|
「HIGEさんのスポーツ救急救命」 |
|
皆さん、新年あけましておめでとうございます。HIGEです。 本年も「HIGEさんのスポーツ救命救急」HPをよろしくお願い致します。 このHPにお越しになる皆さんは、もうすでに御存知かと思いますが、BLS(Basic・Life・ Support:一次救命処置)の世界基準である「ガイドライン2005」の日本ヴァージョンが完成し、昨年夏に国から各関係機関に通知されました。 現在、各関係機関では「新ガイドライン」移行のための調整作業に入っており、本年早々にはこの「新ガイドライン」でのBLSへと正式に切り替わるものと思いますが、ここで新ガイドラインに沿った、新しいBLSについて、簡単に解説したいと思います。 現在、世界各国で実施されている「心肺蘇生法(CPR)」は、西暦2000年に改訂された「ガイドライン2000」に基づき実施されていますが、この「ガイドライン」は5年に一度の見直しがあり、「医学的な根拠」や「有用性と効果」などが細かく検証され、よりベターな方法へと逐次改正されています。 今回の改正に先立ち、アメリカのAHA(アメリカ心臓協会)、ヨーロッパのERC(欧州蘇生協会)が主体となり、「ガイドライン2000」の検証が行われました。 「ガイドライン2000」では、AED(自動体外式除細動器)をいかに活用して、救命率を上げていくかが最大のポイントでしたが、その検証結果は次のような結果となりました。 【ガイドライン2000の検証結果】 @75歳以上の者は、1.6倍の救命効果上昇 Aバイスタンダーにより心肺停止が目撃され、迅速な通報が実施されたものは、4.4倍の救命効果上昇。 B迅速にバイスタンダーCPRが施行されたものは、3.7倍の救命効果上昇。 C8分以内にAEDによる除細動が実施されたものは、3.4倍の救命効果上昇。 D医療機関で早期に蘇生治療が開始されたもの有意差なし。 以上のことから、「迅速な通報」、「迅速なバイスタンダーCPR」、「迅速なAEDの施行」という病院前救護(プレホスピタルケア)が救命効果の向上に大きく関わっている事が、再認識されました。 そして次に、「病院前救護」、いわゆるバイスタンダーCPRなどのBLS(一次救命処置)の検証が実施されました。 BLSではA(Airway:気道確保)、B(Brithing:人工呼吸)、C(Circulation:循環:心臓マッサージ)、D(Difibrillation:除細動、Drug:薬剤)の「ABCD」が基本ですが、これらの各パートにおける詳細な検証が実施された結果、新しいガイドラインでは、下記のような「アルゴリズム(施行手順)」が出来上がりました。 ![]() ※市民救助者(一般のバイスタンダー)につては、グレー、グリーン(5Aを除く)、ブルー部分のアルゴリズムで実施。 ※ヘルスケアプロバイダー(医師、看護師、救急隊員など医療従事者)は全てのアルゴリズムで実施。 以後、この「アルゴリズム」について、「ガイドライン2000」から、なぜ今回改正されたのかについて、個々に解説していきたいと思います。 G2005「BLS・アルゴリズム」の解説 1、ステップ1〜「体動なし、または無反応」 これは以前と同じです、肩を叩きながら「呼びかけ」を実施して、反応があるか、正常な体動があるかどうかを確認します。名前が判れば名前を呼んであげた方が、より反応の有無が判ります。「反応が無い」あるいは「反応が判らない」場合は、「反応無し」と判断し次のステップへ進みます。 2、ステップ2〜「119番通報およびAEDの取り寄せ」 これも以前と同じです。周囲にいる人を「誰か来て下さい!」と大きな声で集め、119番通報と付近にAEDが設置されていれば、AEDの現場搬送を依頼します。 ただ、気を付けなければならない事は「誰か助けて下さい!」という「助けて」という言葉での呼び方はしないようにしましょう。 日本人は「助けて下さい!」と聞くと、面倒な事に巻き込まれるのは嫌だという考えが第一となって、なかなか集まってくれません。(悲しい事ですが・・・) ですから、「誰か来て下さい!集まって下さい!」という呼びかけにした方がいいかと思います。 また、「誰か119番通報して下さい。」という曖昧な依頼では無く、「あなた」と指さし、「119番通報して下さい。」と依頼しましょう。そうでないと、「誰かが通報するだろう」、「誰かが通報しただろう」となってしまいます。