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2007年6月のレース回顧



宝塚記念回顧

昨年の宝塚記念は、サマー2000シリーズのあおりを受けた形で、低調な一戦になってしまった。
今年もサマーシリーズは継続と言うことで、レベルの低下が懸念されるG1だったのだが、
その懸念はまったく打ち砕かれたと言えるレースが、今年行われた。

今年は初のフルゲート18頭立て。
G1でありながら、フルゲートにならないというのがそもそも盛り上がらない一因だったのだが、
今年はフルゲート。それも、3歳世代からも2頭出馬して、
非常にレベルの高いメンバーでのフルゲートの一戦が行われた。

最も期待されていた馬はウオッカ。1番人気である。
これはもう、期待値と言うか、日本ダービーを勝った馬が(それも圧勝)
51キロと言う軽ハンデで出走してきたのだから、仕方ない1番人気。
期待値は込まれていたとしても、それを非難することはできないところだろう。
レースでは若さを見せてしまい、道中ずっと引っかかっていたのだから、
この敗戦は仕方ない。
凱旋門賞を考えると、ここに使う理由は全く無く、出走にこぎつけた経緯は不透明だが、
少なくてもファンには非はない。
結果としてG1レースが盛り上がったのだから、オーナーもあまり責めることもできないだろう。

そんな注目があつまるレースを制したのが、アドマイヤムーンであった。
逃げると見えたアドマイヤメインが逃げられないという、ハイペースの一戦だったのだが、
結果的に、それがこのレースに底力を、総合力を問わせる非常にレベルの高い一戦とした。
道中中段待機から、同じような位置取りのポップロック、メイショウサムソンを封印しての優勝で、
この馬はこのレースで現役では最強を示したと言ってもいいだろう。

2着メイショウサムソンもよく走ったが、今回は相手が強かった。
それに最後まで食らいついているのだから、この馬も相当強い。
例年の宝塚記念優勝馬の水準以上のレースをしており、
凱旋門賞では有力視していいだろう。
3着ポップロックにしても、レベルの低い年ならこの馬が優勝でもおかしくない。

全体に、非常に高いレベルで行われ、よどみの無い流れで流れた、G1らしいG1だった。


マーメイドS回顧

こちらも昨年から条件がハンデ戦に変わったマーメイドS。
去年は49キロの軽量ソリッドプラチナムが1着になり、
今年もその流れが通用するのか、はたまたおととしまでの傾向のように、
実績馬に有利に働く重賞となるのか、面白い一戦だった。

結果的に、勝ったのはハンデのG3らしい、1600万を勝ったばかりのディアチャンスだった。
そこから斤量の2キロをもらっていたこともあったが、
今回の早めの流れで最後差しきったあたり、底力を秘めている可能性がある。
この1戦だけでは判断できないが、この次の一戦こそが試金石だろう。
2着は昨夏牡馬とも互角に戦っていたサンレイジャスパー。
最近不振であったが、底力比べになれば、牡馬と五分に戦えた底力が生きたのだろう。
3着には昨年の覇者でもある、ソリッドプラチナム。
最近1800m以下のレースにも使われていたが、
最後突っ込んできた脚を見る限り、2000m級に強い馬のようである。
メンバーがそれほど強力ではない、2000m以上の重賞で、今後も注意が必要。

本命を打ったシェルズレイは、前半1200mが69秒と言う暴走ペース。
向こう正面で息がまったく入る余地が無かったのが苦しすぎた。
それでも4着に粘っているのだから、まともなペースで走れるようになれば、
能力はこんなものではないはずだ。ただ気性的に危なすぎる。

レースレベルは通常。別定戦のころのようには行かないだろうが、
ハンデの牝馬限定戦にしては、そこそこのメンバーが集まったように感じた。


CBC賞回顧

ハンデのG3戦になって2年目。
昨年も高レベルのメンバーでのレースだったが、
今年、さすがに大物の出走はなかったものの、それでも粒ぞろいのメンバーが集まった印象。

ここを勝ったのは、最近不調に陥っていたブラックバースピンだった。
昨秋にはオープン特別で2着するなど、そこそこの成績を見せていたが、
その後不振に陥る。
今回は1200mへの距離短縮となって、刺激となったのだろうか。
道中は気合を入れながらの追走だったが、
4角にはすでに動いていて、最後まで伸びきった辺り、今回は完勝。
相手関係もあるだろうが、G3級なら十分戦えることを証明した。

2着はナカヤマパラダイス。
ここまで3連勝で挑んだが、あまり人気が無かったのは、
前走が直線競馬だったためだろうか。
しかし、今回の勝利で直線競馬にも、コーナーのある競馬にも対応できることははっきりし、
今後の視野は広がる。夏にはアイビスサマーダッシュもある。
3着アグネスラズベリは牝馬限定重賞ならそこそこやれる馬。
牡馬相手でも、能力全開ならこのくらいならやれるか。
戦歴が浅く、高齢になっても伸び白はある。

本命ミスティックエイジは1600万勝ちからの勢いに期待したが、
中京1200mの条件に変わったことが影響か。
また別の条件で見直してみたい。

レースレベルはG3としてはやや高い印象。
突出した馬はいないが、粒ぞろいのメンバーだった。
夏競馬に繋がることに期待。


エプソムカップ回顧

最後の週になって、馬場がだいぶ悪化。
やっと、多少は差しも決まる馬場になったか。
ただ、このレースに限っても、前に行った方が有利には運んでおり、
正直、秋競馬までにさらなる改装を求めたい。

