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2006年4月のレース回顧



天皇賞・春回顧

ディープ1色。それが今年の天皇賞ではなかっただろうか。
有馬記念の敗戦で、あるいは成長力に疑問が…と思われたディープインパクトだったが、
今年に入っての阪神大賞典と今回で、それは杞憂であることを証明した。
確かに、馬体重は今回がデビューからもっとも軽い体重だったが、
気性的には今回はあまりかからなかったように、だいぶ乗りやすくはなっているだろうし、
菊花賞当時からかなりの成長が感じられた。
また、肉体的な成長がそれほど無かったとしても、
この馬は最後の3ハロンを元々他の馬より2秒早く走れる。
ならば、衰えてしまわない限り、ならなる上積みは無くても問題なく勝てると言うことだろう。

今回は残り1000mで仕掛けると言う、超ロングスパート。
そこから、最後まで1000mの間、ずっと11秒台の脚を使い続けるのだから、
他の馬はたまらない。他の馬の極限の末脚を、あっさりと使えてしまうのが、
ディープインパクトなのだろう。
血統的に、長いところは本来よくないはずで、それでロングスパートを決められるのだから、
スピード的にまったく他の馬とは出来が違うのだろう。
次は海外。中山の坂程度で苦戦する馬だけに、馬場に対応できるかが問題だが、
純粋な能力だけなら、この馬以上の馬はいないだろう。
なんとか馬場への適性があることを祈るのみである。

天皇賞のレベルとしては、ディープインパクト以外はたいしたメンバーが集まらず、
低かったのが残念だが、今日のところは、ディープインパクトの走りを見られただけで、十分だろう。


青葉賞回顧

アドマイヤメインが理想的な競馬をして完勝した青葉賞だった。
12秒台のラップで道中走り、1度13秒に落として後続を引き付け、
最後また突き放すと言う、堂々とした走りぶり。
逃げに転じて、よさが出た。特に武豊騎手が騎乗だと、能力を十二分に引き出せ、
今回のような強い競馬が可能となるのだろう。
最後は4馬身突き放したように、ここでは絶対的に能力が違ったし、
能力だけなら十分G1でも足りる馬だと思う。
ただし、次走のダービーでは、今回ほど楽には逃がしてもらえないだろうし、
抑える競馬だともろいこの馬には、苦しい展開が予想される。
ただ、純粋な能力だけを論じるなら、この馬でも、今年のメンバーで通用すると見る。
それほど、強い勝ち方を見せた、アドマイヤメインであった。

2着はマイネルアラバンサ。オープンでなかなか勝ちきれないが、
それでも2着3着に走っていて、ただの1勝馬ではないということだろう。
3着エイシンテンリューも追い込んだが勝ち馬には全く届かない。
2着、3着では、次のダービーは辛いだろう。

レースレベル的には普通だが、
アドマイヤメインは勝ち方が逃げ馬としてはかなりレベルの高い勝ち方で、
あるいはダービーでも通用する可能性を見せた。次が楽しみである。


アンタレスS回顧

未勝利戦から実に5連勝。フィフティーワナーは重賞まで圧勝した。
ここで後続に2馬身半差は能力的に、相当上までいける存在であることを示す。
特に、負かした相手が、ヒシアトラスやサカラートで、交流重賞ならいつでも勝てる馬たち。
それらに決定的差をつけての快勝なら、今後は相当上までいける。
脚質的にも、今回は逃げたが、差しでも先行でも圧勝しており、自在性も高い。
血統的にも、ケンタッキーダービー勝ちのフサイチペガサス産駒なら、
ダートでの大成は約束されているだろう。
今回本命を打ちきれなかったのは、休み明けと、相手が強いと踏んだためだが、
それらをものともしない快勝は、相当の能力を持っていると思われる。
今後、芝に使うなどと言う話もあるが、ミスタープロスペクター系でもあるし、
順調にダートで戦歴を詰んで、名馬に育て上げて欲しい。
この馬には、それができるだけの下地は十分にあると見る。

レースレベルは、G13着のヒシアトラスや、G2で圧勝のサカラートが2、3着なのだから、
高いものがあったと見る。そこで勝ったフィフティーワナーは本物だろう。

本命サカラートは控えて差しに転じたが、元々追って味のある馬ではない。
スピードに任せて押し切るような競馬がベストで、逃げや先行向き。
あまり差しの競馬は向いておらず、2着争いに競り負けたのは仕方ない。
今後も素直に先行策なら、交流G1くらい取ってもおかしくない存在だと思う。