通報が重複してもいいですから、まずはいちはやく救急システムを作動させて下さい。さらに、AEDの搬送ですが、AEDの搬送を依頼をする人は、「AEDを知っている」ということが最低条件になります。 「え?AEDって何それ?」というレベルの「知らない人」に依頼しても、いたずらに時間が経過してしまいますので、「AEDを知っている方いますか?」と聞き、知っている人にAEDの搬送を依頼するようにしましょう! ※救助者が1人しかいない場合は? @成人の場合はまず「119番通報」をFASTに! A小児、乳幼児の場合はまず1サイクルのCPRをFASTに! 3、ステップ3〜「気道確保、呼吸の確認:(Airway)」 (1)呼吸の有無よりも、「正常な呼吸をしているか?」が重要! まず、ガイドライン2000では、初期観察時において「呼吸の有無」の確認が実施されていましたが、新ガイドラインでは「正常な呼吸をしているか?」がCPR開始の判断となります。心室細動の発生時など、突然の心機能停止状態に陥った場合、同時に呼吸が停止する事は極めて稀であり、ほとんどの症例では「死戦期呼吸(しせんきこきゅう)」と呼ばれる呼吸状態となります。 心室細動により、ケイレン状態となった心臓からは、正常に血液が駆出されなくなります。正常な血流が得られなくなると、体内への酸素やエネルギーの運搬が停止し、最も酸素を必要とする「脳」が最初に反応し、低酸素を改善するために、より多くの酸素を摂取しようとすることから、その呼吸状態は大きく口を開け、金魚のようにパクパクと口を開けて呼吸する「下顎呼吸(かがくこきゅう)」や、ハアハアとあえぐような「あえぎ呼吸」をするようになりますが、こうした呼吸状態を総称し、「死戦期呼吸」と言い、「目前に迫る来る死と戦う呼吸」という意味があります。 こうした呼吸状態の時、すでに心臓レベルでは、すでに「心室細動」が発症しているケースが非常に多く、以前のガイドライン2000では、「呼吸の有無」のみが判断基準となっていたため、こうした「死戦期呼吸」も「呼吸あり」と判断してしまう事が多く、その後のBLSに着手しない(できない)ケースが多く認められた事から、今回の改正では、こうした危機的な呼吸状態である「死戦期呼吸」を見逃さず、直ちに次のステップ(気道確保)に移行する事が重要視されての改正となりました。 (2)気道確保は「頭部後屈あご先挙上法」に!全てのカテゴリーで統一されました。 「ガイドライン2000」では、BLSにおける気道確保の方法は、「頭部後屈あご先挙上法」と「下顎挙上法」の2種類がありました。 「頭部後屈あご先挙上法」は、皆さんも御存知かと思いますので紹介は省きますが、もうひとつの「下顎挙上法」は、頸椎損傷などが疑われ、頸部の後屈ができない場合とされていました。 しかしながら、この「下顎挙上法」は、一般市民レベルではとても難しい手技であり、例え「下顎挙上法」ができたとしても、頸部には何らかの負荷がかかっているという研究結果が報告されたこと、また救助者が1人の時、両手を使って「下顎挙上法」を実施しても、その後の人工呼吸が実施できないということから、市民救助者の「下顎挙上法」については削除され、市民救助者の気道確保は、全ての場合において「頭部後屈あご先挙上法」に統一されました。 4、ステップ4〜「正常な呼吸なしなら、2回の呼気吹き込み、胸部挙上確認(B:Brithing)」 (1)正常な呼吸状態でなければ、すぐに人工呼吸開始! 前項にて解説のとおり、「呼吸なし」はもちろんですが、「死戦期呼吸」など、今までに見たことがないような呼吸様式ならば、すぐに呼気吹き込みを2回実施(Rescue・Brithing)して下さい。 (2)呼気吹き込みは1秒で1回、胸部が少しでも上に上がればOK! 「ガイドライン2000」では、「1回の吹き込みに2秒とし、1回ごとに胸部の挙上を確認。」となっていましたが、今回の改正では「1秒1回、胸部が少しでも上がればOK」と変更になりました。 この改正は、この後のステップである「心臓マッサージ」により早く移行するために、なるべく短時間に「Rescue・Brithing」を実施する事を目的に改正されました。 また、「胸部の挙上」にとらわれすぎるあまり、長い時間をかけて「呼気吹き込み」を実施した場合、多くの呼気吹き込みにより、胸腔の内圧が上がり、その結果、心臓に戻ってくる血液の循環を妨げ、心臓そのものを栄養している冠動脈の血流も妨げるる可能性があり、救命効果を減少させる事が報告されており、こうした改正が実施されました。 