2008年5月のメインレース予想
金鯱賞回顧
前走の産経大阪杯で2着だったエイシンデピュティが優勝した金鯱賞。
この馬には条件がかなり向いたレースだったかも知れない。
元々G3級と思われていたこの馬だったが、
前走の大阪杯の1着馬はダイワスカーレット、3着がアサクサキングスだから、
それを順当に考えれば十分に推せる本命馬だった。
そこのレース振りがスローペースを先行してのものだったため、
必ずしも2着の成績を順当に考えなくても…と戦前思ったのだが、案外案外。
レースを終えてみればそれをそのまま受け止めていれば、と言う結果だった。
実際ここもハナに立つと、マイペースで逃げることができ、
さらには得意のやや重の馬場もあって、この馬に勝ってくださいという展開。
条件が重なった感はあるが、重賞を勝つときと言うのは、そうでなければ難しいだろう。
2着はマンハッタンスカイ。
この馬は前走新潟大賞典を2着していたが、そこから今回は斤量3キロ増。
しかもG3からG2に格があがったのでは、なかなか苦しいと見せておいて、
しかし今回は前回よりレース振りのいい2着だった。
こちらも重馬場巧者のマンハッタンカフェ産駒だけに、血統もあったか。
2番手追走からと言う展開もこの馬には向いたか。
これからもローカル競馬では注目の存在か。
3着カワカミプリンセスは今回休み明け。
それでここまで来たのは能力がある証明だし、これで復活のめどは立った。
勝つのは次の宝塚ではなく、夏の札幌あたりの感もあるが、
よくここまで立て直してきた、の一言だろう。
1番人気アドマイヤオーラは今回は海外遠征明けで、レース間隔もあいていた。
凡走するとしたら今回と言う、納得の凡走だったろう。次改めて期待。
私の本命馬インティライミは前走叩かれて変わると思われたが、
今回もまだ一息の競馬。
夏のG3あたりでの復活に期待か。
レースレベルは若干低めだったか。
宝塚記念までを考えると、果たして今回の上位がどこまでやれるか…と言う感はある。
エイシンデピュティにしても、本番はそう簡単ではないだろう。
オークス回顧
戦前評価の割れたチューリップ賞好走組。
終ってみれば彼らの復活の舞台となった、今年のオークスであった。
前走の桜花賞では、チューリップ賞組はそろって大敗。
チューリップ賞を使われた馬達はそれほどの力が無かったのではないかと予想された方も多かったように思う。
(私などはその急先鋒で、チューリップ賞組上位3頭全て無印にしてしまった)
しかし、オークスの結果を見たところ、どうやら桜花賞はどういうわけか、
チューリップ賞組はそろって力を出せなかっただけであったことが明らかになった。
チューリップ賞を勝ったエアパスカルこそ、ハイペースで飛ばして失速したものの、
オークスを制したのはチューリップ賞2着のトールポピー。
最後の直線で不利を受けたオディールも、不利さえなければ…だったろう。
勝ったトールポピーは、昨年のジュヴェナイルフィリーズの優勝馬でもあった。
前走の敗退がよくわからないが、オークスでしっかり巻き返したあたり、
2歳時から言われていたように、府中向きの馬であったと言うことか。
また、「桜花賞がチャンピオン決定戦として機能しなかった場合、桜花賞前に戻って検討する」
と言う、私なりのオークス観にも当てはまる馬であった。
桜花賞前にオークスが行われていれば、トールポピーは1番人気になったかもしれない馬。
また、2歳のチャンピオンによる制覇というのも、桜花賞でチャンピオンが決まっていなければ、
暫定王者がそのまま挑戦者不在のままチャンピオンになった。
と言う見方もできるのではないだろうか。
2着エフティマイアは桜花賞に続いての2着。
オークスはスローペースになるためか、距離はこなしてしまう馬が多いのだが、
この馬もそのパターンだったか。
本質はマイラーだと思われるが、それでも本番で2着したのは立派だった。
