鳴り響いた目覚まし時計は

ベッドの中から手だけを出した明日香に止められた。

「う〜ん」

いまいち夢心地から覚め切れていない明日香は

ドラマでもなりそうなまでに背筋を伸ばした。

(今日は待ちに待ったデート♪)

学校へ行く平日とも

友達と流行の場所に行く日とも違い

今日の明日香の朝はとてもご機嫌だった。

そう、ご機嫌だったのだ。

(シャワーシャワー♪)

デートでなくても

明日香には朝からシャワーを浴びる習慣があった。

しかも、今日はデートである

欠かすわけにはいかなかった。

機嫌良く起きあがった明日香は少し違和感を感じた。

(アレ?)

ベッドから起きあがった明日香は再びベッドに座り込んだ。

おかしいとは思ったが、

気にとめず再び立ち上がろうとした。

再び明日香はベッドに座り込んだ。

(アレレ?)

いつもならこんなコトは当然起こり得ない。

意地になった明日香は再び立ち上がろうとした。

そう、今度は勢いよく。

勢いよく立ち上がった明日香は一瞬だけ立ち上がった。

しかし、一瞬だけですぐにフローリングの床に座り込んだ。

(まさか、風邪?)

そう思った明日香は自分の額に手をあてた。

「熱い!」

そう思ったが最後

病は気からと言うが、

明日香は一瞬にして気が滅入ってしまった。

 

とりあえず、落ち着こうと思った明日香は

はうように再びベッドに座った。

多少の風邪なら無理をしてでもデートに行こうと思うが、

さすがに立てないほどの風邪である。

どう頑張っても行けるわけはなかった。

仕方なく明日香はデートのキャンセルの電話をした。

しかし、先方はとっくに外出していた。

当然といえば当然である。

何と言っても先方は東京から横浜に来るのだから。

いつもギリギリの明日香と違い

前もって出かけないと間に合わないのだから。

(………どうしよう)

明日香の脳裏には中学生の頃が蘇った。

そう、今日と同じように風邪をこじらせた自分

連絡のつかない相手

それからずっと自責の念に追われた自分

あの日の罪の意識

明日香にとって昨日までは良い思い出になりつつあったが、

その思い出が再び自分を襲った。

(どうして?)

ふがいない自分を恨んだ。

ガチャ!

「あら、今日はしっかりと起きてるじゃない」

寝坊を防止のために明日香は母親に起こすように頼んでいたのである。

「あらあら、顔が赤いわよ」

それまで鏡を見る余裕の無かった明日香は

母親の言葉で鏡の中の自分を見た。

そこには明らかに風邪に冒された自分がいた。

それまでは体温を自己評価していた明日香だったが、

鏡はそれを決定づけた。

「風邪かしら?」

そう言って母親は明日香に額と

自分の額に手を当てて比べてみた。

「あらあら、風邪ね」

明日香は冷静に分析する母親を少し恨んだ。

「残念だけど、今日はずっと寝てなさい」

当然、母親は明日香にとってどういう日かは知っている。

しかし、そんなコトを言っている様な体調でないことは

客観的に見れば誰もが思う程に明日香の体調は悪そうだった。

「そんなぁ………」

ある程度予測していた明日香ではあったが、

母親の決定的な言葉に更に気が滅入った。

「風邪薬持ってきてあげるから、寝てなさい」

そう言って母親は多少強引に明日香を寝かしつけた。

 

半ば強引に寝かしつけられた明日香は

昼過ぎに再び目を覚ました。

(はぁ……約束……破っちゃった)

明日香は意気消沈していた。

ポンポーン

外で誰かが呼び鈴を押しようであるが、

今の明日香にとってそんなコトはどうでも良い些細なことだった。

遠くで母親が出ていた。

(やっぱり怒っているだろうなぁ)

明日香は虚空を見つめながら思っていた。

そのあと、

そんなに広くない家を誰かが走っていた。

(もう、うるさいなぁ)

そう思っていた明日香に元に母親が走ってきた。

バンッ!

勢いよく走ってきた母親は慌てふためいていた。

「明日香ちゃん!大変よ!」

慌てふためいている母親に対して、

明日香は冷静にだるそうに視線を向けた。

「え〜っと、あの、あのね」

「だから、どうしたのよ?」

呂律の回らない母親に、明日香は冷静に言った。

「この人が来たのよっ!」

明日香の机の上のフォトスタンドを持って母親は叫ぶように言った。

「え〜〜〜〜〜〜っ!!!!」

母親も慌てふためき、

娘も慌てふためいていた。

初めて娘の恋人?に会う母親と

部屋の掃除してなく、寝間着姿で寝起き直後で

どう会って良いモノか分からず困惑する娘

そんな状態は3分ほど続いた。

 

落ち着きを取り戻した母親は玄関に戻った。

「ごめんなさいね」

「いえ」

「ささ、どうぞ」

そう言って母親は青年を家に招き入れた。

 

「体の具合はどう?」

家に上がってすぐに明日香に体調のコトを聞いた青年の

第一声は明日香の体を気遣う言葉だった。

「へへへっ」

青年の言葉に何と返して良いのか分からず

笑って返すしかなかった。

「気を付かなくちゃ、いま風邪が流行っているらしいから」

「さすが明日香ちゃん、流行に敏感だから……ヒクッヒクッ」

そう言って笑っていた明日香であったが、

最後の方は涙声になっていた。

「ゴメンねゴメンね、またあなたに迷惑かけちゃった……ヒクッヒクッ」

「気にしなくて良いよ、今の僕にはあの頃と違って時間はあるんだから」

ベッドの横に座っていた青年に明日香は

青年の胸に飛びついて泣いた。

「わぁぁぁぁっ!」

いきなり自分の胸に飛ぶついてきて

泣いている明日香にかける言葉の無い青年は

明日香に頭を軽く左手で撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜後書き〜

うぴょ?

とりあえず、リクエストに応えてみました〜♪

風邪でヘロヘロな状態は明日香だけでなく

筆者たる香春までもがヘロヘロでございます(T_T)

いや〜、体中の関節が痛いです〜(T_T)

って言うか泣きたいのは私の方です!

何か泣き言ばかりになってますねぇ(^^;)

ってなわけで、終わりです

どうでしたでしょうか?

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