2009年12月のメインレース回顧
阪神ジュベナイルフィリーズ回顧
強烈な馬が現れた阪神ジュベナイルフィリーズだった。
勝ったのはブエナビスタ。
この馬は初戦こそ牡馬相手で3着に敗れたものの、
2戦目の未勝利は非常に強い内容で制して、ここでも評判が高かった。
個人的には未勝利の勝ち鞍だけで本命には推したくなかったため、
他に本命をうつしたものの、
しかしこのレース振りは圧巻だった。
最後の直線ではダノンベルベールが外にあわせてきたものの、
しかしそれを並ぶ間もなく交わし去ったスピードは非凡である。
2歳のこの時期の馬としてこの競馬ができるのは圧巻だし、
相当強い馬が現れたと見ていいだろう。
普段阪神ジュベナイルフィリーズというのはクラシックには繋がらないことが多いのだが、
しかしこれだけの競馬を見せられると、十分に通用する可能性を期待したくなるというものである。
2着は私の本命ダノンベルベール。
この馬は前走牡馬の500万相手に強い競馬を見せてきている馬。
正直ブエナビスタには完敗だったものの、
今回のレース内容は普段の阪神ジュベナイルフィリーズのレースだったら優勝馬としてもおかしくないものだった。
今年は例年は出馬しない馬がいた、というだけで、運がなかった。
例年なら、十分勝ち馬として名を連ねても不思議無い馬であった。
3着ミクロコスモスは、キャリアが1戦しかなくてこの競馬。
最後の差し足は見事だったし、これもレベルが通常の阪神ジュベナイルだったら勝てたかもしれない。
4着ショウナンカッサイにしても、レベルの低い年なら勝ち馬として名を連ねてもおかしくない実績なだけに、
このレースは非常にレベルが高かったものと思われる。
近年のこのレースにおいても、非常にレベルが高かったであろう一戦。
普段はこのレースで終ってしまう馬もいるレースなのだが、
今年に限っては、後々まで通用する馬が何頭も居た、そんなレースだっただろう。
中でも、その強敵を全く物ともしなかったブエナビスタは非常に強力な馬であろう。
来年のクラシックで十分通用する馬の登場だろう。
カペラS回顧
今年から新設された重賞、カペラS。
時期こそ12月に移ったが、事実上、1月のガーネットSの位置が移ったレースと見ていいだろう。
レースは、上がりは36秒0でまとめているものの、
しかしレースの内容としては完全な前つぶれの後方一気オンリーのレースだった。
なかなかここまでの前つぶれというのは、中山ダート1200ではないのだが、
このレースに関しては例外が起こったレースだった。
勝ったのはビクトリーテツニー。
前走の勝ち鞍が1400でのものだったように、後方一気のこの馬には、
実質は1200よりも1400の方が競馬をしやすいのだろうが、
ここはぴったりはまった印象での優勝。
展開さえはまれば、重賞でもやれるということを見せた馬だった。
2着もこれまた追い込み、スリーアベニュー。
この馬はかつてガーネットSを追い込んで勝ったこともあり、追い込みの脚には定評がある。
必ずしも追い込みの流れでなくても追い込んでくる馬なのだが、
これだけ前がつぶれる展開になると、楽であったということか。
3着に実績馬、フジノウェーヴ。
比較的前に行っていて、なおかつ斤量をかなり背負わされていたことを考えると、
この馬が実質の勝ち馬と言っていいかもしれない。
地方馬だが、そう侮れない存在である。G3なら十分勝負になるレベルだ。
私の本命ナンヨーヒルトップは、東京1600からの転戦であった。
中山1200はペースが早くなるので、東京1600あたりの馬でも勝負になるのだが、
今回はペースもあって、あと少し足らなかったと言うことか。
前走のレース振りが良かったし、オープンでも狙える馬だろう。
レースレベルは通常。1月に行われていたガーネットSと同じくらいのレースレベルは確保できそうだ。
