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2009年 6月のメインレース回顧



宝塚記念回顧

このG1レース、格の上からは間違いなくG1なのだが、
どうも、G2級の馬たちでも十分に通用するレースとなってしまっている。
これは非根底距離で行われているG1であること、
内回りでのレースのため、外回りとは違って適性が求められること。
他のG1に比べ、出走馬の層の厚さに問題があること。
などから起こっている現象である。

今年も、G2級に毛の生えた程度の馬の優勝で終った。
勝ったのはドリームジャーニー。
この馬は明らかな内回り巧者。
前々走の大阪杯ではディープスカイを負かしている馬であった。
さらに前走は不得意である外回りのレースでも3着しており、
今回内回りに変わればレース振りが変わることが予想された。
しかし、人気になったディープスカイとの比較では、
大阪杯はディープスカイは休み明け、初の59キロ、内回り、の三重苦で、
今回そのうち斤量と休み明けが解消された分、
今回はディープスカイに目があると思われたのだが…。

それでもドリームジャーニーは立派。
血統的に父ステイゴールド、母父メジロマックイーンという血統であり、
血統的に奥行きがあり、今がピーク。
夏馬でもあったし、今回は条件がどんぴしゃであったか。
これまでのレースからはG2級の馬、というイメージだったが、
それも宝塚記念の性質からすれば、さして問題にならなかった、ということか。

対して敗れたディープスカイ、この馬は今回苦手な内回りではあったのだが…。
どうも、そこまで圧倒的に抜けて強い、というほどではないのかも知れない。
内回り巧者の1着馬に負けるのはともかく、サクラメガワンダーにまで負けてしまったのはいただけない。
確かに外回りがベストの馬ではあるのだが、それでも内になったからといって、
競馬の性質が少し変わる、というだけの話で、絶対的な能力で克服できる相手だったと思う。
去年の神戸新聞杯からも勝ちがないあたり、どうもそこまでの強さは感じられない。
やはり、通常のG1クラス、というところか。
名馬になる権利は喪失したと言っていいだろう。

2着サクラメガワンダーは驚きの2着。
いくらG2級で勝負になるG1だと言っても、この馬はそんなに抜けているとは思いづらく、
ましてや、京都記念ではライバル馬の回避による2着、
前走は実質G3級のレースを制しての参戦で、いかにも苦しい立場だと思われたのだが…。

レースレベルは低調。
ディープスカイもそれほど強い馬というわけではないことを考慮すると、
それ以外はどれもG2級とそれほど差の無い馬たちであって、
G1と呼ぶには小粒なメンバー構成だったように思う。
ドリームジャーニーには内回りのG1が、ここと有馬記念しかないのも辛い。
有馬記念はこことは全くレベルの違うメンバーが集まるため、
今回のように上手くいくかは微妙なところだからだ。
さしあたり、例年より若干小粒なメンバーで行われたG1、という認識でいいと思う。


マーメイドS回顧

近年ハンデ戦になってからというもの、ずっと荒れ続けている重賞、マーメイドS。
今年は例年に比べれば骨のある馬が人気の上位に来ており、
若干固く収まる可能性も考えられたのだが…。
結果としては今年も中波乱と言ったところだったか。
2着に4番人気ニシノブルームーンが入ったのは、これはいいだろう。
前走牡馬混合の1600万を制した馬で、
今の抜けた馬の居ない牝馬限定重賞ならば、いつでも勝ち負けになる馬だった。
しかし、勝った馬は意外な伏兵だった。

勝ったのは逃げたコスモプラチナ。
今回のレースが6ヶ月ぶりということで、無条件で無印にしてしまった馬なのだが、
レースはこの馬にお誂え向きの展開となる。
単騎逃げで、また能力をもっとも発揮しやすい、前半より後半が少し早いだけ、
というまさに逃げ馬にはちょうどいいペース。
さらに道中追いかける馬もおらず、4コーナーでも後方が押し寄せてこなかった。
これならばこの馬には有利に運ぶ。
個人的に無印にしたのと同じ理由、半年振りと、前走大敗で、
この馬は勝手に沈む、という憶測が間違ってしまったレースだった。
多くの騎手も、後方の人気馬にマークが行って、
単騎逃げのこの馬にはほとんどノーマーク、そんなレースだったように思う。
今回はとにかく展開がどんぴしゃであったのと、ハンデのためで、
そうそう連続して好走するとは思えないが…。

