HIGEさんのスポーツ救命救急 
2004・4・17(SAT)
特集「市民公開講座 CPR in School」

慶応義塾大学キャンパスにて
市民公開講座の会場,慶応義塾大学キャンパスにて
(撮影 「きむ@めでぃっく」さん)

 みなさん,こんにちは。HIGEです。「HIGEさんのスポーツ救命救急BBS」にてお知らせのとおり去る4月17日(土)に慶応義塾大学で開催された「市民公開講座 CPR in Scool」に参加してまいりましたので,今回はそのレポートをお送り致します。
 当日は,ポカポカ陽気を通り越し,25度を超える夏日となりましたが,「HIGEさんのスポーツ救命救急」掲示板でお馴染みの「きむ@めでぃっく」さん,「Mountain Tiger」さんのお二人とご一緒に参加して参りました。
 JR田町駅で下車し,汗をかきかき歩くこと5分で,慶応義塾大学キャンパスに到着。会場の西校舎ホールに行ってみると,なかなかの盛況・・・かなりの方々が来場していました。
 早速会場内に入ってみると,ありましたありました・・・ホールの入り口には,医療器具メーカーさんのデモ用ブースがあり,各社の「AED」が展示されておりました。

          展示されていたAED
            会場入り口に展示されていた「AED」(撮影 HIGE)


          展示されていたAEDやBLSキット
           展示されていた「AED」やBLS用のキット(撮影 HIGE)


 「AED」が展示されているブースの周囲は,人だかりができており,多くの方が「AED」に関心を持っているんだなぁ・・・と感じました。
 ブースの担当の方が「これから,日本でも市民がAEDを使用できるようになります・・・」という説明をしながら,ダミーを使用しての実演デモをしておりましたが,操作方法はすでにこのHPでも私がご紹介したとおり,実に簡単で,電極を貼り電源をON,あとはAEDが心電図波形を解析し,除細動が必要な場合は,これまた「AED」のアナウンスに従い,ショックボタンを押すだけ・・というものでしたが,説明を聞いている皆さんも「へえ〜こんなに簡単なんだ」という感じで,その説明を十分ご理解しているようでした。
 「AED」のデモを見た後,ホールに入ると,ホールにはかなりの方が来場しており,ほぼ満席という盛況でした。

          会場の様子
          定員800人のホールはほぼ満席の大盛況(撮影 HIGE)

 定刻の15:00に開講となりましたが,ここで今回の市民公開講座のプログラムについてご紹介致します。

【プログラム】

◇開講挨拶   慶應義塾大学医学部救急医学助教授   堀  進悟さん  
◇開講挨拶   財団法人東京救急協会常務理事      齋藤 誠二さん
◇ライフセービング:救命の確率を競うスポーツ
          流通経済大学社会学部助教授        小峯 力さん
◇スポーツ中の急死
          慶應義塾大学スポーツ医学研究センター助教授 大西 祥平さん 
◇生徒の声   
          慶應義塾湘南藤沢中・高等部教諭   浦野 桃子さん
◇インストラクターの声
          財団法人東京救急協会          清水 典子さん
◇ 野球ボールが胸に当たっただけで・・・
          心臓震盪から子供を救う会        岩田 賢雄さん  
◇学校でも使えるAED(自動体外式除細動器)
          日本メドトロ二ック株式会社        松尾 英樹さん
◇デモンストレーション 
          慶應義塾大学医学部   学生有志(KAPPA)のみなさん


 以上のプログラムにより開講されましたが,これより講義の内容を抜粋してご紹介させて頂きます。「HIGEさんのスポーツ救命救急」の「AED特集 厚生労働省でのAED検討委員会議事録」の中にもありますように,そもそも「AEDの市民への解禁」を政府に提言なさったのは慶応義塾大学の三田村先生ですから,この講座も来るべき「AED」の市民への開放を視野に捉えた形でのカリキュラムとなっていました。

