2006・AED普及推進運動スペシャル

HIGEさんの出張救命講習会
2006夏特集@

「トトロキッズ」出張BLS講習会レポート!
  

 こんにちは、HIGEです!今回から始まる「特集」では、この夏に私がお邪魔させて頂いた「HIGEさんの出張BLS講習会」の模様をお送りしたいと思います。
 その第1回目は、7月にお邪魔した東京都東村山市のミニバスケットボ−ル・チーム「トトロキッズ」の保護者の皆さんを対象に実施した「出張BLS講習会」の模様をお届けしたいと思います。

 今回の「HIGEさんの出張BLS講習」のご依頼者は、「トトロ・キッズ」保護者代表の「Oさん」からでした。「HIGEさんのスポーツ救命救急」HPの親HPである「バスケットボールの家庭教師」の代表、よしかずさんを通じてのご依頼で、毎年、梅雨明けの時期から多発する「熱中症」と、バスケットボールの練習や試合中に起こりやすい外傷、特に骨折に対する処置についての講習のご依頼を受け、出張BLS講習会の開催となりました。

 JR新秋津駅に着くと、保護者の方がお迎えに来て下さり、車に乗せて頂き、会場に到着しました。 皆さんへのご挨拶を行った後、早速講習会の開催となりましたが、まずは、「熱中症」についての講義から開始となりました。

          
          出張救命講習開始、まずは「熱中症」のお話から・・・

 都市の「ヒートアイランド現象」により、「熱中症」は年々増加しています。
 重症例では「生命」に危険を及ぼす場合もありますが、正しい知識と対処法を知ることにより、そのほとんどは予防できる病態であることから、まずは「熱中症」の基礎知識から講義を開始しました。

1、熱中症の基礎知識

(1)梅雨明けから多く発生する。
(2)「温度」よりも「湿度」が大きく関係し、特に、梅雨明け直後や梅雨の晴れ間に多い。
(3)最初は軽い症状から始まるが、そのままにしておくと、どんどん症状は悪化する進行性の病態である。
(4)急激に進行すると、最悪の場合、「生命」に関わることがある。

※「熱中症」は、外気温が高い事により発生すると思われがちですが、その発生に大きく関わってくるのは、「温度」よりも、むしろ「湿度」に左右されます。
特に、湿度が高くなる体育館を使用するバスケットボールなどの「インドア・スポーツ」では、その発生危険も高くなることから十分な注意が必要となります。

2、熱中症の発生状況

(1)0歳〜9歳までは、親の目が離れた車の中などでの発生が多い。
(2)10歳代〜20歳代はスポーツ中の発生が多い。
(3)30歳代〜50歳代は屋外での仕事(作業)中の発生が多い。
(4)60歳代以上は自宅での発生が多い。(冷房をかけない。あるいは冷房設備無しによる脱水症状から発症する。)

※毎年夏になると、パチンコに夢中になり、幼い我が子を密閉した車内に置き去りにして死亡に至るという、悲惨なニュースが報道されていますが、こうした死亡事故も「熱中症」によるものです。
また、60歳以上の高齢者の方は自宅で「熱中症」となるケースが非常に多いのが特徴です。一人暮らしの高齢者に多く、「冷房が嫌い」であるとか、「電気代がもったいないからエアコンは買わない」という理由に加え、「水分を取ると汗をかいて余計に暑くなる。」
であるとか「トイレが近くなるから」という理由から、「熱中症」となり、発見が遅れ死亡するケースもあるので、十分注意しなければいけません。

3、「熱中症」が発生するメカニズムについて

(1)湿度の高い蒸し暑い中で激しい運動をすると、大量の発汗が起きますが、発汗した 汗が高い湿度のため乾きにくくなります。
また、汗の中には、体に必要な塩分(Na、Cl)も入っていますが、この塩分が汗と一緒に体の外に出てしまいます。
この時、塩分が含まれていない「水」や「麦茶」だけを飲み続けていると、体内の塩分はどんどん薄くなってしまい、体液のバランスが崩れて、気分不快感、頭痛、手足がつったり、ケイレンしたりしますが、これらが「熱中症の最初」の症状であり、「T度熱中症」と呼ばれるものです。

