HAPPY NEW YEAR 2004
シアトル市内の散策中にあった「シアトル第5消防署」 (撮影 HIGE)
シアトル市内の散策中にあった「シアトル第5消防署」 (撮影 HIGE)

2004 新春特別企画(PART・1)「Hさんからの手紙」

皆さん,新年あけましておめでとうございます。
本年が,皆さんにとって良い一年となりますよう,心よりお祈り申し上げます。
「HIGEさんのスポーツ救命救急」も,昨年以上にパワーアップして,皆さんにいろいろな企画や情報をお届けしていきたいと思いますので,本年もどうぞよろしくお願い致します。

さて,「HIGEさんのスポーツ救命救急誕生秘話」でもご紹介致しましたが,2002年の暮れに「A市バスケット・ボール大会」の審判中に意識を失い,心肺停止状態に陥った後,「救命の鎖(チェーン・オブ・サバイバル)」のリレーにより,見事に社会復帰をなさった「Hさん」から,私(HIGE)あてに手記を寄せて頂きました。

今回は,「新春特別企画PART1」と題して,「Hさんからの手記」を皆さんにご紹介させて頂きたいと思います。

「Hさんからの手紙」

青文字はHさんからの手紙】

天井のライトのまわりをいろいろな模様がぐるぐると回っています・・・・
(なんて綺麗なんだろう)・・・と思いながら、我に返ったらそこは病院のベッドでした。
「ここはどこだろう?ひょっとしてくも膜下出血かなにか?」と,頭をなでても手術をした様子もないし・・・でも喉には人口呼吸器の管が挿入されている・・・
しばらくすると看護師と医師,そして家内がそばに来て、医師から「Hさん,目が醒めたようですね。わかりますか?」と声をかけられました・・・

「Hさん,私の手を握ってみて,脚を上げてみて。」との医師からの問いかけに,言う通りに医師の手を握り,脚を上げました。
さらに,喉に入っていた人口呼吸器の挿入管を外してもらい「数えてみて。」との問いかけにもあたりまえのように数を数えて返答しました。
すると医師は,「Hさん,本当によかったね。脳に何らかの障害が残るかもしれなかったのに,まったく問題がないようだ。本当によかった・・」と話しています。
(やはり倒れたのだ・・・だけど原因は何?)
私が尋ねると医師が教えてくれました・・・「心室細動」を起こし心肺停止状態になってA市大学病院へ運び込まれ、10日の間「※低体温療法」のために意識がなかったとのことでした。

(※低体温療法とは・・・蘇生成功後は,急激に脳への血流が増大し,脳圧が上がるため,四肢のマヒなどの後遺症が残ることがあり,これを「蘇生後脳症」という。
この「蘇生後脳症」を防止するため,一定の期間全身麻酔による低体温状態を保ち,段々と体温を上げて復温し,脳への負担を軽減させ,後遺症を防ぐ治療法。)

「心室細動」は、高円宮様が亡くなられた他、最近では、サッカーのコンフェデ杯でカメルーンのサッカー選手がプレー中に突然死亡するなど,「突然死」の原因として皆さんもよくご存知だと思います。
心臓は全身に血液を送り出すポンプで,休むことなく1日に約10万回もリズミカルに拍動を繰り返しています。「心室細動」は、突然心臓がリズミカルに拍動できなくなり,心室の筋肉が勝手バラバラに興奮を始めた状態を言います。
脈拍は1分間に150から300回と増え、一度「心室細動」になると、心臓のポンプ機能は停止し、血液の流れが止まります。
3〜5秒でめまいが起こり、5〜15秒で意識を失い、3〜5分続くと脳死の状態になるといわれています。「心室細動」が一旦起こると自然に回復することはほとんどなく一刻も早く心臓への電気ショック(除細動処置)をかける必要があります。
私の場合もミニ・バスケットボールの審判中に気分が悪くなり、コートの外で休んでいるうちにそのまま気を失ったらしいのです・・・
運良く,すぐ近くに同じく審判をやっている現役のA市消防署救急隊員であるHIGEさんがいて、すぐに呼吸や脈の状態を確認するとともに,「心室細動」であると判断し、救急車が来るまでの間、心臓マッサージと人口呼吸の心肺蘇生法を実施してくれたそうです。

この迅速な処置、また到着した救急車の救急救命士の方が、昔,HIGEさんと一緒に救急車に乗っていたパートナーであり,情報伝達と処置がスムースにおこなえたこと、すぐに救急車内で電気ショックによる「除細動処置」を受けたこと、さらに、すぐ近くの設備や医師などが充実しているA市大学病院へ搬送されたことなどの「幸運」がいくつも重なり、私は助かったのです。

私自身は、倒れた時そして、その当日の朝からいったいどのようにして試合会場へ行ったのか等,今だに全く記憶がなく、体力にもある程度の自信がありましたので、まさか自分がそんな重大な事態になっていたなんて,すぐには信じることはできませんでした・・・

後日、HIGEさんや,現場にいた方々から,直接その時の状況を聞き、初めて恐ろしさと運の良さを実感することとなりました。
これがもし、車の運転中だったら・・・あるいは,誰もいない所で倒れていたら…おそらく死んでいたことでしょう・・・残された家族のことを思うと今でもぞっとします。
ちなみに主治医が言っていましたが、心肺停止となった後、完全に社会復帰できる人は稀で1%もいないそうです。