◇開講 慶応義塾大学医学部救急医学助教授 堀 進吾さん◇
 開講挨拶では,慶應義塾大学医学部の堀助教授から,「AED」をメインとしたBLS社会を作っていくためには,「学校教育の中でのBLS教育」が必要あり,慶応義塾附属の中学校,高等学校では,すでに教育現場での「BLS教育」を実施しており,効果を上げているというお話がありました。学校教育現場における「BLS教育」には「反復教育によるBLSモチベーションの向上」効果があり,中学生の「BLS知識・技能」の習得能力は大人に比較すると目覚ましいものがあり,まさに「子供達は天才である。」と,その絶大な普及効果を紹介するとともに,「来るべきAEDによるBLS社会を作っていくためには,子供達がその普及への突破口となる。」とおっしゃっていましたが,このお話を聞き,「全くその通り!」と感じました。

◇「スポーツ中の急死 慶応義塾大学スポーツ医学センター助教授 大西祥平さん」◇
 慶応義塾大学スポーツ医学センターの大西助教授からは,「スポーツ中の急死」という講義がありましたが,すでに皆さんにご紹介した,バレーボールの「ハイマン選手」が日本での試合中に倒れた当時のビデオやNBAで試合中に突然CPAとなり急逝した,「ハンク・ギャザーズ選手」の例が紹介されました。
 NBAはもちろん,ハイスクール(高校)やカレッジ(大学)などでのバスケットボール選手の事故例が多いことが紹介されており,改めて注意が必要であると感じました。
 この「突然の心停止による急死」のほとんどは,「心血管系」のものであり,スポーツ選手といえども隠れた小さな動脈硬化が進行している場合があるそうです。
 そんな小さな動脈硬化は放っておくと段々と進行します。そして梅雨期や夏期の大量発汗時には,体内の水分が不足し,脱水気味となり,このような状態になると,普段はサラサラな血液の粘性が増します,それにより,動脈硬化により狭窄した心血管に梗塞などが発症し,「突然の心肺停止」となる場合が多く報告されているそうです。

その予防法としては・・・・

 @定期的な検診を受け動脈硬化などがないかどうか,自己の健康状態をチェックする。
 A梅雨期から夏期は,水分を補給し血液の粘性化を予防すること。
・・・が大切であるとのことでした。

 また,若年層の場合は,「肥大型心筋症」や「川崎病などの先天性冠動脈疾患」によるものが発生しているそうで,このような場合は・・・

 @家族の病歴(突然死や心疾患)
 A健康診断時に心雑音や血圧異状がないか?
 B運動時の疲労度,失神,息切れや胸痛がないか?
・・・といったことに注意し,もし,少しでも「変だな?」と思った際は運動を止め,医療機関での検査をすることで予防できるとのことでした。

総合的な注意点としては・・・

 @定期的な健康診断・身体検査(メディカルチェック)
 Aバランスの良い食事と十分な睡眠
 Bウオームアップとクールダウンの実施
 C水分の摂取


・・・とのことですので,指導者の皆さんはこれからの梅雨期,夏場は十分注意して,子供達に事故が無く,スポーツを楽しめるようにしてあげて頂きたいと思いますし,一度はご自身のメディカルチェックをしてみることをお勧めします。

◇「生徒の声 慶応義塾湘南藤沢中学校,高等学校教諭 浦野桃子さん」◇
 慶應義塾の附属中学・高校において,「学校現場でのBLS教育」を実践なさっていらっしゃる浦野桃子さんから,その効果などが報告されましたが,ここではそのアンケート結果についてご紹介します。
 最も興味深かったのは,中等部と高等部での実施後のアンケート結果で,中学生(中学1年生)が「ためになった。」,「もしもの時にはBLSをできる自信がついた。」という回答が多いのに比べ,高校生(高校1年生)になると,「参考にはなったが手順を忘れてしまう。」とか「手順が難しい」という「難易度が高い」という回答が多くなりはじめ,「理論や技術」という部分にとらわれてしまっていることが伺えます。
 このことから,なぜシアトルでは「中学校1年生」を対象とした「BLSプログラム」を設定したのかがとてもよく理解できました。おそらく,13歳〜15歳までがバイスタンダー育成の「ゴールデンエイジ」なのではないでしょうか。
 その必要性を理解するとともに,「理論や技術」という事だけに捕らわずにBLSを効果的に学ぶことができるのは,この世代なのかもしれませんね。 ちなみに慶大付属校のBLS教育の目標は・・・・

