米国艦隊は船体を真っ白に塗装したこと、ペリーが来航した黒船に例えてこの式典は一般的に「白船来航」と呼ばれています。 アジア歴史資料センターにて公開されている公文書資料にはこれは見当たりませんでした。また昨年横浜開港資料館でも白船来航100年を記念して特別展示がありましたが資料200点余の内、170点が米国の収集家レービン氏より貸与されたものでした。資料館の協力を頂いてそのときの展示物を調べました。資料1によく似た「投錨表」がレービン氏の展示品にありましたがこれは明らかに後年複写されたものをボードに貼り付けたもののようです。 the
Great White Fleetの資料を集めたサイト、およびその中のこの資料に関する部分です。
それとは違い、ここにある肉筆の資料は海軍の担当将校など限られた実務者にしか配られなかったので国内外でも残っているのは極稀だと思います。 資料2.は印刷冊子でもあり、かなり配布されたと思いますので国内にはまだ残っている可能性はあります。この冊子はレービン氏も持っておられたようで展示品の中に見えました。 資料1 東京湾日米両国艦隊排列表(墨肉筆) 日本海軍の旗艦は「三笠」続いて「富士」「朝日」などが序列に沿って係留され、米国海軍の旗艦は「コネーチカット」で「ルイージアーナ」「ミズーリ」などの記載があります。主要艦の数はそれぞれ16艦でした。帝国海軍と言えどもおそらくこれほどの艦船が一同に会するのは歴史的にも稀であったことでしょう。 額装は後年私が資料保護のために「ふじたみのる工房」にて製作しました。額材は高級材アサメラで下生地は紺の別珍です。 関連資料は アジア歴史資料センター (艦隊、接待などで検索可) 横浜開港資料館 http://www.kaikou.city.yokohama.jp/ 資料2. 米国艦隊接待次第(印刷冊子) 米国艦隊の将校、乗組員たちや別船で来日したその妻や令嬢など歓待してもてなす式次第の予定が一日毎に細かく記載されております。特別列車で東京へ観光、三越呉服店、交詢社の演芸、「キリン」麦酒などの項目も出てきます。鉄道のフリー切符も配布されました。 25ページほどの小冊子ですが右開きでは和文、反対表紙からは英文で書くほどの気配りでした。
白船来航
(明治41年10月18日の資料)
明治四十一年十月十八日ヨリ(七日間)於ケル東京湾日米両国艦隊排列表(額装)
白船来航
(明治41年)
肉筆資料
明治41年10月18日から24日まで米大西洋艦隊が世界一周航海の途中で横浜港に親善奇港したときの百年前の貴重な資料です。当時、日露戦争に勝利した直後の日本、これを脅威に感じつつ大陸の権益について動き始めた米国はそれぞれ思惑をもってこの時を迎えました。
華やかな歓迎式典の裏には米軍は自国海軍力を誇示することで日本を威嚇する意味があったそうです。
また米国の予想に反して日本海軍は地元の横浜や東京の官民の総力を挙げての大歓迎の式典が繰り広げられましたがその裏で密かに軍備増強していたとも言われております。
当時の欧新聞はこれを「日米開戦か」と取り上げたくらいです。
拡大写真
(下に続く)
同 左上部拡大
同 右上部拡大
同 左下部拡大
同 右下部拡大
盛大な式典の割にはあまり資料が残されていないようです。この資料はこの歓迎式典の準備に関係した将校の一人(祖父)が保存していたもので資料はここに写真を掲げた次の2点です。
http://www.greatwhitefleet.info/The_Great_White_Fleet_Japan.html
http://www.greatwhitefleet.info/Fleet-Formation---Yokohama_jpg_view.htm
米国艦隊接待次第(冊子)
最上部の写真
薄紙に毛筆書きで横浜港でのそれぞれの艦船の識別艦影と艦名、排水トン数、電話線、検疫船の配置などが手に取るように克明に記載されております。
館報(開港のひろば)第101号 2008/7/30 に記載
その他「白船来航」でネット上に多くあります。
英語の場合では「the
Great White Fleet」です。
上部、左の写真
米国艦隊接待次第(冊子)英文表紙
将校、士官は階級によって鉄道の「フリー切符」が支給されました。
また特別列車も運行されたようです。
同上 内容一部拡大
日比谷公園音楽堂、明治屋、「キリン」麦酒、交詢社などでの接待の記載があります。
奥様などのご婦人方には三越呉服店への招待もありました。 この辺の記念写真類は日米に多く残っているようです。
同上 内容一部拡大
資料1.の艦隊排列表の紙の裏側の様子です。手書きのため墨が部分的に裏映りしています。
艦隊排列表(薄い紙の裏側)
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