秋以降距離を詰めて使ってくれば変わり身も期待できる馬かもしれない。
3着レジネッタは不利さえなければ…と言うところを十二分に見せ付けた。
馬場が悪化していたこともこの馬には良かったが、あの不利ではいかんともしがたいだろう。
私の本命馬レッドアゲートは6着。
不良馬場見込みの本命だったのだが、やや重とは言えいいところを見せられずの6着だから、
現時点では能力が足りなかった。
前走のフローラSで負かした相手は500万でも勝ちきれない馬だったことからわかるように、
フローラSのレベルが非常に低かったのを読みきれなかった私の不徳だ。
この馬には今後の成長に期待するのみである。
今年のオークスは、桜花賞があまりレベルが高くないと言われていたにも関わらず、
その桜花賞組みから優勝馬が出てきたあたり、
桜花賞からのレベルアップはあまり考えられず、相変わらず低調なのではないだろうか。
現時点でのレベルは低かったものと判断したい。
東海S回顧
大荒れになった今年の東海S。
馬場状態、普段行われることの少ない中京のダート2300と言う特殊な条件が生んだ大波乱だったように思う。
勝ったのはヤマトマリオン。
勝ったのがおととしの芝重賞フローラS以来のこの馬の優勝では、
単勝万馬券も已む無し。
確かに500万を勝ち上がったのはダートだったが、それもずいぶん昔の話で、
しかもあいだに交流重賞の凡走まで入っているわけだから、
この馬を推すのは簡単なことではない。
今回は馬場状態がかなり軽かったこともあり、また距離も特殊な長距離戦。
正直この勝ち鞍が即今後に繋がるかは疑問で、
この一戦のみで今後を占うのは非常に難しい。
これはレース回顧で言う言葉ではないが、次を見てみたい。としか言いようがない。
2着にはラッキーブレイクで、こちらはまだ「回顧可能」な範疇。
昨年秋のシリウスSで2着しているように、
ダートの長いところでは力があると言うことだろう。
阪神のダート2000は、1800のコースとは全く違い、
かなりのスタミナ能力を試されるコースになっているように私は感じる。
今後も阪神の2000を勝ちきるような馬は、ダートのさらに長いところで注意する必要があるかもしれない。
レースレベルは申し訳ないが「不明」とさせていただきたい。
そもそも1着馬が実力で勝ったのか、たまたま条件が揃っただけなのかわからず、
その力を判断できないため、必然的にレース全体のレベルもわからなくなってしまった。
私の本命馬サンライズバッカスは11着。
これは予想を反省しなければいけない着順だ。
出遅れこそあったものの、これだけの大敗はおそらく距離が長すぎたため。
それは血統的にわかっていたのだから、本命は無理筋だったように思う。
大波乱になったため、レース後の回顧すら非常に難しい、今年の東海Sだったように思う。
ヴィクトリアマイル回顧
昨年の日本ダービー馬ウオッカの復権がかかった一戦。
ここを負けてしまうようでは、もう後が無いような印象すら受けたこのレースだったが、
結果から言えば、2着に惜敗した。
当日のパドックでは他の馬に比べて抜け出た部分が存在せず、
どうやら相当疲れが溜まっているのではないかと想像される。
このあたりで長めのリフレッシュが必要なのではないかと思われる。
管理する角居調教師は昨年の日本ダービーで、
不可能といわれた牝馬のダービー制覇を成し遂げた気鋭の調教師である。
そのレースで「使う勇気」は十二分に示した。
今回疲れきったウオッカに対して、「使わない勇気」を示せるかどうか、
ここにこの調教師が名調教師になれるかどうかの分水嶺があるように思われる。
個人的には秋までリフレッシュさせたいが、何やら宝塚記念あたりに使って来はしないか、非常に心配である。
一方このレースを勝ったのはエイジアンウインズ。
ここまでキャリアが浅く、また1600mのレースを使うのも初と言うことで、
前哨戦を勝っているにも関わらず、人気もそれほどではなかったのだが、
