2008年11月のメインレース回顧
ジャパンカップ回顧
海外馬の苦戦もだいぶ多くなった昨今のジャパンカップ。
今年も海外馬は若干レベル的に難がある馬な上に、血統的にも日本の競馬には向かない馬達だった。
ならば国内の馬たちでの戦いになるわけだが、勝った馬は日本馬でも人気の無い馬だった。
スクリーンヒーロー。
この馬は前走のアルゼンチン共和国杯を優勝してきている馬なのだが、
しかしそこはハンディキャップ競走であり、ハンデも53キロ。
今回は別定のG1で、ハンデも57キロだから、人気が無いのもやむを得ないところだっただろう。
ただ、前走破ってきた馬が、ジャガーメイルという、強力な馬であったことは、
単にハンデのG2を勝っただけの馬、という評価よりは高める余地はあったのかもしれないが…。
今回のレース振りは道中は5番手を追走し、直線半ばで先頭に立つ、というものだったのだが、
一応横綱相撲とも言えなくもない競馬ではあった。
多分に鞍上のデムーロ騎手の腕も加味してのものだった感は否めないものの、
それでも並み居るG1馬を打ち破ってのものだけに、あまり軽い評価はできない。
2着以下には天皇賞組。
2着はディープスカイ。天皇賞と全く同じ着順になることはあまり考えづらかったが、
この馬は天皇賞での3着から、さらに良化を見せた。
このレースを大目標に仕上げられてきたあたり、万全の状態だったか。
この着順で、来年以降のG1路線でも十分に勝負になることを明らかにしたと言える。
3着はウオッカ。
天皇賞が目一杯の競馬をしているだけに、さすがに上積みは無かったが、
それでも国際G1で3着に頑張るあたり、並の牝馬とは格が違う。
10年ほど前のエアグルーヴの活躍と、非常に似た成績を残してきている。
この馬もすでに名牝の域に達していると言っていい。
私の本命オウケンブルースリは5着。
勝ったスクリーンヒーローの直後に居て5着だから、これはもう力だろう。
直線で若干の不利はあったものの、不利が無くても4着があったかどうか、
くらいのものであり、さしあたり上位とは差があった。今回は力負け。
菊花賞の直後ということもあるし、ここで休ませて、古馬になって改めて期待してみたい。
レースレベルは通常。
クラシックディスタンスの馬全体のレベルが下がっているのが気がかりではあるが、
しかしここは2着から6着までがG1馬でもあるし、そうレベルが低いとは思えない。
全体の底上げという意味では、もう一枚上手の馬が出てくれれば言うことは無いが…。
それでもニューフェイス、スクリーンヒーローの誕生は大きかった。
1着のスクリーンヒーロー、2着ディープスカイ、5着オウケンブルースリ、
あたりには、更なる成長を期待したい。来年以降は、もっともっとレベルの高い争いを見てみたいものである。
京阪杯回顧
ここはウエスタンダンサーが強い競馬をした一戦。
前走でオープン特別を負けながら巻き返してきたこの馬の底力に素直に脱帽だ。
それくらいレース振りは非常によかった。
上がりだけで言えば2着のファリダットの方が優秀なのだが、
最後の伸び足で言えば、ウエスタンダンサーのもう一伸びのほうが優秀だった。
着差以上の完勝と言える。
短距離路線は勝ち馬がころころ変わる状態で、
この馬にそれほど期待をかけすぎるのは酷だと思うものの、
それでも今後G3級のレースなら十二分に対応してくると思う。
2着ファリダットは前走がまったく意味のわからない2番人気で凡走。
ただ、1600万を圧勝して来ているのは間違いないから、格がG2からG3に落ち、
さらに斤量が1キロ軽くなれば変わってくるのは当然だったか。
このくらいは走れるところを証明した。
3着スプリングソングはレベルが低いところだったとは言え、それでもG2を3着していた馬。
G3のここなら…と思わせたが、それでも3着までは案外だらしない。
オープン特別なら確勝の器なのだろうが、G3では絶対的な中心というわけではないようだ。
レースレベルは通常。
スプリンターズSでは勝負にならない馬たちが集まってきたという意味で、
いかにも裏のG3、という印象ではあった。
