2007年4月のメインレース回顧


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天皇賞・春回顧

ドリームパスポートが抜け、混戦が伝えられた今年の天皇賞。
近年は長距離界のレベルが落ちてしまっているため、
長距離で結果を出し続けられる馬が極めて少なくなってしまった。
そのため、ちょっと前ならば、ステイヤー適性にものを言わせて、
なんとか掲示板に入るくらいの芸当をするべき馬が、
最近は連対。下手をすると勝ちまで持って行ってしまうG1になってしまっている。

今年の天皇賞を見て、メイショウサムソンが最後ハナだけ出てくれて、
こんなにほっとしたことは無かった。
これに、ドリームパスポートが加われば、久しぶりに普通の結果の天皇賞が見られたかも知れない。
メイショウサムソンの馬体は、正直まだ太い。
10キロは確実に絞れる馬体だと思うのだが、
その余分な贅肉をまとった状態で天皇賞を勝ってしまうのだからさすが。
この馬、今後さらに馬体がしまるようなら、もう一枚上のランクを目指せる馬だと思う。

今回の騎乗、一部では早仕掛けと呼ばれているようであるが、
昨秋の菊花賞では、早くも遅くもない、消極的過ぎる競馬で4着に負けており、
今回の騎乗くらいが実はベスト。
最後はクラシックから見せていた勝負根性でねじ伏せてくれた。
今後も積極的な騎乗を見たい。

2着エリモエクスパイアは、ハンデのG3で軽量で2着しているだけの馬で、
この馬を買えるのなら、他のどの馬も買えてしまう。今回は馬券的には的中は極めて難しい。
ただ、人気が無かったから即実力が無いかと言えば、そういうわけでもないだろう。
まだ4歳。成長力でここまで来たとも取れなくもない。
かつてステイゴールドも同じような成績から飛躍しており、この馬には今後も注目だ。

本命ネヴァブションは、どうしてあの競馬になったのか、ジョッキーに聞きたい。
なぜ追い込んだのか?なぜ3角から馬群に突っ込んだのか?
今回ははっきりとしたミス騎乗だから、この馬の真価は問われない。
次走、鞍上をスイッチして、改めて注目してみたい。

レースレベルはG1馬の出走が2頭だけ。
G2レベルの馬がたくさんいるだけのレースで、レベルとしては非常に低い。
土日共に、メインレースはレベルが低く、長距離界の今後が心配になってきてしまった。


青葉賞回顧

かつてはこのレースは日本ダービーに直結しないG3戦だったのだが、
日本ダービーへの路線が充実して、格もG2にあがったころから、
日本ダービーでも連対する馬が出てくるなど、近年躍進著しいG2レースである。

ところが、今年のメンバーを見渡す限りでは、
500万を普通の勝ち方をした馬が人気になってしまい、
1番人気にいたっては、500万を勝ち上がってもいない馬である。
これでは、よっぽどの勝ち方をする馬が出ない限り、
G1など、ましてや日本ダービーなどとてもとてもと思ったものだが、
レースもまったく平凡なものに終わってしまった。

勝ったのはヒラボクロイヤル。
重賞連対という実績は、ここまでレベルの低いG2の中にあっては、1頭抜けていた。
充当勝ちだろう。
しかし、その勝ち方は大して大物感があるものではなかった上に、
2着に負かしたトーセンマーチは、前走でやっと未勝利を勝ったばかりという、
極めて(少なくても現段階では)貧弱といわざるを得ない馬である。
しかもこの馬、前走では皐月賞で大敗したナムラマースに完封されており、
とてもではないが、ダービーをにらむとは言いがたい馬である。

勝ち馬でさえ、このレベルなのだから、負けた馬に至っては…。だろう。
もちろん、今後の成長力によっては、大きなレースを狙える馬が出て来る可能性はいくらでもある。
ただ、活躍する時期は、成長を上乗せした時期のことであって、
次のダービーで云々の馬は見当たらない。

1番人気で負けたオーシャンエイプスは、もう芝ではこんなものなのだろう。
調教では猛時計を連発しているようであるから、
ダートに転じて、もしかしたら巻き返しがあるかもしれない。
どちらにしても、初戦の圧勝に、ディープの残影を見すぎたようである。

レースレベルは非常に低調。近年の青葉賞にあっては、稀に見る低レベルなレースだった。


アンタレスS回顧

地味な、とにかく地味なレースだった。
毎年、そこそこのメンバーが集まってくるレースなのだが、
ダート界の頂点が薄くなってしまっている現状では、
そこからさらにレベルが下がるのが当然のG3クラスでは、このレベルになってしまうか。

勝ったのはワイルドワンダー。
1400mのオープン特別を勝ってここに挑んできたが、確かにスピードがある。
ただ、2着がキクノアローと言うことを踏まえても、
やはり抜けたものは感じられない。
2着キクノアローも展開が向いてよく走ったという印象しかなく、
あまり後に繋がるレースには思えなかった。

本命でもある3着メイショウトウコンは、ここでは抜けた存在と思われたが、
いかんせん追い込み専門。
ダートの1800mでは、ペースが緩んでしまうこともままあることで、
今回のように、前に行った馬がそこそこ頑張れば、
メイショウトウコンがいくら頑張ってみたところで時すでに遅し。と言うこともありえる。
今後の取捨が非常に難しい馬ではあるが、
ペースが早くなりそうな時は、かならず押さえておいて間違い無い馬。
今回の競馬ではこの馬が一番よく走ったように思う。