キャリアが浅い点は、成長力に繋がる。
ここに来ての成長は著しく、前走は1600万からG2への格上がり、
それも斤量が増えての優勝であった。
さらに今回G1挑戦でも問題なく実績を上げたあたり、
これからも伸びる要素十分の馬である。
距離は今まで使われていたスプリントよりも、むしろマイルの方がレースをしやすい印象。
牝馬特有の鋭い伸び脚は、牡馬相手でも脅威になるだろう。
次走はキャッシュコールマイルの可能性もあるそうで、
アメリカの芝路線なら、ここでも優勝できる可能性も十分だ。
大いに可能性を秘めたG1馬の誕生である。
3着はウオッカとハナ差でブルーメンブラット。
アドマイヤベガ産駒はどういう訳か重賞では2着、3着を繰り返す。
この馬も例に漏れず、3着惜敗であった。
ただ能力は秘めており、それがここで開花した印象だ。
結果的に、前走阪神牝馬Sを1着2着した馬のあいだに、実績馬ウオッカが入っただけで、
前哨戦の阪神牝馬Sは実はレベルが高かったようである。
前日のキストゥヘヴンも牡馬相手に2着しており、個人的に低評価にしたのは誤りであった。
レースレベルは通常よりやや高かったと思う。
ウオッカが本調子でなかったのは残念であるが、新たな可能性を秘めたG1馬の誕生した、
今後を考えれば意義のあるG1であったように思う。
京王杯スプリングカップ回顧
先週のNHKマイルカップでも書いた「目覚め」のあった馬、スーパーホーネット。
この馬は昨年秋のスワンSで目の覚める様な強烈な勝ち方を見せた時、目覚めていた。
その後マイルチャンピオンシップでは実績馬相手に2着と大健闘した。
(1着がダイワメジャーなのだから、2着もやむを得ない結果か)
この春は高松宮記念から始動したが、この時は世間にもある程度認知されていたように、
本来の始動はもう少し遅くの予定で、状態としてはあまりよい状態ではなかったものと見受けられた。
よってそこでの負けは度外視できる結果であったろう。
そしてそこを叩かれて今回であるから、今回の能力こそが本来のものであろう。
今回の競馬は残り200mあたりでの瞬発力が飛びぬけて高かった。
完全に本格化しており、ここでベストの距離である1400で破れたスズカフェニックスを抜きさり、
安田記念に王手をかけたと言っても過言ではない。
もちろんG1の底力を要求される流れになれば、スズカフェニックスの巻き返しも期待できるだろうが、
このレースを見る限りでは、ややスーパーホーネットに流れが向いて来ているように感じられた。
一方、このレースで2着したのはキストゥヘヴン。
この馬は前走の阪神牝馬Sで4着に負けているところからの浮上で、
実はもうこのあたりに翌日のG1でどのレースがステップとして機能しているのかを示す、
伏線のようなものは張られていたように思われる。
もちろんヴィクトリアマイルが終ってからの視点だからこそ浮かんでくる伏線ではあるが、
案外今年の阪神牝馬Sはレベルが高かったのかもしれない。
キストゥヘヴンはやたら好走止まりも多い馬である。
ここ最近のレースを見る限りでは復調しており、
また勝負弱さや、ジリ脚と言うわけでもないのに勝ちきれてはおらず、新たな刺激が必要。
このあたりで鞍上を強化してみてはどうだろうか。復活の勝利もあるかもしれない。
レースレベルは通常。
G1馬と、G12着馬が出走し、G12着馬の方に少しづつ、競馬の流れが向かっているように感じた、
そんな京王杯スプリングカップだった。
NHKマイルカップ回顧
G1においては、どこかで「目覚めた馬」というのを強気に本命に推すと的中に繋がることが多い。
今年の場合は春の天皇賞。アドマイヤジュピタの阪神大賞典で、
「目覚めた」ことにさえ気が付けば、的中は非常にたやすいことなのだ。
今回のNHKマイルカップには、明らかに「目覚めた」馬が1頭出馬していた。
ディープスカイ。
