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2006年8月のレース回顧



新潟記念回顧

新潟の馬場は、連続の2開催目ということもあり、俄然外が伸びる馬場。
特に、直線の長い外回りや、直線競馬では、外ラチいっぱいを伸びてくる馬が多くなった。
新潟記念も外回りの競馬、果たしてと言うか、勝ったトップガンジョーは、外ラチいっぱいを伸びてきた馬だった。
内枠を引いたこの馬が、どういった展開で外に出したのか、
ちょっと(無印だったこともあり)見逃してしまったが、
大外まで持ち出せたのは、明らかに後藤騎手の好騎乗だった。
(レース後のインタビューではやはりの青いハンカチが登場したらしい)

トップガンジョーは前走のエプソムカップに続いて、重賞2勝目となった。
前回も今回も、相手には若干恵まれている可能性は否定できないものの、
この馬自身も力を付けてきているのは確かで、
父マヤノトップガンの、遅咲きの血が強く出ているのかも知れない。
そう考えれば、今後はもっと長い距離にも挑戦して欲しくなる。
この馬の良績は中距離だが、本格化なった今、あるいは長距離の大物になれるかもしれない。
現時点ではまだG1で…と言うレベルではないが、
距離が伸びて、さらによさが出るようなら、今後が楽しみになる1頭である。

2着以下は斤量に恵まれた馬などもいて、レースごとに着順が変わってくるメンバーだろう。
特筆するだけの馬は見当たらなかった。

本命ニシノナースコールは直線入り口ではこれは!と思わせる伸びだったが、
その後はその他大勢と変わらない脚色になってしまった。条件戦からの出直しだ。

サマー2000シリーズはこのレースで終わったが、個人的にはそれほど興味を引かれるものではなかった。
ただ、レースをシリーズ化することによって、
レベルの下がる夏競馬に意味を持たせることは大いにできた。
ここを目標とする馬も何頭もいた。(それによって宝塚記念がより淋しくなってしまったが…)
G3クラスのレースが氾濫する昨今では、こういった試みも重要なのかもしれない。


キーンランドカップ回顧

今年のスプリント路線は例年にない低レベルな戦いが多いが、
夏競馬になって、その流れはさらに加速してしまっている状態。
ほとんど、夏のローカル短距離重賞は硬く収まることがなく、また人気になる馬にも死角がある。

今回1番人気になったシーイズトウショウにしても、年齢的に6歳。
前走は函館の時計のかかる馬場が影響したは言え、最後は完全に止まっての2着。
今回は斤量的にだいぶ楽になることからも、持ち時計からも、人気になったのは当然だが、
まったく死角のない人気馬と言うわけではなかった。

レースはギャラントアローにモアザンベストが競る展開。
もう少し、ギャラントアローとしては強気に押して行ったほうが、この馬のよさが生きる。
56キロの斤量でもあるし、多少無理に行っても、止まる馬ではない。
全く、この馬のよさを生かせない騎乗だった。最下位大敗。
直線まず抜けたのは、人気のシーイズトウショウだったわけだが、
ゴール前、前走と同じように脚が止まってしまい、後続から迫る1頭に交わされた。

交わしきったのはチアフルスマイル。こちらも6歳牝馬。
1200mのレースに最近は走っていなかったために、今回はそれほど人気していなかったが、
1200mには3.1.0.1、と言う良績を残していた。
今回の勝利で、秋はスプリンターズSが目標となるだろうが、
1200mなら、1600mとは違った見方ができる馬かもしれない。

シーイズトウショウは今回も最後止まった。休み明けの1戦を57キロで好時計を掲示してしまい、
あるいは、その反動もあるか。これであまり人気が落ちるようなら、
逆に秋のG1で面白い存在になるかもしれない。

今回は1着から3着までが、全て牝馬。1、2着は6歳馬で、新鮮味には相変わらず欠けるスプリント路線。
今年のハイレベルな3歳馬の中から、短距離界を背負う大物が誕生して欲しい、
そんなことを願う。キーンランドカップだった。


