月経異常


婦人科系疾患  現代医学編U  鍼灸治療   

現代医学編T
1,正常月経
閉経年齢は古今東西50歳前後とされている。初潮年齢は近年早熟化が進行して12歳前後になっている。月経周期とは月経が始まった日から次の月経開始前日までのことを言うが、成熟女性の場合は25〜35日周期で3〜7日持続するのが正常である。
月経周期は主に下垂体で作られる卵胞刺激ホルモンと黄体ホルモン、卵巣で作られるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の相互作用により調節されている。

卵胞期になるとエストロゲンとプロゲステロンの減少すると子宮内膜がはがれ子宮口から体外に排出されて出血が起こる(月経)。卵胞期の前半は卵胞刺激ホルモンが増加し、この刺激により卵胞が発育して成熟する。この卵胞からエストロゲンが分泌する。

排卵期になると黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンが急激に増加、黄体形成ホルモンの刺激を受けて成熟した卵胞から排卵が起こる。この時期にエストロゲン値はピークに達しプロゲステロンも増加しはじめる。

黄体期に入ると、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンは減少し、卵子を放出した後の卵胞は黄体に変化してプロゲステロンを分泌する。後半にはいるとエストロゲンが再び増加しプロゲステロンとエストロゲンの作用で子宮内膜が増殖して厚くなる。

受精が起こらなかった時は黄体が退化してプロゲステロンが分泌されなくなりエストロゲンも減少するこのサイクルを妊娠可能な女性は25〜35日周期で繰り返している。

思春期や更年期では卵巣機能が不安定となり月経周期は不整となる。月経周期が24日以内のものを頻発月経、39日以上経っても月経が来ないものを稀発月経といい、月経不順である。妊娠ということを考えず必要な女性ホルモンが卵巣から分泌されているという観点で考えれば年4〜5回以上月経があれば、最低限の女性ホルモン分泌は維持されていると考えていい。

年間の月経回数が1〜3回となってくると卵巣機能不全の重篤化が考えられるので、婦人科への受診が必要となってくる。十数年単位で年3〜5回程度稀発月経が継続する場合、長期的にみると子宮体癌のリスクが上昇するので定期的検診を勧めるべきである。

2,基礎体温
排卵は月経の14日(±2)前頃に起こり、受精や着床がなければ月経になる。排卵からつぎの月経まで(黄体期)は個人差があり、卵胞期が長ければ月経周期は長くなる。短ければ月経周期は短くなる。排卵した後の黄体期の基礎体温は卵胞期より上昇する。上昇の仕方がしっかりとした台形ちなり、ピークが37度前後まで上昇すれば黄体機能は正常といえる。基礎体温の山の形が不整だったり、ピークが低いなどがみられる時は黄体機能不全が疑われる。

3,無月経
初潮の平均は12〜13歳である。一般的には18歳前後になっても月経がない場合は「原発性無月経」と考えられるので、一度産婦人科の受診勧める必要がある。原発性無月経の中には稀だが膣や子宮が欠損する性器の形態異常や処女膜完全閉鎖、精巣女性化症候群のような内分泌異常、ターナー症候群のような性染色体異常が見つかることがある。

初経以後しばらく順調だった月経が、なんらかの理由で止まってしまった場合を「続発性無月経」という。妊娠でもないのに月経が90日以上みられないのは「続発性無月経」と考えられる。卵巣機能の問題、卵巣を支配する下垂体からの性腺刺激ホルモン(コナドトロピン)の分泌不全、下垂体をコントロールしている視床下部の不全が続発性無月経の原因である。高校生や大学生などの若年者では比較的軽度の精神的ストレスで続発性無月経になる。

治療としては黄体ホルモンの投与となる。これで消退出血が認められる場合は性腺刺激ホルモン不足である「第1度無月経」となる。消退出血が起こらない場合は卵胞がエストロゲンを分泌するほど発育していない「第2度無月経」ということになり、黄体ホルモンだけでなくエストロゲンの投与もおこなう。

4,稀発月経・頻発月経
39日以上と間隔の長いものを「稀発月経」、24日以内ち短いものを「頻発月経」ていう。両方とも性腺刺激ホルモンの分泌異常が原因であることが多い。稀発月経、頻発月経の両方とも排卵が起こっているものとそうでないものがあり、排卵が起こっていない場合不妊症となる。
 思春期の女性に起こる稀発月経、頻発月経に関しては時機がくれば自然に排卵は順調におこなわれるので、特に治療をする必要はない。更年期の女性に関しては特に気になる自覚症状がなければ経過観察でよいが、稀発となっている月経の前後でホットラッシュ、発汗、精神不安などの更年期症状が急速に悪化する時はホルモン補充療法が適応となることがある。
 稀発月経で過多月経を合併している場合は、貧血が急速に悪化することがあるので注意が必要である。過多月経を伴わない頻発月経は経過観察でかまわないが、月経が月2回以上あるということはQOLの低下をまねく。30歳以上の女性でも喫煙者でなければ、頻発月経のコントロールのために低容量ピルが用いられることが多くなっている。頻発月経は子宮癌の徴候の可能性があるため、年一度の定期的な検診をすることが必要である。基礎体温を測定し、高温期が認められ排卵があると考えられるのに月経周期が短くなる場合は、黄体機能不全の可能性がある。

5,過多月経
レバーのような固まりであるコアグラ(血液凝固)が毎回月経でみられたり、月経が原因で鉄欠乏性貧血になるようなら過多月経と思ってよい。
 子宮筋腫などの器質的疾患が原因となることが多いが、器質的疾患がなくてもホルモンのバランスが崩れる更年期女性などに起こり、入院が必要となる極度の貧血を起こすことがある。

6,月経困難症と月経前困難症
月経困難症
月経期に下腹部、腰痛が起こる。出産経験のない若年女性の場合痛みが軽度であれば保温や運動などの生活改善で対処可能であるものの、痛みが強い場合は専門医に診せるべきである。大きな痛みを長期に我慢し続けると、痛みに対する閾値が低下し、痛みが増強する可能性がある。このため痛みは早期なんらかの方法で改善する必要があります。「痛み止め」はなるべく早期に服用し痛みを和らげたほうがよい。
月経前緊張症
月経前に精神不安、頭痛、むくみなどがきまって発症して、症状のためにQOLが著しく落ちている状態をいう。原因は排卵後の黄体ホルモンの分泌過剰や月経直前のエストロゲンの低下などにあるといわれている。治療としては最近は排卵をしばらく休止させる低容量ピルによる治療をおこなうことが多い。

6,早発月経
10歳以下の少女に初潮があった場合「早発月経」を考える。第二次性徴も同時に早期に発現する。下垂体の異常、副腎皮質や卵巣の腫瘍などに鑑別する必要がある。悪性腫瘍の可能性がある、良性疾患でも低身長などの回復不能に病状を呈することがあるので、専門医への紹介が必要である。