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2007年7月のレース回顧



小倉記念回顧

宝塚記念で大凡走して、
精神的な疲れが残っているかもしれないスウィフトカレントが1番人気、
2番人気は、1000万を勝ったばかりで、人気なら狙いたくはないニルヴァーナだった。
この人気からして、通常のトップグループの馬には苦しい重賞になった。

そんな中、勝ちあがったのは牝馬のサンレイジャスパーだった。
この馬、夏場はいつも調子がよく、昨年もマーメイドS2着、新潟記念でも2着していた。
ただ、私が今回無印にした理由に、小回りへの適性に、課題が残っていたことが挙げられる。
確かに、成績だけみれば、小倉でも2勝しているのだが、
その2勝は2歳の新馬と500万であり、スピードの絶対値で押し切ったものと見たためだ。

しかし、今回は仕掛けを遅らせる作戦も効を奏したのか、
はたまた小倉適性には問題なかったのか、見事な差しきりであった。
こういった、実力以外の面で人気を落としているタイプは、得てして劇走しがちだ。
この馬に関しても、過去には小倉で勝っているだけに、
コースは問題にするべきではなかったのかもしれない。

血統的には、トニービン系のミスズシャルダン産駒と言うことで、
直線は長い方がいいイメージなのは間違いないと思う。母系も夏場に向きそうなタイプ。
今回牡馬を倒しての重賞制覇なら、秋の牝馬限定の大きなところでも面白い存在になりそうだ。
(そこでは、また「夏馬」をいう、実力以外の事象から人気を落としそうであるし)

2着はニホンピロキース。
前走で同じ54キロで凡走してしまっていて、評価を下げてしまったのだが、
七夕賞はかなり荒れた馬場での一戦だったので、ノーカウントが正解だったか。
4走前の1600万では、同じ2000mを逃げ勝っており、
小回りに向きそうな器用さのあるこの馬には向いていたとも言える。
今後も小回りコースで注目の馬だろう。1800の競馬にも向くかもしれない。

本命スウィフトカレントは前走G1で仕上げてあったところからの参戦で、
体力的にも、精神的にも順調ではなかったのかもしれない。
道中は引っかかってしまっていて、能力を出し切れず負けた印象。

レースレベルは夏場のG3らしく、やや低調ではあったが、勝ち馬は牝馬。
牡馬相手にもまれていたことは、牝馬限定戦で必ず力になる。
今後牝馬限定重賞に出てくれば、当然人気を背負っても勝ち負けになる馬だ。


函館記念回顧

同一重賞三連覇は非常に難しい課題だ。
ここまでに、3頭しか例が無いのだから、エリモハリアーの人気の無さは仕方ない。
ましてやこの馬、屈腱炎を一度発症しており、まだ完調では無いと思われていた。

しかし、ふたを開けてみれば、まさにのそ、エリモハリアー1頭の強さだけが目立つレースだった。
前回はまったくいいところのない敗戦であったが、
今回はスタートでやや後手を踏んだが、道中はもう、走りたくて仕方ない雰囲気。
それでいて、かかっているわけでもないレースで、まさに、絶好の競馬であった。

函館の芝と言うのは、日本では唯一の洋芝の舞台で、海外の馬場に近い。
もちろん、日本の高速馬場の地盤の上に作られているし、芝も短く刈られるから、
海外ほど遅いタイムにならず、洋芝と、野芝の中間くらいの雰囲気で見ておくといい馬場である。

まさに、この馬場に適合しているのが、エリモハリアーと言う馬だったのだろう。
今回は人気も無かったが、実は抜けている馬もおらず、
函館の2000mでプラスアルファが見込めるのは、実はこの馬だけであった。
私はこの三連覇にもっと盛り上がると思っていたので、
レース後にこれ程度の盛り上がりしかなく、残念に思っている。
見事な、実力による三連覇。それも屈腱炎を克服してのものであったのに。残念に思う。

2着ロフティーエイムは1600万を55キロで3着できているだけに、
数字の上では買えない馬では無いが、福島牝馬Sのあと鳴かず飛ばずでは、
感情的に買いづらい1頭。前走の凡走も悪いイメージになった。
前哨戦の1800と、本番の2000では、まったく別のレースになるという証明だったか。

人気どころでは、ナムラマースは直線で行き場をなくして、可哀想なレース。
まだこの一戦では見限れない。重になれば強い馬だろう。
アドマイヤフジは、小回りの2000、それも洋芝は不利だったか。
この馬は、野芝の2200m戦で、今日のような早めの競馬ができれば面白い馬だと見る。
秋のオールカマーあたりで、相手次第で…と言うところか。

レースレベルは通常。
人気どころが洋芝や小回り2000mに苦戦して、上位に来られなかったのは残念だが、
全体を見渡せば、それほどレベルの低いレースでは無かったように思う。


