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今月の言葉

< 自我が不安定であるという思想を、我々が受け入れたがらないのは、単に錯覚と愚昧のゆえである。我々の分かちがたい個性individualityとはなんであるか。確かに言えることは、それが全くもって分かちがたいものではないことである。それは数えきれないほどの、多数から成るのである。人間の身体とはなんであるか。何十億もの生命体、細胞という個体の、一時的な集合から、出来あがっているのである。さらに、人間の魂とはなにか。無慮無数の魂の複合である。我々は、だれもがみな、先だった生命体の、数限りない断片の、複合体なのである。そして個人を絶えまなく解体し、絶えまなく作りあげていく普遍的な過程は、これまでずっとつづいており、今この時にも、我々だれもの中に、起こっているのである。どのような生ける者であろうと、まったく新しい感情、絶対に新しい考えなどを、抱いたことがあったろうか。我々のあらゆる感情や思想や願いは、生命の様々な時期によって、どれだけ変化し、成長しようと、ほかの者たち、たいていは死せる者たち、無慮無数の死者たちの、感情や観念や欲望の組み合わせであり、再構成に過ぎないのである。細胞も魂も、それらは過去において織りなされた諸力の、再結合であり、今における集積なのである。それらの諸力については、もろもろの幻影のごとき宇宙の、創造者に属するというよりほかには、知りようがない。
 あなたが(あなたというのは、だれであれ、私以外の霊魂の集合体のことである)、本気で集合体としての永遠の生命を望むかどうか、それは知らない。私としては、「わが心は、われにとって王国である」[Edward Dyer (1543-1607) の詩のタイトル]―とは言いたくない。むしろ、わが心は、異様な共和国なのであり、日々、南米で起こるよりも頻繁な、革命に悩まされているのである。そして理性によるものとされる、名目上の政府は、そのような永遠に続く無秩序は、好ましくないと宣言する。私は、空に舞い上がろうとする魂どもを持ち、水中を(海水だが)泳ごうとする魂どもを持つ。また森の中や山上に暮らそうとする、魂どもを持つ。大都市の喧騒に焦がれる魂や、熱帯の孤独の中に暮らそうと願う、魂を持つ。また、さまざまな段階の、裸の原始人の魂をも持っている。租税などは真っ平な、放浪の自由を要求する魂どもや、かと思えば、帝国や封建制に忠実な、繊細で、保守的な魂どもも持ち、反対にシベリア送りがふさわしい、虚無党の魂もいる。無為を憎む、眠れない魂や、反対に、数年おきにしか、めったにうごめくことのない、孤独な瞑想の中に暮す魂も持つ。偶像を信じる魂や、多神教の魂や、イスラムを宣言する魂や、僧院の陰翳や香や蝋燭の灯りや、ゴシック寺院の暗がりの、恐るべき高みを愛する、中世の魂どももいる。それらの魂どもの間で、協働することなどは、考えられない。いつでも騒動が起こり、反乱や、混乱や、内乱に終わる。大半の魂は、こうした事態を嫌っている。できれば、喜んで移住するだろう。賢い少数の魂は、現状の社会構造が完全に廃止されないかぎりは、事態の改善を望んでも、まったくむだであると感じている。>

 ラフカディオ・ハーン : 「(ちり)」より

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翻訳城便
自然とのコミュニオン
リチャード・ジェフリーズ:わが心の物語(1,2章)
         : わが心の物語 (3,4
         : わが心の物語 (5章)

E・A・ポオ妖精の島

都会の孤独
E・A・ポオ群集の人

夢と人生
L・ハーン狂える浪漫主義者(ジェラール・ド・ネルヴァル)
L・ハーン:悪魔のざくろ石・万聖節の夜・他(「ファンタスティクス」より)
ヴァン・ホディスハッケル博士の最期・詩抄

愛と死

ダウテンダイ粟津の晴嵐

放浪伝説
L・ハーンロマの血
R・L・スティーヴンソン砂丘の冒険[臨海楼綺譚](第1,2章)
     砂丘の冒険(第3,4章)
     砂丘の冒険(第5・6章)
      
:砂丘の冒険(第7章)
     :
砂丘の冒険(第8・9章)

ドイツ・メルヘンの世界

レアンダー:童話集1老婆の粉ひき場ほか
  :童話集2  こぶのある少女;こがねっこ
  :
童話集3 見えない王国
 
:童話集4 沼に落ちたハイノ
  :童話集5 
泉になった墓;小鳥
 
:童話集6 黒い子と金色の王女
グリム兄弟よたものたち;こわがりを学びに出たわかもの
W・ハウフ若いイギリス人 
シャミッソーペーター・シュレミール――影をなくした人――(1)