フローラS回顧

こちらも牝馬限定のG1前哨戦。3歳馬限定で行われているのだが、
桜花賞の2週後という時期の開催のため、あまり有力どころが集まらない。
むしろ、桜花賞と同じ週の、忘れな草賞から、オークス候補が誕生することが多い。
今年もメンバーはそれほど集まらなかった。
何しろ、前走未勝利を勝ったばかりの馬が7頭で、
しかもその7頭から穴人気の馬が出てしまうなど、G2とは名ばかりのレースとなった。
勝ったのはヤマトマリオン。先週の皐月賞に続き、オペラハウス産駒の勝利となった。
最後の切れ味こそ、他の馬より優れているように見えたが、
他の馬というのは、未勝利上がりや、G1では歯が立たないグループで、
それらとわずかな差しか見せられていないこの馬では、オークスは苦しいか。
1着馬に限らず、上位にそれほど強力な馬がいるようには思えず、
レースレベルも例年に比べ、非常に低かったように思わざるを得ない。
桜花賞もそれほど抜けた馬はいないから、牝馬路線自体、やや低調な年になりそうだ。

本命テイエムプリキュアは、G1制覇後3連敗。
特に今回は相手に非常に恵まれており、ここで凡走は、将来に暗い影を落とした。
特に次のオークスでのいきなり一変は、かなり難しいように感じた。


福島牝馬S回顧

今年から、春の大一番、ヴィクトリアマイルの前哨戦としても機能することになった福島牝馬S。
優勝したのは、前走の1000万特別ですら負けてしまっているロフティーエイムだった。
ゴール前は混戦となって、最後に伸びたのは、サンデーサイレンスの血ということだったろうか。
基本的にはサンデーサイレンス産駒は、荒れ馬場は得意ではないが、
絶対能力の差で、勝ちきってしまうことがある。
特に、2000m前後の距離では、それが顕著に現れる。
あとは、52キロの軽ハンデと、吉田隼人騎手の好騎乗であっただろう。
その三つがそろって、ゴール前、もう一頑張りに繋がった。
ただし、それらみっつがそろっての勝利であって、これで即G1でも通用、と言う話ではないと思う。
レースレベル自体、決して高いものではなく、
G1の前哨戦としては機能していない可能性が高い。
牝馬限定G3としても、レベルは低かったものと推測される。

本命レクレドールは、やはり気が難しい馬。いつ走るのかわからない。
能力発揮なら、このメンバーで遅れを取る馬ではないのだが。


皐月賞回顧

桜花賞に引き続き、混戦と目された今年の皐月賞だが、
結果的には、強い馬が、本番を迎えてやっとはっきりした。と言う感の強いレースだった。
アドマイヤムーンがいまひとつ強い勝ち方をしてきていないだけに、
付け入る隙があるかと思われたのだが、実際レースでもそういった決着。
勝ったのはメイショウサムソン。スプリングSの勝ち馬だ。
戦前まで、私はどのトライアルを重視するかを見誤っていた。
レベルが普通レベルと見ていたきさらぎ賞は、実は高レベルのレースだった。
その時の1着2着が入れ替わっただけの皐月賞だったのである。
例年は、ラジオたんぱ杯、弥生賞が高レベルになることが多いのだが、
今年は、きさらぎ賞、スプリングS組みが、実は力が強いという決着だった。
きさらぎ賞が普通レベルと見たのは、メイショウサムソンも、ドリームパスポートも、
昨年の萩Sなどで、フサイチリシャールにまったく歯が立たなかったのだ。
そこで、フサイチより、一枚劣ると見ていたが、その後の成長力で、
メイショウ、ドリームはフサイチを超えていった。
特にメイショウサムソンは、テイエムオペラオーと同じオペラハウス産駒で、
クラシックの時期に、実力をつけてくる血統である。
今回、1、2着と、3着に2馬身の差ができたように、実は上位2頭はかなり強い。
3着以下からも巻き返しは図れる可能性はもちろんあるが、
中山2000mでやれば、上位2頭はやはり強力だし、
府中に舞台が変わっても、それだけで上位2頭を見くびるようなことがあってはならない。
個人的には、差しが不発だった組より、上位2頭が優勢と見たい。

