2006年11月のレース回顧
ジャパンカップ回顧
今年はジャパンカップウィークに、海外馬が2頭しか参戦しなかった。
ジャパンカップダートに至っては、海外馬は0頭。危惧する事態である。
これは、馬場の影響が大きいのではないだろうか。
詳しくは後日のコラムに譲るが、これからを考えていかなければいけないG1だろう。
レースは、ディープインパクトの名誉挽回のために、負けられないものとなった。
前走でファンの期待を裏切った上に、薬物問題まで発生し、
これで負ければ、なんと言われるかわからない、極限の状況だった。
しかし、馬はそれに応えた。
出遅れ気味の、いつものスタートから後方待機。
残り700mで仕掛けられると、いつもの末脚爆発である。
「今までは相手が弱い」などと言う声も聞かれたが、
それを完全に覆す、完璧な勝利だったように思う。
2着には3歳の強豪。3着が欧州年度代表馬なのだから、
今回は相手が弱いとは思えない。
やはり、現代のサラブレッドの中において、抜けて強い馬と見ていい。
人間が勝手に着せてしまった汚名。馬が晴らしてくれた。
陣営は、ディープインパクトに頭が上がらないところだろう。
まったく、偉い馬である。
レースレベルは標準レベル。
ここ数年、古馬長距離G1も、幾分レベルが下がったように感じていたが、
今回はディープインパクトが出走、3歳馬も今年は非常にレベルが高く、
ウィジャボードもさすがに強かった。
後は頭数が淋しかったが、レベルが低くなかったのは救いだった。
ジャパンカップダート回顧
今年の3歳世代はレベルが高い。翌日のジャパンカップでもドリームパスポートが2着。
この、ジャパンカップダートでも、見事優勝を遂げた。
勝ったのはアロンダイト。未勝利を勝つと、そこから実に5連勝。
前走1600万を勝ったばかりの馬が、古馬混合G1で通用するというのは、
実は大変難しいことなのだが、あっさりやってのけた。
まだ、それほどずば抜けて強いという印象こそ持たなかったが、
それでも、交流重賞などで、長く楽しめそうな馬である。
2着はシーキングザダイヤ。
直線半ばでは、完全に抜けたと思わせておいて、そこから伸びずの2着。
G1で、すでに2着9回目。
馬に、自分がハナに抜ける。と言う気持ちが無いのだろう。
あるいは、日本の馬場に向いていない可能性もある。
勝てない理由は、そのどちらかだろう。
後者の理由なら、いっそ、思い切ってドバイに遠征してみるのも手である。
森調教師の決断に注目したい。
本命ブルーコンコルドは、直線前が壁になって(幸騎手が自分からつっこんで行ったのだが…)
まったく追えずの凡走。今回の成績は無視していい。
次走、距離があまり言われるようなら、かえって買いである。
レースレベルは海外馬がいないということもあって、非常に低かった。
そういう意味で、勝ち馬にすぐに全幅の信頼は置けない。
今後の成長に注目していきたいと思う。
京阪杯回顧
今年から1200mに距離が短縮された京阪杯。
装いを新たにした1回目の覇者は、アンバージャックだった。
この馬、500万から連戦連勝でここまでランクを上げてきた。
新装されたレースにふさわしい、フレッシュな優勝馬である。
この馬、母方にアーミジャーの血が入り、底力と成長力がありそう。
今回初重賞だが、まだ3歳と言うことを考えれば、まだまだ伸び白はある。
今の短距離界は混沌としており、王者不在の状況で、
この馬には、来年の高松宮記念への期待も高まるところ。
3歳で、古馬混合重賞を勝つというのは故・大川慶次郎氏の言うところの登竜門であり、
今後が楽しみになった1頭である。
2着にコパノフウジン。前走オープン特別を勝って、
今回は斤量増の重賞だったが、昨年冬から春先に、重賞でも好走してきており、
G3クラスなら実力的に通用する。