 @BLSを自己の身近な事として捉える目
 A人を助けることができる自信
 B人を思いやる気持ち
 C人を大切にするとともに自己をも大切にする

・・・ということだそうで,こういう取り組みをする学校がもっともっとたくさん増えればいいなって思いました。

◇「インストラクターの声 (財)東京救急協会BLS講習インストラクター 清水典子さん」◇
 (財)東京救急協会の救命講習会では,中学生に対する救命講習を実施していますが,その講習会での注意事項や留意点などの紹介がインストラクターの清水さんからありましたが,私にも大変参考になるお話がいくつかありました。
 東京都では中学校就学生徒の数が年々減少しているのにも関わらず,中学校での救命講習開催件数は増加しているそうで,中学校からの「BLS教育」の重要性が認識されはじめているとのことでしたが,中学生に対する講習会は非常に難しいそうで,どのようにしたら決められた時間内で効果的なBLS講習ができるかといった実例を踏まえたお話は大変参考になりました。
 この中から,皆さんもすぐにできるようないいお話しが聞けたので,ここでご紹介させて頂きます。救命講習会などでは,私も「CPR時の心臓マッサージのリズムは1分間に約100回のリズムで・・」というように紹介してますが,これを理解してもらうのはなかなか難しいんです・・・でも,こんな風にやると簡単にできるらしいです。
 まず,中学生や子供に教える場合は,「どらえもんの唄」がちょうど1分間に100回のリズムだそうで,「あんなこといいな〜♪,できたらいいな〜♪」という唄に合わせてやると簡単にできるらしいです。
 同じようにSMAPの「世界にひとつだけの花」や中島みゆきさんの「地上の星」なども同じリズムなので受講者の年齢層によって,これらの曲を使い分けると非常に効果的とのことで,これはとっても参考になりました。(笑)次回の講習会では早速実践してみようと思っています。

◇「野球ボールが胸に当たっただけで・・・心臓震盪から子供を救う会 岩田賢雄さん」◇
 「心臓震盪」については,「HIGEさんのスポーツ救命救急」においても度々ご紹介をしておりますので,皆さんはもうご存じかと思います。(まだご存じない方はトップページに「心臓震盪に注意しましょう!」のINDEXがありますので,ご覧下さい。)

 岩田さんは数年前に,「心臓震盪」により当時13歳だった息子さんを亡くされたそうです・・・
 硬式ボールを使用するリトルリーグに所属していた息子さんは,三塁の守備位置で強烈なノックの打球を胸に受けた後,意識を失い,そのまま心肺停止に陥りました・・・そして,あまりにも早すぎる生涯を終えてしまったそうです・・・
 その後,岩田さんの戦いが始まりました。当時は,「心臓震盪」は全く知られておらず,警察の検死報告も,「心不全」という事になっていたそうです・・・ですから,当然ノックをしていたチームのコーチや関係者からは「ノックを受けていた時に偶然心不全となったのだから,責任は無い。」というスタンスであったとのことで,結局は関係者からは何の「謝罪」も無かったそうです・・・・ その後,埼玉県の戸田中央総合病院で「心臓震盪」を研究なさっていた輿水(こしみず)先生と出会い,「心臓震盪」を知り,「心臓震盪による不幸な死」から子供達を守るため,また不幸にも「心臓震盪」に遭遇してしまった場合,その命を救うことができる「AED」の普及を目的に「心臓震盪から子供を救う会」を発足させ,活動しているそうです・・・
 現在では会の活動も少しずつ実を結び「心臓震盪」という言葉もだいぶ一般に普及してきたそうです。「心臓震盪」は,胸郭がまだ未発達の子供に多く発生し,アメリカにおける2003年中の発生件数は実に128件,うち半数以上は「野球ボール」,「ソフトボール」が胸部に強く当たり発生しているとのことでした。
 このような地道な会の活動の結果,日本の野球用具メーカー最大手の「MIZUNO」では,「心臓震盪」から胸部を守る「プロテクター」を現在開発中とのことであり,会の地道な努力が実ったと思いますし,一日も早い実用化を願っています。
 講演の最後に岩田さんがおっしゃっていましたが,「スポーツに一生懸命に打ち込む子供達の姿はとても美しく,大好きです。だから,全てのスポーツを楽しむ子供達のために,全てのスポーツのチームが子供達の命を守って欲しい,全てのスポーツ現場にAEDを・・・そんな社会になって欲しい・・・」という言葉は私胸に強く響きました。
 「心臓震盪から子供を救う会」HPのURLは下記のとおりですので,皆さんにも是非一度ご覧頂きたいと思います。 

