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2006年5月のレース回顧



目黒記念回顧

今年から、ダービー後の最終レースに移された目黒記念。
やや、ダービーから1時間半近く時間が空いてしまうため、気持ちが空回りする部分もあったが、
それでも1日に二以上の重賞を行うのは、海外ではよくあることだし、
土曜開催では客入りの関係もあるだろうから、面白い試みではあると思う。

勝ったのはポップロック。前走で1000万を1秒ちぎっていて、
さらに斤量4キロ減なら、十分に勝負になると思われたが、(詳しくは後日の日記で)
実際に昨年の天皇賞で3着した事のあるアイポッパーを封じての勝利で、
能力のあるところを見せた。今回は斤量もあるだろうから、試金石は次の1戦になるだろうか。
2着アイポッパーは、3角過ぎから後方に下がって、そこから巻き返す競馬。
ややレースのしづらい馬のようだが、ハンデのG2クラスならやはり強かった。
後方に下がってもあわてなかった鞍上はさすが。

レースレベルはハンデのG2クラスの典型的な例というようなレースで、このレースとしては普通。
ただ、他の競走に比べると、目黒記念自体がそれほどG1級レースで通用するような馬は、
あまり出走例がなく、ポップロックも次は別定のG1だろうから、いきなりは難しいかもしれない。
ハンデG2らしい、ハンデG2だっただろう。


日本ダービー回顧

今年は前日の雨の影響で、馬場は渋った日本ダービーだった。
さらに、道中はスローペースで、後方にいた馬にはかなり厳しいダービーだったろうが、
それでも、実はその差して来れなかったグループというのは、
皐月賞ですでに能力の上限を示してしまっていた馬ばかりで、
結果としてそれらが凡走したことによって、
上位は後に繋がる馬たちが入線できたのではなかっただろうか。
特に、1着メイショウサムソン、2着アドマイヤメインは、能力が高い。
勝ったメイショウサムソンは、皐月賞馬。その時の勝ち方が、成長を感じさせるものだったし、
2着との差はともかく、3着には決定的差をつけている。
2頭は抜けていると思われたが、その勢力図がはっきり出たダービーだった。
特に、今回、前走青葉賞を好時計勝ちしているアドマイヤメインを破ってだから、
非常に価値が高い。十分に例年の勝ち馬と同等の能力は持っている。
血統的にも父オペラハウス、母父ダンシングブレーヴなら、スタミナは十分。
3冠に向けて、視野良好となったダービーだろう。

今回そのメイショウサムソンに土をつけられる位置にいたアドマイヤメインは、明らかに大事に乗りすぎた。
4角で馬群が一塊になるようなスローペースでは、確かに自身はばてないかもしれないが、
他の馬たちも確実に伸びてきてしまい、結果的に好走どまりになってしまう。
ダービーのような大舞台では、馬に+αを与える騎乗をしなければ勝てない。
鞍上柴田善臣騎手の勝負弱さは相変わらずだった。
3着ドリームパスポートも、皐月賞でメイショウサムソンに接近したあたり、
能力的には大差ないが、血統的に2400はきつかったか。
それでも3着に走るあたりは能力は持っている。
今後も2000m前後のレースなら強力な馬になっていくだろう。

大きく負けた人気馬たちは、確かに馬場と、スローペースに泣かされたが、
良馬場の皐月賞でもまったくメイショウサムソンに歯が立っておらず、
正直、今回は過剰人気の感が強かった。今後の成長でどこまで巻き返せるか、だろう。
現時点ではおそらく良馬場でもここまでの負けはないにしても、敗戦は確実だったと思う。