ただ、勝ち馬の勝ちぶりは見るべきところもあったように思えるので、
今後もG3級、あるいはもう少し上でも、と思えるような内容ではあった。
福島記念回顧
福島競馬は、福島巧者が非常に強い競馬場だ。
どこの競馬場でも、巧者というものは存在するが、
福島競馬場の場合は、とにかく過去に福島で実績のある馬を買っていれば当たる。
そんな印象すら受ける競馬場である。
そんな中、今年このレースを勝ったマンハッタンスカイは、
これまでの重賞の連対が新潟、中京、福島で、
オールマイティーな活躍をしている馬であった。
新潟の持続力、中京のロングスパート、福島の小回り適性、
それぞれ全く違う能力を求められるみっつの競馬場で、
実績を積み重ねてきていることは賞賛に値する。
またこの馬、人気が無い時の方がよく走るという特色も秘めている。
3回の重賞の優勝全てが6番人気以下なのだ。
しかし、改めて成績を見てみると、この馬G3級ではそう負けない。
さすがにG2では少し辛くなるものの、G3で、切れ味が求められない展開になれば、
この馬は走る。
今後も切れが求められないレースに出馬してくれば、期待の1頭。
とりあえず、2009年の中京記念あたりで注目してみたい。
2着マイネルキッツはこれは完全な福島巧者。
七夕記念で3着があり、前走は府中の瞬発力勝負についていけなかったが、
持続力の生きる流れになれば当然変わってくる。
これで福島の重賞では3着、2着。
安定しており、また小回りコースで多少荒れた馬場になれば劇走がある。
パンパンの良馬場ではやや割引が必要だろうが、
この日のような馬場になれば面白い1頭だ。
3着グラスボンバーも福島で変わってくる馬である。
私の本命レオマイスターは最後の4角ですでに一杯。
まったく見せ場の無いレースで終ってしまった。
小回り得意と読んだのだが、明らかに能力が足りなかった。
古馬混合のオープンでは今後も辛い競馬を強いられそう。
レースレベルは平均レベル。
G2でも好走していたマンハッタンスカイは、今後も条件さえあれば走る。
凡走が続いていても、あまり印を落としてはいけないタイプの馬だろう。
マイルチャンピオンシップ回顧
今年は牝馬の年。
天皇賞をダイワスカーレットが制した時から、そんな風に言われ始めていた。
その声がさらに世間に定着したのが、このマイルチャンピオンシップではなかったか。
勝ったのは牝馬ブルーメンブラット。
道中は後方で折り合うと、最後の直線は内をついて、瞬発力勝負に持ち込んだ。
結果的に、2着のスーパーホーネットは大外を回して差の無い2着だから、
これはインを思い切ってついた吉田豊騎手の思い切りのいい騎乗が光った。
スローからの瞬発力比べになったのもよかったのだろう。
すでに引退の決まっている馬でもあったから、ますます思い切った騎乗ができた。
2着はスーパーホーネット。
大外をつく、1番人気らしい騎乗であったのがだが、
結果的にわずかに能力が届かなかった。
相手はロスの無い競馬、こちらは堂々とした競馬による敗戦で、
能力的にはこちらの方が上、という見方も十分にできる。
今回は外枠でもあったし、大外を回すのはやむを得なかったとも言えるが。
圧倒的に抜けた馬ではなかったので、2着も已む無し、か。
3着ファイングレインは復活の兆し。
マイルでも対応してきたあたりに、ただ復調しただけではなく、
今後を楽しみにさせる要素があったように思う。
G1馬として、かつての勢いを取り戻せれば、まだまだ走れる1頭。
来年の高松宮記念にむけて、順調に進んで行って欲しい。
レースレベルはやや低調。
1、2着馬にしても、去年のダイワメジャーに比べたら、一枚下だとは思う。
ただ、ブルーメンブラットは前走非常に強い勝ち方だったし、
激走のサインは十分に垣間見れるレースをしていたし、
G1としてどうしようも無くレベルが低い、というほどでも無かったと思う。
ただ、勝った馬がすでに引退が決定している馬、2着馬も年齢を重ねているし、
短距離に新たな名馬の誕生を期待したいとも、同時に思ったレースだった。
東京スポーツ杯2歳S回顧
確たる中心馬のいないレース。