レースレベルは、アンバージャックが1枚加わったことによって、普通レベルに近づいた。
短距離界に1枚筋の通った馬がいないと、あまりにレベルに問題がある。
アンバージャックには、今後、さらに成長し、短距離界を背負う馬になって欲しい。
それができるだけの素質はあると思う。
マイルCS回顧
終わってみれば。と言うレースもある。
今年のマイルチャンピオンシップ。
私は勝った馬はG1では通用しないというイメージを強く持ってしまっていて、
ついに本命に推すことができなかった。
また、2着のダンスインザムードに対しても、
「G1で通用しないダイワメジャーにいつも負けてしまっている馬」
と言う印象しかなかったため、まったくノーマークになってしまった。
ダイワメジャー、これで天皇賞に続いてのG1連勝で、G1は3勝目。
すでに、「G1を勝ちきれない馬」の面影は無い。
幾分、相手に恵まれている感はあるものの、
それでもハイレベルの3歳馬たちの挑戦も退けているのだから、今日は胸を張っていい。
ただ、この1、2着、今年のマイラーズカップと全く同じ決着であって、
やはり結果的にG2級。と言う印象を否めないのだが、どうだろうか。
次は有馬記念ならば、やはり4、5着…。と思えてきてしまうから、不思議な馬だ。
ただ、相手が若干弱まれば勝ちきれるようにはなってきており、
ここまでほどの軽視はできない馬に成長してきているのも間違いない。
個人的には名馬の領域には達していないと見るが、どうか。
本命マルカシェンクは差しが決まらない馬場状態もあって、いいところが無かった。
また、G3級から再調整して欲しい。能力はG1でやれるだけの物があると思う。
レースレベルは低かったように思う。
1、2着馬共にここに来て急成長したという極少の可能性を除いては…。
東京スポーツ杯2歳S回顧
新種牡馬対決ともいえるようなメンバー構成になった東京スポーツ杯だったが、
勝ったのはジャングルポケット産駒のフサイチホウオーだった。
戦前の評判も高かったこの馬、突き抜けるところまであるかと思わせたが、
レースでは突き放すまでには至らなかった。
最後の直線を向いて、一番脚を使えそうなのが、この馬だったが、
思ったほどははじけない。
外からはフライングアップルが競りかけてくるような展開になった。
しかし、そこからがこの馬は違った。父ジャングルポケット譲りの長い末脚で、
着差こそ小さかったものの、このあとどれだけ直線が長くても交わせない雰囲気。
大きく勝ったわけでもないので、即クラシック級かは疑問だが、
府中でこのメンバーとならば、何度やっても負けないと言ったところか。
2着にはフライングアップル。こちらも、前走の着差こそ少ないものの、
着差以上の強さを見せていた馬。
早熟の恐れこそあるが、現時点ではトップクラスに入れておいていい馬だ。
前の週の京王杯に比べると、底のありそうなメンバーが集まったこのレース。
この世代の2歳重賞としては、一番レベルが高かったと思う。
このレースで負けている組にも、朝日杯ならチャンスがありそうだ。
エリザベス女王杯回顧
今年のエリザベス女王杯を語る上ではもう「降着」抜きには語れないところだろう。
1着入線したカワカミプリンセスは直線に入ったところで、急激に斜行。
ヤマニンシュクルの進路を妨害してしまい、12着に降着となった。
G1の1番人気だけに、この余波は大きく、「降着制度を無くせ」との声まで上がっているようである。
降着制度については、健全な競馬を保つため。
つまりファンのために、無くてはならない制度だろう。
斜行しても騎手だけが責めを受けるなら、八百長競馬が成り立ってしまう。
そんな競馬は見たくないだろう。降着もやむを得ない。
だが、実際に馬券を買っている人にとっては、そんなことでは納得できないのも、また当然。
