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2007年2月のレース回顧



阪急杯回顧

重賞の1着同着と言う、極めて珍しい結果となった今年の阪急杯。
勝ち馬はエイシンドーバーとプリサイスマシーンが分け合う結果となった。

エイシンドーバーはこの週を最後に引退する湯浅調教師の管理馬で、
この勝利で花道を飾ることとなった。
今まで詰めがあまい馬で、重賞では2着3着が多かったものの、
1600万に格下がればしっかり勝ちきるあたり、
勝ち味に薄いと言うよりは、単純に重賞を勝つには一歩足りないところのある馬だった。
しかし、今回は1400mに距離が短縮されて、いいところが出た。
これが1200mに縮んでさらに良いかと言えば怪しいところだが、
それでもあまり長いところに行くよりは、
今回のような距離で使う方がよさが出る馬であることがわかった。

もう1頭勝ちを分け合ったのはプリサイスマシーン。
こちらはもう、新しく説明は要らない馬だろう。何せ8歳。
若いころはもう少し長い距離で競馬をしていたのだが、
年をとってこのくらいの距離の方がむしろあってきた印象。
定説では歳をとると長い距離の方が向くようになるのだが、
この馬はそれを逆行している。不思議な馬だ。

3着以下でも、スズカフェニックスは最後の勢いから勝ったとすら思える競馬だったし、
1、2着とそんなに差はないと思う。

本命キンシャサノキセキは、道中引っかかりどうしで、
最後の直線では余力が無かった。
賞金的に高松宮記念は出走が苦しくなった。
この馬、血統的にも気性的にもどう考えてもスプリンター。
高松宮記念でこその馬だっただけに、
今回賞金を加算できなかったのはあまりにも痛い。

レースレベルは、高松宮記念の前哨戦の中では最も高かった。
今の低レベルな短距離界にあってはこれでも十分G1に繋がる1戦だったと思う。


中山記念回顧

金杯は不良馬場だったとは言え、後続をぶっちぎったシャドウゲイト。
今回は非常に評価が難しい1戦だったし、試金石とも言えるレースだったように思う。

しかし、レースが終わってみれば、なんと言うことは無い、4着と言う着順だった。
今回はなぜか、今まで勝ってきている位置よりも後方からの競馬。
結果、スローペースにはまって、まったく力を出せないままに終わったレースだったと思う。
今後のレースの幅を広げたいと言う思惑があったのかもしれないが、
今回は完全に裏目に出た。
能力はあるいはこんなものなのかも知れないが、
不完全燃焼の感があるのも確か。
次は産経大阪杯との話もあるが、距離の融通は利くダンシングブレーヴ系。
もっと強気に、天皇賞を目指す路線に持ってきて欲しい。
今回の敗戦で期待がしぼんでしまったが、
前走の勝ち方は只者では無いと思う。

期待馬が敗戦する中、勝ったのは8歳ローエングリン。
差す競馬を覚えさせたのが、この馬にとってはプラスになった。
少し前まで、逃げても最後は自分から走るのをやめてしまっていたが、
今回はそんな癖は微塵も見せなった。
ダンスインザムードもそうだったが、気力が萎えた馬には差させてみるのは有効。
逆に、行きたがって仕方ない馬を無理に抑えるのは、
かえって馬の走る気を失わせるものである。要注意。

レースレベルは普通。
特にレベルが低いわけではないレースで、8歳馬が勝ったのは圧巻である。
確かに展開面では極めて有利に運んだのは間違いないのだが。


アーリントンカップ回顧

近年レベルが高まり、クラシックやNHKマイルカップと言った、
春のG1レースに直結することも多くなってきたこの重賞。
しかし、今年はメンバー的に小粒な印象をぬぐえなかった。
だが、いざレースを終えて振り返ると、1頭、強い馬が隠れていた。
との印象を受けるレースとなった。

勝ったのはトーセンキャプテン。
ここまで2戦2勝でここに挑んできたのだが、いきなり重賞でどうかと思われた。
しかし、そのような心配は皆無であり、
最後の直線では、G1で2着もある、ローレルゲレイロとの叩き合いをきっちり制し、
3連勝で重賞まで届いてしまった。

サンデーサイレンス産駒がぞろぞろ居た時代には、
3連勝くらいする馬がごろごろいたので、その連勝にはあまり価値が無かったのだが、
今年からのサンデー不在のクラシックでは、
もしかしたら連勝と言うのは大きなポイントとなるのかもしれない。
そういう意味でも、この馬の今後には注目したい。

