閉塞性動脈硬化症

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現代医学編

腹大動脈とその主要分枝または四肢の主要動脈が、粥状硬化病変のために狭窄あるいは閉塞して、四肢に慢性の循環障害を起こす疾患である。慢性動脈閉塞症としては閉塞性動脈硬化症が90%を占めている。
1,病態
@粥状動脈硬化の危険因子
年齢、高血圧、喫煙の影響が顕著である。上肢には少なく、下肢動脈系の大腿動脈、膝窩動脈、腸骨動脈、腹部大動脈の順に多く、通常は複数の病変を認める。病理的学的には粥状硬化病変の潰瘍形成、石灰化、出血、、血栓付着のため、血管内腔が閉塞または狭窄を起こしている。安静時には血管内腔断面積が75%以下になると血流減少が起こる。運動時は安静時の10倍以上の血流が必要とされている。このため歩行時などに運動に見合った血流が供給できないと、虚血症状が現れることになる。この状態が続くと側副血行路が発達する。

A粥状硬化巣の破裂
血栓形成で急性閉塞が起こった場合、急激な虚血のために突然罹患患側の激しい疼痛で発症する。

2,臨床症状
@間欠跛行
特徴的症状である。一定の距離を歩くと下腿の筋に疲労感、疼痛が生じる。休息により数分で軽減するので、再び歩行ができるようになる。

A発症の時期、持続期間、症状の性質、持続時間、体位、運動との関連を聴いておく。
症状の分類
1度  しびれ 冷感
2度  間欠跛行
3度  安静時疼痛
4度  潰瘍形成、壊疽

B安静時痛
虚血の進行な伴う筋肉、皮膚、神経の虚血状態で虚血性神経炎になると夜間臥床時の疼痛をみる。

Cインポテンツを伴うのはルリッシュ症候群という。

3,身体診察
@視診・・・・四肢、指の色と形態を観察する。
蒼白、チアノーゼ、皮膚・筋の委縮、爪の変形、潰瘍病変の有無

A触診
罹患側での皮膚の低下、動脈の拍動も減弱または消失している。体表面からの通常触知可能な動脈(総頸動脈、鎖骨下動脈、腋窩動脈、足背動脈、後脛骨動脈)を触診して左右差を比較する。

B聴診
血管雑音を頸部、鎖骨下、腹部、鼠径部、四肢で聴取する。主に狭窄病変において聴取される。完全閉塞していればその部位では聴取できないので注意すべきである。有意狭窄でなくても動脈内腔の不整や蛇行による乱流のために聴取できる場合が多い。

C血圧測定
聴診器またはドプラ血流計を使用して、四肢各部でおこなう。
上肢の左右差は20mmHg以上。下肢の分節的血圧測定では大腿上部、膝上部、踝上部の血圧測定をおこない、15mmHg以上の血圧低下部位から狭窄を推定される。

4,検査所見
@四肢の血圧を同時に測定して、ABI(足関節/上腕血圧比)を脈波伝導速度とともに自動的に解析する。機能的評価には簡便で再現性もよく、信頼性の高い検査法である。 

A超音波検査
断層法では動脈病変部の狭窄を内腔の形態から観察が可能。

Bサーモグラフィー
体表面温度を客観的に測定し、色調変化として画像表示する。

CMRアクギオグラフィー(MRA)
非侵襲的に動脈の走行、狭窄部位が推定可能。

DCTアンギオグラフィー(CTA)

5,診断・鑑別診断
自覚症状で間欠性跛行、疼痛、身体所見で脈拍の減弱・消失、動脈雑音、潰瘍、壊死がみられれば閉塞性動脈硬化症を疑う。ABIと超音波検査で機能評価をおこない。確定診断にはCTA、MRA、動脈造影をおこなう。

・鑑別すべき疾患
バージャー病(閉塞性血栓血管炎TAO)、腰部脊柱管狭窄症、深部静脈血栓症(DVT)、Raynand病、大動脈炎症症候群、ベーチェット病、blue toe症候群

6,治療
@生活療法
危険因子を減少させることが基本である。特に高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙が重要である。

A運動療法
歩行を主とした運動療法の重要性と効果が高く評価されている。重症虚血化を予防し、QOL、危険因子の改善にもつながる。

B薬物療法
アスピリン、チクロピジンなどの抗血小板薬、血管拡張薬、抗凝固薬が投与されてきた。最近ではシロスタゾール、プロスタグランジン製剤などが使用され評価されている。

C動脈造影と経皮経管的血管形成術(PTA)
狭窄、閉塞病変に対して、バルーンカテーテル、ウロキナーゼ局所動注による血栓溶解療法、アテロームを削り取るアテレクトミーステント留置術など。

D外科療法  バイパス術
急性閉塞以外は生命予後を向上させるわけではないので、全身状態の評価を十分に行った上で適応を判断する。PTAの進歩により血栓内膜除去術は減少。大動脈ー腸骨動脈、大腿動脈などのバイパス術がPTAが困難な症例に対しておこなわれる。広範囲の潰瘍、壊死性病変、感染を伴う例では肢切断となる。

E細胞移植治療
慢性重症の虚血でPTA、バイパス術が適応出ない場合、自己骨髄移植が試みられる。