ディープインパクトの不正薬物使用疑いから、どうも競馬会に暗雲が立ち込めているように感じる。
ディープインパクトの引退と共に、多くのファンが競馬場を去らないか、大いに懸念される。
結局勝ったことになったのは、フサイチパンドラ。
気性面に問題がある馬だけに、前半57秒2のハイラップはこの馬には非常に合っていた。
結果的に2着で優勝扱いとなったが、これによって、また馬に、「2着でもいいんだ」
と言う意識が生まれないか心配。
もともと勝ちきれないタイプは、人間が折り合うことに専念させすぎるあまり、
最後の直線でも勝つ気を起こせなくさせてしまった馬に多い。
今回の優勝扱いで、それに拍車がかかるのではないかと心配している。
本命スイープトウショウは3着入線。
一時の爆発力はそがれたように感じるが、有馬記念ではこの手の馬が爆発することがあり、
あと1戦、見放すのは待ってもいいかもしれない。天皇賞の反動もあった恐れもあること。
3歳世代のレベルが非常に高いことが判明した。
レースレベルとしては、従来の牝馬路線のメンバーに3歳世代が加わっており、
非常に高くなったのではないだろうか。
福島記念回顧
昨年あたりから、馬場状態が常識に適うようになった、秋の福島の芝コース。
その最終週に行われている重賞が、福島記念である。
今年も、馬場は荒れてはいるものの、泥がむき出しのような、最悪の状態にはならず、
その結果が、福島記念にも表れていたように思う。
最後は、さすがハンデ戦というところで、一団のゴールとなったが、
勝ち馬、2着馬共に、そこそこの人気馬であった。
一昔前の荒れすぎる(理論も何もあったものではない)福島記念の印象は薄れた。
勝ったのはサンバレンティン。休み前に1600万を勝ってきており、
このメンバーならば、比較的上位とは言える馬であった。
今回は55キロと、休み明けを叩かれた効果が出た。
2着にもフォルテベリーニ。
こちらは、1600万で頭打ちになってしまった馬だが、53キロの軽量ならば、
下級条件から連戦連勝した能力は、さすがに見せた。
上位2頭は、比較的穏当なところであっただろうか。
本命ヴィータローザは58キロが堪えたのか、あるいはパンパンの馬場で無いと力を出せないのか、
いいところのない凡走であった。このメンバーでは負けられないと思ったのだが…。
馬場がいいところで、もう一度見直すことも必要。
来年の春以降、あまりに人気を落とすようなら、ローカルではさすがに一枚上手だと思うのだが。
レースレベルは福島記念としても低かったような気がする。
上位は1600万のメンバーがハンデで台頭した感じ。
順調に成績を伸ばす馬はいないだろう。
京王杯2歳S回顧
府中の芝も内の方はだいぶ荒れてきて、外を回した馬に有利に運んできるようになった、最近の府中開催。
雨の影響もあってか、前に行った馬に有利に運んだレースだった。
勝ったのはマイネルレーニア。前走の新潟2歳Sで敗戦したことから、
人気を落とす格好になっていたが、それは新潟外回りでの結果。
府中コースに変われば、まだまだわからない。
戦前の人気ほど、極端に勝負付けが終わったレースでは無かったように思う。
今回は、今までの逃げる競馬を一旦捨てて、2、3番手からの競馬を試みた。
押さえが利くかが問題であったが、非常によく折り合うと、直線は軽く抜け出した。
2着とはそれほどの差はないものの、今日のところは完勝だった。
ただ、あくまで暫定的に有利に立ったと言うだけのことで、
勝ち方にそれほど強い馬の力強さは感じられなかった。
まだまだ、朝日杯まで、逆転できる勢力が多いことだろう。
新潟組みには再逆転したが、さらなる逆転も無いとは言えない。
2着はマイネルフォーク。