レースレベルは、皐月賞のメンバーに、他の路線が加わって、通常レベルに高まった。
特に、上位は今後の可能性に期待が高まった。


金鯱賞回顧

馬場状態にやや惑わされた騎手の多かった感のある、金鯱賞。
ローゼンクロイツ1頭が抜けているような感があったレース前だが、
ゴール版を抜けた時、ローゼンクロイツの前には1頭馬がいた。コンゴウリキシオーだ。
前々走で大逃げをうって2着に粘るあたり、図太く伸びるという印象の強い1頭だが、
今回も道中は後方を離しての大逃げとなった。
しかし、ラップタイムを見る限り、実は前半1000mより、後半の1000mの方が早く、
見えているままの、ハイペースの大逃げではなく、むしろ、マイペースでの逃げだった。
これでは後続はたまらない。前が止まらないことに気づいた3角あたりから、
どんどん後続が押し寄せたが、これはもう、後の祭り。遅すぎる。
なぜ、他の騎手たちがペース判断を誤ったのか。
その答えは馬場状態にもあっただろう。
レース時には止んでいたが、朝から雨が降り、馬場状態が悪化していた。
そのため、実はスローペースで一人旅という、最高の逃げにもかかわらず、
他の騎手たちは、馬場が悪化しているにもかかわらず、通常の馬場のペースで走っていて、
結果的にハイペースだから、最後は止まるという判断を下したのだろう。
しかし、結果は先にも書いたとおり、スローでの大逃げ。コンゴウリキシオーの楽勝だった。
能力は依然不明だが、はまれば図太いというのは再確認できた。

ローゼンクロイツは4角から一気に仕掛けて捕らえに行ったが、当然届かない。
それでも3着には差をつけた2着に入るのだから、能力は本物だ。

レースレベルは低調な1戦。勝ったコンゴウリキシオーも展開に恵まれており、
G1級ではやや苦しいように写った。


オークス回顧

ミスオンワード以来47年ぶりの無敗のオークス馬が誕生した。
勝ったのはカワカミプリンス。ここまで3戦3勝だったが、
G1まで舞台が高まった今回も、今まで以上に強い競馬を見せてくれた。
そもそも、前々走で1400で出遅れて追い込んで勝ち、
前走も1頭別の次元の脚を見せたこの馬だけに、この結果は不思議ではない。
今回は、道中かなり引っかかるそぶりを見せながらの優勝で、
この馬の能力には舌を巻くばかりだ。
桜花賞組みが、レベルが高くないだけに、別路線から来たこの馬にも十分チャンスはあった。
血統的にもキングヘイローの仔という事で、距離の融通は利く。
そういった意味で、やはりこの馬が樫の女王にふさわしい馬だった。

やはりと言うか、桜花賞組は苦戦。戦前は桜花賞組が有力と言われたが、
やはりレベル的に難があると、別路線組みにもチャンスが出てくる。
2着に入ったフサイチパンドラは、桜花賞でまったく力を出していない馬で、
やはり桜花賞上位の馬は苦戦した。秋も、この傾向が続く可能性がある。
現状で3歳牝馬の能力上位は、桜花賞組みではなく、
オークス上位組というのがはっきりしたオークスではなかっただろうか。

レースレベル的にはやはりやや例年より落ちる。
ただ、桜花賞に比べると、オークスの方がだいぶましにはなってきており、
今後のレース検討では、オークス好走組を上位に取るのがよいかもしれない。
カワカミプリンスは、同世代との対決なら、能力はかなり高いと見てよい。
ただ、古馬との対戦になった時に、レースレベルが低かったことがどう出るか。
やや、レースレベルなどから、難解が予想される。
同世代同士なら、現状ではカワカミプリンスと、フサイチパンドラが抜けていると思われる。


東海S回顧

レース前にヴァーミリアンの馬体重発表を聞いて青くなった。
マイナス21キロ。
レースでは、その影響が出たか、なんと最下位に敗れた。
これに象徴されるように、実力上位と思われた馬たちが、そろって惨敗を期した。
ヴァーミリアンの敗戦は、馬体重の急激な減少が敗因か、
あるいは、そもそも走る気がなかったかのどちらかだろう。
能力的にはこれだけ負ける馬ではなく、敗因は別にある。見限りは禁物。
またその他の実力馬では、パーソナルラッシュが道中引っかかって、
途中から逃げる展開になったし、ヒシアトラスは出遅れた。
実力馬に一頓挫ある中で、ペース的にもぴったりはまったのが、
勝ったハードクリスタルだったということだろう。後方からの追い込みが、ちょうどはまった。
血統的に、アブクマポーロと同じクリスタルグリッターズ産駒で、
ダートの長いところに適性があったか。
ただ、今日は人気馬が走らず、また前が早い展開ということで、恵まれた部分もあり、
今後も安定して走ると言うわけにはいかないだろう。
スタミナ比べで、最後止まるような競馬なら、注目の余地はあるが。
人気馬に一頓挫あった一筋縄ではいかないレースだった。

