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2006年10月のメインレース回顧



天皇賞回顧

出走を検討していたディープインパクトがこのレースを回避したため、
一転、大混戦となった今年の天皇賞だった。

勝ったのはダイワメジャー。G1では、今ひとつ力を出せなかったこの馬だが、
今回は安藤勝己騎手の好騎乗にも導かれ、皐月賞以来のG1勝ち鞍を挙げた。
レースは速い流れであったにも関わらず、安藤騎手はレース後、
「ミドルペースだった」と語った。
この辺りの強気さこそが、安藤騎手の最大の持ち味なのだろう。騎手は絶賛されていい。
馬についても、レベル的には疑問ではあるものの、中山とは相性が良い馬。
あまり人気が上がらないようなら、有馬記念で一発が怖い。
もっとも、敵距離を求めて、香港カップに回ってしまう可能性があるが…。
1着、2着がサンデーサイレンス産駒だっただけに、レースレベルが低く、
なおかつ早い流れになれば、底力の差が出ると言うことなのかもしれない。

2着スウィフトカレントも、よく差してきたが、最後は交わせる脚色でも無かった。
夏のローカルで実績を挙げて、天皇賞で好走は、レベルの低い年にはありえる傾向で、
今後、レベル的に問題がありそうな場合は、頭に入れておいて良いかもしれない。

3着アドマイヤムーンはこの時期の3歳馬として、良く走ったと思う。
外の枠でもあったし、この馬をはじめとする、3歳馬のレベルの高さが伺える。
有馬記念あたりでは、古馬との差はほとんど無くなるから、3歳馬に要注意だ。

レースレベルは残念ながら低調だった。
今後、3歳馬と海外遠征組みが加わることによって、ハイレベルなレースが見られるようになるだろう。
そこに、ダイワメジャーがどれだけ食い込めるか、注目していきたい。


菊花賞回顧

三冠がかかった一戦、菊花賞は、京都競馬場で行われた。
派手さはないものの、堅実に勝ち鞍をあげるメイショウサムソンが正当に評価され、一番人気に支持された。
距離的に、3000mはベストだろう。そう思われていた。

しかし、レースが始まってみると、メイショウサムソンに、必ずしも向いているとは言えない展開が待っていた。
武豊騎手が乗る、アドマイヤメインが58秒2の、ハイペースで飛ばしたのだ。
さらに言うと、この日の京都競馬場は、2歳レコードが記録されるなど、
欧州血統のメイショウサムソンには、向かない馬場状態になっていた。
道中、5番手につけたメイショウサムソン。
ペースを考えれば、それほど悪い位置ではない。それをマークするように、ドリームパスポート。
前半1000mを過ぎて、武豊騎手は、一旦ペースを下げる。
それでも、後続が一気に迫ってくる様子はなく、アドマイヤメインに向いた展開に見える。
そして、4角、メイショウサムソンには、すでに余力が無いようにうつる。
最高の逃げを見せたアドマイヤメインも、もともとがスタミナ形でないだけに、頑張りきれない。

そこに、位置取りと実力を兼ね備えた2頭が襲いかかった。
その2頭とは、ドリームパスポートとソングオブウインドだった。
ドリームパスポートには、必ずしも向いているとは言えない3000mだったが、
鞍上横山典騎手の手綱さばきの恩恵か、持たせてしまった。
一旦は勝ちを得るのはこの馬かと思われた。
そして、その外から轟脚を繰り出すのはソングオブウインド。
最後は叩き合いになるも、ソングオブウインドが競り勝ち、菊花賞馬に輝いた。
三冠は、ここについえた。

勝ったソングオブウインドは道中は後方三番手からの競馬で、追い込みがはまった印象は確かにある。
だが、前潰れの展開と言うわけでは、必ずしも無く、あるいは、相当力をつけているのかも知れない。
戦後評価が上がらないようなので、この後が注目される1頭だ。