一応人気になっていたのはブレイクランランアウトなのだが、
このレースの時点で、いちょうSの上位の馬はその後結果出ず。
不利があったということだが、不利が無くても勝てていたとは思えず、
固い人気馬でないことは明らかで、2歳戦ということもあって、大混戦の1戦だった。
勝ったのは1戦1勝のナカヤマフェスタ。
のちに京成杯でも2着する馬なのだが、この時点では東京でしかキャリアが無かった。
しかし、道中先行集団につけると、ある程度鋭い上がりを見せ、優勝を持っていった。
前半が61秒0。上がり3ハロンが34秒3だから、スローの流れ。
というか、東京ではこのくらいの流れからの瞬発力比べが非常に多い。
ステイゴールド産駒ということで、アグネスタキオンほどは切れないだろうが、
それでもサンデー系。負かしたスマートストライクやシンボリクリスエス相手なら切れ負けできないところか。
後に京成杯で2着するなど、瞬発力と持続力のバランスの取れたタイプで、
東京の瞬発力比べに鬼のように強いというわけではない代わりに、
中山の持続力の勝負になっても対応してくる。
今後G1まで、というイメージはあまり無いが、クラシック本番が低レベルに終る可能性も否定できない。
そうなれば、皐月賞あたりでの激走に注意が必要か。
ダービーではやや切れ負けするかも知れないが。
キャリア1戦1勝。今後の成長に期待したい。
2着はブレイランアウト。
新馬戦を圧勝した馬で、前走は不利が言われていた。
個人的には不利が無くてもあの結果だったのではと思って失敗したが、
今回の2着が力。
次の朝日杯の1番人気は意味がわからなかった。
中山の1600を差しきるのはよっぽどの能力がなければできない。
この時点では府中でしか来られない馬だったと思う。
3着サンカルロは明らかにオープンでの切れ味勝負では分が悪い。
もう少し上がりがかかる展開がベスト。
今のところ府中で実績をあげているが、今後は中山や、阪神、あるいは2200の距離で注目だろう。
私の本命バックハウスはまさかの11着。一度大凡走したことのある馬で、
残念ながら能力が足りなかった。
切れ味勝負は向くはずだから、東京の500万条件ならまだ侮れない。
レースレベルは低調。
このレースの馬が先で活躍してしまっているあたり、
2歳戦線のレベルの低さが思いやられる。
このレースの段階ではまだそんなことは言われていなかったようだが、
ここがクラシックの中心になるようでは淋しい。
さらに強い馬が出現してくれることに期待したい。
エリザベス女王杯回顧
2008年は牝馬の年であった。
天皇賞では競馬史に名を残すような激闘を、牝馬のワンツーで決め、
有馬記念ではダイワスカーレットが圧倒の逃げ切りを演じた年だ。
その中で、エリザベス女王杯は、若干レベルを低く見ざるを得ないかもしれない。
その天皇賞に、最強牝馬候補である、ウオッカとダイワスカーレットの2頭が回ったためで、
こちらのレースは残った馬達による、暫定王者決定戦とでも言ったところだったか。
レースを制したのはリトルアマポーラ。このあたりでもう、一枚役者が下と見るしかない。
どうあがいても、天皇賞のワンツーには届かない馬だからだ。
実際、桜花賞、オークスでも敗れており、今回の勝利はルメール騎手の好騎乗が光った。
たしかに、馬自身は秋華賞が休み明けでの出走であり、
またこの正月には牡馬混合の重賞でも好走し、2月のクイーンカップでは強い競馬を見せてはいた。
だが、それでも少なくても圧倒的に強い馬でないことは、
桜花賞、オークス、秋華賞の敗戦からも明らかであり、
やはり、ここでは一歩上回った、というレベルなのかもしれない。
ただそれも、天皇賞の組からの比較ということで、純粋にこのレースだけを見れば、
一応、例年のレベルより幾分小粒、程度の評価はできると思う。
牡馬をなぎ倒すほどの力は感じないものの、
今後の牝馬限定戦なら、十二分に戦える馬であることは明らかだ。
2着はカワカミプリンセス。
前哨戦で2着、復活をかけた一戦だったが、若い牝馬に勝てなかった。
3歳時のこの馬の強さならば、この相手を圧倒できるだけの力があった。