アイビスサマーダッシュ回顧

台風の接近により、重馬場で行われる結果となったアイビスサマーダッシュ。
開幕週にレースをするのは賛成なのだが、残念なことに、日本には梅雨がある。
太平洋高気圧が勢力を強めていないこの時期、台風の接近もあるだろう。
ただ、週を遅らせれば内の馬場が悪くなり、ますます内外の有利不利が出てしまう。
開催時期からして、非常に悩ましいレースである。

今年はそんな馬場状態で行われることもあって、予想も当然悩ましい。
抜けた馬はおらず、直線実績に頼った予想をしたのだが、
どうやら今年は、重馬場適性に着眼するのが正解だったようである。

勝ったのはサンアディユ。5歳の芝重賞では無名の牝馬である。
それもそのはず、今回が初芝と言う一頭だった。
この馬に向いたのは、とにかく馬場状態であっただろう。
馬場の湿ったエプソムカップではフレンチデピュティ産駒がワンツースリーしただけに、
この馬を買う要素があれば、その点だったか。
競走成績からではなく、馬場適性から紐解いて行ったごく少数の人に微笑んだ女神だった。
今後については極めて難解。
今回が重適性ではなく、芝適性での1着なら今後もあるだろうし、
直線競馬の鬼という可能性も秘めている。
G1でどうこうのタイプでは無いのは確かだろうが、G3あたりに出てきたら、評価に困る。

2着はナカヤマパラダイス。
この馬も重馬場は上手いはずの血統である。
今回はたまたま、それをしのぐような重の鬼が居たということ。
まだキャリアが浅く、これからの伸び白がまだまだある。
コーナーのある競馬にも対応しており、今後の重賞で、こちらは楽しみと断言できる。

3着クーヴェルチュールは、内枠を引いたのと、斤量の2キロ増がどうかと思われたが、見事克服。
上り調子の3歳馬はなんでもある。というのを改めて見せ付けられた。

レースレベルは最近低迷しているレースだけに、例年よりはややまし、
普通のG3レベルの一戦レベルに達していたくらいと見たい。


プロキオンS回顧

JRAのダート重賞と言うのは、案外数が少ないものである。
その中のひとつが、このプロキオンSで、
当然、ここを目標に仕上げてくるオープン馬もいる。

今年はその中でも、前走で重賞を制覇して来ているワイルドワンダーに評価が集まった。
私は前走でこの馬を強いとみなさなかったこともあって、
対抗に留めたのだが、今回は1800mから1400mへの距離短縮にも関わらず、
前回以上の強い内容の競馬で勝利した。
軽ハンデでも無く、距離もペースも全く違う2戦で勝ちきっており、
交流重賞などで、さらに上を目指せることが、明らかになった一戦だっただろう。
確かに超ハイペースに展開面で助けられたのは事実だが、
リミットレスビッドをマークして、きっちり捉えたのは能力の証明か。
G1級かと問われれば、まだ懐疑的な部分もあるものの、
少なくても、G1でも優勝できる候補の1頭にあげるくらいの力は、今回見せてくれただろう。

2着にはリミットレスビッド。
8歳の高齢で、多少の衰えはあるものの、まだまだパワーと底力は健在。
中央で徐々に辛くなっても、交流重賞がある現在なら、まだまだ走れるだろう。
非常にタフで、底力を感じる1頭だ。

3着はドンクール。
どんなメンバーでも2着、3着する、勝負弱いと言うよりは、
何か気性的に好走でもいいだろうと思いこんでしまったタイプの馬のようだ。
この気性、なかなか直るものでもないだけに、やっかいなところ。

レースレベルは例年以上で、高レベルの一戦。
ここを勝ったワイルドワンダーには、秋にさらなる高みを目指してほしい。


七夕賞回顧

梅雨時の、それも最終週の荒れた馬場で行われれる、七夕賞。
この条件で、抜けた馬が出走しないハンデ戦のG3だから、
当然、1番人気は苦戦するし、難しいレースになることも多い。
まして今年は、内のほうの芝がはげてしまって、
見た目から、かなり悪い馬場状態で行われれる七夕賞というイメージだった。

このイメージから、勝つのは外をつく馬で、有利に運ぶのは外枠だと思われたが、
なんと、勝ったのは内をついたサンバレンティンだった。
道中後方から競馬をしたため、やや早いペースでだったためよかったのだが、
最後の直線で、まさか内をついて伸びてくるとは、とても思えなかった。

この馬、昨年の福島記念では、もっと荒れた馬場を苦にせず走っているし、
相当の福島巧者、かつ、荒れ馬場巧者であるようだ。
おそらく、他の馬があれだけ荒れた内を通したら、この結果にはならなかっただろう。