三冠はならなかった。しかし、今年の3歳世代はレベルが高い。
ここで、春の二冠を堂々勝ち切ったメイショウサムソンの実力は相当なもので、
ここで見切りをつけるのは早計。次のジャパンカップ、有馬記念でも、当然有力馬の1頭だ。
特に、有馬記念では馬場状態がこの馬には向くものと思われ、
あるいは、ディープインパクトに土をつけるのは、この馬かもしれない。


秋華賞回顧

春の有力馬に故障が少なく、しかも前哨戦で、それらがきっちり結果を出して、
春の勢力図がそのまま適用される可能性が高いと見られた秋華賞。
結果は、見事それにあてはまった。
ただし、1、2着した馬は、休み明けであったり、海外遠征帰りで、
人気を集めづらい条件になっていた馬だった。

勝ったのはカワカミプリンス。
無敗でオークスを制したものの、今回はその時から5ヶ月の休み明け。
全能力を発揮できるか、少々疑問に思ったファンが多く、2番人気に収まった。
レースでは、反応が悪いところを見せるなど、確かに休み明けの不利はあったようだが、
それでもきっちり勝つあたり、能力は非凡。あるいは抜けて強いかもしれない。
個人的には、メジロドーベルと印象が被る。
かの名牝のような活躍を、今後も見せて欲しい。

そして2着にも、海外からのレースで、休み明けのアサヒライジング。
前走がアメリカのG1と言うことで、評価が非常に難しい1頭だった。
春には逃げないと能力を発揮できなかったが、オークスでの2番手の競馬、
また、海外で出遅れながら2着に来たレースで、一皮向けた印象。
春の時点より、明らかに強くなっている。1着馬同様、今後が楽しみな1頭。

本命を打ったソリッドプラチナムは、後方からの競馬。
ハイペースもあり、これで来ないのでは、G1では辛かったということ。
条件が楽になるところで、改めて期待。というところだろうか。

レースレベルは、オークスの時と変わらず普通レベルだと思うが、
今年の3歳。夏に古馬混合重賞を勝ちまくっており、
世代のレベルが思っている以上に高いという可能性もある。
過大評価は禁物だが、世代レベルについては、考えないといけないかもしれない。


府中牝馬S回顧

淡々としたペースで運んだ今年の府中牝馬S。
勝ったのは、好位から競馬を進めたデアリングハートだった。
前年のNHKマイルカップで2着に走ったものの、その後は伸び悩んだが、
ここに来て、さらに成長してきたように映る。
比較的好位から競馬をすることが多く、本番も展開がはまれば、十分勝負になるだろう。

負けた馬の中では、ディアデラノビアが本番で変わってくる。
距離の1800mは下限すれすれだし、しかもスローの展開。
その中で、目視では2着かと思われるほどの3着に入っているだけに、本番はがらり一変がある。
あまりに人気が落ちるようであったら、本番は絶好のねらい目。

2着がサンレイジャスパー。
正直、メンバーが固定されてしまって、あまり面白みがないG3であったが、
その中では、牡馬と対決してきた出てくれたことで、レースが面白くなった。
51キロのハンデで好走してきただけに、55キロでどうかと思われたが、
まったく関係のない2着。

本番を見据えると言う意味では、このレースからは上位3頭までだろう。
特に、1着のデアリングハート、3着のディアデラノビアには注目。
現時点で、どちらが上とは言いづらいが、能力はディアデラノビアの方がありそう。
ただし、本番でも人気を集めないようなら、実際にそのディアデラノビアに勝っている、
デアリングハートも、面白い存在になるかもしれない。

レースレベルは、古馬牝馬の最強クラスが他のレースに回ったり、死んでしまっている分、
いくらか落ちるかもしれないが、それでも、例年のこのレースのレベルにはあったと見る。


京都大賞典回顧

超超スローペース。この印象を誰もが抱いた今年の京都大賞典だっただろう。
レースは道中13秒台が3回掲示されると言う、とんでもない展開。
良馬場にも関わらず、勝ちタイムが2分31秒5かかるとは、とんでもない競馬だった。
逃げる馬がおらず、スローは予想されたが、まさかここまでになるとは思わなかった。
2400mとしては、凱旋門賞並の勝ちタイムである。