では、もし胸の挙上が全く無かった場合はどうしたらいいでしょう?成人の場合は、もう一度だけ頭部後屈あご先挙上法の気道確保をやり直し(再気道確保)、再度呼気を2回吹き込みます。それでも胸部の挙上が無ければ、いたずらに気道確保を繰り返さず、次のステップ「心臓マッサージ」に移行します。 小児。乳幼児の場合は、心臓に原因がある場合より、呼吸に問題がある場合の方が多いことから、以後3回まで再気道確保にトライし、計4回実施しても効果が無ければ、次のステップに進みます。 ※ステップ5、5Aついては、ヘルスケアプロバイダー(医療従事者)のため割愛します。 ステップ6〜30回の胸部圧迫(心臓マッサージ)+2回の呼気吹き込み(人工呼吸)(C:Circulation) ●Push・Hard!&Push・Fast!(心臓マッサージは強く!早く!)● 今回の改正の大きな改正点は「心臓マッサージ」です。新ガイドラインの策定にあたり、「ガイドライン2000」におけるCPRの実施事例が有効であったかどうかの研究が数多く実施されましたが、その多くは「心臓マッサージの有効性」を検証したものでした。 (1)「循環のサイン」の確認は削除されました。 「ガイドライン2000」では、2回の呼気吹き込みの後、「体動」、「咳き込み」など、「循環のサイン」を10秒以内に確認し、循環のサインが無ければ「心臓マッサージ」開始となっていましたが、「循環のサイン」の確認は一般市民には難しく、「循環のサイン」を確認することに手間取り、「心臓マッサージ」の着手が遅れるケースが多かったため、今回の改正では削除されています。 気道確保後、2回の呼気吹き込み時に、これらの反応が無い場合、またはよく判らない場合は、「反応なし」と判断し、直ちに心臓マッサージを開始することになりました。 (2)毎分80回を下回る心臓マッサージは蘇生率がよくない。 心臓マッサージは成人では毎分100回とされていますが、研究の結果、毎分80回を下回る心臓マッサージの蘇生率は、100回以上の心臓マッサージに比較し、よくない事が判りました。 (3)圧迫の浅い心臓マッサージでは、胸壁がきちんと戻らないため蘇生率がよくない。 心臓マッサージの有効な圧迫は胸壁が4〜5センチ沈む強さとされていますが、圧迫が浅い心臓マッサージでは、胸壁がきちんと元に戻らないまま、次の圧迫となってしまいます。胸郭が元に戻らない心臓マッサージの場合、心臓に還ってくる血液量が少なくなり、せっかくの心臓マッサージも循環の補助の役割を果たしていないという結果がでました。 そのため、今回の改正では、心臓マッサージは「強く!速く!」(Push・Hard&Push・Fast!)という結論に至りました。 ただし、あまりに速い心臓マッサージでは、胸壁が元に戻る時間が無くなってしまい、効果がありませんので、現行のとおり100回毎分の心臓マッサージを正確に実施することが推奨されています。 (4)心臓マッサージと人工呼吸の比率は30:2に。 心臓マッサージの回数が30回になりましたが、研究の結果、心臓そのものを栄養している冠動脈の循環血流量の圧力が平均で20mmHgを超えていた場合は、超えていない時と比べ蘇生率が高かった事が挙げられています。 判りやすく説明しますと、心臓そのものを栄養する冠動脈は、人体の他の臓器と異なり心臓が拡張している時(血液を送り出し、元に戻ろうとする時)に流れます。 ですから、冠動脈の血流量は心臓の拡張期血圧(いわゆる下の血圧)に依存されており、従前の15回の心臓マッサージですと、ちょうどいい拡張期血圧となった頃に15回の圧迫が中断されてしまい、2回の呼気吹き込みになってしまっているという研究結果が発表されました。 このことから、心臓マッサージの回数を倍の30回にして、拡張期血圧を維持し、冠動脈血流を蘇生効果の高かった平均20mmHgに維持しようというのが、今回の改正の大きな理由です。 前項で説明した、「胸壁をしっかりと元に戻す」ことも、ステップ4でご説明した、「1秒間に1回の呼気吹き込みで、胸部が少しでも上がれば心臓マッサージに移行する。」という事も、なるべく心臓マッサージの中断時間を短くして、この「冠動脈血流量」をできるだけ有効に保つ事が大きな目的なのです。 (5)心臓マッサージ開始時の心臓位置の探し方が変更。胸部の中央部分を圧迫。 以前では、肋骨の縁を指でなぞり、胸骨に至り心臓の位置を探していましたが、「乳頭部を結んだ線の胸部中央」と変更となりました。 これも、前項で解説したとおり、いち早く心臓マッサージに着手できるように簡単な探し方に改正されたものです。 (6)人工呼吸の回数が減り、呼気吹き込み量も減っていますが、脳の機能維持に必要な体内の酸素化は大丈夫なのでしょうか? 前項で説明のとおり、いち早い心臓マッサージの開始が主眼となり、それまで重要視されてきた脳への酸素供給の手段である人工呼吸が軽視されているように思えますが、この改正にもきちんとした医学的な根拠に基づいて改正されています。 心臓突然死の原因の多くは、突然の「心室細動」が原因であるといわれていますが、こうした突然に意識を失い倒れるケースでは、倒れる直前まで、正常に呼吸しているため体内には多くの酸素が残存しています。(体内残存酸素) また、心臓マッサージ中の血流量を見てみると、体内の血流循環量は正常時の約30%、脳への血流循環も正常時の30〜40%であることから、脳で使用する酸素も通常の30〜40%で十分にカバーでき、最初の人工呼吸でも、軽く胸が挙上する程度の吹き込みで十分に体内残存酸素を活用することができ、脳の酸素供給もカバーできることから、人工呼吸は1秒1回となり、より速い心臓マッサージの開始を重要視する改正となりました。 (7)心臓マッサージだけでも有効なのでは? それならば、心臓マッサージのみでも、蘇生に有効なのではないかという意見もありますが、心臓マッサージを5分間実施すると、先にご紹介した「体内残存酸素」が不足してくるという説もあり、人工呼吸せずに心臓マッサージのみを実施した方が良いという医学的根拠はまだありません。 ただ、人工呼吸も心臓マッサージも、何もしなかった群に比べ、例え心臓マッサージだけでも実施していた群の方が蘇生率は高く、第三者に実施する場合や「感染の危険」などの様々な理由で人工呼吸が実施できない場合には、心臓マッサージだけでも有効であることは立証されています。 (8)効果的な心臓マッサージを実施するために、複数の救助者がいる時は、適宜交替しましょう! 30回と倍増した心臓マッサージを前記のとおり、胸壁をきちんと戻しながら100回毎分で「強く、速く」効果的に実施するためには、適宜交替することが重要です。 救助者が一人しかいない時はやむを得ませんが、周囲に救助者が複数いる場合は、概ね2分(5サイクル)を目途に、心臓マッサージ実施者を交替しましょう。 一般の救助者が、疲労した状態で毎分100回の有効な心臓マッサージを継続し、維持することは、とても困難です。「強く!速く!」有効な心臓マッサージを実施するため、適宜交替して実施しましょう。 以上のことから、バイスタンダーCPRの実施時において重要な事は・・・・ ●効果的な心臓マッサージの実施 毎分100回の心臓マッサージの維持と胸壁の確実な戻し(リコイルと言います)による 「強く!速く!」(Push・Hard&Push・Fast) ●CPRの早期着手、できるだけ早期に心臓マッサージを開始! ●効果的な心臓マッサージの継続(絶え間ない心臓マッサージ) ・・・とは言え、心臓マッサージの手技は、その知識が全く無い状況下において実施する事は、とても困難な事です。 しかし、きちんと訓練をして、そのコツさえ理解してしまえば、誰でも容易に効果的な「心臓マッサージ」を実施する事ができます。 正しい効果的な心臓マッサージが、その後の「AED」による除細動での心拍再開率を向上させます。あなたの大切な人を守るために、効果的なCPRの知識と技術を身につけるために、一人でも多くの方に救命講習会を受講して欲しいと思います。 ステップ7・8・9・10〜「AEDによる除細動」 「AED」による除細動についても一部変更がありました。早期に「AED」を取り寄せることは今までと変わりはありませんが、「AED」を準備し、除細動を実施するまで、そして「AED」による初回除細動実施後の対応が少し変わりました。 (なお、ステップ7の波形解析については、一般救助者が使用するAEDでは機器が自動解析するために割愛となります。) まず、「AED」が現場に到着するまでの時間経過が重要なポイントになってきました。 