ただ、今年の上位の馬は追い込みで勝負をつけた馬も多かっただけに、
他の1200のレースとは、あまりリンクしない可能性はあるだろう。
中日新聞杯回顧
父内国産馬のレースから、混合の一般のレースに変わったと事によって、
レースの性質が変わった中日新聞杯。
菊花賞の後のローテーションに組み込まれたレースとなった。
今年は古馬に1頭強いオペラブラーボがいて、
それに対抗するのが菊花賞からの馬、という構図だったのだが、
レースを制したのは菊花賞からのグループだった。
勝ったのはヤマニンキングリー。
前走でオープン特別を勝っていたものの、相手関係はここよりは明らかに楽。
さらに斤量も今回1キロ増えているという、この馬にはあまり有利とは言えない条件だったのだが、
それをものともせず、跳ね除けての優勝だった。
3歳と非常に若いこともあるし、今後もG3の常連クラスにはなれる可能性は十分。
ただし、それ以上、G2レベルで好走できるかは、疑問も残る。
さしあたり、ハンデのG3なら、というタイプの馬だろうか。
2着フサイチアソートはもっと難解な馬だった。
福島記念でも4着に負けてしまっており、
これはもう、「ハンデ戦でレースを2回やれば勝ち馬が変わる」というタイプの馬か。
東京コースで実績を挙げていたので、同じ左回りで、
しかも直線の短さの割にはスタミナを問われる中京だから、
似た適性が求められた、ということなのかもしれないが。
この馬は安定して走るイメージはないだけに、
今後も不発続きの後のハンデ戦での一発が怖い1頭。
本命オペラブラーボは不発。
ここまでのレース振りからはここで負ける馬では無いと思われていたのだが、
差してくるものの、最後届かないというのは不可解な負け方だった。
後に中山に変わってもまた不発に終っており、
若干、連勝の疲れがあったか、あるいは実は力がこんなものだった可能性もある。
血統からも大物のイメージがあっただけに、非常に残念な敗戦だった。
レースレベルは通常。ハンディキャップのG3としては十分に機能している。
これからも、菊花賞からまわってくる馬のレースとして、十分に役目を果たしていってもらいたい。
ジャパンカップダート回顧
今年から阪神の1800メートルで行われることとなったジャパンカップダート。
この、小回りの1800で行う条件では、かつて一度中山の1800で行われたことがあるのだが、
コーナーを4つ回る性質上、どうしても極限のスピードは求められず、
結果として年齢を重ねた馬に勝機が訪れるものなのだが、今年もそんな結果となった。
そして、今年最大のハイライト。優勝はなんとカネヒキリ。あのカネヒキリが復活したのだ。
確かに、4角まで好位のインを追走して抜け出す、という、ダート1800では最も勝ちやすい競馬だったのは事実だが、
しかしこの馬、長期の屈腱炎での休養、しかも途中で再発までしている重度のもので、
そこからの復帰というのはめったに無い。
ましてやG1級のこの馬の実力を損なうことなく、完全に復活するというのは、
確率的にそうないことであって、そう多く見られるシーンではないだろう。
さらにこの馬の素晴らしいところは、屈腱炎からの休養明け、わずか2戦で復活しているところである。
普通の放牧であるならば、休み明け2戦目で能力をフルに出せる確率が高いのだが、
屈腱炎で、しかも年規模で休んでいた馬の場合、普通は完全復活には半年近くかかることがほとんど。
にも関わらず、カネヒキリは前走をわずか1戦叩かれただけでここまでガラっとかわってきたのだ。
これはもう、本当の名馬と呼ぶより他無いと思う。
今後は屈腱炎を再発させないように細心の注意を払いつつ、
しかしG1で戦えるだけの状態に戻さないといけないという、少し難しい調整が求められるのは事実だが、
しかしそれでも、これだけの馬である。
この調子なら、G1、7勝の壁を破ってしまう可能性すらあるように思う。