マイネル軍団の、調教が実らせた2着だったように思う。
血統的に、スターオブコジーンで、豊かなスピードを持っていそうなだけに、
調教によって、力となっていた。
3着以下も、今回は馬場の影響もあって、差しが決まらなかったことから、
本番での巻き返しは十分。まだまだ、この結果がG1に直結するかは、予断を許さない。
アルゼンチン共和国杯回顧
こちらも先入観を破壊されたレースだったかもしれない。
アルゼンチン共和国杯ならば、波乱は必至、人気馬、特にハンデを背負った馬は、当てにならない。
そんな思いで見ていたレースだったのだが、
勝ったのは2番人気で58キロを背負ったアイポッパー。
2着は1番人気で57.5キロを背負ったトウショウナイトで決まってしまった。
もはや、この2頭がこのメンバーでは上位と言うことだったのだろうが、
それでもそういうタイプの馬がここでは負けているだけに、やはりまさかの感はぬぐえない。
京都大賞典もレベルが低いと見ていたのだが、それほどでは無かったと言うことか。
ただ、このレースも、お世辞にもレースレベルが高いとは思えないだけに、
まだ、上位2頭を信用しきれない。
騎手の面では、今回武士沢騎手が最高の騎乗をした。
今まで、仕掛けが遅れては差しきれないという競馬を、何回も繰り返してきたが、
札幌で早めスパートから押し切る競馬で、この馬の持ち味が騎手に伝わったようだ。
レースレベルは低いとは思うのだが、新しい味を覚えたと言う意味では、
トウショウナイトは、今までとは別の馬としてみておいた方がいいかもしれない。
あとのメンバーはこんなもの。
3着に1000万を勝ったばかりの馬が入っており、今後は望みづらいと見る。
本命チェストウイングはドラゴンキャプテンとの競り合いにも負けての4着。
正直案外だったが、まだ奥はありそうな気はする。
1000万を勝ったばかりの馬に負ける馬では無いはずなのだが…。
ファンタジーS回顧
人間、どうしても先入観と言うものが入ることがある。
小倉2歳Sの覇者はスピードだけの馬ばかり。
そんな印象を持っているのは、私だけのことではあるまい。
今年は、そんな先入観にメスを入れられた、ファンタジーSではなかったか。
勝ったのは、小倉2歳の覇者、アストンマーチャンだった。
先に書いた先入観から、3番人気に甘んじたが、
思い返せば小倉2歳Sの競馬は圧巻の一言ではなかったか。
ハイペースを逃げて、スピードの差でねじ伏せる競馬。
それが、今回は控えて、残り一ハロンでわずかに仕掛けられただけで、あの切れ味である。
最後の馬相は、明らかにG1級のものであった。
次も、距離が言われて不安点とされるかもしれないが、
今の2歳牝馬相手なら、間違いなく勝てるだろう。
最終的にはスプリント向きの馬に仕上がる可能性はあるが、
現時点での完成度から考えれば、ジュベナイルフィリーズ程度では負けられない。
血統的にも、アドマイヤコジーン自身も1600mのG1を2勝しているし、
産駒も1600mくらいまではこなす馬も現れている。
最終的にはスプリンターに落ち着くにしても、現時点なら、マイルでもやれそう。期待は膨らむ。
2着のイクスキューズも、よく走ってはいるのである。
札幌で牡馬相手に3着に走っているし、例年なら勝っていてもおかしくなかった。
ただ、今年は1頭、とんでもないのがいたと言うだけ。
もちろん、今後も評価を下げる必要は無いが、
このレースに限って言えば、完全に勝ち馬の引き立て役に回ってしまった。
これは、イクスキューズが弱いのではなく、アストンマーチャンが強いと言うことだろう。
アストンマーチャンの今後は、大いに注目。桜花賞どころか、
NHKマイルカップでも、通用してしまうのではないか。
もちろん、今後の成長が無ければ話にならないが…。
大成してくれることを、切に願う。