レースレベル自体は、出走メンバーから例年並みか、例年よりやや高いくらいだったが、
レースレベルを高めるはずの馬たちがそろって(実力以外の理由で)凡走し、
上位入線はそれほど強い馬ではなかったかもしれない。
むしろ、負けた組が、今後巻き返して交流重賞の有力馬になっていくだろう。


ヴィクトリアマイル回顧

今年より新設された栄えある第1回のヴィクトリアマイル。
古馬牝馬のマイルG1は日本では初で、近年の需要に答える形で新設された。
その第1回の覇者は、牡馬混合G1でもよく走っていたダンスインザムードだった。
この馬は、G1の勝ち鞍が桜花賞で、その後勝ち運から遠ざかっていたように、
マイルの牝馬限定は、待ち望んでいた舞台だっただろう。
かなりよい手ごたえで直線を向くと、インを強襲して、初の戴冠となった。
天皇賞で3着に好走するあたり、牝馬限定なら力が上だったと言うことか。

道中は先行集団を見るような、往年の岡部騎手が得意とした、好位差を見るような競馬だった。
騎手は岡部騎手の厩舎の後輩にあたる、北村宏騎手で、今回が初のG1となった。
藤沢師が指摘したように、やや追い出しがまだ早かった点はあったが、
インで我慢して、最後の爆発力にかけるあたり、徐々に騎手の腕も上がってきている。
名手へ、またひとつ階段を上がった北村騎手であった。

本命ラインクラフトも、勝ち馬と同じように、牡馬混合でも五分に戦えて来ている。
マイルチャンピオンシップではダンスインザムードに先着したように、
能力的にはまったく劣っていなかったが、
去年の阪神牝馬Sで4着に負けているように、時々消化不良のレースもある馬だった。
特に今回は、道中行きたがるそぶりをかなり見せており、
途中で折り合ったように見えたのは、実は馬が走る気をなくしていたのかも知れない。
今後も、気持ちが切れてしまわないかが、重要なポイントとなる。

レースレベルは第1回のレースだけに不明。
スイープトウショウ、シーザリオあたりが出走なら、文句なしに牝馬限定ならハイレベルだが、
今回はどうだったろうか。
ただ、第1回のレースにしては、無事な牝馬はみなここを目標にした感があり、
あるいは来年以降より、今年の方がレベルは高かったと言うことになるかもしれない。
そうなっては競馬会全体を考えれば損失で、
今年以上に盛り上がるレースが続いてくれることを願って止まない。


京王杯スプリングカップ回顧

能力的に、このメンバーではオレハマッテルゼが強かったと言うことだろう。
2着、3着には追い込んだインセンティブガイ、テレグノシスが入ったように、
ペース的にはハイペースとは行かないまでも、スローではない流れで、
それほど楽に逃げ切れるペースではなかったはずだが、
オレハマッテルゼは1400の距離をものともせず逃げ切った。
次は安田記念ということで、1600mの距離には若干の不安はぬぐえないが、
戦前にそれがあまり言われて人気を落とすようなら、買いかもしれない。
それほどに、1400mの勝ちっぷりは鮮やかだった。
G1を勝てるようになったように、ここに来て能力がだいぶ強化された。
相手関係も恵まれそうな安田記念でも、当然怖い存在だ。

2着にはインセンティブガイ。前走のダービー卿チャレンジトロフィーでは、
まったくいいところの無い惨敗だったが、やはりそれははしらなすぎただけ。
本来の能力はここで2着するくらいのものは十分に持っている。
G1となると、相手も強力だし、さらなるパワーアップが必要だと思われるが…。

レースレベル的には、安田記念の最重要ステップレースとしては、
幾分物足りないメンバーだったかもしれない。
平均より、やや下回るくらいのレベルのレースだったと思う。