今までは、全てのケースにおいて「AEDファースト」とされており、「AED」が到着しだい、直ちにCPRを中断し、まず除細動を実施していましたが、今回からは、「AED」が現場に届くまでの時間経過がキーポイントとなっています。 この医学的根拠となったのが、ノルウェーのオスロにおける臨床統計の結果です。 この統計によると、「AED」が5分以内に到着した場合では「CPRファースト」と「AEDファースト」の差はありませんが、バイスタンダーCPRの開始に5分以上を要した場合には、「CPRファースト」を実施してから除細動を施行した方が心拍再開率が高いという結果となりました。 「AED」が除細動が必要かどうかを自動解析する「心室細動」の波形は、その振幅が大きければ大きい程、除細動を実施した際の心拍再開率は高くなりますが、振幅が小さくなった心室細動波形(FineVF:ファインVF)では、心拍再開率はあまり良くありません。 しかし、この振幅の小さい心室細動(FineVF)が、「心臓マッサージ」を実施することにより、振幅の大きな心室細動波形(CoaseVF:コースVF)に変わり、その後に「AED」を使用した方が心拍再開率が高いという結果が出ました。この統計を根拠とし、今回の改正が実施されました。 誰かが倒れた時、すぐにバイスタンダーCPRを開始し、間もなく到着した「AED」を使用する場合であれば、今まで通り「AEDファーストとなりますが、発見が遅れた場合、または倒れた時間が判らないような場合は、まず2〜3分間のCPRを実施してから「AED」を使用する事になってきます。 また、今までは、除細動は初回から「連続3回」実施していましたが、現在使用されている「AED」は、そのほとんどが二相性(電気が双方向に流れる)であり、「二相性AED」の初回除細動成功率(心室細動が取り除ける率、心拍再開率とは別のものです。)は85%という高確率であり、2回目、3回目と除細動の回数が増えるごとに心拍再開率が低下することが明らかになりました。 3回連続して除細動を実施することにより、3回の除細動によって、CPRを約3分もの間、中断しなければならないことの方が傷病者にとってのリスクが高く、初回の除細動実施後、すぐに有効な心臓マッサージを開始し、より除細動成功率が高い、振幅の大きな心室細動(CoaseVF)にしてから除細動を実施した方が、救命効果が上昇するという観点から、初回の除細動を実施後は、解析の結果を待つことなく、直ちにCPR(心臓マッサージ)を開始(5サイクル:約2分間)する事になりました。 しかしながら最大の問題点は、現在普及している「AED」のほとんどが「ガイドライン2000」に対応したプログラム(初回から3回連続して除細動を実施する。)となっていることです。 この「AED」のプログラム書き換えには、今しばらく時間がかかると思いますので、当分の間は、発見からバイスタンダーCPR実施までは「ガイドライン2005」で、「AED」を準備してからは、その「AED」にプログラムされた音声ガイダンスの指示に従って除細動を実施することになると思われます。 その理由として、連続3回の除細動実施がプログラムされたAEDの場合、すぐに心臓マッサージを開始した時、「解析します。離れて下さい。」のアナウンスがあり、救助者が混乱をきたす事、また、錯綜し混乱した救急現場において、それぞれのガイドラインで複数の救助者が活動した際、充電した後、まだ心臓マッサージの実施者がいるにも関わらず、除細動ボタンが押されてしまうという危険性があるからです。 であれば、CPRは「ガイドライン2005」に準じて実施し、AEDは、そこに設置されたAEDのプログラムに従い、除細動を実施することが現時点ではベターであると私は思っていますので、使用するAEDのプログラムを十分に理解し、使用するようにして頂きたいと思います。 いずれにしても、新ガイドラインのメインテーマである「心臓マッサージ」を正確に、「強く!速く」(Push・Hard&Push・Fast)実施し、「AED」の早期除細動処置に繋いでいくことには変わりはありませんし、この両輪があってこそ、「命のバトン」をつないでいくことになります。 下記に、今ご紹介した「新ガイドラインでのBLS」の一連の流れを掲載しますので、参考にして頂きたいと思います。 ガイドライン2005:バイスタンダーによるBLS(一次救命処置)の流れ @傷病者発生!「あっ人が倒れた!」 ![]() 目撃があり、すぐにバイスタンダーによるBLSが開始さ れた場合は、世界的にも高い確率で救命されています。 こんな場面に遭遇したら・・・どうか、勇気を出してBLS に着手して欲しいと思います。 A呼びかけて「反応の確認」をします。 (ステップ1〜反応・体動の確認) ![]() 肩を叩きながら、「もしもし!判りますか!」(3回程度) 「体動が無い」、もしくは目に見える反応が無ければ「反 応無し」と判断し、すぐに次のステップへ。 B協力者を募れる場合は、大きな声で周囲の人を集め ましょう。 ![]() 「人が倒れて意識がありません!集まって下さい!」 ※この時、「助けて下さい!」と叫ばないように・・・ 「助けて下さい!」という呼びかけでは、集まってくれな い場合が多いと言われています。 C協力者に「119番通報」と「AEDの搬送」を依頼します。 (ステップ2〜119番通報とAEDの取り寄せ) ![]() 「あなた、119番通報とAEDをお願いします。」 ※複数の人が集まってくれた際には、一人に「119番通報」 を、もう一人にAED搬送を依頼しましょう。 ※AED搬送を依頼する際には、「あなたAEDを知っています か?」と確認し、AEDを知っている人に搬送を依頼しましょう。 D協力者が1名の場合は、まず「119番通報」を実施 ![]() 通報時は、「意識が無い」こと、バイスタンダーがCPR を開始していること、「AED」があれば、「AEDを使う」と いうことを通報時に言って下さい。これらは現場に向かう 救急隊にとって、非常に重要な情報となります。 ※携帯電話からの通報時には、傷病者と応急処置を実 施中のバイスタンダーが見える場所から通報しましょう。 ※協力者がいない場合、成人なら119番通報を先に、乳 幼児なら、1サイクル(30:2)のCPR実施後に119番通 報を! E頭部後屈あご先挙上法により、気道を確保し、呼吸状態の確認。 (確認は10秒以内で)「見て(胸部の挙上)、聞いて(呼吸音)、 感じて(呼吸状態)」で判断します。 (ステップ3〜気道確保から正常な呼吸の確認) ![]() 「気道確保」は、全ての場合で「頭部後屈あご先挙上法」 で実施します。 ![]() 「頭部後屈あご先挙上法」 F「呼吸状態の確認」見て、聞いて、感じて・・・ ![]() 「呼吸無し」あるいは正常な呼吸状態でない時(死戦期 呼吸)はすぐに次のステップ(人工呼吸)へ。 ※呼吸の有無が判らない場合は、「呼吸無し」と判断し、 直ちに次のステップへ・・・確認に時間をかけすぎないよう に・・・1秒1秒が貴重な時間です。 F人工呼吸開始(鼻をつまみ、口を大きく開き呼気吹き込み) (ステップ4〜人工呼吸) ![]() 吹き込みは1秒で2回。傷病者の胸部が少しでも挙上 すればOKです。 ![]() 人工呼吸時は鼻をつまんで、少し頭部側に引き上げる ようにすると、口が大きく開きます。 G心臓マッサージの位置確認。左右の乳頭を結んだ線の 中央が圧迫する場所です。 (ステップ6〜心臓マッサージ) ![]() 乳頭部が判らない場合は、胸の中央部を圧迫します。 H心臓マッサージ開始!手を重ね親指の付け根に力を集中。 ![]() 毎分100回のリズムで30回圧迫します。(世界にひと つだけの花のテンポが毎分100回のリズムです。) 毎分80回以下の心臓マッサージでは、効果が低下します。 「強く!速く」(Push・Hard&Push・Fast!) I心臓マッサージの正しい姿勢と要領 ![]() 両腕は真っ直ぐ伸ばし、つま先を立て上半身全体で圧 迫しましょう!正しい姿勢で圧迫すれば疲労しにくくなり ます。この時、しっかりと胸壁を元に戻すこと(リコイル) が重要なポイントです! J30回の心臓マッサージの後、2回の呼気吹き込み ![]() 心臓マッサージの中断時間をなるべく短くするために 呼気吹き込みは1秒1回で、胸が少しでも挙上すれば OKです。終わったらすぐに心臓マッサージ再開! K「AED」が到着しました。まずは、CPR実施者しかAED を使用できない場合の一人でのAED操作要領です。 (ステップ7〜10 AEDによる除細動) ![]() LAEDを受け取ったら、搬送者と心臓マッサージを交替する。 ![]() 交替による心臓マッサージ中断はできるだけ短く! M交代したら、直ちにAEDの準備を開始します。 ![]() NAEDスタンバイ開始!