スポーツ鍼灸

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総 論
スポーツ外傷・障害について 
[1]スポーツ外傷・障害とは。
1,定義と分類
外傷・・・・外力によって身体、組織、器官に加えられた損傷の総称。
スポーツの怪我とは
スポーツ外傷・・・衝突、転倒などの外力により起こる怪我のことをいう。直接的外力(直達外力)が多いが間接的外力(介達外力、自家筋力を含む)によって生じる。普通一回のだけの外力で起こるが、数回の外力が加わることにより生じることもある。打撲、挫傷、捻挫、骨折、脱臼、筋腱損傷、神経損傷、脳震盪、頭蓋内出血腫、脊髄損傷、内臓器損傷などがある。
スポーツ障害・・・微小な外力が何回も繰り返し加わった結果徐々に生じた疾患のことをいう。一回の外力で起こったものはふくまれない。

※スポーツ外傷とスポーツ障害は受傷様式、機転だけてなく好発部位、対象者、症状、治療など医学的病理的にも異なっている。
@スポーツ外傷  転倒、衝突などの一回の外力によって組織が損傷を受けること。
外力=直接的外力(直達外力)、間接的外力(介達外力)
接触性外傷=相手選手との接触することにより受傷するもの。
非接触性外傷=着地や切り返し時などにバランスを崩すことにより生じるもの、(アキレス腱断裂、肉離れ、膝前十字靱帯損傷など)
外力の種類・・・機械的外傷(大多数を占める)、物理的外傷、化学的外傷
創=開放性、非開放性(閉鎖性)・・・・スポーツで両方とも起こることがある。
部位・・・頭部外傷、胸腹部内臓外傷、運動器外傷など。
損傷部位が1ヵ所=単独外傷
        2ヵ所以上=多発外傷(死亡率もたかい)
・症状
全身性反応・・・外傷性ショック、呼吸障害、外傷性塞栓など、特に骨折による脂肪塞栓が重要である。
           疼痛ゃ精神的な動揺による一次性ショック
                        ↓
                一過性で回復することが多い
           
            出血による二次性ショック(出血性ショック)
                        ↓
                   適切な処置が必要
全血液量の15%〜21%、血圧80mmHg以下で起こります。長引けば腎障害を起こします。
外傷による意識障害・・・全身反応とは言えないかもしれない。
            頭部外傷では意識障害を伴うことが多々みられる。
                        ↓
 一過性の脳震盪か頭蓋内血腫によるもなのか的確な判断と処置が重要である。

局所反応・・・・疼痛、腫脹、出血、リンパ液の浸出、創傷
疼痛・・・受傷直後から24時間以上持続する。損傷の種類、部位、年齢、個人差によって痛みの程度が違う。
局所の腫脹と出血を最小限にするために現場での応急処置(RICE処置)が重要である。
                        ↓
                 早期復帰が可能である。
開放性外傷の場合
・出血に対して圧迫固定法による止血が必要である。
・土などが混入することが多いのでGOLDEN TIME以内に創傷部を清潔にすることが重要である。
・全身症状に問題がないのを確認する。
・異物混入が確認されたら、大量の水などで洗浄する。(感染を防止する)
※GOLDEN TIME=開放性外傷で感染が起こりにくい時間、通常受傷後2時間以内

局所の機能障害
筋、腱、骨、関節などの運動器の機械的損傷で起こる。スポーツでは多少の運動器の機能障害でもパフォーマンスが著しく低下する。
                        ↓
  小さな外傷でも、機能障害が回復するまでキメの細かい治療が必要となる。
Aスポーツ障害・・・比較的競技レベルの高い選手に発生することが多いが最近はスポーツ愛好家レベルでも事例が認められる。
スポーツ外傷と比べて年齢の要素、体力、技術、経験、など個人的要因の割合が大きい。
慢性発症のスポーツ障害の症状
運動痛、機能障害が主で、腫脹、発赤、熱感の炎症所見は軽微である。
病理的変化・・・・靱帯、腱などの軟部組織の浮腫、慢性炎症、ムコイド変性、軟骨の変性摩耗、骨棘形成、部分的骨再生、壊死などの骨軟骨の変化。