やはり故障もあって、全盛時の能力は戻らなかった。
それでも格好をつけて2着に来るあたりはさすがの一言なのだろう。
3着はベッラレイア。
一時期スランプに陥ったが、前走で復活の兆しを掴むと、ここで完全復活してきた。
これからの牝馬限定重賞を楽しませてくれそうな存在になりそう。
レースレベルは通常。
天皇賞にあまりに強い2頭がいたためにこちらがかすんで見えてしまうが、
それでも例年のレベルにはどうにか達していたと思う。
牡馬を倒すほどの馬の存在は無いだろうが、
牝馬限定G1としては、十分に価値のある一戦だったように思う。
京王杯2歳S回顧
朝日杯フューチュリティSの前哨戦の一戦。
今年はこのレースから、本番でも2着に入るフィフスペトルが出た。
しかし、G1で2着できる馬がなぜここでも2着だったのか。
それはペースの一言に尽きると思う。
今年の京王杯、前半の3ハロン目から12秒のラップがふたつ続き、
最後の3ハロンのライムは34秒1。
そのラップにしても逃げ勝ったゲットフルマークスのタイムであり、
他の馬達は軒並み33秒台の脚を使っている。
しかし、逃げ馬を交わすまでには至らなかった。
これはスローになったことに加え、瞬発力豊富、というタイプの馬が少なかったことも影響しただろう。
勝ったのは逃げたゲットフルマークス。
先に書いたとおり、最も恩恵を被った馬だろう。
平均ペース以上の流れでは果たしてどうだったか。
朝日杯で凡走したように、本質はスプリンターなのかも知れない。
今後は過大評価は禁物だろう。
2着フィフスペトルはスローにはまってしまった1頭。
この馬自身も33秒8の脚を使っているものの、
キングカメハメハ産駒。これ以上の切れを要求するのは過酷というものだろう。
ペースが早くなって、切れ味比べにならなければ、G1での結果のように十分走れる。
むしろ、このレースでは好位に付けられた自在性を評価するべきだった。
(個人的には好位に付けられる力を評価して、のちに朝日杯で◎を打った)
3着エイシンタイガーにしても、33秒の脚を使っている。
これも極限に近い脚を使っており、これを交わせというのは酷というもの。
レースレベルは標準。
しかし、いかにもあまりにラップが落ちすぎてしまったのは残念。
このラップから差しきるとしたら、サンデーサイレンス産駒でなければ不可能だろう。
ほかの種牡馬では、切れに限界があり、スローにはまって凡走、で終ってしまう。
ここまでのスローは少し残念だったかもしれない。
アルゼンチン共和国杯回顧
1番人気に推されたのは前走の京都大賞典で不利があったアルナスライン。
それに対抗する勢力とみなされたのは、
1600万を非常に強い勝ち方をしてきた、ジャガーメイル、
さらにそこでハナ差の競馬をしたスクリーンヒーローだった。
結果的に、それらの馬が上位を占めることになるのだが、
勝ったのはその中ではやや評価の低かったスクリーンヒーローであった。
この馬、1600万で2着に敗れていて、普段のG2では用なしの馬だったのだが、
この馬に限っては、その2着はジャガーメイルを破ってのもの。
結果的に、そこのレースの1、2着馬が入れ替わっただけに終わり、
いかにレースレベルの高い1600万であったのかが明らかになった。
スクリーンヒーローはグラスワンダー産駒。
昨年も重賞でもそこそこに走っていて、その後故障で長い休養があり、
今回使われ始めてから約半年で、やっと本来の力を取り戻してきた感が強い。
特に、ここでは強敵のジャガーメイルを打ち負かしたあたり、
G2なら十分今後も強豪として君臨する、と見られた。
実際のところはそれどころではなく、スクリーンヒーローはジャパンカップを優勝、
ジャガーメイルは香港ヴァーズで3着することになるのだが、
この時点では「G2なら強い馬」という評価が妥当だっただろう。
2着にも素質十分のジャガーメイルが入る。
前記のように香港ヴァーズでも3着に入った。
この馬も負かされた相手がスクリーンヒーローということを考えれば、
十分に走っている。
香港での劇走もあるし、この馬もG1級にのし上がってくる可能性あり。