こうなると、瞬発力比べになるか、前残りになるかだが、
今回は瞬発力がものを言うレースとなった。
勝ったのはスイープトウショウ。実に11ヶ月ぶりの実戦。しかも牡馬相手の重賞である。
今ひとつ、レース後に彼女を称えるコメントが聞かれないのが不思議だが、
女トウカイテイオーと呼んでもいい、偉業だと個人的には思う。
なぜ、そう呼ばれないのかは、もう、スイープトウショウの能力を、多くの人が認めていると言うことなのだろう。
戦前も、このメンバーでは1枚上手と呼ばれてはいた。
11ヶ月ぶりで無ければ、楽勝すらありえるメンバー構成である。
相手に恵まれたことは明言しておきたいが、その一方で、牝馬で、11ヶ月ぶりのG2制覇。
この偉業をもっと称えてもいいのではないかと思う、レース後である。

この後が、やや心配ではある。これだけ長く休んで初戦からの激走で、
疲れがきてしまっていないとよいのだが…。エリザベス女王杯なら、再度メンバーに恵まれそうだが、
天皇賞になると、どう出るのか。2走ボケが怖い1戦だった。

2着には、スローになると必ず飛んでくる、ファストタテヤマ。
差し馬にも関わらず、スローに強い。新潟競馬場の外回りが向いていそうな1頭である。

レースレベルは、スイープトウショウ1頭が、1枚どころか、2枚ほど上手のメンバー構成。
2着以下は、G3級だろう。G1では、スイープを追いかける一手。
そのスイープは、2走ボケが怖い。そんな印象を受けた、京都大賞典だった。


毎日王冠回顧

生きのいい3歳馬対G1では荷が重い古馬の対決と見ていた毎日王冠だったが、
上位3着までが古馬に独占される結果になってしまった、今年の毎日王冠だった。

勝ったのはダイワメジャー。安田記念、宝塚記念と、連続してG1、4着で、
いかにもG1では今ひとつと言う馬が、ここで結果を出した。
正直、今までのイメージが強すぎて、このまま天皇賞の有力馬に加われると思えないのだが、
一応、今までよりは多少評価を高めてもいい気はする。
ただし、本番あまりにも人気するようなら、今までの好走どまりを信じてあえて買わない手もあるかとは思う。

2着はダンスインザムード。叩き合いのシーンでは、こちらが勝つようにも見えたが、
最後は少し甘くなる格好での2着。相手が相手だけに、しっかり勝ちきらないと、
次が心配になる部分もある。
ただし、あくまで前哨戦というのは、藤沢師も、北村騎手もわかっていて、
あえて目いっぱいの競馬はさせなかった可能性も否定できない。
今年はレベルが下がりそうなだけに(ディープインパクト出走なら一気にレベルが高まるが)
相性のいい、府中の2000mで、能力爆発のシーンも。

3着ローエングリンも、差す競馬がいたに付いてきた。
まだ勝ちきれない印象はぬぐえないものの、一時期よりは、はるかに復調。
レベルの低い短距離路線に転じれば、台風の目になる可能性も否定できないだろう。

本命マルカシェンクは出遅れて、最後はいい脚を使って僅差の4着。
いかにもこのちぐはぐさは善臣のミス騎乗だろう。
天皇賞ではなく、菊花賞に回る可能性が出てきたが、
天皇賞、菊花賞問わず、福永騎手に鞍上がもどるようなら、能力は高い。
一発の可能性があると思う。それだけの力を秘めているだろう。


凱旋門賞回顧

日本の期待を一身に受けた、ディープインパクト。期待が頂点に高まる中、レースは始まった。
好スタートを決めた、ディープインパクトは、道中は2、3番手からの競馬。
結果的に、これが完全に裏目に出た。
言われているような「普段と違うレースをしたから」ではなくて、
ハイペースに巻き込まれる…。と言う事態に陥ってしまったのである。
スタートからいきなり敗因を語るようで申し訳ないのだが、
結果的に、タイムが2分26秒3。
中段後方から競馬をしたレイルリンクが優勝。最後方からのプライドが2着。明らかに前潰れの展開だった。