NHKマイルカップ回顧

失礼な話だが、ロジックが「まさかの」優勝だろう。
3番人気に推されていたとは言え、これは多分に鞍上武豊が影響しており、
本来の実力でどこまで戦えるかと言ったところだったろうが、
相手なりに走ってきたこの馬は、実はこれだけの能力を秘めていたと言うことか。
G1を勝たれたが、レースレベルとしてはそれほど高いとは思えず、
今後古馬との対戦になれば、苦戦も想像される。
思えば、去年のNHKマイルカップも低レベルな結果で、現4歳はマイラーの層が薄い。
このNHKマイルカップに期待するところ大であったが、そういった意味でやや不満は残る。
ただ、収穫としては、3着に生まれが半年も遅い、キンシャサノキセキが入ったこと。
この馬はこれからの成長が見込めるので、これから上位に追いついてくる。
生まれのハンデを考えれば、この馬がもっとも強い馬と言う可能性がある。
秋以降はこの馬に要注目である。
フサイチリシャールは今回情けない競馬だったが、最後走る気をなくしているように見えた。
気持ちの問題で、本来の力はもう少しある。
ダービーであまり人気落ちのようなら、多少狙ってみるのも面白いかも知れない。

本命マイネルスケルツィは出遅れたが、それが敗因なのだろうか。
ここでの1着2着は、前走で完封していた馬。普通に走れば勝てない相手ではない。
鞍上柴田善臣騎手が大レースで勝負弱いことで有名で、
この馬の力を出し切れなかったのかもしれない。


京都新聞杯回顧

上がり33秒5のすさまじい時計が掲示されたレースになった。
道中のペースは1000m通過62秒8の超スローペース。
これでは後ろから行った馬はひとたまりもない。
32秒台前半の末脚を見せるか、ディープインパクトのように、
残り1000mからずっと11秒台で走り続けるような真似ができない限り、勝ちは無い。
勝ったのは逃げ馬を見るように進んだトーホウアラン。
人気上位3頭は差が無いと見たが、一番人気の無かったこの馬が、
もっとも積極的に乗ることができた。
その他の人気馬である、アエローザ、マルカシェンクは、前記のように、
馬の極限を極めるような競馬ができなければ勝ちは無かったわけで、今回は仕方ない。
ダービーの前哨戦であったから、差す競馬を覚えさせたかったアエローザ、
今までの形を壊したくないマルカシェンクは抑えたのは仕方ないだろう。
アエローザは、賞金的にダービーは出走できない。スローペースが恨めしいところだろう。
行った行ったのこのレース。勝ったトーホウアランと、
負けたマルカシェンクは、まだ互角だろう。
今回の敗戦でマルカシェンクを見限るのは早計と見る。
ペースがよどみないダービーで実力は出し切れるだろう。

レースレベルは非常に高かったはずで、ややレベルに疑問符の皐月組と、
それほど差は感じない。あるいは逆転も狙える位置にある馬が何頭かいた。
この組も、ダービーで狙えるかもしれない。


新潟大賞典回顧

勝ったのはオースミグラスワン。
正直、レース前になぜ1番人気になるのかわからなかったが、
みごと1番人気に答えて快勝した。4歳馬と言うことで、成長力に勝ったか。
ハンディキャップのG3なら、近走で1600万を勝っている馬なら誰でも通用するので、
この1戦で能力を断定するのは難しい。
相手関係は、今後ハンディキャップ重賞でいつも顔を合わせそうなグループだっただけに、
恵まれてはいた。今後の成長が無ければ、この馬もハンディキャップ重賞の常連化する恐れがある。
個人的には、今後はハンデ戦でたまに好走する馬になる予感がするが、どうだろう。
2着カナハラドラゴンはもう8歳。かつての馬という印象だったが、ここで好走。
ただし、年齢的に連戦連発は不可能。今後もハンディキャップ重賞で、
好走があるかどうかだろう。個人的には追う事はしない。

本命ヴィータローザは1番枠がすべてだった。
道中中段からレースを運ぶと、前に馬群が常にあるような状態。
前に進めなくては勝ちは絶対にありえない。
出遅れて大外に持ち出すようなことをしなくては外に出るタイミングも無かったのだから、
騎手の落ち度と言うわけでもない。1番枠がすべて。それだけだろう。