そして、意外な事に、2着も内枠を引いた、アドマイヤモナークだった。
成績からは、ハンデのG3では能力上位と思われたが、
福島コースがどう出るか未知数だったのと、内枠を引いてしまって、
半ば無視する格好で無印にしてしまったが、
この馬は完全に安藤騎手の好騎乗。
ハイペースになることも見越してか、後方から競馬をして外目を回すと、
直線も大外一気の、思い切った競馬で2着だった。
競馬としては、この馬が勝っていた競馬で、1着馬の荒れ馬場適性と、
後藤騎手の好騎乗に阻まれる結果だったのだろう。
2着に敗れたとは言え、安藤勝己騎手の騎乗も光っており、
1、2着は、騎手の腕も大いに物を言った印象だ。

3着ユメノシルシは、ダートや長距離の芝を使ってきていたが、
血統的にはマイルから中距離がベスト。
福島も合うようだし、今後も福島の重賞では注意が必要だ。

レースレベルは、七夕賞は毎年レベルが低いことが多いのだが、
今年は上がり馬や個性派もそろい、このレースとしては高レベルの一戦だったように思う。
今後も、小回り重賞で面白そうな馬達が揃った一戦だった。


函館スプリントS回顧

去年から実施されている、サマースプリントシリーズ第2戦は、
函館の馬場で行われる、函館スプリントS。
今年は3歳のアドマイヤホクト対、前走CBC賞組みの対戦のレースとなった。

勝ったのは、前走CBC賞で3着だった、アグネスラズベリ。
この馬、すでに6歳だが、去年連勝からヴィクトリアマイルを負けた時よりも、
今の方が確実に強くなっている印象。
デビューから思うように使って来れなかったことが、
かえってこの年齢での後押しになっているか。
距離は1600までは持つが、今回スプリント重賞を制覇しているし、
メンバーも手薄であり続けるローカルの1200m戦なら、今後も好勝負期待だろう。
ここまでのところは、着順の割りに人気していないようだったが、
この一戦でどういう人気を得ることになるか。
あまり人気が上がらないようなら、面白い馬かも知れない。
サマースプリント制覇に向けて、順調な一歩だ。

2着サープラスシンガーは外国産馬。
この時期の古馬混合重賞と言うこともあり、現時点での完成度がものを言ったか。
ただ、スプリントのチャンピオンは、まだまだ外国産馬に依存する傾向があるため、
この馬にもチャンスはある。
この時点で古馬と五分に戦っているのだから、ぜひ成長してほしい。
そのためにも、ぜひ活力を残す使い方をしていってもらいたい。

3着ブラックバースピンは前走で完全復活。
人気薄で劇走した馬は、次もフロック視されやすい傾向にあるが、
この馬のように続けて好走する例も少なくない。
あるいは、このタイプの馬は狙いか(?)今後研究を進めたい。

本命ビーナスラインはまさかの不発。
4角最後方ではさすがに展開も辛いが、昨年の出来になかったか。
今後の立て直しに注目したい。

レースレベルはCBC賞よりやや高かった。
今の全体に層が薄くなったスプリント路線にあっては、平均レベルと言ってもいいのかもしれない。

勝ち馬の、今後の進路に注目したい、サマースプリントシリーズ1戦だった。


ラジオNIKKEI賞回顧

かつて残念ダービーと呼ばれたこのレースも、
最近はさしたる活躍馬を出せずに、長らく低迷していたのだが、
昨年ついに、このレースで負けていた馬の中から、
後の菊花賞馬、ソングオブウインドが登場した。
この流れの中から、今年も有力馬が登場してきた。

勝ったロックドゥカンブがその1頭。
今回平均ペースの流れから、3角でまくり、そのまま押し切ってしまった。
南半球産馬と言うのは、春にそこそこ走って、
今後の成長を期待され、そのままに終わってしまう馬も少なくないだけに、
このレースを勝ったから即、秋で…とまではいかないものの、
課題の成長力さえ持っていれば、
今年の3歳牡馬のレベルは高いとは言えないだけに、
今年の3歳勢力の中では期待できるかもしれない。
それほど切れる脚は無いようなので、そこも今後の課題か。

2着スクリーンヒーローは、ここまでの成績から、小回りは得意だったということか。
まだ3歳だけに、成長力で変わってくる可能性は否定できないが、
現時点ではコーナーのきついコースの方が走りやすい印象。
3着イクスキューズは56キロを背負って、牡馬とよく走っている。
秋華賞は距離が微妙も、これからの牝馬限定のマイル〜1800くらいの重賞がちょうどいい印象。
気持ちが切れてしまうところがあるため、気性面は今後の課題だ。

本命レットイットライドはあまりにも狙いすぎた。
1200mで古馬を撃破していたため、
距離が伸びてさらに良さがでれば3歳限定重賞なら…と思ったのだが、
今回は引っかかってしまった。距離延長が裏目の印象。

レースレベルはこのレース自体毎年低いのだが、
今年はそこそこのメンバーが集まった印象で、
このレースの平均より、やや上だったように思った。