2着はインをついたニシノブルームーン。
前走牡馬混合からのG3のハンデで、思いきった騎乗ができたことと、
ハンデの52キロも味方した印象だ。
レベルの低いハンデのG3なら、1600万を勝って軽斤量、は注意が必要。

人気のリトルアマポーラ、ベッラレイアはその次。
ここでは格が違う、という意味での人気だったのだろうが、
それでも負けてしまったあたり、やはり全幅の信頼を置けないのと同時に、
牝馬の一線級はやはりレベルがそんなに高くない、ということを表しているように思う。

私の本命ザレマは、今回のスローからの切れ味比べでは見劣ったが、
しかし、10着というのはいかにも負けすぎで、
ここは本命を打ち間違えた印象。あるいはマイルくらいの距離の方がいいか。

レースレベルは通常。
牝馬の一線級は出てきたが、しかしその一線級もそこまでのレベルではないのは間違いない。
通常のハンデのG3クラス、と見ておいて間違いないだろう。


エプソムカップ回顧

ここは先週のG1よろしく、2強ムードのレースだった。
当日になって、シンゲンに激しい発汗が見られたことから、
人気はヒカルオオゾラに流れたが、
しかし前日のオッズでは2頭が2倍台という、一風変わったオッズが見られるシーンもあった。

レースもまさにそのとおりの展開で、
最後の直線ではシンゲンとヒカルオオゾラの一騎討ちとなり、
レース前の印象がそのままレースの結果と一致した。

勝ったのはシンゲン。
レース前の発汗はあったものの、しかしこの馬、気性的に燃える馬で、
普段からパドックからレースにかけても、エキサイトする馬。
パドックの発汗もいつものことで、鞍上の藤田騎手が、
「普段に比べたらおとなしかった方」と発言している。
おそらくは現時点では入れ込みながら力の差で勝ちきってしまっているのだろう。
6歳馬ながら、今回が14戦目と、キャリアが非常に浅く、
馬の気性が成長してくるのはまだ先のことになるのかもしれない。
これでレースに集中できる気性を手に入れたら、さらに一歩先を狙える器だと思う。
入れ込みながら、重賞を連勝するのはなかなかできるものでは無いからだ。

ヒカルオオゾラも非常に惜しい内容での2着。
シンゲンは相当能力を秘めている馬で、G3にとどまらない印象を持つ馬。
それに最後まで食い下がっているのだから、
これは今回はヒカルオオゾラもいい競馬をしているのと同時に、相手が悪かっただけ。
おそらくはG3ならすぐにでも手が届く馬だろう。
G3なら改めて期待したい馬。

キャプテンベガは毎度の3着。
どうも瞬発力、持久力ともに中途半端で、ベストの条件、というのが見つけられない。
今回は横山典騎手の好騎乗もあっての3着で、上位とはやや力差があったように映った。

レースレベルは高い。
勝ち馬はG3にはおそらくとどまらない馬だし、
2着のヒカルオオゾラにしても、G3なら強い勝ち方ができる馬だ。
シーズンの終わりに、レベルの高い競り合いを見られた、そんなレースだったように思う。


CBC賞回顧

ハンディキャップのG3ということで、まずまともには決まらないだろうと思われた1戦。
しかしその割には、理屈で収まる範囲内で終ったレースだったように思う。

勝ったのはプレミアムボックス。
この馬は長いあいだ不振が続いて、人気を完全に落としてしまっていたが、
しかし元をたどっていくと、冬場のタイムのかかるG3を制覇したことのある馬。
今回タイムのかかる梅雨時の中京で、その時と非常に似通った条件のレースだった。
格としてもG3、しかも時計がかかるコンディション、というのも一緒。
近走は確かに不振で、オープン特別でも勝てない馬だったのだが、
しかし今回は斤量も2キロ軽くなるし、鞍上も変わっていた。
本命にはとても見られない馬だろうが、
しかしおおがけの可能性が全く無い馬ではなかったように思う。
時計と、制覇したレースの格を考えていけば、決して抑えられない馬ではなかった。

2着はエイシンタイガー。
この馬に関しては、斤量が物を言った印象。
かつては古馬と3歳馬は力量差があって、
なかなか3歳馬では古馬に太刀打ちできなかったものだが、
近年は調教技術が進み、3歳でも高い能力を持つ馬が出現してきた。
その中で、斤量は相変わらず軽いままの52キロなのだから、
これは積極的に狙える。
この馬の場合、2歳から積極的にレースに出走しており、
すでに力のピークが近かったのかも知れない。
ただ今回はあくまで斤量のおかげと言う部分も否定できず、
今後斤量が増えれば、さらなる成長力がなければ苦戦を免れないだろう。4

