ベラドンナ

〜推理小説で時々(?)出てくる、「ベラドンナ毒」というもの
を、「毒」とは全然違う視点で見てみます〜




 実験です。
 以下の2枚の絵を見比べてみてく
ださい。

平次。ベラドンナ実験。瞳孔縮小中。


平次。ベラドンナ実験。瞳孔拡大中。



 ヘタな事は重々承知しております。それはご勘弁いただいて。

(以下は科学と心理学の内容になります。


 2つの絵、どちらのほうが、マシに感じられました
決まりましたら、結果をお心に留めておいていただ
き、
↓スクロールして下の文章にお進み下さい。






「ベラドンナ」とは、ナス科の有毒植物の名前。
この植物
に含まれる毒の成分は、「アトロピン」と言い、
これが人体
に入ると、筋肉を麻痺させます。
ひどい場合は呼吸を
制御する筋肉を麻痺させ、結果、呼吸障害を起こして死んでしまうほどの
作用があるそうな。コブラ毒の作用もこの類だと
か。

さて、ベラドンナ毒は、植物から採れる毒なので、推理小説などではよく、
犯人が庭
で栽培したりしてこの毒を手に入れ、殺人事件に発展します。
その「ベラドンナ」という言葉は、「美女」という意味をもちます。
なぜ、有毒植物がそんな優雅な名前を冠しているの
か?
これは、昔の人たちのこの植物の利用方法に由来しています。


古代、ローマやエジプトの女性たちは、ベラドンナから液体を
抽出し、
このエキスを目薬のように目に点(さ)していた。
点眼すると、ベラドンナの成分で瞳孔が広がる。
当時、『瞳孔のひらいた状態の眼は美しい』
いう俗信があり、
女性たちは美女になるためにその点眼にいそしんでいた
ようです。
このことから、「美女」をあらわす「ベラドンナ」と言う名
が、その植物につけられたんだそうな。

瞳孔がひらくとは、どういうことか?
自分の
黒目を見るとわかりますが、黒目と言っても、茶色っぽいドーナツ状の部分と、
そのドーナツの穴にあたる、真
っ黒な部分があります。
前者を虹彩といい、後者を瞳孔といいます

次に、明るいトコロで、鏡で瞳孔を見
つつ、いちど自分の目の前に手をかざして目元を暗くし、
しばらくし
たらその手をはずし、すぐに鏡に映る自分の瞳孔を見てみる。
すると、瞳孔の大きさが、手をはずした瞬間は大きく
、すぐさま小さくなります。
こんなふうに、目は明るさにより
、瞳に入る光の量を調節しており、
暗がりではより入ってく
る光を集めようと瞳孔は大きくなり(瞳孔がひらく)、
明るいとこ
ろでは入ってくる光が強すぎないよう瞳孔を小さく調節します(瞳孔が狭くなる)。

ただしこの言い方はちょっと語弊があって、
当は虹彩(ドーナツの部分)が伸びたり縮んだりして、その光の量を制御する役割を
はたしています。
虹彩
は筋肉で出来ており、伸縮自在。
だから、
暗がりで瞳孔が大きくなるということは、虹彩が縮むから(これが通常の状態)で、
まぶしくて瞳孔が小さくなるのは、虹彩が広がるから(筋肉が伸されている状態)だ、
と、言い換えることができる。

ベラドンナの成分であるアトロピンは筋肉を麻痺させる
から、
その点眼薬を点すと、目の虹彩筋肉を麻痺させることになり

明るいところでも虹彩を広げることが出来なくなる、
つま
り美しいと言われた瞳孔拡大状態が保たれることになるのです。


ところで、その当時のベラドンナ俗信、「瞳孔のひらいた状態
美しい」というのは本当なのだろうか?


ようやくですが、このページ一番最初の2枚の絵の実験結果
を思い出してみてください。
上下どちらの画を選びました

一応、上の絵は瞳孔を狭く・下の絵は瞳孔を広げたよう
に表現しているつもりです。
瞳孔ひらいてたほうでし
たか?またはその逆でした?

ある大学の心
理学研究では、このように瞳孔を細工した2種類の写真を被験者に見せる実験をして、
人間は瞳孔のひらいた方に惹かれ
る傾向があるという結果を得、
ベラドンナ俗信は根拠があ
る、という結論を出したそうな。
人間って不思議


ちなみに、私は心理学を勉強したことは全くありませんで、
疑っ
てるわけではないんですが、ほんとに瞳孔ひらいたほうが惹かれるのかそうでないのか、
知りたいですねー。
2006.03.05.

【 現在 上の絵(瞳孔狭い)に 1票が♪
ありが
とうございます〜】
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参考: ジェイ・イングラム著 The Burning House