ちなみに個人的にはカネヒキリは全盛期の能力はゴールドアリュール級だと思われ、
ここ12年の私の競馬歴の中では、クロフネに継ぐ、ナンバー2のグループに属している。
2着以下では、ヴァーミリアンが競り負けて3着に落ちたのが若干気になる。
確かに外を回らされる不利があったのは事実だが、
それでも2着争いにも競り負けるあたり、そろそろ衰えが見えてきたのかもしれない。
カネヒキリは長期の休養を挟んでいるから、まだ活力があるだろうが、
こちらは2度の海外遠征まで含んでの6歳。衰えが生じても不思議ない。
そろそろ怪しい、と読んでおいてもいいだろう。
私の本命サクセスブロッケンは、前走休み明けでヴァーミリアンに迫っており、こんなものではない。
実際年明けのフェブラリーSで結果を出しているわけだが、
どうもここは力を出し切れなかった模様である。
小回りの1800は難しい、ということか。
レースレベルは通常。
東京の2100に比べて、距離が縮むのはいいが、しかし小回りの1800というのも紛れが生じやすい。
外国馬にとっては参戦しやすい条件になるものの、
国内の名馬には、やや取りこぼしの可能性のあるG1となってしまった印象はやや、残る。
鳴尾記念回顧
ここは先に行った馬が総潰れになった一戦だった。
勝ったサクラメガワンダーにしても、2着のナムラマースにしても、
後方から競馬を行った組。
前に行った馬にはかなり苦しい競馬になってしまった。
そんな中勝ったサクラメガワンダーは非常に強い競馬。
4コーナーを回るときの手ごたえで、すでに圧勝を予感させた。
実際最後の直線では後続を3馬身ちぎり捨て、
前走天皇賞で6着しただけの強さは見せたと言える。
G1では少し足りない馬であるが、G2、G3なら抜けて強い力を持っていることが明らかになった。
今回は競馬が綺麗にハマった感はあるのだが、
それでも3馬身の圧勝に、何か一皮むけた印象を覚えたのは私だけはないはずだ。
ナムラマースはこれで完全復活か。
展開に恵まれたのは確かだが、それでも3歳のG3を制してから精彩を欠いていたこの馬、
ここに来て復調して来ているのは明らか。
今後にも期待がかかる。
3着ドリームガードナーは展開に恵まれた感が非常に強い。
オープン特別なら話は別だが、G3では今後も勝ちきるまでは辛そうな印象だ。
レースレベルは通常。
勝ったサクラメガワンダーはG1の好勝負の後だっただけに、
ここでは抜けていた印象を持った。
今後のさらなる活躍に期待が持てると思わせた一戦だった。
ステイヤーズS回顧
ここは小回りでの適性と、騎手の技量で決まった重賞だったように思う。
勝ったのはエアジパング。
この馬は夏の北海道の2600で連対しているあたり、
元々長距離のコーナーの多い競馬が得意な馬ではあったのだが、
今回鞍上に横山典騎手を配して、ますます能力に磨きがかかった印象。
ただこの馬はそれほど抜けた印象でもなく、
今回最高の競馬をした、というだけの印象があり、
今後はオープン特別あたりが主戦場になるかもしれない。
2着はフローテーション。
G1、菊花賞でも2着に入ったように、ここでは明らかに抜けていた馬。
1周目で先頭に立ってしまったように、ひっかかり癖は気になるものの、
古馬混合重賞でもやれることが明らかになった1頭。
この馬はかかり癖さえ収まれば、G2クラスでも十分やれる存在になるか。
3着はトウカイエリート。G2では格負けする馬なのだが、
ここは条件にも恵まれての3着。今後は厳しいか。
レースレベルは通常。
例年あまりメンバーが揃わないので、今年もG2としては不足のレベルなのだが、
これでも毎年のメンバーは揃ってきているとも言えなくも無い一戦だった。
中山の3600という、特殊な条件で行われる重賞だけに、
普段の力関係とは関係ない馬もだいぶ浮上してきた一戦。
ここの上位の馬を、今後あまり信用しすぎるのは危険だと思われる。