●T度熱中症→体温は38度以下、発汗はあり。直ちに運動を中止し、涼所にて休息し、スポーツ・ドリンクの摂取後、医療機関へ。

(2)次に、汗がかわきにくくなると・・・汗が乾く時、運動などで上がった体温を蒸発させる際に下げる働きがあり、これを「気化熱」といいますが、湿度が高い時には、汗が乾かずにダラダラと流れてしまいます。
こんな時は、「気化熱」により体温を下げる働きができず、体温はどんどん上がってしまいます・・・人の「延髄」と呼ばれる場所には、体温を常に一定にする働きを司る「体温調節中枢」がありますが、体温が上がりすぎると、自動車のエンジンがオーバーヒートしてしまうのと同じで、この仕組みが破綻してしまいます。
「体温調節中枢」の破綻は生命に関わる危機を招きますが、「U度熱中症」、「V度熱中症」になると、体温調節中枢の機能低下や破綻をきたします。

●U度熱中症→体温40度以下、発汗あり、皮膚蒼白となり軽度の意識障害(意味不明の言葉を発する。)

●V度熱中症→体温40度以上、発汗なし、皮膚紅潮、意識障害。

※U度熱中症は、そのままにしておくと、容易にV度に進行するため、U度の段階と判断したら直ちに救急車を要請しましょう。

4、「熱中症」は、体調にも大きく左右されますが、「熱中症」になりやすい体調とは?

(1)睡眠時間の不足
(2)久しぶりの練習や試合の時は要注意!
(3)風邪をひいている時
(4)下痢をしている時(脱水気味の時は、危険度大)

●こんな症状が出たら練習は中止しましょう!
(1)頭痛がする。
(2)気持ちが悪い。(嘔気・嘔吐)
(3)手足がケイレンする。
(4)手足がつる

●上記の症状は、「T度熱中症」の症状です。涼しいところで休息し、スポーツドリンクを飲めば大丈夫ですが、進行する場合もあることから、病院には必ず行きましょう!
●我慢強く、練習を休みたがらない子がなりやすいため、注意しましょう!

5、「熱中症」を防ぐために、どうしたらいいのでしょうか?

(1)夏休み中は夜更かしする事が多くなりますが、練習や試合の前は早く寝かせて、十分な睡眠時間を取らせましょう。
(2)練習や試合では、「水」や「麦茶」のように塩分の含まれていないものでなく、必ずスポーツドリンクを飲ませましょう。
(3)風邪をひいている時や、下痢や吐いたりしている時には、無理に練習をせずに休み ましょう。
(4)練習中や試合中、気分が悪くなる、頭痛がする、手足がケイレンしたり、つった時は絶対に我慢をせず、すぐに保護者やコーチに申し出て、涼しい場所で休息し、スポーツドリンクを摂取しましょう。(スポーツドリンクの小腸での吸収最適温度は、摂氏5度)

6、「熱中症」が発生した時の応急手当

(1)体温計(耳孔式電子体温計)を常備し、体温を測定し、「熱中症」の進行度を判断する。体温である程度の進行状況が判断できます。
(2)T度の場合は涼所休息、スポーツドリンク摂取し継続観察しましょう。
(3)U度・V度、または「意識障害あり」の時は迷わず直ちに119番すること!

●救急車が来るまでにできる応急手当は・・・

 冷房を全開にして十分に冷えた車に乗せる。瞬間冷却剤(冷えっぺ)を使用し、頸部、脇の下に当て、太い動脈を流れる血液を冷やし、飲水が可能の場合にのみスポーツドリンクを飲ませる。(意識が無い場合は飲ませてはダメ!)
●梅雨期、夏期は「耳孔計測式電子体温計」や「瞬間冷却剤」を常備しておきましょう!

7、「熱中症」事例について

今回の講習会の開催前、私がミニバスケットボールの審判員として出向していたある大会で熱中症事例がありましたので紹介します。

 その日は朝からとても蒸し暑かったので、大会の主催者に対し、「熱中症の危険日ですから、十分気を付けるようにして下さい。」とお願いをしていた中で、8歳の女の子が急に39度の発熱を起こしたという知らせを受けました。
 知らせを聞いた私が女の子の元に急行すると、風通しが悪く、蒸し暑い場所に保護者数名に付き添われて女の子が寝かされていました・・・
 呼びかけてみると、幸い女の子の意識はしっかりしておりましたが、汗をあまりかいていない状態であり、熱が39度という高熱だったため「U度・熱中症」の初期状態と判断し、直ちに女の子を冷房を全開にして冷やした車に移動させ、スポーツドリンクを与え頸部と脇の下を冷やすように指示し、近接の総合病院に受診の手配をして、そのまま直行させました。