「心臓震盪から子供を救う会」HP
http://www.chuobyoin.or.jp/shinzou-shintou/index.html


◇学校でも使える自動除細動器(AED)日本メドトロ二ック株式会社 松尾 英樹さん◇
 ここでは,「AED」の紹介と,すでに社会的に広く普及しているアメリカでの「AED」による救命事例が紹介されました。

 「AED」(Automated External Defibrilator)については,「HIGEさんのスポーツ救命救急」でもご紹介しているとおりですが,ここではアメリカはラスベガスのカジノで発生した50歳代の男性CPA患者に対し,トレーニングを受けたガードマンの「AED」による除細動により救命した事例の一部始終が「防犯ビデオ」に撮影されており,その検証が行われました。

 CPA患者が発生してから,すぐに2名のガードマンが「AED」を携帯して駆けつけました。ガードマンはかなり慌ててはいましたが,どうにかこうにか除細動のパッドを胸部に貼り,「AED」による心電図波形の解析が開始されました。解析結果は「心室細動」であったため,除細動適用となり,直ちに自動充電が開始され,完了後ガードマンによりショックボタンが押されました。
 上下に激しく揺れる患者・・・ここまで約3分で実施されましたが,ショック直後,男性の手が動き始めます・・・そして,体動はさらに大きくなり7分後には完全に意識が回復,約9分後には救急隊のパラメディックが現場に到着しますが,この時の男性は,自ら上体を起こしており,本当にCPAだったのか?というくらいに回復していましたが,映像が終わった時,「AEDの速効性」を目の当たりにした会場内からは「感嘆の声」が聞こえてきました。
 「もしAEDが無く,さらにバイスタンダーによるCPRも無く,9分間この男性がこのままだったら・・・おそらく彼は亡くなっていたことでしょう・・・・しかし,AEDがあれば,使用できれば,僅か7分間で死の淵から帰ってくることができるのです・・・」・・・という説明に皆さん聞き入っており,まさに「百聞は一見に如かず」で,こうした「目で見る救命事例」を今後は多く紹介していくことが,普及の大きなポイントになるのではないかと感じました。
 現在,「HIGEさんのスポーツ救命救急 特別企画」では「厚生労働省内での非医療従事者によるAED使用のあり方委員会」が開催されており,一般市民への解禁はもうすぐです・・・来るべき「AED解禁」に備え,BLSを皆さんにも学んで欲しいと思います。

◇デモンストレーション 慶應義塾大学医学部 学生有志(KAPPA)のみなさん◇
 慶応義塾大学医学部有志(KAPPA:カッパ)の皆さんによる「AED」を使用したBLSのデモンストレーションが行われました。
 設定は,ドッジボールをやっていた学生の1人の胸部にボールが当たり,意識消失しCPAに陥るという状況下で,全くBLSが実施されない「悪い例」と,速やかに「AED」が使用され,救命が成功する「良い例」が紹介されましたが,なかなかの熱演に会場からは大きな拍手が贈られました。このデモンストレーションは我々の劇団「IRQQ」にも,大変参考になるもので,今後シナリオを作成する予定の「AEDによるBLSバージョン」に取り入れていきたいなと思いました。

「市民公開講座 CPR in School」を終えて・・・・
・・・以上で「市民公開講座」は閉会となりましたが,当初の終了予定時刻を30分もオーバーするとても内容の濃い講座でした。
 講座を終えての帰途,一日も早く「AEDを使用できるBLS社会」が来るように・・・中学生へのBLS講習が全国的に義務化され,若きバイスタンダーが支える社会が来るように・・・私もできることを頑張らなきゃいけないなって思いました。
 今後も,このような「講座」や「勉強会」にどんどん参加し,その「情報」を皆さんにお届けしていきたいと思いますので,「HIGEさんのスポーツ救命救急」へのさらなるご声援,ご支援をよろしくお願い致します。(HIGE)

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