札幌記念回顧

アドマイヤムーンにとって、試金石となった1戦。並み居る古馬を押しのけて、みごとに優勝した。
そもそも、今回は古馬、それも6歳以上の馬が9頭もいるという、やや活力に欠ける1戦。
しかし、彼等歴戦の勇士は、3歳馬の前に十分に立ちはだかれるだけの経験を積んできている。
レース展開もスロー。こうなると、何戦も戦い抜いてきた馬たちに有利に働いてもおかしくはない条件だったが…。

それでも勝ったのはアドマイヤムーン3歳馬だった。
春、皐月賞4着、日本ダービー7着で、能力に疑問符を打たれていたが、
今回は古馬を、スローの展開を中段後方から差しきるという強い競馬を見せつけ、見事に優勝した。
負かした相手は、2着がレクレドール、3着マチカネキララだから、
G2としてはやや物足りないかもしれないが、
先に書いた、歴戦の古馬たちはそれより下の着順になっているわけで、
少なくても、今後G2級のレースであったら、古馬と互角以上に戦えることを示した。
これで即、天皇賞の有力馬ということはないだろうが、候補の1頭にあがったことは間違いない。
体系的にも血統的にも、中距離がベストだろうし、あるいはマイルでも通用しそうな感じ。
逆に、あまり長い距離では能力を生かしきれないだろう。
天皇賞から、マイルチャンピオンシップ、あるいは香港へ。と夢は広がる。

今年の3歳馬、これで夏に古馬混合重賞はたしか3勝目で、実にレベルが高い。
特に、この札幌記念では、展開のあやではなく、ねじ伏せるような競馬での勝利であり、
今年の3歳馬のレベルが非常に高いことが鮮明になってきた。
アドマイヤムーンには、その先駆けとして、天皇賞でもがんばって欲しいところだ。

今回負けた組では、2着レクレドールは前走で復調気配を示したが、今回で完全復活。
ややムラな部分はあるが、G1でも牝馬限定戦なら上位にこれるだけの力はある。
3着マチカネキララは、天皇賞に向けては痛い敗戦。
負けたのはともかくとして、あまり見せ場らしいものもなかった。賞金的にも苦しくなった。

レースレベルとしてはそれほど高くはなかったが、
この時期に3歳馬が古馬混合G2を勝つと言うこと事体が、大変な偉業であって、
今後に結びつく可能性がある馬が誕生した1戦だった。


北九州記念回顧

今年の短距離路線は、名馬不在の様相を呈し、
それはG3級のレースにまで波及し、混沌とした様相を示している。
今回はメンバー的にも、普段よりさらに手薄なメンバー構成となってしまい、
上位と下位との能力差がはっきりして、上位が圧勝するかと思われた。

しかし、混戦はどこまでも続き、ここも勝ったのは、なんと前走で1000万を勝ったばかりの馬。
コスモフォーチュンだった。前走で直線1000mの競馬を勝っているだけあって、
スピードはそれなりにはあるとは思われたが、いかんせん下級条件の1戦。
まさか、G3でどうこうなるとは思えなかった。

しかし、レースはコスモフォーチュンがスピードに任せての逃げ切りだった。
しかも、併走する形になった、重賞勝ち馬のサチノスイーティーが13着に沈むペースで走って、
それで最後まで持ってしまうという、よくわからない結果だった。
函館スプリントSの時にも感じたことだが、
本来強くないはずの馬が、とんでもなく強く見える競馬で勝ってしまう、短距離路線の夏である。

正直、これらの馬が、それほど圧倒的なスピードを持っているとは思えず、
はっきり言って、フロックに近い形での圧勝だと思う。
G1に直結するとは思えず、しかし逆に、その弱いはずの馬に独走を許してしまう有力馬が、
G1で力を発揮できるとも思えず、
短距離界の混沌は、ますます度が深まるばかりである。


クイーンS回顧

開幕週の馬場と言うことを考えても、前半58秒2のラップは早かった。
超ハイペースではなかったが、それでも先段につけた馬はたまらない。
1番人気、マイネサマンサは、戦前はマイペースの逃げが予想されていたが、とんでもない。
これでは展開の利も何もあったものではなかった。

