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2009年10月のレース回顧



スワンS回顧

今年のマイルチャンピオンシップは天皇賞組から決まりそうだな。
そんな印象を持ったスワンSだった。
レース前からレベル的に難があることはわかっていたわけだが、
レースが終って、ますますレベル的にどうなんだろう、という思いと、
混沌としている、という思いを強くしたレースだったように思う。

勝ったのはキンシャサノキセキ。
G1で2回2着がある馬であるから、間違いなく力はある1頭だ。
ただ、実績の割りにずば抜けた能力を感じないのは、
気性的にムラがあって、安定して力を発揮できないことに起因しているように思われる。

今回は相手がかなり弱化していたことと、鞍上に名手スミヨン騎手を配したことで、
能力を十二分に発揮したように思われる。
相手はかなり弱い印象があるため、ここでの優勝が本番に直結するかは不透明。
本番も名手スミヨン騎手ならば、あるいは大穴で、くらいの評価はできるか。

2着はアーリーロブスト。
この馬は正直何を目標にしているのかよくわからない馬である。
芝に使ったり、ダートに使ったりしてきていて、そのどれも凡走。
今回芝の短距離に転じて、一転して良さが出た、という感じ。

人気薄でのことでもあるし、過大評価は禁物も、芝の短距離なら重賞でもやれるところは示した。

3着はマルカフェニックス。
レベルの低かった昨年の阪神カップを優勝してきており、
今回もレベル的に難のあるG2、という、似通った条件だったため、
結果も似たようなものとなった。
次のG1ではどうかと思うが、今後もG3か、レベルに難のあるG2くらいなら勝負になるか。

私の本命トレノジュビリーは1400のレースにもかかわらず引っかかった。
スプリント戦の早い競馬を戦ってきていただけに、折り合いに難をきたしたか。
この年齢まで、G1でそこそこまで来るほどの力はあるが重賞を勝っていない、というのは、
気性的な問題もあるのかもしれない。
格をさらに下げての出直しだろう。

レースレベルは低調。
元々本番と直結しないG2レースなのだが、今年もその傾向は続くか。
富士Sもレベル的に難がありそうなだけに、
本番は天皇賞から距離を縮めた馬の天下となるかもしれないと感じたスワンSであった。


毎日王冠回顧

ウオッカが始動する、そのためにあったようなレースでは無かっただろうか。
有力格馬も、さすがにウオッカが強いのは認めていたし、
どこまで接近できるか、という戦いだと思っていた陣営も多かったはず。
実際登録した馬は多かったが、勝機なしと見て回避する馬もかなり多かった。

しかし、その強いはずのウオッカを負かす馬が出てきてしまったのである。
人気的にはそれほど全くの人気うすというわけではなく、実際馬連はかなり売れていたのだが、
勝ったのはカンパニーだった。
ウオッカとの比較では、まさかこの馬が勝てるわけがない、と思わせるところが多かっただけに、
比較的穏当に決まったにも関わらず、波乱、という印象の残るレースだった。

カンパニー。
この馬はG2大将で、G1だと見事に少し足りない、という馬の典型例。
それが、G1でも強い内容の勝ち方ができるウオッカを負かしたのだから、
いくら今回がG2だったとは言え、驚きの結果だった。
勝ち方としても、馬場を考えれば前半59.9はスローペース。
実際上がりは33秒0の上がりを要求され、
持久力が勝負の決め手となる中山が得意なこの馬には辛い展開であるはずだった。

しかし、実際には極限の脚を使っており、瞬発力も非凡であることを、この年齢で示したのだから、
これは相当威張っていいことだと思う。
さすがに、「8歳にして本格化」というケースは世界的に見ても稀であろうから、
おそらくは今回はぴたっとはまった、という部分も大きいと思うのだが、
このレースに関しては非の打ち所のない完勝だった。
次、天皇賞でどうか、と言われたらかなりの不安を感じざるを得ないが、
G2ならまだまだやれる、というところを示した一戦だったように思う。