ローレルゲレイロは、このメンバーなら負けられないと思わせて、
結局はいつもの着順に終わってしまった。
直線でハナに立つと、走るのをやめてしまう部分があるのだろう。
あるいは、距離がもっと伸びていいタイプなのかもしれない。

レースレベルは今年はやや小粒。
春のG1路線に迎える資格があるのは上位2頭で、
その2頭も伏兵と言ったところか。
無敗であるファクターがどれほどのものであるのか。
それを今後見極めて行きたい。


きさらぎ賞回顧

おととしのこの時期、新馬戦から若駒Sをとてつもない勝ち方で圧勝した馬がいる。
名をディープインパクトと言った。

今年、その衝撃を引き継げる可能性を見せてくれた馬が1頭いた。
名をオーシャンエイプスと言った。

レース前は、この対比にかなりの注目が集まり、
将来をすでに約束されたような意見も聞かれるような下馬評だった。
しかし、実際の競馬は甘くなかった。
前走の新馬戦であるが、そこで負かされていた馬の着順は、
未勝利戦に出走しても落ちるばかり。
どうやら、レベルの低い新馬を勝ち上がっただけの馬に、期待を込めすぎたようである。

もちろん、新馬戦からあれだけの競馬ができるのだから、素質馬には違いない。
ただし、即それがG1を勝てると言う公式は浮かび上がってくるものでもないだろう。
今まで、サンデーサイレンス産駒がクラシックに乗っていたころは、
新馬から重賞を取ってしまう馬もかなりいたので、
どうもそのイメージに踊らされてしまっていたようである。(もちろん私自身も含めての反省点だ)
これからのクラシックは、これまでとは違った公式で計算しなければいけなくなるのかもしれない。
サンデーサイレンス以前の競馬に戻るのか、
あるいは新しいクラシックのあり方に変容してくるのか、今年からはそれが試される。

勝ったのはアサクサキングス。2着はナムラマース。
それぞれラジオNIKKEI賞でフサイチホウオーに負かされてきている馬だ。
相対的に、フサイチホウオーの評価を高めなくてはならなくなったレースだったと思う。
現状では、フサイチホウオー対ドリームジャーニーのクラシックと見ているが、
「新しい公式」ではどういった結果が導き出されるのか、
興味の絶えない今年のクラシックである。
もちろん、成長力次第では、このレースの1、2着馬にもチャンスはあるかもしれない。
今年のクラシックの色は、どんな色だろう。


ダイヤモンドS回顧

ハンディキャップ競走の難しさは競馬予想をするものなら誰でも感じるところなのだろうが、
このダイヤモンドSは、ハンディキャップ戦の上に普段競走がほとんどない、
東京の3400mという、特異な条件でおこなわれる競走だけに、
ますます混迷の度合いが増してくる。

そんな中で今年のこの競走を制したのは、1番人気トウカイトリックだった。
この馬、前走でバイロイトに完封されてきてしまっており、
重賞勝ち鞍がないことも心配材料ではあったが、
それをものともしない完勝であった。
ここに来ての活躍が目立つ、エルコンドルパサー産駒である。
エルコンドルパサーは、古馬になって凱旋門賞で2着したように、
実は成長力もある血統。
それが子供の代になって花開いている。
トウカイトリックも、3歳時に重賞2着の後、しっかりと成長を上乗せしてきた。
G1でどうかはともかくとして、今までよりは芯が入ってきたと見ていいだろう。

2着は長距離ならこの人、と言う、横山典騎手のエリモエクスパイア。
手ごろな斤量であることと、騎手の腕でもぎ取った2着であろう。
今回の条件でぴったりはまった印象だけに、他のレースではどうか。

本命アドマイヤフジははっきり距離が向かなかった印象。
天皇賞路線を考えるとこれはいかにも苦しい。
目黒記念あたりに回ってくるようなら狙えるだろうが…。

レースレベルはこのレースとしてはそこそこ高かった。
その中で、もっともレースの流れに乗ったり、
レースの質にはまったのがトウカイトリックだったということだろう。


シルクロードS回顧

昨年冬から、ついに1年経ってしまったのだが、短距離界に新星が現れてくれない。
ここでは、アンバージャックが期待も込めて1番人気に支持されたのだが、
あとわずかのところで4着に惜敗してしまった。

低調な短距離界を物語るように、勝ったのは6歳、
前走で1600万を勝ったばかりのエムオーウイナーだった。
G3でハンデが軽くなった1600万を勝ったばかりの馬が台頭すると言うのは、
レベルの低いG3戦でよくある現象なのだが、
この馬が完勝してしまっている以上、ここはG1のトライアルとしては…。
と言うレースだと言わざるを得ない。
しかし、G1で通用しないかと言えば、そのG1自体が極めてレベルの低いところで終わりそうで、
このままでは日本の短距離G1は、端から外国馬に持っていかれかねない惨状だ。