前走の毎日杯、それまでの勝ちきれない競馬ぶりから一変し、強烈な末脚を見せ、
2着アドマイヤコマンドを2馬身半ちぎると言う、非常に強い内容のレースをしていたのだ。
その一戦のみでしか、強い競馬が無かったことから、
今回も圧倒的な1番人気に推されたわけではなかったものの、
実質は前走と同じ競馬をすることさえできれば、明らかに能力が他の馬とは違った印象。
目覚めた馬にとっては、G1は決して壁にはならないのだ。
このディープスカイと言う馬は、未勝利脱出まで6戦を要したが、
成長力もあり、G1にまで達した。
こういった、未勝利を勝利するまでに時間がかかったものの、後に壁を突破してG1に達する、
と言うケースの馬の場合、一旦好調期に入れば、続けての好走に期待できる。
次走はダービーになりそうな気配だが、
最近のアグネスタキオン産駒は2400m級のレースでも好走例が多く出てきており、
十分に勝ち負けになると思う。ダービー候補の出現と見ていい。
このタイプは一旦不振に陥ると脱出に手間取る傾向もあるため、
好調時にどれだけ多くのG1を取れるか、その勝負だと思われる。(近年で言えばシルクジャスティスタイプ)
2着ブラックシェルはいかにも府中のマイル向きの血統。
今回は血統の後押しがかなり効いていたはずだ。
2400になると必ずしもその持続するスピードを生かしきれない可能性があり、
ダービーは少し方向が違う可能性はあるが、どう出るか。
3着ダノンゴーゴーはスプリンターと見せかけて、マイルにも対応できるところを見せた。
現状でのベストはスプリントだろうが、成長次第でマイルまで対応できる馬に育つかも知れない。
なぜか毎回人気または穴人気してしまうサダムイダテンは、
血統的にはどう見てもダート馬。
実際ウッド等の調教では動きが抜群なことからも、おそらくはダートに転じていい馬。
次はダービーよりもユニコーンSの方が…と個人的には思う。
レースレベルは通常。
近年牝馬に勝たれたり、好騎乗のみで勝ち馬が決まったり、
ややレベルを落とした感のあったNHKマイルカップだが、
今年は通常のG1レベルのレースができたように思う。
来年以降も今年のようなレースレベルはキープしてもらいたいと思う。
新潟大賞典回顧
ローカル重賞の定めとして、低レベルと言うのは避けられないところだろう。
しかし、このレースは時期的に宝塚記念につなごうと思えば不可能ではないだけに、
(もっともほとんどの場合、宝塚をどうこうではなく、夏のローカルを見据えた馬達だろうけれども)
幾分かのレベルアップは期待できるかも知れないG3、新潟大賞典であった。
今年のメンバーを見渡しても、若干宝塚を見据えて?と言う馬も交えての一戦となった。
そんな中勝ったのは新潟巧者オースミグラスワンだった。
おととしのこのレースの覇者であり、新潟の長い直線コースは誰よりも向いた。
近走でも同じように直線の長い阪神で好走するあたり、
新潟特有の、とにかく長く脚を使える馬、と言う素質をもっているのだろう。
今回も上がり3ハロンは実に31秒9と言う、現時点のサラブレッドの究極の脚とも言える上がりを使った。
これは「切れる」脚というよりは、押して押してとにかくどこまでも加速できる。
と言う、オースミグラスワンの特性が十二分に発揮された結果だったろう。
府中コースでは一瞬の脚が無いために誰かには負かされてしまうだろうが、
新潟のような、とにかく持続する脚がなければ勝てない馬にとっては、このコースは向いていた。
福島の小回りレベルに、新潟の長い直線も独特の適性が試されるコースである。
2着は上がり馬マンハッタンスカイ。
1600万を勝ってきて、通常2キロもらいになるところ、
今回は重いハンデ馬との兼ね合いもあって、3キロもらいでの出走。
非常に有利な条件での2着好走であった。
今後はどうか。連続して好走できるようなゴール前では無かったが…。
負けた馬の中では、スウィフトカレント、サンライズマックスあたりは、