3着スピニングノアールはいつもこの時期だけ走る馬。
よっぽど中京の馬場がいいのだろう。時計のかかるコンディションも合っている。
ここ2年いつも夏場になると復活していたのだが、
さすがに3年連続、という可能性は低いと判断したが、それでも3着に来たのは立派。
中京1200はベストフィットということか。

レースレベルは、短距離自体のレベルがとても低い状態。
おそらくレースをする度に着順が大きく変わること請け合いで、
今回のレースでも新星は現れなかったように思う。
ハンディキャップのG3、という立場そのままのレースだった。


安田記念回顧

今年の安田記念は「2強」ムードであった。
私は世間で2強だの3強だの言われていても、
あまり気にしない人間なのだが、
このレースに関しては世間の意見と自身の意見が一致した。
つまり、ウオッカとディープスカイの一騎打ち。

結果的に、その2頭での決着となったのだが、
しかし終ってみれば、レースの内容としては、ウオッカの1強だった、
という印象を強く受けた。

最後の直線、ディープスカイは先に抜け出し、確勝ムードを見せたのだが、
最後までもたついていたウオッカは、最後200mで前があくと、
一気に瞬発力の差で差し切ってしまった。
結果的にワンツーで、2強のイメージは正しかったのだが、
しかしレース内容は明らかにウオッカの方が1枚上手。
直線の長いコースでの瞬発力勝負では、ウオッカに軍配が上がった。

ウオッカは武豊騎手が話しているように、今が一番強い競馬をしている。
元々力はあった馬なのだが、道中引っかかる悪癖があった。
しかし、年齢とレース経験を重ねて、道中からスムーズに競馬をできるようになった。
また、マイル戦では道中が早く流れるため、折り合いも付けやすいのだろう。
4歳の、充実期を迎えているディープスカイを交わし差ってしまうのだから、
ウオッカの強さは本物だろう。もはや名馬の領域なのは明らか。
これでG1、6勝目。殿堂入りも見えてきたのではないだろうか。

対するディープスカイは、今回は完全に力負けの印象。
名馬に育つ可能性を考えていたのだが、
前走、今回と負けてしまったのは、若干の不満は残る。
もちろん強い馬なのだが、競馬史に残る名馬であったら、
ここでウオッカに完敗はしないはずである。
通常レベルのG1クラス、というところの馬の可能性が出てきたように思う。

3着には最後方からのファリダットが入ったように、
明らかに今回はペースも早く、G1として底力を示す一戦となったように思う。
上位に入った馬も確実に力を出し切っている。
G1らしいG1となった今年の安田記念だったのではないだろうか。
レースレベルも通常レベルで、いいレースだったように思う。
G16勝目のウオッカは、今後も大いに期待できる完勝だったように思う。


ユニコーンS回顧

3歳ダート重賞というのは、中央ではこれがはじめてとなる。
そのため、例年は中央のダートの強豪は大体このレースに集約され、
そのためレベルの高いレースが展開される。
今年は若干例年に比べると、小粒なメンバー構成だったように思う。

しかし、勝ったシルクメビウスはこれで3連勝。
若干頼りないレース振りに映るのは、ある程度は騎手の腕の責任もあると思う。
それでも3連勝するあたり、現状のダート路線では強力な馬と言うことなのだろう。
鞍上強化なら、まだ上も目指せそうな印象を受ける馬である。
今後古馬に入ってどれまでやれるか、楽しみにしたい。

2着はグロリアスノア。
この馬もダートでは2戦2勝で、しかも前走は圧勝。
ダートでは底を見せていない印象だった。
今回最後差されてしまったが、これも騎手強化ならまだまだわからない。

この上位2頭は、騎手が2流どころでこれだけの競馬ができており、
3着以下とは力の差があると思う。
2流騎手が重賞で人気になったことで、「混戦である」とする向きもあるらしいのだが、
2流の騎手が乗っているにも関わらず人気するところ、
またその馬たちが上位を占めることを考慮すると、
混戦どころか、上位2頭は抜けて強い、と考えることができると思う。

レースレベルはG3としては十分に機能しているように思う。
例年の勝ち馬ほどの印象はないのだが、
しかし今年の3歳世代自体が高レベルという可能性も無くは無い。
今後古馬にはいっても好勝負できる馬も、存在するかも知れないと思う。