代表的疾患
野球肘、テニス肘、野球肩、腰椎分離、腸脛靱帯炎、ジャンパー膝、脛骨疲労骨折、アキレス腱炎(周囲炎)、フットボールアンクル、偏平足障害、第5中足骨疲労骨折など
部位的には肘、肩、膝、足関節が多い、いずれも使い過ぎ、不適当なフォーム等が原因で、異常なストレスの背景には四肢骨格のアラメント(骨格配列)の異常や筋力不足なども誘因となってる。その他血管、神経組織にもスポーツ外傷・障害は起こる。例を挙げると指動脈血行障害(野球選手で時々みられる)、コンパーメント症候群(スポーツ障害は前方部が多い)などである。

神経障害・・・肩甲上神経麻痺、後骨間神経麻痺、指神経炎、足根管症候群、モートン病など。

遅発性神経麻痺・・・切創、挫創や圧迫、骨折などによることが多い。スポーツにおいては肥厚した筋膜、神経傍に発症したガングリオンなどによる圧迫が原因として多い。

外傷による神経損傷・・・脳、脊髄の中枢神経の損傷や抹消神経の神経断裂、バナー症候群、スティンガー症候群など。
2,スポーツ動作による外傷と障害の特徴
(1)ランニング・・・スポーツにおいてもっとも基本的要素である。特に着地動作や離地動作のときに起こることが多い。サッカー、バレーボールなどの球技、陸上競技の中長距離競技者に好発する。
慢性障害(膝から遠位に多発)・・・腸脛靱帯、アキレス腱炎、疲労骨折、足底靱帯炎、踵部痛、種子骨障害などがある。
外傷・・・肉離れ(大腿屈筋、伸筋)、坐骨裂離骨折、膝靱帯半月板損傷(前十字靱帯損傷、半月板損傷)、足関節捻挫、アキレス腱断裂などがある。

(2)ジャンプ
助走ー踏切ー空中(ターン)ー着地が含まれる。
踏切〜力の方向が変化し、急激な加速が生まれる。 膝蓋靱帯炎(ジャンパー膝)
着地・ターン時〜減速や方向変換がおこなわれる結果大腿四頭筋に伸張性収縮がかかる。
膝蓋靱帯、膝靱帯損傷(前十字靱帯損傷、内側側副靱帯損傷)、半月板損傷、アキレス腱断裂の危険性が生じる。特に回転を伴うターンジャンプはバランスを崩しやすく膝や足関節の靱帯を損傷させやすい。
慢性疾患・・・・膝蓋靱帯、オスグット病、アキレス腱炎、シンスプリント、脛骨疲労骨折(跳躍型の脛骨疲労骨折は治癒しにくい特徴がある)

(3)キック・・・・スポーツの種類によって多彩なキックの方法がある。ミスキックによる傷害が多い。
例)サッカーの場合・・大腿部肉離れ、膝蓋靱帯炎、側副靱帯損傷、足関節捻挫、衝突性外骨腫などが代表的である。

(4)スローイング・・・・ワインドアップ期、コッキング期、加速期、フォロースルー期の4相に分けられる。各相を通して投球動作により特徴的傷害がみられる。
3,スポーツ外傷と障害のメカニズム、およびその重症度
損傷の発生には、外力と生体反応の視点の2つがある。
(1)組織の持つ強度を上回る力が加わった場合(スポーツ外傷)
最も一般的外傷・・@骨折・捻挫〜下肢は着地、転倒、衝突時に上肢はボールなどを受けこそなった時に起こしやすい。
A肉離れ、腱断裂〜疾走中に起こる場合が多い。
受傷時に受ける外力のエネルギーに外傷の程度、範囲が違ってくる。
捻挫(靱帯損傷)動揺性の程度で分類
T度 靱帯の微細断裂はあるものの全体的に動揺性はない。
U度 靱帯部分断裂は存在し、一定の関節の動揺性はある。
V度 靱帯完全断裂して、関節は大きく動揺性がある。
V度以上は捻挫ではなく、外傷性脱臼になる。
骨折  外力が弱い〜不全骨折
     外力が強い〜骨片が転位、らせん骨折、斜骨折、横骨折
 さらに外力が強い〜粉砕骨折、開放性骨折

