はじめに言い訳:
 年の瀬に、メモ用紙を整理していたら以下のような文章が出てきました。たぶん、昔ある小説家さんの作品を目指して書いたのだと思います。しかしいつ、どの作品をパロって書いたんだか覚えが・・・。
そんな感じでもよければごらんくださりませ。


納豆


 ある日あるときあるところで、たとえば工藤邸リビングで朝食時に繰り広げられた、家主と同居人平次の会話。


 「く、工藤・・・お前何食うてるんや・・・」

 「何って、納豆だけど?」

 「良くない」

 「は?」

 「間違うとる」

 「何言ってんだ?」

 「その名を口にするのも恐ろしい、"N"を食うな言うとるんや。そうゆう野蛮なことは止めぇや。」

 「お前そんなに嫌いなのか?なっと」

 「だーっ!言うたらアカンて!
  あんなぁ、好き嫌いとかいう問題やあらへん、"N"を食うてはあかんのや。すぐ止めぇて。」

 「意味わかんねー、納豆のどこが悪いんだ?」

 「残虐や。」

 「は?なんだって?」

 「畑の肉であるところの良質蛋白源、その名も大豆を、そんな風に糸引くまで徹底的に腐らして、しかも食うときはぐちゃぐちゃにして、ネギやタレ、あげくはカラシまでぶちこんで・・・。あまりにもゴクアクヒドーな行為やないか。」

 「馬鹿言ってんじゃねーよ、何が大豆を食うのが残虐だよ。お前だって節分の豆とか豆腐とか食ってんだろ。」

 「あれは別や。大豆をおいしいうちに食べることは友情あるやり方で、そこに問題はあらへん。問題は"N"や。」

 「正気かよ。」

 「とにかく、"N"は食うな。それはアヤマッた行為なんや。」

 「うっせーよ。何を食おうが俺の勝手だろ。ヒトが好きで食ってるモンに文句言うな。」

 「工藤は大悪人や。」

 「バーロー。」

 「止めぇって。」

 「やめる理由がねえだろ。」

 「ある。"N"だって、この地球上の貴重な生物なんや。『バチルス・ナットー』って言うやろ。生物学的に自然環境の一部なんや。」

 「自分で言ってることわかってんのかよ。」

 「そーゆー自然を、ヒトの手で勝手にそんな・・・。それに何より、"N"になった大豆たちの、元の姿のことを思えや。みんなとても丸くてカワエエんや。そういうスバラシイ生物を、腐らして、混ぜて・・・鬼や!」

 「ふン、俺は食うぞ。こちとら昔から好きで食ってるんだからな。」

 「よくあらへん!」

 「お前なぁ、怒るぞ。第一、聞くところによるとだな、お前こそガキのころ、給食で出た納豆を食べられねぇからって捨ててたって言うじゃねえか。」

 「過去に、心無い行為があったことは認め、大いに反省する。しかしそーゆー俺だから言えんねん。もうこれ以上、大豆たちを"N"にしてはあかんのや!大豆が絶滅してまう。恐るべき環境破壊や!!」

 「冗談言ってんなっつの。納豆で大豆が絶滅してたまるか。」

 「絶滅する。」

 「あー、そうかよ。もぉいい、あっちいけよ。」

 「せやからみんなで、"N"問題委員会いうんを作ったんや。」

 「うわ、今度はなんだよ。」

 「これだけのメンバーで、"N"について討議してるんや。」

 「なんだこりゃ、納豆が嫌いなやつと、お前に借金があるやつばっかりじゃねーか。」

 「それは気のせいや。その委員会で"N"禁止案が圧倒的多数の支持を得て可決されたんや。よって、今後絶対に"N"を食べたらアカン。アカンで。」

 「そんな馬鹿な話があっかよ・・・。」




 また、別の日、たとえば工藤邸リビングにて。朝食後のひとときに。

 「おい、工藤、何食うて・・・」(絶句)

 「え?ヨーグルトだよ。」


fin
09'12.29.
駄文目次
He/Si目次


 あ、思い出した。清水義範先生の小説に、このような作品があるはず。
 発酵食品は体に良いのです。 byもやしもん。

 …何にせよ、大変失礼致しました。(平謝り)