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2009年11月のレース回顧



アルゼンチン共和国杯回顧

G1の谷間の一戦で、荒れることも多いこのアルゼンチン共和国杯。
今年も実績馬がG1では少し足りないメンバーだったから、
波乱の要素も含んだ一戦、ということだったのだろう。

勝ったのはミヤビランベリ。
春の目黒記念では圧勝していたのだが、
あの時は極悪の不良馬場で、今回とは馬場が全く違う、
と思わせて、人気の盲点に入っていた馬なのだが、
どうやら、春のG2制覇は単に重馬場が上手かった、というだけではない模様。
(重馬場が上手いのは間違いないのだろうけれども)

今回スタミナが必要とされる2500mの競馬、ということもあって、
この馬には浮上の余地があった。
前走の2000では良さが生きないのだろう。
この馬はまさにステイヤー。
次、ジャパンカップでは少々心もとなく思うが、
スタミナが必要なステイヤーズSなら面白い存在だと思われる。

春の目黒記念はフロックではなかった、ということなのだろう。

アーネストリーは距離が長い中、よく踏ん張っての2着。
最後前走とは全く違う脚色になってしまったあたり、
おそらくは府中の2500は長すぎる馬なのだが、
それでも2着に踏ん張ったのは実力をつけている証明。
春にはG3でも勝負になっていなかったが、
前走の走りはすでに重賞級で、今後2000あたりに距離を詰めてくれば、
相当期待できる存在となると思う。

3着はヒカルカザブエ。
春の阪神大賞典は馬場も言われていたのだが、
しかし今回ここまで粘ったあたりを考えると、十分力もつけてきている印象。
G1、G2では少々辛い気がするのだが、
しかし今後もスタミナを生かせる競馬になれば、G3あたりなら有力だ。

レースレベルは通常。
ミヤビランベリは今後もスタミナを問われるレースなら注目できるし、
アーネストリーもG3くらいならいつでも勝てる存在となった。
谷間のG2としては、いいレースになっていたように思う。
通常レベルのG2として、十分機能していたように思われる。


ファンタジーS回顧

どういうわけか、ラナンキュラスが抜けた人気になっていた一戦。
はっきり言って、負かしてきた相手が強いわけでもないし、
別段強烈な勝ちぶりだったわけでもない。
謎の人気、ということで、
個人的にはむしろ混戦のレースだと思っていた。

結果的に、大混戦の決着となり、上位もそれほど抜けた馬とは思えないだけに、
2歳牝馬路線はまだまだ混沌。
まだクラシックどころか、次のG1戦線に向けても混戦のまま、というところだろう。

勝ったのはタガノエリザベート。
今回に関しては大外一気が決まったのだが、
前走、前々走では別段レベルの高いわけではないレースで負けてきてしまっており、
そこまで強力な馬、というわけでは無いと思う。
このメンバーでの、比較級第一人者、というところだろう。

2着はベストクルーズ。
この馬にしても、初勝利は3戦目。
1戦目、2戦目にそれほどの相手に負けているとは思えず、
重賞で2着、というほどの力は無いように感じるが、どうなのだろうか。
実質500万を勝った、くらいの力の持ち主だと思う。

3着はグレナディーン。
前走ラナンキュラスに負けてしまっていて、そのラナンキュラスが今回4着だから、
まあ、このあたりの力は大体5分くらい、ということなのだろう。

私の本命カレンナホホエミは直線を向いたらなぜか下がる一方。
騎手も全く追うそぶりを見せておらず、一体何があったのか。
心房細動、ハ行でも起こしていたのか。
正直、そんなことが疑われるような敗戦。
一体何があったのだろうか。騎手にコメントを聞いてみたい。

レースレベルは低調。500万よりはましだろうが、G3としては物足りないメンバー。
オープン特別級のレースだったように思う。
ただ、他に有力馬がまだ決まっているわけではなく、
オープン特別級のメンバーでも足りてしまうG1が暮れにあるので、
過信は禁物だが、一概に切り捨てるのも怖い、とうようなレベルであったように思われる。


武蔵野S回顧

今年のこのレース、地方交流重賞を除外された馬がこちらにまわったため、
出走馬の層が非常に厚くなったレースだった。
しかし、それらの馬に調整のミスがあったか、
軒並み有力馬が大凡走。波乱の結果となった。