なんとか明るい方にもって行くとしたら、もう勝ち馬ではなく、
負けた組を称えると言う、競馬としては変な方向に話を持っていかなくてはならない。
2着以下で今後に通じそうなのは、3着ビーナスラインが、京都でも走り、
展開がはまれば強烈な脚を使えそうなところと、
4着アンバージャックが休み明けで、まだ仕上げきっていない点であろう。

正直、勝ち馬を見てしまうと、短距離界の地盤沈下の深刻さに頭を抱えたくなってしまうが、
なんとか負けた組から次の宮記念を展望できる馬がいないか、探していきたい。
レースレベルは…。もはや語らずともここまでの回顧から明白であろう。割愛する。


共同通信杯回顧

京成杯などは、近年ずっと関東馬のレベルが低い状態が続いたことによって、
レベルが低くなりがちなのだが、このレースは比較的高いレベルを保っている。
その理由には、日本ダービーを見据えた時、
ここで東京コースを経験させておくことが、将来のステップとなるからだ。
この後は関東は皐月賞まで中山開催が続き、
皐月賞のあとは直行で日本ダービーというのが主流の現在の流れから言えば、
ここで東京コースを経験させておくのはプラスに働きやすい。

今年は2頭の期待馬の出走があり、明暗を分けたレースとなった。
1頭はフサイチホウオー。ここまで3戦3勝で、重賞2連勝。
血統的に府中は向くと言われ、どこまでのレースをするかに注目が集まった。
レースは期待に沿う形での勝利となった。
しかし、勝ち方にやや不満を覚えたのは私だけだっただろうか。
確かに、追わせてからはどこまでも伸びる手ごたえを見せている。
しかし、一瞬に切れる脚は、まったく無いではないか。
レース振りは大人になってきたようではあるが、
この1戦だけで他を引き離したとは思えない。
今までの勝ち方もそれほど強いものでは無かったし、
皐月賞であまりに人気になるようなら怪しい1頭である。

怪しい以前に、クラシックに暗雲が立ち込めてきたのはもう1頭の人気馬、
ニュービギニング。戦前は前走が評価され、
また、血統から注目されていた1頭なのだが、なぜか今回も最後方から競馬をすると、
今ひとつ伸び悩み、4着に終わる。
クラシック戦線は勝ち残りのトーナメント戦のような部分も持ち合わせていることを考えると、
まだメンバーが手薄なこのあたりでこの競馬は大いに不満が残る。
前走の勝ち方が強かったのは間違いないので、私は印は打ち続けるとは思うが。

レースレベルは例年に比べると実は低調だった可能性がある。
2着ダイレクトキャッチは2戦連続でやっと掲示板くらいの馬。
このレースだけでフサイチホウオーが有力馬となったと見るのは危険だろう。
ここ以外の路線から、クラシックウイナーが誕生する可能性が高いと思う。


小倉大賞典回顧

毎年波乱含みの1戦となる小倉大賞典であったが、
今年は比較的順当に収まるのではないかと私は予想した。
明らかに力上位であろう、マルカシェンクが出走してきたからだ。
だが、レースを終えてみれば、勢いにおいて優れるマルカシェンクは凡走。
かえって勝ったのはさすがに衰えているはずの9歳アサカディフィートであった。
マルカシェンクの敗因の分析よりも、今回は勝者を称えたいと思う。

アサカディフィートは9歳。長くピークが続くセン馬とは言え、いくらなんでも衰えるのが普通の年齢だ。
しかしこの馬。昨年の休養あけはもういらないと思っていたのだが、
そこから大崩れが無い。
展開面で不利があった鳴尾記念でさえ6着に走り、
さらに言えばオープン特別も制していた。
10年前から競馬を見ていて、その感覚に慣れてしまっている私は、
9歳と言う年齢から重賞ではいらないとたかをくくってみていたのだが、
時代は変わった(あるいは変わりつつある)ようである。

今回は展開が味方したと言う面はもちろんあるものの、
それでも最後の伸び脚は、力もかなりキープしている事を証明するものだった。
今後については展望が難しいが、本当によく走っている馬だけに、
引退はも本当の意味での乗馬になって欲しいと思う。

レースレベルは低いのだが、例年このレースはこんなメンバーでやっている。
このレースとしては普通。他との関連性は薄い重賞と言う、
例年通りの評価でいいだろう。