府中の2500をこなしているから、スタミナも十分。
また、2400の切れ味勝負でも負けないあたり、大物感がある。
2009年度のさらなる飛躍に期待がかかる。
3着はアルナスライン。
前走の不利があまりにも喧伝されすぎていた印象。
不利が無くても3着だっただろうなあ、というレース前の印象は、
結局レースが終って正しかったことが証明された。
また切れ味の競馬よりは、持続力が問われる展開でこそのタイプと見る。
ただ、案外成長力が無いのは気にはかかるが。
同じアドマイヤベガ産駒のキストゥヘヴンは古馬になって復活したから、
この馬もG2級のレースで将来復活があるかもしれない。
レースレベルは非常に高かった。
ハンデのG2にしてはメンバーがよく集まっている。
ここに出走していた馬の、2009年の更なる飛躍に期待したい。
ファンタジーS回顧
今年のファンタジーS、一言で言って、「低レベル」で済む一戦ではなかっただろうか。
この時期の牝馬限定のG3だから、レベルは軒並み低いのが常だが、
それにしても、今年のこのレースは他のレースに繋がらないレースだったように思う。
ましてや、今年のラップは異常。
上がり3ハロンだけ早いというレースはよくあるが、
このレースは残り600でまだペースが上がりきらず、
実質残り500あたりからだけのレースとなってしまった。
そのため、上がり2ハロンだけが11秒台で、あとは12秒台。
よって勝ちタイムもその分遅く、というわけのわからないスロー。
これではゴール前大混戦になるのは明らかで、
実際勝ったイナズマアマリリスから4着のワイドサファイアまで、
クビ、ハナ、クビ、の大激戦だった。
しかも、その叩き合いがあまりレベルの高くない馬による叩き合いだから、
あまり緊迫感もない。
馬券が絡んでいたファン以外には、あまりいいレースとは言えなかっただろう。
勝ったのはイナズマアマリリス。
次の阪神ジュベナイルフィリーズでも5着に頑張っては居るものの、
その後結果が出ないあたり、このレースの混沌を物語っている。
2着以下の馬にもその後活躍する馬は見当たらない。
はっきり言って、凡戦だったように思う。残念だが。
レースレベルも低調。今後に繋がるとはあまり思えないレースだった。
武蔵野S回顧
このレースを迎えるにあたって、注目されている馬が2頭いた。
1頭はユビキタス。
春のユニコーンSを圧勝して、秋初戦。
一体どんなレースを見せるのかと期待された。
もう1頭はカネヒキリ。
屈腱炎によって2年以上も休養していたこの馬がどんな競走を見せるのか、
ファンは期待を込めて見守った。
そんな中、勝った馬は期待が大きかったユビキタスでもカネヒキリでもなかった。
勝ったのはキクノサリーレ。3歳馬である。
今まで直線の短いコースばかりを500万から3連勝。
ここであっという間の4連勝で、一気に重賞まで奪取してみせた。
これはもう、3歳の勢いというもので、一気に力をつけていたと見るべき。
この時期500万から1000万への連勝はよくあるが、
そこで止まることなく、1600万、G3とさらに連勝を重ねたのは非凡の証である。
この回顧を書いている時点で、次のオープン特別を敗北してしまっているのだが、
しかしマイルでは次のG1でも好走できる馬を負かしているのは事実だし、
今後もマイル路線には無くてはならない存在になっていくであろう。
父ジェイドロバリーならば、根底距離であるマイルもこなせる。
ただ、ここで負かしたのが、ひたすら2着3着しまくるサンライズバッカス、
成長力が無いユビキタスであることには、若干の不安は残る。
2009年のシーズンは真価が問われる年になるだろう。
そして期待の2頭だが、まずはユビキタス。
直線では抜け出すかに思われたが、追い出すと案外伸びず。
その後の成績からも、どうやらアグネスデジタル産駒の悪いところが出ているようで、
成長力に欠けているようである。
また、このレースに関しては、安藤勝己騎手がゴール前で交わされると追うのをやめており、
2着はあったレースだった。勝てないのなら追うことに意味はないと思うのかも知れないが、
