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「HIGEさんのスポーツ救急救命」 |
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皆さん,こんにちは。HIGEです。管理人復帰後初の特集は「AED・今後の展望と課題」と題してお送りしたいと思います。 ご覧になった方も多いと思いますが、去る10月3日に放送されたNHK「クローズアップ現代」において、明暗がくっきりと別れた2つの「心肺停止事例」が紹介されました。 ひとつは、愛知県で開催され先日閉幕した「愛・地球博」における42歳男性の心肺停止事例です。この男性は偶然居合わせた医学部の学生達がバイスタンダーとして会場に設置されていた「AED」を使用し、心拍が再開、その後の後遺症も無く社会復帰を遂げられました。 もうひとつの事例は、野球練習中の男子中学生が、胸部に打球を受けた際に「心臓震盪」が発生。そのまま心室細動へと移行しました。 この中学校には「AED」が配置されていましたが、その日は「AED」の使用法が判る人がおらず、結局救急隊到着までの十数分間「AED」は使用されませんでした・・・ その結果、一命は取り留めたものの、いまだに意識が回復しないという状態が続いているそうです・・・ まさに明暗が分かれた2つの事例ですが、この中学生のご両親の「AEDがあったのに、使える人がいなかった・・AEDを使っていてさえくれれば・・・」という悲痛な言葉は私の胸に深く突き刺さりました・・・ ![]() 各地に設置されつつある「AED」 以前から、「AED」というハード面を揃えても、それを使用できる「人を育てる」というソフト面を整備しなければ「AED」はただの「お飾り」になってしまうという警鐘を鳴らし続けていた私にとって本当にショックな事件でした・・・・ 「AED」の導入が決定し、昨年7月に一般市民に解禁されたまでは良かったと思いますが、「普及」と「AED」は救命の両輪であり、解禁した後、普及をどうやって推進するのかという具体的な指針や法整備の面は正直大きく立ち後れていると言わざるを得ません。 「普及」についての具体的な方策は各自治体任せとなり、各自治体はといえば・・・その多くは消防機関任せというのが実状です。 実際の救急現場において、バイスタンダーが的確に「AED」を使用できるような指導ができるのは消防機関ですが、その普及の中心となるべき消防機関は、全国的に行政改革の格好の標的となり、人員増もできずに予算は削減され続け、「救命講習会」や「AED講習会」をもっと強力に推進したくてもできないという悪循環に陥っているのが現状ではないかと思います。 しかし「AED」が導入され、一般市民に解禁された事は間違いなく「大きな一歩」ですし、その効果は愛知万博での救命事例が証明しています。 この愛知万博の事例から、「AED」の設置はさらに加速すると思いますが、どうやって「AED」をみんなが使えるようにしていくかというソフト面や、その効果をどう検証し、より効果的なAEDの普及を行っていくのかが大きな課題となってきます。 今回は、その課題と展望について私なりに考察してみたいと思います。 1、【真のAED普及に向けて】 ここからは、私の個人的な考えですが、過去の救命講習などを見ても、やはり「幼年期」や「児童期」における「命の教育」が大きなカギを握っていると思います。 今夏、私達のスタッフが実施した本HPの親HPであるBBT(バスケットボールの家庭教師)主催のサマーキャンプでは「You・Can・Do・AED」と題して、AEDの使用法を含めた救命講習会を開催しました。 この講習会では、「小学校低学年」、「小学校高学年」、「中学生&高校生」の各年代カテゴリーに分けて講習を実施しましたが、レスポンス(反応)や興味の持ち方は、「小学校低学年層」が最も高く、効果的であり、まさに「ゴールデン・エイジ」と呼べるものでした。 ![]() BBTサマーキャンプ2005「You・Can・Do・AED」 の模様(講義編) ![]() BBTサマーキャンプ2005「You・Can・Do・AED」 の模様(実技編) ![]() アメリカでは赤ちゃんの頃からBLSに触れています。 ![]() アメリカの小学生のBLSトレーニング この「ゴールデン・エイジ」の年代において、まず「命の尊さ」を学ぶことからスタートし、さらに高学年に進むごとに、「心肺蘇生法」や「AED講習」を学ぶという段階的な教育は、アメリカのシアトルでも実践され大きな成果を上げていることから、今後このような「命の教育システム」についての必要性を訴えていくとともに、各種の救命講習会でアンケートなどを実施し、その効果などのデータを集積し、検証していきたいと思います。 ・・・とはいえ、「ゴールデン・エイジ」の育成には時間が必要であり、今現在、急速に設置が進んでいる「AED」を効果的に市民が使える方法も考えなくてはいけません。 このHPをご覧頂いている皆さんをはじめ、各地で官民による「AED」の普及活動が展開されていますが、自治体の取り組み方には地域によって大きな温度差があり、地域格差が出始めています。同じ国に住み、同じ税金を納めているのに地域によってその利益が享受されないというのは本当に不公平な事です。 地域格差を無くし、各地での活動の輪をひとつにして、大きく広げていくためには、やはり国レベルでの大規模な広報活動が必要であると思います。 2、【AED普及戦略】 ある商品のCMが爆発的に流行し、そのCMソングやキャッチコピーが社会現象になったという例は過去にたくさんあります。 例えば「タンスにゴ○」とか「亭主元気で留守がいい」とか・・・知らず知らずのうちに、つい口ずさんでしまうのはCMソングであったり、現代は「CM社会」とも言える時代であり、「メディア」という広報媒体をどう活用していくかという事を検討すべき時期ではないかと思います。 いかにも「お役所」という形の従来の「押し付け型」のCMではなく、民間企業のCMのように一流の「CMプロデューサー」や「俳優さん」によるCMを作り、サッカーW杯とかプロ野球日本シリーズなどの多くの人が視聴するスポーツイベントや、高視聴率ドラマが放送される時間帯に、こうしたCMをたくさん流せば、若い世代にも「AED」という言葉が定着し、もっと普及すると思います。 「社会現象」となるその影には、必ず若い世代からの反響や支持があり、今回の衆議院総選挙でも若い人たちの投票が選挙結果を左右していることから、この若い世代にどうやって「AED」を知ってもらい、普及させるかが大きな鍵ではないかと思います。 「え?何でこんなところにこんな大金を使うの?」と皆が首をかしげるようなところに、あきれるほど巨額な予算を投入するのを止めて、CMの方に振り向け、お役所的な発想をほんの少し転換する事ができれば、いくらでもこうしたCMスポットを流し続けられると思うのですが・・・ 3、【救急車の正しい利用】 年々増加し続ける救急件数は、大都市に限らず全国的にも大きな問題となっています。 その多くが「必ずしも救急車を必要としなかった」といういわゆる軽症であり、本当に救急車が必要な現場へ、最も近くにいるはずの救急車が出動できないという状況が全国各地で発生しています。 一例として、東京都を紹介しますが、東京都の救急出動件数は、1976年(昭和51年)以降28年連続で増加しています。平成16年中の救急出動件数は約68万件で、1日平均約1,800件も出動し、実に47秒に1回の割合で出動しています。 救急要請が集中する時間帯では、都内に217台ある救急車のうちの90%近くが出動しているときもあり、救急車が出動してから現場に到着するまでの平均時間は、6分18秒になっており、出動件数の増加や、交通渋滞等に伴い、現場到着までの時間は、ここ5年間で1分近く延びているという実状であり、こうした問題に対し、新聞紙上に下記のような社説が掲載されていました。(青文字は記事抜粋) 「救急搬送急増・頼りすぎ改める工夫を」 救急車の出動件数が急増し、救急隊員からは対応の限界との悲鳴も聞かれている。軽症者の利用に押されて重篤者の救命措置が遅れるケースも目立つ。 高齢化を背景に今後も増加が予測されるだけに、緊急性の高い傷病者から優先的に搬送するための関係機関による創意工夫が必要だ。 総務省消防庁によると、2003年の全国の救急車の出動は約483万件。毎年史上最多を更新し、10年間で1.6倍に増えた。 交通渋滞の影響もあり、現場到着までの所要時間は10年で30秒遅くなって6.3分となった。