西洋詩の世界
レーナウ:詩抄憂愁の旅人
E・A・ポオ
詩抄<夢幻郷>
ロングフェロー他メランコリック詩集「雨の日」

西洋怪談の世界 
アムブローズ・ビアス:様々な幽霊―「相部屋」「幽霊屋敷」ほか
ヨナス・リー海魔
ヴィルヘルム・ハウフ幽霊船

夜の幻影
アムブローズ・ビアス妖夢―夜の幻影― 
ナサニエル・ホーソーン夜半の幻―心の幽霊―
ナサニエル・ホーソーン夜のスケッチ―雨傘の下から―
ラフカディオ・ハーン夢中飛行
ラフカディオ・ハーン夢魔の感触
ラフカディオ・ハーンヴェスペルチーナ・コグニチオ(黄昏考)
ラフカディオ・ハーン夢の書から

異界への招待
フリードリヒ・ゲルシュテッカーゲルメルスハウゼン――幻の村――
 ビブリオテク・ウラニボリ
     電子書籍

 Amazon Kindle本
見えない王国・フォルクマン=レアンダー童話集(「見えない王国」他・全6篇)
沼に落ちたハイノ・フォルクマン=レアンダー童話集2
(「沼に落ちたハイノ」他・全4篇)
砂丘の冒険 R・L・スティーヴンソン作


サロン・ウラノボルグ

メタ文学サロン)
サロン・ウラノボルグ
 
サロン・ウラノボルグ 開幕
 夜男爵の鏡のバラッド
 カイメラ氏の英雄詩講座その1<ギルガメシュ叙事詩>
 アフララ作<仙人>
 ナタニエル作虹を追う少年  
 ブルフローラ口寄せムーン・ファーム
 モーグルズ・フェイブルズ
 コスミッシェス・インテルメツォー:夜男爵の言葉の終末
 カイメラ氏の英雄詩講座その4エッダ
 
10デカンションへの旅(1)
 11
デカンションへの旅(2)第1章・第2章>
 12. 
<デカンションへの旅(3)断章1・2>
 13デカンションへの旅(4)断章3彼方へ>

カイメラ氏の英雄詩講座
 第1回:サロン3<ギルガメシュ叙事詩>
 第回:<ホメロス>
 第<ベオウルフ>
 第4回:サロン9<エッダ>
 第5回<ユーカラ瞥見>
 第6回 <ロランの歌>

英雄詩講座ノート

   @ 歌謡と叙事詩

夜男爵詩集<ネロポリス> 
       <ネロポリスU夜男爵の部屋より
       <Anschauungen―散文詩集夜男爵の部屋より

夜男爵の部屋 (純文学の貯蔵所)第17夜<過去からの招待状・夢文学についての対談付き>羽和戸玄人作
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最短詩集「七里靴」「海のイデア 羽和戸玄人作
                                                                           

エッセイ・雑録・その他

    ねころぐrenewal<エッセイ・雑録>
  テーマ別ねころぐ(「自我の探究」他) 

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   言葉の玉手箱PartU(「今月の言葉」の集成)

   四世界の理論:序論(認識論的多元的世界像の試み)

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 管理人の部屋(「キャラクター紹介」「幻影館の人生」「四世界の理論」)
    
   リンク   特別掲載 「叙事詩は復活する」――亀井トム

  シルクロード浪漫 「星の旅人―指月紀美子作品集」(休止中)

   
特別掲載 「新☆夢十夜」――指月紀美子

  ヨナ・他(夢遊星人創作集)パブーeBook

  毛呂山ローカルライフ (ブログ)

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くるえるストーリーズ 夢遊星人作(「ヨナ」他、全12篇の小説)
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沼―幻想小説集 夢遊星人作
山人 夢遊星人作
青き彼方(夢小説集) 夢遊星人作
    更新 TOP:2009.10.22 サイト名変更
    2022.8 サービス終了につき掲示板廃止
翻訳城2025.6.3フリードリヒ・ゲルシュテッカー「ゲルメルスハウゼン―幻の村―」
    2025.2.14<L.ハーン「夢の書から」>
    2020.4.12L・ハーン「ヴェスペルチーナ・コグニチオ(黄昏考)」
    2019.9.13「ペーター・シュレミール――影をなくした人――」
サロン・ウラノボルグ:
2012.6.23<デカンションへの旅(4)>
    2012.5.27<デカンションへの旅(3)>
英雄詩講座:2019.7.25<ロランの歌>
    2014.3.26
<ユーカラ瞥見>
夜男爵の部屋:2021.5.20<過去からの招待状>羽和戸玄人作
    2019.6.4<続・最短詩集・海のイデア>羽和戸玄人作
    2019.5.23<最短詩集・七里靴>羽和戸玄人作
特別掲載:2024.6.7「新☆夢十夜}(指月紀美子)
    
2024.4.4「叙事詩は復活する」(亀井トム)
ねころぐ:
2025.9.11最新記事<触覚としての脳><多摩川渓流ウォーク><Aphorismen16ー存在ともの><人生の忘却について><飯能多峯主山ハイク><直覚知とは何か><加治丘陵縦走ウォーク><直覚知について><死と快楽主義><大山ウォーキング><Aphorismen15(情報社会の恐怖・ほか)><集団的人格について><智光山公園の花菖蒲>
翻訳城便り:2022.3.10<精読と多読(「英語再入門」)>
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