スイッチON! ![]() 蓋を開けると、自動的にスイッチONとなる機種もあります。 Oパッドケーブルのコネクターをしっかり本体に接続します。 ![]() ケーブル接続不要な一体型AEDもあります。 Pパッド装着前に胸部の確認を実施します。 ![]() 発汗などで前胸部が濡れていないか?ペースメーカー などは埋め込まれていないか?貼り薬や貴金属はない か?を確認しましょう。 Qパッドの装着。しっかりと密着させましょう。 ![]() しっかりと密着させないと、通電効果が落ちてしまいます。 Rパッド装着完了。自動解析のアナウンスが開始。 ![]() 自動解析中は、傷病者に触れないようにしましょう。 S除細動適応であればメッセージとともに自動充電開始。 充電完了後、周囲の安全を確認し通電ボタンをON ![]() AEDの操作時、最も注意しなければならない操作です。 通電ボタンを押す前に、必ず周囲の安全を確認しましょう! 新ガイドラインでは、初回の除細動後は、AEDの解析 を待つことなく、すぐに心臓マッサージを再開し、CPRを 5サイクル(約2分間)実施します。 ![]() ※AEDのプログラムが「新ガイドライン対応」でない場合 は、使用しているAEDのメッセージに従いましょう。 ※AED搬送者がAEDを操作できる場合(2人法AED操作) ![]() CPRは継続のまま、搬送者がそのままAEDを準備します。 ![]() パッドをしっかり装着後、自動解析が開始されます。 ![]() 除細動メッセージ後、自動充電開始。充電完了後には 必ず周囲の安全を確認してから通電ボタンを押す。 初回の除細動後は、AEDの解析を待つことなく、すぐに 心臓マッサージを再開し、CPRを5サイクル(約2分間) 実施します。 ![]() ※AEDのプログラムが「新ガイドライン対応」でない場合 は、使用しているAEDのメッセージに従いましょう CPRは適宜交替して実施しましょう! ![]() より効果的な「心臓マッサージ」を実施するため、救急 隊到着までの間、適宜交替(概ねCPR5サイクル)して CPRを実施しましょう! 救急車はあなたのところに向かっています!命のバトン を引き継ぐまでの間、どうか頑張って下さい! 以上が、改正された「新ガイドライン2005」によるBLSとなりますが、地域のMC(メディカルコントロール)協議会での検討により、地域によっての多少の差異があるかもしれないことを予めご了解下さい。 また、先にご紹介しましたとおり、新ガイドラインによるBLSがスタートした後も、国内のAEDプログラムの変更完了までは、しばらくの間、バイスタンダーCPRは「ガイドライン2005」、AEDは「ガイドライン2000のプログラム」というアンバランスな状況が続いていくと思いますが、混在するガイドラインによる危険防止(例えば心臓マッサージ中のAED通電など)の観点から、AEDの操作については、その時に使用するAEDのアナウンスに従う事が現時点でのベターなのかなと思います。 これらの施行方法についても、各地域で若干の差異があるかと思いますので、AEDが設置されている施設関係者の皆様には、どうか新しいガイドラインによる各地域での救命講習会を受講して頂きたいと思います。 このような状況から、今後、各地域で開催される新ガイドラインに基づく救命講習会において、一般受講者の皆様が混乱を生じないような方法を確立する必要性を感じております。受講者の皆さんが混乱を生じないような全国共通の「BLS指針」の作成と、AEDを販売している各医療機器メーカーによるプログラムの早急な改正が現時点での課題であると思います。 こうした課題はありますが、「より高い救命効果」を目指して改正された新しいガイドラインですので、どうか一人でも多くの方に理解して頂き、習得して頂ければと思います。 職場や学校、または地域において救命講習会が実施される際には、どうか積極的に参加し、体験して頂きたいと思います。「習うより慣れる」事が大切であり、慣れておくことが、もしもの時、必ず大きな力になりますから・・・ そして、一人でも多くの方の「命のバトン」がつながってくれれば・・・と心から願っております。あなたの大切な人のために・・・ 最後に、今年も皆様に有用な情報の発信に頑張っていきたいと思いますので、昨年同様、どうぞよろしくお願い致します。(HIGE) |
|
|
| HIGEさんの「スポーツ救命救急」ホームへ |