勝ったのはワンダーアキュート。
前走から斤量こそ2キロ増えていたが、
しかしその前走は圧勝で、本格化の兆しは見えていた。
今回実績の無い府中コースに変わったが、
スピードが要求されるコースに変わっても結果を今回出し、
これならば確実に本格化。どの競馬場でも狙える馬となった。
負かした相手が重賞では2〜5着くらいの多いダイショウジェットだから、
今回で府中でもG3くらいなら勝負になることを示している。
パワーや持久力を試される、阪神などではさらに浮上の余地があるか。

2着はダイショウジェット。
オープン特別では強い競馬をして、G3では少し足りない、
というレースを繰り返していた馬だけに、
今回の相手が揃ったこのレースでは厳しいかと思われたのだが、
上位人気の有力馬が端からこけた結果、通常のG3級のこの馬で足りてしまった。
今後もG3あたりまでなら十分好勝負できる馬だろう。

3着のワイルドワンダーにしても、通常のG3でなんとか、というレベルの馬だと思う。
次がG1では苦戦必至か。

私の本命サクセスブロッケンは引っかかった。
それにしてもここまで負ける馬ではないはずなのだが。
何しろこのコースでG1を勝っている馬。
単純に斤量が、などの問題では無いような気がする。
力を出していないのは明らかで、巻き返しに期待したい。

本来レベルの高かったレースなのだが、力のある馬が端からこけてしまったために、
上位は通常のG3レベルのレースとなってしまった。
ただ、メンバーは揃っていただけに、ここで負けていた馬にも、
G1でまだ巻き返せるチャンスがあるように思う。
1着馬と同時に、ここで凡走した組にも注目が必要だ。


天皇賞・秋回顧

8歳馬の天皇賞制覇が成った。
優勝したカンパニー。
前走の毎日王冠ではウオッカを完封するなど、力を示していたのだが、
年齢的なものもあって、「これ以上の上積みは難しい」と思ったファンも多かったように思う。

しかし、この馬はここに来て完成した、としか言いようが無いと思う。
今まではG1では4、5着を連発。
G2に入れば強い、という、典型的なG2大将だったのだ。

その馬が、前走からがらっと変わってきた。
前走負かしたのはウオッカだったが、これは展開の綾もある、と見られていた。
しかし、今回G1の言い訳の利かない舞台で、
またしてもウオッカに決定的な差をつけての完勝をしており、
まさに文句無し。
上がり3ハロンはなんと32秒9を計時し、極限の瞬発力を見せ付けた、
としか言いようの無い結果であった。

競走馬の寿命が延びた今、今までの常識は通用しないのかも知れない。
「8歳にして本格化」という、今まででは考えられなかった現象が、
現実に起こったとしか思えない結果であった。
今日は完勝。
次がマイルチャンピオンシップだそうだが、今日のレースができれば、
相手はむしろ弱化する可能性が高く、G1の連勝となる可能性が高いと思う。
とにかく完勝。文句無し、の結果であった。

2着はスクリーンヒーロー。
瞬発力比べの昨年のジャパンカップを優勝したこの馬。
その後持久力勝負の内回りに使われたり、外回りの天皇賞は距離が長すぎたり、
なかなか活躍の場を与えてもらえなかったこの馬なのだが、
やはり展開がハマればG1を勝つだけの力がある、というところを示した。
次もペース次第。
スローになれば、この馬の瞬発力は相当なものであることを示したと言える。

3着ウオッカは、32秒9という、1着馬と同じだけの上がりを使っており、
もう、展開の差、としか言いようが無い決着。
いくら瞬発力に秀でている馬とは言え、これ以上早い上がりは計時できず、
展開で負けた、という印象である。

私の本命オウケンブルースリには最悪の展開。
もう少しレースが流れるのではないかと思っていたのだが、
まさかの上がり勝負。
こうなると、この馬にとっては今日示した上がりが精一杯であろう。
レースが流れれば、ジャパンカップでの巻き返しが十分あると思われる。
あるいは、瞬発力よりも持久力が試される、有馬記念での一発もあるかもしれない。

レースレベルは通常。
カンパニーはG2級の馬という印象だったが、
2戦連続でG1馬のウオッカに決定的差をつけており、もはやまぐれでは済まされない。
すでにG1級の力があることを認めるしかないだろう。
8歳馬の優勝という、新しい歴史が作られた、今年の天皇賞であった。