さらに向こう正面では、ディープインパクトの走法が明らかに1頭、他の馬と違っていた。
前脚を非常に高く上げる走法で、1頭異彩を放っていた。
これが敗因と言えるかはわからないが、この走りはおそらく日本向きのもの。
欧州で、一度レースをするだけでも、だいぶ変わったと思えるだけに、
いきなり凱旋門賞にぶっつけで挑む。と言うローテーションに、一考の余地があるだろう。

最後の直線では、ハイペースに巻き込まれた各馬が伸びあぐねたり、失速する中、
ディープインパクトは残り100mで、もう一度伸びようとするなど、能力と、根性を見せ付けてくれた。
初めての馬場でこの競馬ができるのなら、ローテーションがまともなら…
と思わせる内容であった。
結果的に3着であったが、ディープインパクトは全力で走った。
ローテーション、馬場と、戦前にわかっていたものに加え、ハイペースにも巻き込まれての3着である。
ディープインパクトはよく健闘してくれたと思う。
あとは、走らせる人間の側が、もう少し、ディープインパクトに走りやすい環境を与えてやれれば、
世界の壁も破れないものではないだろう。

勝ったのはレイルリンク。各国ダービーには間に合わず、遅れてきた大物と言う馬だが、
パリ大賞典を勝つなど、ここに来て能力を発揮してきた馬。
この後も成長が見込め、今後も大きなレースを次々に手中にする馬と思われる。
2着はプライド。ハリケーンランを負かしたこともあるだけに、只者ではなかった。
今回は展開にはまった部分もあり、ジャパンカップに来日予定も、正直、日本の馬場には合わないように思う。
むしろ、日本向きという意味では、最下位に負けたシロッコ。
今のところ来日の予定は無いようだが、もし遠征してくれば、日本馬の脅威になるのはこの馬か。

ディープは、よく走った。そして、無事に帰ってきてくれた。
凱旋門賞では、遠征した日本馬がよく屈腱炎を発症する、タフなレースだけに、
とりあえず、無事と言うだけでも十分ではないか。
無事ならば、まだ、海外を制するチャンスはいくらでもある。
なにより、またディープインパクトと、競馬場で再会できる。
その日が楽しみだ。


スプリンターズS回顧

私は、メインレース回顧を初めとする、あらゆるコンテンツ、
あるいは他の方のサイトでも、「日本のスプリンターのレベルの低下」
について、言及してきたものだが、
それが、事実であることが鮮明になった、スプリンターズSではなかっただろうか。

勝ったのは豪州、テイクオーバーターゲット。海外馬である。
必ずしも、前に行った馬が有利に働かない、ハイラップが刻まれたわけだが、
この馬にはまったく関係がない。と言うか、ハイラップとも思わせないような、力強い走りだった。
先行集団につけると、直線ではさらに加速。
2着に2馬身半。短距離としては決定的差をつけての、圧勝だった。
さすがに、英国のG2を勝っているだけのことはあり、最後の坂も全く問題とせず、
今の日本馬では全く相手にならなかった印象。1頭だけ、力が抜けていた。
初戦はそこそこ走らせただけのG2で2着だったし、こういったタイプの外国馬は、本当に怖い。

その中で、私が本命を打ったレザークは直線伸びきれずの7着まで。
英国で、2戦連続でテイクオーバーターゲットを完封しているだけに、
本来の能力を発揮できれば圧勝まであったのだろうが、
普段走っている馬場と、日本の馬場の違いに翻弄された感じ。力負けではない。
ただ、馬場適性を見誤っただけだと思う。次は香港に変わって、再逆転もあるか。

正直、日本馬ではまだまだ一流と呼べる馬は見当たらないレースだった。
ただ、2着メイショウボーラーが復調はしてきたと思う。
またダートに転じても面白いし、1600までなら大きいところを再び狙えるか。
3着タガノバスティーユには驚いた。レベルの低いと思われたG3を勝っただけの馬なのだが、
古馬のレベルが低いことにも助けられはしたが、しかし、今年の3歳は違う。
願わくば、今年の3歳世代から、名スプリンターが輩出され、
今の低レベルの短距離界を救ってくれないか、注目しているところだ。