ウオッカに関してはこの一戦だけで衰えたと言うのは酷だと思う。
中間16本(追い切りを含めると17本)追っているだけに、
できの問題ではなかったと思うから、実力?という疑問も沸いてくるだろう。
しかし、G1で圧勝できる力がそう急に衰えるとは思えず、
次のG1ではしっかり変わってくると思うのだが、どうだろうか。

3着ハイアーゲームに関しては、上がりの早い瞬発力を要求される競馬が合っていたこと、
1800の距離が向いていたことが激走の秘密ではなかったか。
さすがにG1ではいらないだろうが、今後も外回りのG3クラスなら面白そうな1頭。

レースレベルは通常。
ウオッカに関してはG1を連勝できる馬だが、他の馬は並のG2級、と言った所。
例年レベルが高いレースでもあるし、総合的に考えて平均レベル、だと思う。
ウオッカに関しては、秋の天皇賞に向けて、若干の課題はあるものの、
とりあえず、無難なスタート、と言った所ではなかったか。
カンパニーは大金星。
年齢的なことを考えても、絶賛できる激走だったように思う。


京都大賞典回顧

抜け出した馬の居なかった今年の京都大賞典。
1番人気が重賞未勝利のジャガーメイルなのだから、
混戦ぶりは明らかであった。

そんな中勝ったのはG1馬で、昨年のジャパンカップで5着に走っているオウケンブルースリ。
今回のメンバーでは、ジャパンカップで5着に走れるだけの馬が他に見当たらなかっただけに、
この馬は実力的に抜けていたように思われる。
ただ、59キロのハンデと、半年以上の休みを考えて人気が落ちていたのだと思われる。

しかし、それでもレースは完全な圧勝。
最後は流す余裕すらあるもので、ここでは力が違った、ということだろう。
次はここを叩いて上積みも見込めるし、G1の舞台だったとしても侮れない。
持久力もあるこの馬。有馬記念まで目が離せない1頭である。

2着はスマートギア。
前走負かされたナムラクレセントが毎日王冠で4着しており、
前走は相手が悪かった、というところだったか。
外回りでは強い競馬を見せる馬だし、だいぶ力をつけてきているのは明らか。
G1ではさすがに、だろうが、今後もG2、G3の直線の長い競馬なら怖い1頭である。

3着はトーセンキャプテン。
札幌記念では最後の3ハロンが35.1で上がってきていて、
ある程度の力はある馬。
今回は相手にも恵まれての感はあるものの、
しかしやっと重賞を勝った頃の状態に戻ってきたか。

レースレベルはやや低い。
このレースは普段からハイレベルな一戦なのだが、今年はそこまでのメンバーではなく、
重賞未勝利馬が1番人気になるほどだった。
ただ、勝った馬に関しては休み明けと、59キロを克服してのものであって、
これはあまり低い評価はできない。このレースに関しては完勝でもあった。

1着馬はG1に向けて、2着以下はG2、G3戦線に向けてのステップになったのではないだろうか。


スプリンターズS回顧

原因不明、その一言に尽きるレースだった。
少なくても、個人的には。
一応の解釈としていくつかの解釈がなされているようだが、
理屈の上では意味不明、としか言いようの無い結果だった。

つまり、アルテマトゥーレの敗戦。
正直、この馬が負けるケースというのをほとんど想定していなかった。
出遅れ、故障くらいしかないだろう、くらいに思っていたのだが…。

上に述べた、いくつかの解釈、の中に、
気性的に今日はテンションが上がりすぎていた、というものがある。
汗をかいていたり、極端に暴れたりの状態ではなかったのだが、
目が「イッてしまっている」(国士無双さん談)
状態だったらしく、馬の精神状態が普通ではなかった可能性が高い。