(2)スポーツ障害
力はそれほど大きくなくても反復した荷重が加わることにより起こる。原因は内因性因子と外因性因子とに分けることができます。
外因性因子・・・練習時間、練習強度、グランド、コートの状態、天候、用具、シューズ、によるもの。
内因性因子・・・年齢、体型、筋力、骨強度、反応性、バランス能力
例 膝関節=成長期に起こるオスグット病(身長の伸び率が関係する)
X脚、Qアングル(15゜以内が正常)の増加
膝蓋骨を外方に押し出しやすく、亜脱臼、膝蓋骨周辺の疼痛の発生。
O脚〜腸脛靱帯が大腿骨外果で摩擦を起こし、腸脛靱帯炎を起こしやすい。
ジャンパー膝〜大腿四頭筋の筋と腱の伸張性が関係する。
障害は内因性因子と練習量、練習内容などの外因性因子が合わさって発生する
4,修復のメカニズム     筋、腱、靱帯等軟部組織の場合。
損傷部周辺から線維芽細胞を主体とした肉芽組織が侵入して瘢痕組織となる。
                        ↓
  周囲の生理的環境によって徐々に線維化、コラーゲン線維に置き換わる
・損傷部や欠損部が清浄で連続性があり、血行に富んでいる場合。
・適切な張力が作用するとコラーゲン線維が一方向に配列して、順調に治癒が促進する。
・線維芽細胞は状況に応じて、各種の細胞に分化する能力を持っているため腱や靱帯の形成につながる。
・初期は損傷部には線維芽細胞が多く含まれていて、コラーゲン線維の径も細く、配列も乱れているためその強度は弱い。これを補う形で損傷部は正常時よりも体積を増加させた形で治癒する。
・内部のコラーゲン線維の密度と強度が増すにつれて、その部分は年余をかけて正常組織に近づいてくる。
骨折の場合
その修復過程は組織レベル、細胞レベルにおいて発生、成長段階における骨形成の過程を再現している。過程では化学的因子、機械的因子の全身、局所的作用が複雑に絡み合っている。
(1)傷害初期反応
骨折直後にできた血腫の中ではマクロファージなどの炎症性細胞が増殖して、その周囲では骨膜、軟部組織中で未分化な細胞が増殖している。血腫では線維性の血餅となって肉芽組織に変化、その内部では骨芽細胞、軟骨細胞の前駆細胞が出現する。
(2)膜性骨化
骨切断端、骨膜中の骨芽細胞が増殖して軟骨形成を経ず、骨基質が形成される。
(3)軟骨形成
膜性骨ができると、接している肉芽組織中の未分化間葉細胞は無血管性の軟骨基質を合成する。この部分には軟骨細胞がみられるようになる。
(4)内軟骨性骨化
接している骨組織から毛細血管が侵入して、軟骨の細胞外基質は石灰化されて一次性海面骨を形成する。
骨折治癒日数は指骨2週間、鎖骨4週間、上腕骨6週間、下腿骨7週間、大腿骨頚部12週間といわれているが、実際にはもっと日数を要すると言われている。
5,スポーツ傷害の発生頻度
活動種目別発生率
アメリカンフットボール      10.7%
柔道                 3.64%
バレーボール           2.94%
硬式野球              2.92%
バスケットボール         2.89%
ラグビー              2.87%
山岳登はん            2.47%
自転車競技            2.44%
レスリング             1.91%
相撲                 1.90%
サッカー              1.88%
テニス                1.78%
バトミントン             1.72%
ハンドボール            1.65%
ホッケー               1.64%
コンタクトスポーツに発生率が高い傾向がある。
傷害の種別発生率
捻挫       39.5%   53,995件
骨折       31.3%   42,713件
挫傷(打撲)    8.5%   11,556件
創傷        4.1%    5,619件
脱臼        2.4%    3,251件
腱断裂      2.2%    2,945件
その他      12.2%   16,536件
注目すべき外傷・・・アキレス腱や手指の腱断裂、肩・指の脱臼。

男女別   男性=骨折が多い傾向がある。 女性=捻挫が多い傾向がある。

11〜15歳    骨折が多い傾向がある。

サッカー    手関節、前腕、鎖骨の骨折が意外に多い。

軟式野球   指部の骨折、捻挫が多い傾向があるが、足関節の捻挫は比較的少ない。

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