病院での診断結果はやはり「熱中症」でしたが、まだ初期であったため点滴をして帰宅できたとの事でしたが、もし、あのままあの場所に寝かせていたら、さらに症状が悪化し、重篤な状況になっていたかも知れません・・・
女の子に聞いてみたところ、ちょっと前から気分の悪さや頭痛があったそうで「前駆症状」が出ていましたが、保護者は「風邪だと思いました・・・」との事であり、あれほど試合中に何度も、「熱中症には注意して下さい」とお願いしていたにも関わらず、チームの保護者や指導者にこれほど「熱中症」の知識が無いとは・・・と愕然としました。

少なくとも子供達のスポーツに関わる指導者には、子供の安全を守るための最低限の知識は必要であり、「給水タイム」や「温度と湿度によっては、大会の中止も辞さない」というサッカー協会の基準と比べると、ミニバスを含めたバスケットボールの安全管理と危機管理体制は全く遅れていると感じるとともに、「もっともっと知らせていかないといけない。」と強く感じました。

「BLS」も「AED」もそうですが、「まず知ってもらう」事から、始めなければいけないんだな〜とまたまた痛感した事例でしたが、何はともあれ、この女の子が大事に至らなくて本当に良かったです。
 もちろん、指導者と保護者には、よ〜くお話しをしてきましたが、果たしてどこまで理解してくれたのか・・・でも、「知らなかった」の悲劇だけは、絶対に起こして欲しくないですからね。「うるさいオヤジ」と思われても、さらにしつこく、声を上げて訴え続けていきたいと思います。また、「熱中症」は、9月〜10月にかけても発生しますので、真夏の盛りを過ぎたからといって安心はできませんので、十分注意なさるようお願い致します。

7、骨折の知識及び応急処置

 「熱中症」のお話のあとは、外傷のお話に移りました。外傷にも様々な外傷がありますが、今回のご要望はバスケットボールの練習や試合中に比較的発生しやすい「骨折」に関する基礎知識と、スポーツ現場でできる応急手当という事から、「骨折」に関するお話をさせて頂きました。

 骨折時の特徴としては、以下のような症状や訴えが多く、判断の材料になります。
@負傷部位の強い痛みの訴え
A負傷部位の腫れ、変形
B疼痛による可動困難
 以上の場合には「骨折」が疑える。骨折時は、造血組織である「骨髄」が損傷している場合もあり、外からは見えない出血があると考える。例えば前腕骨で約300〜500ccの出血、大腿骨で約1000〜2000ccの出血が想定されます。

 前記のとおり、骨髄(造血器官)損傷により、損傷した「骨」そのものからの出血がある。
また、骨折した骨端による周囲の血管損傷の危険にも注意が必要となりますので、骨折が疑われる場合は、出血や骨端による血管損傷防止、さらなる動揺による出血や血管損傷の防止と、疼痛を緩和するための「固定処置」を実施して医療機関へ行く、救急車を呼ぶなどの応急手当が必要です。

 特に、上腕骨(俗に言う「二の腕」の骨」や「大腿骨」など、主要な太い骨が折れていると考えられる場合、また、骨折の可能性があり、顔色が悪くなってきた・・・悪心や気持ちの悪さを訴えている時には、迷わず救急車を呼ぶようにしましょう。
 以上のようなお話をさせて頂きました。また、スポーツ現場でできる簡単な固定法として、以前、「HIGEさんのスポーツ救命救急」にUPした骨折処置について画像を交え、紹介させて頂きました。(「骨折時の応急手当」はこちらです。)

 以上、今回、ご要望を頂いた「熱中症」と「骨折」に関するお話の後、「心臓震盪」や「心肺蘇生法(CPR)」、「AED」、そして私達の「願い」である「命のバトン」についてのお話をさせて頂きましたが、皆さん最後まで終始真剣に私の話を聞いて下さり、本当にありがたいと思いました。

 特に、全国で「同じ悲劇を繰り返してはならない」という「想い」でご活動をなさっている「さくらさん」、「うぶみさん」、「達人の相棒さん」、「心臓震盪から子供を救う会」の皆さんのお話をさせて頂きましたが、お子さんを持つ保護者の皆さん達は我が事のように、真剣にお聞きになってくれました。
 そして、講習中に「次回は是非、「CPR」や「AED」についての講習会も実施して欲しい。」という嬉しいご要望を頂きました。

 次回の出張救命講習会については、まだ未定ですが、近いうちにもう一度お邪魔したいと思います。皆さんの街にも、ご要望があれば伺いますので、気軽にトップページからメールして下さいね。
 安全なスポーツ現場を目指し、「命のバトン」を一緒につなげていきましょう!(HIGE)

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