梅雨から夏に備えて・・・
「熱中症」とその応急手当について(その2)

「第3回」では,これからの季節に多発する「熱中症」の病態とその一般的応急手当についてご紹介しましたが,今回はさらにその実例を紹介して,予防のポイントについてご紹介します。

1 【熱中症の事例】

 昨年の8月に発生した事例です。
 真夏日が連続していた,晴れたり曇ったりの午後3時頃に発生。発生時の気温は29度でしたが,湿度の大変高い蒸し暑い日でした。事故現場は,ある工事現場で,朝から下水管を埋設するため,土砂の掘削作業をしていた37歳の男性が倒れたという119番通報により救急出場しました。
 現場に着くと,男性は同僚により日陰に運ばれ,横になっていました。
 意識はもうろうでしたが,なんとか会話はでき,両大腿部から下腿部のケイレンと頭痛を訴えていました。そのため,「2度(前回参照)熱中症」と判断し,同僚に水分の摂取状況などを聞くと,ヤカンを指さして「これを適宜飲んでいた」との事でしたので,中身を確認すると「麦茶」が入っていました。また,前日は飲みに行っていたらしく,睡眠時間もあまり取れていないことも判明しました。
 その後,すぐに救急車に収容し,検温したところ,体温は40度という高温だったことから,車内のクーラーを全開にして,頸部(首),大腿部(もも),腋下(わきの下)の各動脈を冷却バックにて冷却し,直ちに近くの医療機関に搬送。搬送後,すぐに輸液(点滴)が開始され,この男性は,幸いにして2日程度入院の後,退院となりました。

【この事例のポイント】
1,この事例では,水分は適宜摂取していたものの,煮出した麦茶のみでした。汗として水分が体外に流れる時,体内のNa(塩分)も汗と一緒に放出されています。しかし,この男性は塩分の含まれていない麦茶を飲み続けていたため,水分は補給されていたものの,塩分が全く補給されておらず,そのために体内の電解質バランスが崩れ,「熱中症」に陥ったものと思われます。
  このことから,単に「水分」のみを補給していればいいという考え方は誤っているということが判ると思います。
  もし,この男性がスポーツドリンクを適宜摂取していれば,十分予防することができた事例です。
 
2,この事例では,同様にヤカンの「麦茶」のみを摂取し続けていた他の同僚は「熱中症」にならず,この男性のみが「熱中症」に陥りました。
  事情を聞くと,この男性は前日,飲みに行って睡眠時間は少なかったようです。このように,睡眠不足や体調不良が「熱中症」を誘発する引き金になることが判ると思います。

【まとめ】
 以上のことから,熱中症予防のポイントについてまとめてみます。
 
(1)体調不良,睡眠時間の不足は要注意!
  夏休みになると,子供たちは夜更かしをすることが多くなりますから,睡眠時間が不足しがちになります。練習や試合の前日はなるべく睡眠時間を取るように,子供達や保護者に指導することが大切です。
  また,練習開始前に子供達の様子を見ておくこと。体調不良時は我慢せずに申し出るように指導しましょう。(我慢強い子は,「熱中症」になるケースが多いという報告もあります。)
 
(2)水分&塩分補給を!
 塩分を含まない「麦茶」や「ジュース類」では無く,水分と同時に塩分の摂取できるスボーツドリンクを補給するように指導しましょう。
 また,補給のポイントは「渇き」を感じる前に摂取させることです。定期的に「水分&塩分補給タイム」を設けましょう。30分〜40分ごとに1回の補給が一般的ですが,天候に関わらず,湿度の状況や練習の内容,さらに子供達の疲労度,体力差などによって適宜指示して補給させることが必要です。ただし,飲み過ぎるとお腹を壊しますから,ほどほどに・・・(笑)。
以上,事例から学ぶ「熱中症」予防のポイントでした。

★平成14年の東京都内における熱中症の発生状況★
  (東京消防庁HPより)
このグラフは平成14年7月〜8月の熱中症による救急搬送件数と気温の関係です。気温が高くなるときは熱中症発生件数も多く、注意が必要なのがわかります。

このグラフは搬送された方の年齢別・男女別を示したものです。10代から30代、そして50代の男性が多いことがわかります。若い人や働き盛りの年代の方、スポーツや労働の機会が多い人たちは特に注意が必要です。

 このグラフは搬送された人の程度別を表したものです。軽症・中等症が多くなっていますが、少数とはいえ重症以上の搬送もあることから、決して軽く考えてはいけないことがわかります。

HIGEさんの「スポーツ救急法」ホームへ