心肺停止状態の場合、5分以内に救命措置を講じないと生存率が50%を切るといわれており、憂慮すべき状況だ。出動が特に増加しているのは、人口30万人以上の大都市で、高齢者に限らず、成年層、小児層の利用頻度も増している。 救急車で運ぶほどではない軽症者のための出動要請が多いのが問題で、東京都内では過半数を占め、軽症者を搬送している間に重症者への対応が遅れるケースも出ている。 タクシー代わりの利用まで目立つ一方、通報を遠慮して手遅れになるケースも少なくない。 重症者より軽症者が優先される事態を回避するには、まず、病気の種類や症状などに応じた緊急性の度合いについて市民の一人一人が理解し、認識を深めねばならない。 利用のモラルを高めるだけでなく、急を要する患者が遠慮なく要請できるようにするためにも、急病や救急医療についての基礎知識や判断の目安を平素から市民に周知徹底しておくことが必要だ。 関係各省庁は救急医療を充実させるため縦割り行政の壁を取り除き、消防、医療機関、市町村の連携を密にさせねばならない。 東京消防庁は先月、応急手当てのできるドライバーが運転するタクシーを救急車の代わりに急行させる「サポートキャブ制度」をスタートさせたが、成果を見つつ、民間救急の活用範囲を拡大させる工夫も必要だ。救急車利用の有料化も検討すべきテーマの一つだ。 兵庫・尼崎の脱線事故の際、現場近くの市民がトラックで負傷者の搬送を手伝った。負傷者同士が救急車で運ばれる順番を譲り合う光景も見られたという。 実情を知れば、人は優しくなり、謙抑的にもなる。まず、救急搬送を取り巻く現況について人々の理解を求めることが先決だ。(記事抜粋ここまで) 以上が最近の新聞に掲載された社説ですが、こうした実状を踏まえ、消防機関においても「正しく救急車を使って下さい。」と必死のPR活動を展開しています。 しかし、上記の社説でも述べられているように「どういった状態なら救急車が必要で、どういった状況ならば必要で無いのか?」という判断は一般市民の皆さんにとっては、非常に困難な事ではないかと思います。 こうした面からも「幼児期」や「小児期」からの「命の教育」が、いざという場合での緊急度や重症度を判断できる能力を養う事になり、それが適正な救急車利用に繋がっていくのではないかと思います。 せっかく「AED」で心拍が再開しても、救急車の到着が遅れ、酸素吸入処置や人工呼吸などの「次の一手」が遅れてしまえば、後遺症などが残る危険性は増し、完全社会復帰に大きな影響を与えてしまいますから・・・ 4、【民間救急機関の育成と通報時選別システム】 日本とアメリカは「救命率」でよく比較されますが、日本とアメリカにおける大きな違いは、「民間救急」の社会的な貢献度です。 「HIGEさんのスポーツ救命救急・IN・USA」でも書きましたが、アメリカには全米的に活動している「AMR」(American・Medical・Responce)と呼ばれる「民間救急会社」が組織され、緊急度の低い患者さんの搬送はこれらの「民間救急」が担当しています。 ![]() 救命率の向上を支えるシアトル市の民間救急(AMR) 「民間救急」が軽症患者を担当することにより、パラメディックが乗務する消防機関の救急隊は、本当に緊急を要する重篤な患者の待つ現場へ急行でき、いち早い救命処置が可能となっています。 「民間救急」と「パラメディックが乗務する救急隊」のどちらが対応すべきか?という判断については「911緊急通報指令センター(日本では119番指令センター)」のディスパッチャー(通信担当員)に一任され、通報内容から「プロトコール(事前の決め事)」に従い「民間救急」と「パラメディック」のどちらが担当するべきかを選別します。 この「ディスパッチャー」には高度な医学知識や総合的な緊急度、重症度の判断力が要求されることから、パラメディックに次ぐ6ケ月という長期特別研修を受けた者しかできず、シアトル市の救急システムの中枢と言える職務です。 ![]() シアトル市の救急管制を担う911ディスパッチセ ンター(指令センター)のディスパッチャー シアトル市の人口約80万人をたった11台の救急隊でカバーし、なおかつ全米でNo1の30%台の救命率を誇る「救急救命体制」の陰で、ディスパッチャーが行う911通報時(アメリカでは救急要請は911番です。)