しかし、どちらにしても地味。
ダート重賞に、もう少し強さを感じられる馬が登場しないか、心待ちにしているところだ。


フローラS回顧

今年の3歳牝馬路線は、かなりのハイレベルな戦いが繰り広げられている。
桜花賞では、これまでの競馬内容から抜けていると思われたウオッカを、
さらにダイワスカーレットが上を行く競馬をした。
ここまでレベルの高い相手に通用するためには、
よっぽど強い内容でここを抜けなければならないと思われたレースであった。

勝ったのはレース前から評判になっていて単勝1倍台の人気になったベッラレイアだった。
「強い勝ち方」と言う評価が多いようであるが、
私の目には、まだまだ桜花賞組には差があるように見えた。
直線は確かにちょっと届かないようなところから差してきてはいるものの、
同時にかなり小粒だと思われるミンティエアーもあがってきており、
それとの脚の比較で、多少能力が上。くらいの印象しか受けなかった。

もちろん、例年のクラシックならま通用する可能性も否定しきれないところなのだが、
今年のハイレベルが予想されるオークスでは、正直どこまでやれるか。
高いスピード能力は無いと思われるので、
超ハイペースになった時のスタミナ比べになってどこまで…。
くらいのレベルだろう。
今回の勝ち方は、言われているほどのものではないと見た。

本命イクスキューズがマイペースで走っての3着だけに、
上の2頭の人気が上がるというのはわかるのだが、
イクスキューズは完全に最後止まってしまっていた。
あのペースで行って止まってしまうなら、これは距離の壁の可能性が高い。
距離が長くて止まった馬を交わしただけで、果たして上位2頭が強いのか。
甚だ懐疑的にならざるを得ない。

レースレベルは通常レベル。
恐ろしくレベルが低い年というのもあるが、そこまでレベルの低いレースでは無かっただろう。
ただ、桜花賞のレベルが高すぎると、個人的には思う。


福島牝馬S回顧


昨年ヴィクトリアマイルが新設され、一応トライアルとしての格付けがされた福島牝馬Sだが、
昨年は1000万を勝ったばかりのロフティーエイムが勝ってしまうなど、
今ひとつレベルに難があることは否めない。
今年のメンバーを見渡しても、牝馬重賞で活躍している
「いつものメンバー」すらおらず、
新星がいるかといえば、ダートの1600万を勝ったサヨウナラがいるだけという、
非常に淋しいメンバーになってしまった。

そんな中で勝ったのは、昨年秋に、ここで1番人気になった、
コスモマーベラスを完封したこともあるスプリングドリューだった。
そこを勝ってからは完全に不振に陥ってしまい、いいところが無かったが,
今回は実に強い競馬。前が泊まっているようにも見えなかったものの、
後方から直線だけで一気に交わし去ると言う、強い競馬だった。

ただし、鵜呑みにはできない。
上にも書いたが、レベル的にやや低調な一戦で、
最後強く見えたのは相手が弱かったと言う可能性の方が残念ながら高いと思う。
もちろん、牝馬限定G3くらいなら勝負になるだろうが、
次がヴィクトリアマイルだとすると、あまり期待するのはどうか。

本命はコスモマーベラスに打ってしまったが、今回休み明け。
それで1番人気なら、抜けた印象のある馬では無いだけに、
もう少し冒険をしてもよかった。守りに入って失敗した重賞だった。

レースレベルはもう、このレース自体が毎年低いので、
去年のメンバーから考えれば、まだ上がってきているように感じた。
これでも福島の牝馬限定重賞と言うことを考えれば通常レベルか。


皐月賞回顧

今年の皐月賞は役者ぞろいのレースと呼ばれた。
人気こそ、アドマイヤオーラとフサイチホウオーが分け合ったが、
20倍以内の「穴人気」的なポジションには多数の馬が入り、
抜けた馬はいない。と思われるレースであった。

終わってみて思うのは、抜けている馬はいた。と言うこと。
ただし、1頭ではなく、2頭いた。
そして、その2頭とも、戦前には正当に評価されていなかった馬である。

1頭目はもちろんヴィクトリー。
この馬、デビューからわずか2戦目のラジオNIKKEI賞で、
フサイチホウオーから差の無い2着に走っている馬である。
そこからは間違いなく上積みが見込めるわけで、
今回の逆転は、むしろ必然であったか。
ただ、レース振りは甚だ今後に不安を残すもの。
外枠をひいてしまったため、前に壁を作れず、そのまま行ってしまった。
なんとかこらえられたのは、馬に力があったことと、ペースが緩んだこと。
前半59秒と聞くと早いように思うかもしれないが、
バーク材使用後の春の中山は超高速決着になる。
特に、馬場が荒れてきてから早くなると言う、極めて不可思議な馬場である。
(そんな馬場に調整するJRAも不可思議だと私は思う)
そのため、ペースは緩かった。
今回のレースでは、東京コースは持たないので、
次は抑えが効くことが勝利の絶対条件だ。

2頭目の抜けておると思われる馬はフサイチホウオー。
こちらは正当に評価されていたではないかと言われるかもしれないが、
牝馬に負けたことのあるアドマイヤオーラより下というのは、
やはり正当に評価されているとは思えない。4戦無敗馬だ。
正直、ここまでのレース振りには私もG1を取るまでの強さを感じなかったが、
皮肉な事に、負けたこのレースがこれまでで一番強い内容。
G1級だけが持つ脚を使ってみせた。
勝利するG1がどこになるかは現段階ではコメントできないが、
どこかでは確実にG1に届く逸材である。

レースレベルは、普通レベル。
サンデーサイレンスの仔がいれば、勝ち馬の前にさらにいる印象はぬぐえない。
ただ、サンデーがいないことを考えれば十分タレント候補もいる馬たちだろう。