レースレベルは幾分例年より低い気もするが、それは古馬との対戦のときに考えればよい。
ただ、本当の名馬級かはまだ未知数で、日本ダービーに向けては、
さしあたりマルカシェンクの復活に期待。もし、アグネスフライトのような、
強烈な勝ち方をトライアルでできるようなら、あるいは逆転もあるかもしれない。

本命フサイチリシャールは、2番手で折り合い、4角で先頭押し切り体制という、
この馬にとってはベストの騎乗。それで負けるのだから、仕方ない。実力は出し切っての完敗。
かつて完封していた相手に負けており、成長力にやや疑問が残る。
ダートに転じれば面白い気もするが…。


マイラーズカップ回顧

今年から、ヴィクトリアマイルが新設されることになったため、
そちらへのステップとしても機能することになった、マイラーズカップだが、
2着3着には、ヴィクトリアマイルの有力馬になりそうな馬が入った。
勝ったのは牡馬、こちらは安田記念が目標であろうダイワメジャー。
前走では道悪に泣かされて、2番手から抜け出せなかったが、
今回はしっかり末をのばし、2着以下を完封した。
喉に病気を持っているが、昨年のマイルCSでも2着に頑張ったように、
それほど競走能力に致命的な状況でもないようである。
牝馬が相手だったため、やや能力の比較は難しいが、本番も混戦になるようなら、十分やれる逸材。
2着は牝馬のダンスインザムード。
牡馬相手にここまでやれるのは、能力の証明だし、一時期のスランプを脱したなら、
次のヴィクトリアマイルでも十分好勝負。
3着ディアデラノビアは距離適正の差で、やや上位とは開きがあるか。
こちらはマイル戦より、秋のエリザベス女王杯のほうが向く気もするが、どうだろうか。

レースレベルは、上位に強力な馬がいたため、そちらは高い。
3着までと、4着以下で、ややレースレベルに差があるレースだった。


桜花賞回顧

混戦。それがレース前から叫ばれていたレースだったが、
レースが終わっても、いまひとつ釈然としないものの残る、桜花賞だった。
おそらく、今年のメンバーでは、抜けて強い馬は存在しない。
事実、勝ったのは前走のフラワーカップで、フサイチパンドラの自滅によって、
勝利が転がり込んできたキストゥヘヴンだった。
前走の時点では、桜花賞でどうこうとは思えない馬だっただけに、
それが勝ってしまって、評価が難しい。
2着にも本当に強いのかわからないアドマイヤキッスが入ったし、
レースを見ていると、例年よりは、幾分レースレベルが低いように映った。
さしあたり、このメンバーで戦えば、キストゥヘヴンが一番強いと言うことか。
ゴール前に見せた切れ味はかなりのものには映ったが、それほど強い馬ではない気もする。
G1を勝った馬に言うのも失礼な話だが、暫定王者、という感じだろうか。

しかし、悠長なことも言っていられない。このままオークスに直行する馬も多いだろうし、
オークスに行かなければ、NHKマイルカップにやはり直行だからだ。
適性で言うならば、キストゥヘヴンはマイル向きの切れ味に見えなくもないが、
こういった混戦の場合、結局2400で行っても、1600と変わらない決着になることもある。
前哨戦で、強力な馬が出てくるのか、また出てこないのかをしっかりチェックしたい。

本命タッチザピークは10着。大外枠の不利はもちろんあったろうが、
4角で早くも後退は、いくらなんでも負けすぎ。前走も負けているし、オークスは苦しいか。
血統だけならスペシャルウィーク産駒だし、距離はこなせそうだが…。


阪神牝馬S回顧

今年から、春に移った阪神牝馬S。今までは暮れのレースで、
有馬記念に向かうには能力的に厳しい馬や、距離の壁がある馬が登録するレースだったが、
これからは、純粋にヴィクトリアマイルの前哨戦として機能していくこととなった。
ヴィクトリアマイルは有力馬の故障や引退によって、上位の層が薄くなりそうなことから、
ここから強力な馬が出てくれることを祈る思いだった。
勝ったのがラインクラフトで、2着がエアメサイア。やや、いつものメンバー。という気がしないでもない。
G1級の牝馬は、引退が相次いで、それほど新星が現れるものでもない。
G3級の牝馬が相手なら、上位2頭が抜けていたと言うことだろう。
あまり、面白みはないレースだった。