次で予想される中京コースの金鯱賞向きの馬達であったか。
同じ左回りでも、中京と新潟は求められる適性が違うだけに、次こそ期待したい。
金鯱賞で好走ならば、宝塚も見えてくる。
レースレベルはハンデのG3としては若干高かったように思う。
レベルを高くした馬の凡走は残念だが、適性の差だったように思う。次の巻き返し期待。
勝ったオースミグラスワンは、ぜひ宝塚記念には出てきて欲しい。
その後に夏の新潟を目指してもよいのではないだろうか。
京都新聞杯回顧
今年のメンバーを見渡した時、2勝馬が5頭しかおらず、
前走重賞組みもゴールデンルーヴェただ1頭という、すさまじく淋しいメンバー構成のG2。
ここで賞金を加算してダービーに出たとしても、夢を少し長くつなげるだけだろう。
とは言え、G2はG2であり、賞金も高いこのレース。
勝ってしまったばかりに「家賃が高い」(オープン級にランクされてしまうため、相手関係が強すぎて勝てない)
馬が出てきてしまうのではないかとすら不安を覚えるほどの、低レベルG2だったように思う。
そんな中勝ったのはメイショウクオリア。
サンデーサイレンス系の種牡馬マンハッタンカフェの産駒で、成長力と底力に恵まれていたのだろう。
前走500万を勝ってきて、勢いのままに制覇した。
ただ、500万勝ちすぐG2を勝ててしまうあたりが、低レベルのあかしだろう。
馬はどんぐりの背比べだったのだから、血統だけ見て予想すればこの馬に◎を打てただろう。
2着以下はダービーに賞金的にも出走が厳しいようなので、ここで論じても仕方ない気もするが、
2着のロードアリエスはこの春産駒がひめたる成長力を開花させたシンボリクリスエス産駒。
この馬はキャリアも浅いし、このメンバーの中では今後が楽しみな1頭だ。
レースレベルは繰り返しになるが、G2としては最低レベルに低い。
これからの成長を待たなければ、即G1で通用する馬は居ないだろう。
ダービーではなく、菊花賞、さらに古馬路線、あるいは条件戦を語る上ならば、
見ておいて損のないレースではあった。
ただしダービートライアルとしては機能していなかった感の否めない京都新聞杯だった。
天皇賞・春回顧
近年の天皇賞には真のステイヤーを欠くためか、壮絶なレースを見る機会が非常に減っていたと思う。
幾ばくかの不満を残すG1の多い中、今年の天皇賞は見ごたえのある好レースだったように思う。
よどみの無いラップで飛ばすホクトスルタンのと、強力なステイヤー2騎の叩き合いがあり、
実に久々の、春の天皇賞らしい天皇賞だったように思う。
最終的に2頭の叩き合いで勝敗はついてしまうのだが、
今年の上位2頭は、どちらも勝馬にふさわしい素質を持った馬達だったように思う。
それだけレベルの高い2頭が最後叩きあったのだから、見ごたえが無いはずもなく、
近年の天皇賞に無かった、名勝負が展開されたのだ。
今年まだ半年だが、早くもベストレースにふさわしいような名勝負ではなかっただろうか。
優勝したのはアドマイヤジュピタ。
戦前ステイヤーとしての資質を疑問視する声も上がった同馬だが、
私の予想コンテンツに書いたように、古馬のG2と言うのは、適性の無い馬が勝てるほど生易しいものではない。
その阪神大賞典の最後の直線で見せた、長距離を走っておきながら、
それでも最後「ぴゅっ」と切れる脚を見せられる能力は、天皇賞においても際立っていた。
最後差し切れたのは、長距離を走ってなおかつスピード持続する、
その高いスタミナ能力と、瞬発力の高さ、そして底力であっただろう。
2着はメイショウサムソン。
最後の4角からまくって上がって、勝ち馬に等しい、
いや、例年の天皇賞勝ち馬のレベルをはるかに越えたレースを繰り広げての2着。絶賛されていい。
最後の直線ではアドマイヤジュピタの瞬発力に屈した印象だが、
この馬の持ち味である息の長いスパートは十二分に発揮されており、
