胃 症 候


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1.慢性胃炎
統一された概念は確立されていない。欧米では慢性組織学的に胃炎をとらえているが、日本においては症状から診断する症候性胃炎、形態的に診断する形態的胃炎、病理組織学的に診断する組織学的胃炎の3つの意味の総称で用いられていることが多い。すべての人を対象にした慢性胃炎の頻度を正確に把握することは不可能であるが、欧米の報告例では米国約42%、ドイツは約45%、と報告されている。日本では27〜89%とさまざまな報告がされているが、一般的に欧米に比べて発生頻度は高いとされている。
[1]病態
@症候性胃炎・・・・器質性疾患がない状態で、上部消化器管症状を訴える場合に用いられる。機能性消化不良(FD)がこれにあたる。そのため本来は別の疾患概念としてとらえるべきと考えるが、臨床の現場では統一されていない。
A形態学的胃炎・・・・内視鏡検査や胃X線造影検査にびらんや委縮、過形成などを認められるものに用いられる。
B組織学的胃炎・・・・大部分はヘリコバクター・ピロリ感染に起因するものが多い。その他の原因としては自己免疫性、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)、などの薬物によるものがある。
ヘリコバクター・ピロリ感染に起因するものは多核白血球を伴う炎症性細胞浸潤と間質の浮腫を組織学的特徴としている。炎症の持続により固有胃腺の減少をきたし、結果として慢性委縮性胃炎を起こすことが判明している。
[2]臨床症状
機能性消化不良では上腹部痛や胃もたれなどの上腹部不定愁訴を呈するが、組織学的胃炎のみの場合は特徴的症状は存在しない。

身体診察で特有のものはない。

[3]検査所見
@機能性胃炎の診断
内視鏡検査、胃X線造影検査、腹部超音波検査、血液検査などで消化性潰瘍、胆石、膵炎などの器質性疾患の除外が必要である。
A形態的胃炎の診断
胃X線造影検査、内視鏡検査
組織学的胃炎の診断→内視鏡検査下の生検が必要
血液検査・・・・血清ガストリン値の低下、血清ペプシノゲンT、Uの値の低下
B鑑別すべき疾患→急性胃炎、胃癌
[4]現代医学的治療
@機能性消化不良
その症状に合わせて、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、H2レセプター拮抗薬、消化管運動改善薬、抗不安薬が用いられる。
A組織学的胃炎
・無症状のことが多く、特に治療は要さない。
・ピロリ菌の除菌により、委縮性胃炎の進行を予防できる可能性がある。このことにより胃癌の発生が抑制される可能性があると考えられている。