内のほう、見た目にはそんなに荒れていないようにも見えたが、
いざ走らせてみると、ほとんどの馬を外に通す騎手が多かった。
このレースで一番面白かったのは、1番枠を引いたトウショウカレッジ。
最初から最後まで最内ぴったりをまわしての好騎乗で、
最後の直線ではこの馬が勝ったかと思ったほどであった。
しかし、勝ったのはエイシンデピュティだった。
この馬、1600万、オープンと連勝してきており、ここも勢い上位。
1着から6着までが1馬身以内に収まる大激戦だっただけに、
勢いのあるこの馬にはプラスアルファに働いたか。
2着、3着には新潟大賞典のワンツーが入り、
大混戦になった割には、最後はあっさり決まったという印象。

本命ダンスインザモアは、冬の段階でもっと底があるかと思われたが、
ここ2走で掲示板前後では、はっきり言って底が見えてしまった。
今後もハンディキャップのG3か、オープン特別が主戦場だろう。

レースレベルは通常のG3並だった。


安田記念回顧

この春の開催、とにかく前に行った馬が止まらない馬場であった。
正確に言うならば、決してハイペースではないにもかかわらず、
騎手たちも惑わされているのか、あまり早めの仕掛けが見当たらず、
前残りが連発した馬場であった。

それを象徴するようなG1が、今回の安田記念ではなかったか。
1着馬は先行馬群から抜け出し、2着馬は逃げ馬であった。

勝ったのはダイワメジャー。
昨秋まではG1ではやや足りない印象で、事実このレースでも好走がようやくだったのだが、
本格化なった今なら、府中コースでも強いところを見せ付けた。
今回は逃げ馬がよく頑張ったので、一瞬2着か。と思わせたところから、
安藤騎手がムチを入れていない状態で差しきってしまうのだから、
この馬の能力と勝負根性はさすが。
本格化が遅かった馬だけに、今年一杯の現役生活なら、
最後まで能力を維持できるのではないだろうか。

2着はコンゴウリキシオー。
先にも書いたように、一瞬ダイワメジャーを振り切るのではないかと思わせた。
ここまで2000m級のレースばかり使われてきたが、実はマイラーだった。
ここ2走の走りは決してフロックなどではなく、
この馬も自らの適距離を発見したようで、ここに来て本格化と見ていいだろう。
血統的にマイルどころか、スプリントにも対応する可能性も否定できず、
秋競馬のG1路線に向けて、非常に楽しみな1頭になった。

レース自体は前残りと言うものになってしまったが、
上位2頭のレベルは十分G1級で、通常レベルのG1だった。
ただ、やはりあまりに前残りの瞬発力比べになってしまう馬場は、
公平に高い能力を出し切れない馬も出てくる可能性もある。
決して、このG1の価値を下げるものではないものの、
あまりに前残りが連発していたため、やや釈然としないものも残るG1だった。


ユニコーンS回顧

かつてこのレースが秋に行われていたころは、
このレースを足がかかりに、名馬の域に飛躍した馬も多かった。
JRAの3歳限定ダート重賞はここしかなく、
当然中央ダート界のの明日を支える馬は、ここを使うことが多かったからだ。
しかし、春に時期を移して、レースレベルはかなり落ちてしまった。
まだ、3歳春の段階で、名馬の域に育つ馬の発掘がされきっていないためであろう。

ところが、今年のこのレースは、そんな低レベルの例年とは違った。
2頭、強い馬が出走してきたのである。
ロングプライドと、フェラーリピサの2頭なのだが、
レースでも、この2頭のマッチレースとなった。
最後軍配が上がったのはロングプライド。
直線でフェラーリピサに落鉄があったと言う話を聞くが、
正直、最後の勢いから考えて、落鉄と、このレースの結果とは関係なかっただろう。

もちろん、まだ現段階でフェラーリピサの方がしたというわけではないだろうが、
今回のレースに限って言えば、ロングプライドの強さが光ったレースだった。

この上位2頭、かなりの大物に育つ感が強い。
今年はかなり骨っぽいメンバーでこのレースは行われており、
そこで抜けた競馬をできている。今後の2頭の飛躍に期待したい。

レースレベルは春に移ってからのこのレースとしては非常に高く、層が厚かった。
負けてしまった馬達にも、今後の可能性は十分にある。
今年の3歳馬には、ダートで大成する馬が多数出現するかもしれない。


目黒記念回顧

ダービー後の最終レースで行われたこの一戦。
ダービーがスローペースになったこともあり、
ここも馬場の影響を受けるかと思われた1戦だったが、
比較的順当な結果に収まった。

勝ったのはポップロック。去年もこのレースを制しているが、
その時の斤量は54キロ。今回58.5キロなので、
実に4.5キロも重くなっての出走である。
それでも、有馬記念2着している馬で、ここでは底力が違った。
道中は先行馬群につけたものの、4角では中段まで下がっており、
そこから巻き返して1着に来ているあたり、やはり只者ではない。
昨年は勢いで勝った部分も多かったが、
そこからさらに成長を上乗せして、日本でも有数の名馬に育っている。
次は宝塚記念だろうが、ここでも十分に好勝負以上が望める馬だ。

そして、このレース、勝ち馬と同等に高い評価をしたいのが、
2着のココナッツパンチである。
いくら斤量面で恵まれたとは言え、この時期に古馬混合重賞を2着。
なかなかできるものではない。
父マンハッタンカフェはサンデー系にしては珍しく遅咲きの馬だけに、
ここから成長を上乗せできれば、菊花賞の有力馬になれた馬。
レース後の骨折がいかにも残念である。

芝コースはダービーからもわかるとおり、かなりの前残り。
このレースもスローに近かったにも関わらず、差してきた1着2着は強力。
1着馬には、相当の底力が備わっていると見る。
3着にもアドマイヤフジだから、レースレベルはこのレースにしては高かった。
ここの上位から、宝塚記念を目指せる馬が出てくることだろう。