における「重症度、緊急度選別システム」と「民間救急」の存在は大きな力になっています。 激増する救急件数を「有料化」で抑制するという意見もありますが、もし「有料化」にしてしまったら、本当に救急車を必要とする社会的弱者の方々が救急車を利用できなくなってしまう可能性もあり、こうした事を防ぐためにも、有料化検討の前に、「緊急通報選別システム」や「民間救急システム」の構築を図っていくことが必要なのではないかと思います。 5、【新たな救命ネットワークの構築】 1991年(平成3年)に救急救命士制度が発足し、今年で14年が経過しましたが、それが20年になろうとする頃から、全国の消防機関では多くの救急救命士が「定年退官」を迎える事になります。 現行の「救急救命士法」では、救急救命士の活動の場は、「救急現場」と「救急車内」に限定されているため、定年退官する救急救命士達は退官とともに活動できる場を失う事になりますが、これって、すごくもったいない事だと思います。 こうした方々の「知識」や永年の「経験」こそ、今後の「救命講習の普及」や「AED普及推進活動」、「民間救急の育成」などに必要な力なのではないかと私は思っています。 ほんの一例ですが、こうした方々がそれぞれの地元小学校の非常勤講師として、先ほど私が述べた「命の教育」を担当したり、各消防機関の「救急選別ディスパッチャー」や「民間救急」などに携わってくれれば、きっと大きな力を発揮してくれるのではないでしょうか。 そして、こうした人材をどんどん活用することにより全国的な「救命のネットワーク」をもっともっと大きく拡げていけるのではないか・・・と個人的に感じています。 そんな中、こんな記事がネットニュースに出ていました。(青文字は記事抜粋) 【消防職員が非常時ボランティア 鈴鹿で「FAST」結成】 鈴鹿市消防職員協議会は、大規模地震の発生などで緊急車両が通行不能になった際の現場の情報収集や、駅伝など市内のイベントでの応急手当てに取り組むボランティア「FAST(ファスト)」を旗揚げした。消防職員によるこうしたボランティア結成は珍しい。 協議会は同市消防本部の管理職以外で組織し、消防や救急講習開催や福祉施設でボランティア活動をしている任意団体。救急技術や知識を生かした市民サービスをと、「FAST」を組織した。FASTは、応急的な手当や救護をする組織という意味の英語の頭文字。同協議会の152人全員がメンバーだ。 ミニバイク7台を購入し、市内の6消防署に配置した。会員は「海外のマラソンなどは、いざという時に自動体外式除細動器(AED)を使って救命活動をしている。会員は全員がAEDの指導員資格を持っており、駅伝などで要望があれば、非番の会員で対応したい」と話す。 FASTは11月30日に開催される市内小学校の校内マラソンに会員を派遣するほか、12月18日の鈴鹿シティーマラソンにも応急手当てボランティアとして参加する。 FASTの代表者は「ボランティアで少しでも市民の安全、安心に役立てれば、というのが会員の思いです」と話している。 こうした、ボランティアの結成は素晴らしい試みだと思いますし、官民の垣根を取り払った「地域の救命ネットワーク」の先駆けとしての活躍を期待しています。 このように、「AED」を効果的に活用し、「救える命を救える社会」にしていくためには、まだまだ幾多の課題が存在していますが、乗り越えられない壁は絶対に無いと思います。 絶対に不可能だと思われていた「AED」が日本に導入され、一般の皆さんに解禁されたんですから! これらの壁を一気に乗り越えようとせず、今まで通り、ひとつずつ、一歩ずつ自分のできる事から頑張っていきたいと思いますし、今回のような「提言」をこれからも訴えていきたいと思います。皆さんもそれぞれの地域で、それぞれのお立場で、今できる事から頑張っていきましょう!皆さんの一歩は必ず大きな一歩になりますから! そして、日本のどこにでも当たり前のように「AED」があって、当たり前のように使用して救える命をみんなで救う事ができる・・・・ そんな「当たり前の社会」になるように頑張っていきましょう!(HIGE) |
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