 意識が回復してからは,ICUから一般病棟へと移動し、3ヶ月間という長い入院生活がはじまりました。
この間,なぜ私が「心室細動」に至ったのか・・・原因調査のためにさまざまな検査を受けました。カテーテル挿入による血管の造影検査、心筋サンプリングによる心筋の組織検査、電気刺激を直接心臓に与え動きを確認する電気生理検査、トレッドミル運動負荷試験、CT,MRI、RI、その他検査項目は多岐にわたりました。
結局、主治医が「血管も全く異常はないし、立派な心臓なのにね。どうして止まったんだろう?」と言うように,これらの検査からは、直接「心室細動」に結びつくような原因は明らかになりませんでした。
最終的に「不整脈=心房粗動」が「心室細動」を引き起こした原因と診断され、心房内壁の電気刺激の伝達異常を除去するため、カテーテルを心臓内部に挿入し内壁の一部を高周波で焼くというカテーテルアブレ-ジョンにより不整脈を除去しました。

実は不整脈については何年か前から自覚があり、健康診断でも指摘され診察を受けていました。「心室細動」には至らない「心房細動」という診断で,特に治療の必要もないということで,気にしていませんでした・・・
しかし、「心房粗動」という危険な不整脈が隠れていたことが,倒れるまでわからなかったわけで、結果論ですが、もう少しきっちりと精密検査を受けていればよかったのではないかと後悔しています。

私達は、会社で健康診断を受けていますが、再検等何らかの所見が見られた場合だけではなく、「何か変だ・・」という自覚症状がある場合には、躊躇なく医師の診断を受けるべきだと思います。
 このように,皆さんも私のように、いつ,どこで突然の病気に襲われるかわかりません・・・・救急車が来てくれるまで何らかの処置をしないと命が助からないかもしれません・・・このとき役立つ応急手当の一つが「心肺蘇生法」です。

私は、以前の勤務地で開催された「救命講習」に参加し,ダミー人形を使った「心肺蘇生法」を学んだことがありますが、今回は自分が倒れてしまったので,どうしようもありませんでした・・・
だから,皆さんもぜひ講習を受け、もしも家族や友人、周囲の人が倒れた時に、素早い救命処置により命を救うことができるよう,是非講習を受けてはいかがでしょうか。   「救命講習」は最寄りの消防署で開催されています。私の退院後、家内にもさっそく受講してもらいました。

 その後は,特に食事や運動に大きな制限を受けることもなく、仕事とバスケット・ボールのコーチに復帰でき、以前と変わらない平穏な生活に戻ることができましたが、この当たり前の生活が,いかにかけがえのない大切なものか、今,改めて実感しています・・・自分のため、家族のためにも体を大切にしていきたいと思います。
今回この場をお借りして、私の個人的な体験を述べさせていただきましたが、お役に立てれば幸いです。
主治医はこう言っていました・・・「心臓はもちろんだけど,人間の体はね、正直なんですよ,疲れたら自分の意思とは関係なく、勝手に止まってしまいますからね。」
皆さん,無理は禁物、健康第一ですから・・・・
(「Hさん」の手記ここまで・・・)

【HIGEからHさんへ・・・】
Hさん,こんにちは。
早いもので,あれからもう1年が経つんですね・・・
Hさんとは,先日「A市バスケットボール大会」にてお会い致しましたが,もうすっかりお元気になられ,ベンチに座って子供達を見守り,ご声援を送っておられる姿を見て,本当に嬉しく思っています。今年のお正月はご家族で楽しくお過ごし下さいね・・・
年末年始でお忙しい中,「HIGEさんのスポーツ救命救急」に「手記」をお寄せ頂きまして,ありがとうございました。
まだまだ寒い日が続きますが,お身体をご自愛下さいね。
暖かくなったら,またお食事でもしましょう・・・(HIGE)

【おわりに】
Hさんが「手記」にお書きになっていたように,このような心臓疾患は,「いつ」,「どこで」,「誰」が襲われるのか・・・それは誰にも判りません。
さらに「Hさん」がお書きになっているように,今日の日本では残念ながら,このようなアクシデントに見舞われた方が「完全社会復帰」できる確率は僅か1〜2%です・・・・

しかし,「HIGEさんのスポーツ救命救急 in USA」でご紹介したシアトル市のように多くの市民が「バイスタンダー」として,救急隊到着までの間,CPR(心肺蘇生法)を行い,「バイスタンダー」から「救急隊」,そして「医療機関」へと「救命の鎖」が連結さえすれば,その確率は必ずもっともっと上がります・・・
だから,皆さんの「愛する人」たちの生命を守るために,「もしもの時・・」のために,是非とも「救命講習」を受講なさり,CPR(心肺蘇生法)を習得して頂きたいと思います・・・皆さんは,救命リレーの第一走者なのですから・・・・

「救命講習」は,皆さんが住んでいる地域の最寄りの消防機関で受講の申し込みができますが,もし,このHPをご覧の皆さんから「CPRを習ってみたいけど,消防署にはちょっと頼みにくいなぁ。」という方がいらっしゃるならば,今後,そういった企画も立てまして,皆さんの元へ,不肖この「HIGE」がお伺いしたいと思っていますので,どうか遠慮なくトップページからメールをして頂きたいと思います。
「Hさん」のように,見事に「完全社会復帰」なさり,倒れる以前と変わらぬ生活を送れる方が一人でも多く増えるよう,私もさらに頑張っていきたいと思います!

新春特別企画PART2に続く

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