それに含めて、今日は人気でマークされる競馬になった。
前回の非常に優秀な内容のセントウルSは、人気薄での好走で、
基本的に他の馬はアルティマトゥーレは眼中に無かったような状態での好走。
今回はG1で人気ということで、前回と同じような競馬にならなかった、ということなのかもしれない。

気性的な要因と、厳しいレースだったことの複合的な要因によっての敗戦だったのだろうか。
実力的にはこんな馬では無いと思われるだけに、次こそは、というところだろうか。
おそらく本格化はなっていると思われるだけに、あとは厳しいレースになった時どうなるかだけだろう。
メンタル面を含め、G1でも負けない馬と、成長して行ってもらいたい。

勝ったのはローレルゲレイロ。
ここ2走大凡走で、さすがに終ったのではないかと思わせておいて、
ここでしっかり復調してきた。
基本的にG1はG1馬から狙えばいい、というのがセオリーであるし、
この馬を狙ってもいいのだが、しかし高松宮記念が低レベルな一戦だったことを考えると、
なかなか狙いづらい部分もあったように思う。
中京は逃げ馬には辛いコースであるから、それを逃げ切ったのはさすが、とは言えるのかも知れないが…。

2着はビービーガルダン。
一連のステップレースの中で、一番強い内容だったのがセントウルSで、
その次に、おっ、と思わせる内容だったのがビービーガルダン。
牡馬で、G1の舞台を踏んできているあたりに、この馬にもチャンスがめぐってきたか。

しかし、どう考えてもアルテマトゥーレが力を発揮していない、としか思えない。
3着がカノヤザクラなのだから、この馬によりも弱い、というのは考えづらいのだが…。
上に挙げた要因こそあるものの、個人的には不可解な決着だった。

レースレベルは低調。
今の短距離路線は抜けた馬の居ない混戦なのは間違いなく、
新星誕生に期待がかかったのだが…。
さしあたり、暫定王者がG1、2勝目をあげ、
暫定、の文字は取り消してもいいか、そんなレースだったように思う。


シリウスS回顧

人気のワンダースピードの本番はまだ2ヶ月先で、
ハンデの、それも2000mという特殊な条件のレースのため、
非常に難解な一戦となったこのレース。

勝ったのはワンダーアキュート。
前走の1600万を圧勝しており、今回斤量が変わっていなければ、
抜けて強い馬がいないここでは、武器になったか、という1着。

それにしても、3馬身抜けたのは意外、ハンデのG3で54キロで出られるなら抜けている、
ということなのだろうか。
兄が大きく大成した馬なだけに兄並、あるいはそれ以上の活躍が期待される。
今回は斤量的にも恵まれたのは事実だし、
特殊な距離で行われた重賞、という要素もある。
次、別定の条件に変わってどんな競馬ができるか、ということで、真価が問われるだろう。

2着はダークメッセージ。
故障明けで、調教の本数がそれほどでない状態でここまで走っているのはさすが、
という思いと、1着馬にこれだけ離されれば、2着はまぎれて当然、という思いもある。
休養前の平安Sでは勝負に加わらせてもらえていなかった点もあるし、
どうも、2000m以上の長い距離でこそ、というタイプなのかも知れない。
血統的にダンスインザダーク。
ダートをこなしているのが意外だが、距離は基本的にあればあるほうがいい、という馬。
今後は交流重賞の長いところが狙い目か。

3着はゴールデンチケット。
この馬も3歳で、前走の芝のG2では大凡走している馬が、ここで巻き返した。
さすがに層が厚い、ということなのだろう。
レースとしてはこれ以上無いくらい力を発揮できている。
武騎手ということと、阪神の2000は前が有利、というのが聞いているのだと思われる。

レースレベルは平年よりは高いように思う。
特に勝ち馬はハンデのG3だけの馬、という感じはしない。
今回のような楽な競馬にはならないだろうが、
次回以降、別定の重賞でも期待がかかる1頭だ。