ほんのわずかな運の行き来のみで、こちらが勝ち馬の称号を得ていても不思議のないレースだった。
以上の上位2頭は例年の天皇賞の勝馬のレベルを超える位置にあるレースを敢闘し、
差しては差し返す見事な底力を見せ付けた馬達である。
上位2頭、例年なら文句なしの勝ち馬である。
2頭の叩き合い、見ごたえのある、大熱戦であった。
3着アサクサキングスにしても、例年のレベルで行われていれば勝ち馬になっても不思議無いレベル。
今回は相手が悪すぎた。G1を連戦連勝できるだけの馬が、この馬の前にさらに2頭居たというだけで、
例年のレベルなら、この馬でも十分に勝ち馬の称号を手に入れられた。相手が悪かっただけ。
4着ホクトスルタンは、このレースの影の立役者であった。
よどみのないラップの中でしか、本当の底力を問われるG1レースは出現しない。
今年のハイレベルな一戦を演出したのは、実はこの馬である。
レースレベルは非常に高く、上位2頭は抜きん出てハイレベルなレースをした。
最後に勝ち負けが付いてしまうのは勝負事の宿命だが、
2頭共に、胸を張れるレースであったと思う。
今年のこのレースは絶賛したい。素晴らしいステイヤー決定戦の天皇賞であった。
青葉賞回顧
皐月賞のレベルが「?」で、また勝ったキャプテントゥーレが骨折したことから、
大根戦に拍車がかかる今年のダービー路線。
青葉賞組からはダービー馬は出ていないそうだが、
今年こそその歴史は改められるかもしれない。そんな予感を持って見たレースだった。
勝ったのはアドマイヤコマンド。
個人的にこの馬には期待をかけて見ていた。
前走の毎日杯はキャリア1戦1勝で挑み、2着に踏ん張っていたからだ。
わずか1戦の差とはいえ、前走を重賞を使われて、今度は確実に変わると踏んでいたのだ。
結果的にこのレースとしては上々のレースをしたと思う。
道中がスローペースで運ぶ上がりの早い展開で、
前が開いた一瞬を付いてピュッっと切れる脚を使うあたり、瞬発力は相当なもの。
着差こそそれほど付いていないが、スロー、それも開幕週の馬場を考えれば、
一瞬で前を行った馬を交わし去るレースから、
この馬の能力は着差以上に高いと見ることができると思う。
次は当然ダービーに出走だが、今年の皐月賞組みは「?」なだけに、
この馬にも十分なチャンスがあると見たい。
キャリア4戦目でダービー制覇というのは非常に難しいことなのだが、
(また、デビューから日が浅いということはそれだけ調教量も少ないと言うこと)
レベルのやや低いところには固定観念のような不安説は一蹴される可能性がある。
記憶に新しいところでは昨年のウオッカも、
牝馬がダービーを取るということはないという固定観念を覆すものだった。
今年も期待したい。
2着以下は先に書いたように、勝ち馬とはやや差のある印象を受けた。
2着クリスタルウイングは血統的にアドマイヤベガ産駒、
クラシックの時期に仕上がる仕上がりの早さと、一瞬の切れ味を求められる展開での浮上だったように思う。
正直ダービーではどうか。
むしろ、将来性という意味では、3着のモンテクリスエスが上手だろう。
今回はクリスタルウイングの後塵を拝したが、血統的に成長力のあるシンボリクリスエス産駒。
また、今回の前残りの馬場、展開で1、2着馬からはやや後から差してきての3着であり、
上がりの早さだけならば、勝ち馬にも劣るものではなかった。
本番で即買いとまでは行かなくても、今後の成長に期待が持てる1頭である。
人気のマゼラン、ファビュラスボーイは500万での実績しかなく、
しかも休み明けで重賞だった。自己条件に戻って再考だろう。
レースレベルはやや低めではあったものの、
皐月賞組が混戦になっている以上、これでも本番に通用する可能性も十分だ。
特に勝ち馬はキャリアを重ねるごとに強くなっている印象で、本番への期待が高まった。
無論混戦を断ち切るまでの強さとは思わないが、その可能性に期待したいと思わせる1頭の出現だ。