三人姉妹

Winter Dreams



三人姉妹  (戯曲)  1900年  アントン・チェーホフ/作
ウィンタードリームス  (バレエ)  1991年  ケネス・マクミラン /作


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<あらすじ>


 旅団長となったプローゾロフ将軍は、妻亡き後に長く暮らしたモスクワを離れ、息子のアンドレイとオリガ、マーシャ、イリーナの三人姉妹を連れて、とある県庁所在地の町に赴任した。軍隊以外には見るべきものもない凡庸な田舎町ではあったが、将軍は子供たちに音楽や語学など、知識階級としての洗練された教育を受けさせ、厳しく躾けた。
 その将軍が亡くなってはや一年。父親の死に打ちのめされた一家も何とか立ち直り、それぞれ希望を見出して生きようとしていた。女学校の教師である長女オリガは家庭婦人となっておだやかな家庭を築き、夫に尽くす夢を見、三女のイリーナは労働こそ真に人間に生きる意味を与えてくれる、と働くことに理想を求め、アンドレイはモスクワ大学の教授になる事を夢見ているのだ。ただ退屈な中学教師クルイギンと結婚してしまった次女のマーシャだけは、退屈でゆるやかな牢獄のような生活にすっかり嫌気がさしたまま、すねたように毎日を送っていた。
 そうではあっても、一家…特に姉妹たち…に共通した何より強い思いは、この田舎町を引き払って、11年前に後にした故郷モスクワに帰ることだった。

 そこへモスクワから砲兵中隊長のヴェルシーニン中佐が赴任して来た。ヴェルシーニンはかつてモスクワのプローゾロフ家に出入りしていた人物だ。彼自身は自殺狂の妻と二人の娘に悩まされる、くたびれ気味で話好きな中年男にすぎないが、彼の登場は姉妹たちにモスクワの存在を身近に引き寄せ、気持ちを明るくした。特にマーシャはヴェルシーニンと気が合い、二人は愛し合うようになった。
 一方、イリーナには求婚者が二人いた。そのうちの一人、トゥーゼンバフ男爵(中尉)は醜男ではあるが、イリーナと同様に労働に理想を見出しており、イリーナも男爵の人柄の良さを認め、尊敬していた。もう一人の求婚者ソリョーヌイ大尉は人の和を乱す粗暴な男で、イリーナが男爵に好意を見せる度に男爵にからみ、ライバルを決して許しはしない、と公言するのだった。
 アンドレイは地元の田舎娘ナターシャに恋をし、彼女と結婚したが、このナターシャは時と共にどんどんと厚かましくなって行く、たくましくも俗悪な女だった。二人の子供を産み、市会議長プロトポーポフと不倫をし、子供を盾にじりじりと主婦の座をオリガから取り上げ、家の中を横暴に取り仕切るようになっていった。アンドレイ自身も次第に堕落し、カードで借金を作った挙句に姉妹たちに無断で家を抵当に入れてしまった。学者になる夢もどこへやら、田舎町の市会議員となって、何をされてもプロトポーポフに頭が上がらない状況となってしまった。

 そんな中、軍隊がこの町を去る事になった。マーシャにはヴェルシーニンとの別れがやって来た。自殺狂の妻や二人の娘がいる事もすべて含めて、マーシャは心からヴェルシーニンを愛したが、しょせんははかない愛だった。激しくむせび泣くマーシャを残して、ヴェルシーニンは軍隊と共に旅立った。
 オリガは結局女学校の校長となって学校に住むことになり、家はナターシャの思うままとなった。いたたまれないイリーナは男爵の求婚を受け入れ、彼と理想を共にして、文官となった男爵の赴任先で自らも小学校の教師として働くことになった。しかしイリーナの理想も一発の銃弾に打ち砕かれてしま
った。ライバルの幸せを許すことができないソリョーヌイが決闘で男爵を撃ち殺してしまったのである。

 モスクワに行きさえすればすべてはよい方向に向く…そこには自分たちのあるべき姿がある…。しかしモスクワはあまりに遠かった。それどころか、控えめに見たささやかな夢さえもすべてはかなく消えて行ったのである。遠ざかって行く軍楽隊の音を聞きながら、寄り添う三人姉妹は、それでも何かしらにすがって、何とか希望を見出して生きて行こうとしている…。

                                   
                                                                                  (終わり)




<詳しい物語>

~以下、工事中~