やはりゴールまではびっしり競馬をして欲しいと思うのがファンの心理である。
それからカネヒキリ。
ここでもなぜか2番人気になっていたが、明らかに無謀な狙い。
このレース前はほとんど強い調教も行っておらず、試運転のレースだった。
のちに大きな仕事をする馬であるのだが、
2年以上の休養明けでは、ファンの期待が実力を上回ってしまったレースだった。
ジャパンカップダートでも好走する馬を秘めていたが、この時点では力を発揮できておらず、
レースレベルは通常。
なんとかトライアルとしての面目は保ったか、と言ったあたりのレースだった。
天皇賞・秋回顧
このレース、もはや言葉は要らないのではないだろうか。
最後の直線を見ていてそう思った。
あえて客観的にそのすごさを証明するより、
レースの画像を見たほうが、はるかに印象に強く残る。
文字ではあの感動は表現できない。
間違いなく競馬史に残る名レースだったように思う。
こういったマッチレース、ごくごく稀にしか起こらない。
20年も前にホーリックスとオグリキャップが世界レコードで走り抜けたくらいであろう。
G2に格を落としても、ナリタブライアンとマヤノトップガンの例があるくらい。
96年スプリンターズSはフラワーパークとエイシンワシントンの1センチ差の決着だったが、
あれとはまた違った感動を覚えるこのレースだった。
とにかく、こういったマッチレース、それもG1でのマッチレースともなると、
本当に数は少なくなってしまう。
しかも2頭のあいだにはライバル関係もあり…、
華のあるウオッカ、いぶし銀ダイワスカーレットというイメージもあり…。
それらの衝突、まさに激闘であった。
タイムの上からも、全後半のラップにそれほど差のない競馬で、
それで1分57秒2というのも飛びぬけて早い。
さらにこれも言っておかなくてはならないが、
久々にファンの声が競馬場にこだまする、12万人大入りの、
G1らしいG1でのこの競馬である。
個人的に競馬を見て感動することはめったにない人間なのだが、
このレースだけはレースが終った瞬間、感動に浸ることができた。
見るものの心を動かす大レース。
見事な1戦であった。
あえて細かい回顧は避けようと思う。
とにかくレースを見て、感動に打ち震えた最高のレースだった。
スワンS回顧
マイネルレーニアが約2年ぶりの重賞制覇を飾った。
その勝った重賞が1400mの距離だったように、
この距離には自信のある馬で、前走のオープン特別では復活の圧勝を飾っていた。
復活の勝利だった。
とにかく競りかけられると弱い馬で、自分のペースを守れるかどうかが鍵だったが、
幸いにもこのレースは前残りになった。
これならば、この馬にはもってこいの展開、そして距離だったということか。
かなり条件にも恵まれた重賞制覇だったように思われる。
2着はローレルゲレイロ。
この馬も先行できたのが大きかった。
休み明けでの1戦であったが、休み前、G1で4着しているように、
G2なら(それもレースレベルはやや低いところなら)、
格上の存在だった。順当な2着だろう。
3着はジョリーダンス。
近走の成績からはそろそろ燃え尽きかけてきたように思えた馬だったが、
ここでは先行有利の流れにものって3着。
ただ、それほどいい脚を使ったとか、よく粘ったとかの印象もなく、
そろそろ競走成績は下降線に入ると思われる。
1番人気ファリダットは意味不明の人気馬。
春のNHKマイルカップでも人気してこけているのに、
古馬混合のG2に入ってまた人気しているのは奇妙としか言いようがない。
前走は確かに強かったが、それは1600万での話。
今回G2に一気に格が上がった上に斤量も1キロ増。
なぜ人気していのか、今でもよくわからない1頭だ。
私の本命スズカフェニックスはスローと見るやまくりを打ったが、
それでも勝ちには繋がらなかった。
年齢的、戦歴的にもそろそろ上積みは見込めず、
引退の時も近づいてきたように思う。
レースレベルは上位はややレベル的に低調。
短距離路線は実績馬が今ひとついいレースをしてくれないこともあって、
全体にレベルが低調に映ってしまう。
そんなに抜けた馬はいないのは間違いないだろう。