レースレベルは、前年までとは条件が異なってくるので、比較するのはナンセンス。
上位2頭は抜けていて、3着以下はかなり差があったように思う。
次のG1で通用するのは、やはりその2頭ということになってしまうだろう。


ニュージーランドトロフィー回顧

勝ったのはマイネルスケルツィ。
馬主の期待が強かった1頭だったが、ここに来て成長してきた。
そもそも馬主がローテーションを勝手に決めて、1800mのレースに使わせていたことが、
この馬の素質開花を遅らせた要因となった。
この馬は1600mまでで、能力を発揮できる馬のようである。
2000でも、それなりには対応するが、本質はマイル以下がベストか。
前走の勝ち方と、今回の重賞制覇で、NHKマイルカップの有力馬にのし上がった。
今回は内枠に助けられた部分もあるだろうが、勝ち方は先団につけて抜け出すもので、
安定感のある走り振りであった。1600m以下で、あらためて期待。
2着ファイングレインもここ2走は1800m。1600mが向いていたのと、
逃げる展開がベストであるということなのであろう。

レースレベルは年によって世代差があるので難しいが、一応普通と見る。
マイネルスケルツィはここにきて力をつけているし、NHKマイルカップが楽しみ。
ただし、外国産馬の出走は多くはならないため、本番の層はそれほど厚くならないかもしれない。


産経大阪杯回顧

重馬場の影響。それが大きく響いた産経大阪杯だった。
勝ったのはカンパニー。ここまではG3級でしか通用しなかったが、
ここに来て、G2を制覇した。
重馬場で、ペース判断が難しいところだったのだろうが、
普通、逃げ馬が有利になる展開で、前に行った馬が残れなかったことから、
実はハイペース。カンパニーには有利に働いたか。
次は天皇賞に向かうかもしれないが、長距離経験がないだけに、苦手と断定はできない。
今までの実績では1800や2000がよかったが、
それはそもそも中距離のレースにしか使っていないためで、
血統的にもトニービン系、長距離に案外対応してしまう可能性はある。
2着マッキーマックスは2000では苦しいとみせて置いて、十分対応した。
若いころ、確かにこなした距離ではあったのだが、近走は勝ちきれておらず、
ここで2着は大きい。3200に距離の伸びる次走は相手は強くなるが、
ここでこでだけ対応できれば、十分面白い存在になりえる。
3着スズカマンボはレース後、故障が判明。最後追っていないようだったが、
すでにレース中にやっていたか。競走能力喪失で、種牡馬入りが濃厚だ。

本命アドマイヤジャパンは、今回も前回に引き続きハイペースに敗れた。
次走天皇賞に向かってくれれば、人気も落ちるし、いい狙いどころになるかもしれない。

レースレベルは好メンバーがそろって、天皇賞のステップとして機能したと思うが、
重馬場にたたられてどの馬も走りづらかったのが残念。
ここで負けたグループにも、次の本番で十分チャンスがあるだろう。
重の影響が色濃く、ここの結果は、それほど重視する必要は無いと思う。


ダービー卿CT回顧

ハンディキャップ競走になってから、荒れることの多くなった重賞であるが、
今年も結果は波乱だった。
1番人気のインセンティブガイが11着に飛んだほか、人気どころの凡走と共に、
なぜか前走でインセンティブガイに完封されてきた組が1、2着では、
理論的に解明していくやりたかでは、非常に難しい予想となった。
グレイトジャーニーは若いころ期待された馬であるが、ここに来て重賞タイトルを再び手にした。
正直近走の実績からは、オープン特別級で、重賞では…
と思われたが、G3のここで好走して見せた。
特にハンデに恵まれたわけでもなく、不思議な好走。
2着のキングストレイルも、良血であるから将来はともかくとして、
現状の能力ではどうかと思わせておいての2着。全く不思議な馬の1、2着だった。
マイル路線も、レベルは低くはないだろうが、G3級のレースでは混戦ムードなのだろう。
走るたびに全く着順が変わりそうである。

本命テレグノシスは5着。中山コースで、積極策が求められたが、なんと道中は後方2番手から。
これでは長い直線でしか爆発力の生かせないトニービン産駒には厳しい。
まだ、目標は先と言うことで、自分のレースを壊したくなかったのだろうか。

レースレベルは普通だろうが、上位はそれほど強力な馬と言う感じはしない。
むしろ負けたテレグノシスやインセンティブガイに、将来性を感じた。