開幕週と、早い展開を味方につけたのが、勝ったデアリングハートと言うことだったろう。
G1でも好走経験がありながら、勝ち鞍に恵まれずに来たが、
今回は、早い展開で折り合えたのと、血統的に、
サンデーサイレンス産駒で、時計の早い決着は望むところだったろう。
2着ヤマニンシュクルも、早い展開を中団から上がっていく競馬で、ちょうどはまった。
かつての力は無いようだが、それでも屈腱炎から立ち直って、よく走っている。

結局、このレース、終わってみれば、ヴィクトリアマイルに出走していた組で、
最先着(6着)した馬と、それに続く(7着)馬での決着だったと言うこと。
試行時期などの変化が無ければ、だいたい出走馬は似たローテーションになることが予想され、
今後も、同じような決着を見ることになるかもしれない。
ヴィクトリアマイルでそこそこ走った馬に、注目のレースになる可能性がある。

レースレベルも、そのヴィクトリアマイルを基準に考えればわかりやすい。
つまり、牝馬限定のG1で、6、7着くらいに入れる馬が、1、2着できるくらいのレースだった。

ハイペースにも関わらず、比較的実力順に決まった、クイーンSではなかっただろうか。


関屋記念回顧

レース前から、抜けた馬がいないことが明らかだった関屋記念だった。
1番人気に推された馬にしてからが、すでにピークは過ぎているであろうテレグノシス。
それが新潟の舞台と言うこともあって、押し出される格好となった。
メンバー的に抜けた馬がおらず、一筋縄では行きそうも無いレースだと言うのは、戦前からわかっていた。

さらに波乱を招くように、レースはスローペース。
最後残り4ハロンから2ハロンまでのラップは10秒1と言う、とんでもなく早いラップ。
それでいて最後はさすがに止まって12秒以上かかっている、変わったラップであった。
誰が来てもおかしくないメンバー構成と、多頭数、夏場、スローからの変則ラップ。

これだけ得意な条件がそろって、勝ったのは果たして、老練な大ベテラン、カンファーベストだった。
実に重賞勝利は3年ぶりという。
その間、だんだん着順を悪くして、前走に至っては、13着に大敗しており、
これを狙うのは、きわめて難しい。
江田照と、夏場の混戦レースに乗じて優勝に手が届いたことだっただろうか。

年齢的にも7歳。そう連続して重賞を取れるようになる歳とは思えないが、
今年の夏のうちは、一応マークしておく必要はあるかもしれない。
ただ、レースレベルは非常に低かったし、これといった馬もいない。
G1に向けての馬は、果たして出走していただろうか。
夏場の、独立した重賞と見ておいて大丈夫かもしれない。

そんな中、本命エムエスワールドは、まだ3歳。今後の成長しだいで、
G1路線に乗ってくる可能性は十分あるだろう。
ただ、距離はマイルが合うとは思えず、中距離以上。
あるいは、長距離に活路を見出す馬に、成長していく可能性は十分ある。
長い距離で再注目の必要な1頭だろう。


函館2歳S回顧

早い時期の重賞ということで、それぞれの能力を新馬戦から推測するしかなく、
非常に難解なレースになることの多い、函館2歳Sだったが、
今年も例にもれず、レースが終わってもなぜこういった結果になったのかがわからないようなレースだった。

勝ったのはニシノチャーミー。新馬戦で0.1差の勝ちだっただけに、それほど強いとは思えない1頭だ。
血統的にも、サクラバクシンオーの仔で、叩いて上積みがそれほど見込めないと思われるだけに、
今日は相手や、函館のかなり芝が悪化した馬場状態にも助けられての勝利ではなかったか。

レースが難解だったことを示すかのような着順は、2着のローレルゲレイロと、
インパーフェクトの着順にもあわられていると思う。
前走ローレルゲレイロは、インパーフェクトに完封されてきていたのだが、
今回あっさり逆転されてしまった。
前走ローレルゲレイロがはしらなすぎただけかも知れないが、
こういった逆転劇がいとも簡単に、それも複数、同じレースに現れてしまうのだから、2歳重賞は難しい。

そういった意味で、エーシンボーダスンの14着大敗も、2歳重賞の難しさを示しているように思う。

このレースの勝ち馬が、さらに成長を遂げて活躍する例はきわめて少なく、
今日のレースも、新馬戦の延長にあるようなものだったかもしれない。