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発声を習おう


 声楽は日本ではあまり一般的ではありません。バレエよりまだマイナーかもしれませんね。でも、オペラやリートの世界だけでなく、ミュージカルやポップス、ママさんコーラスも発声法の基礎ができていなければ、歌いこなすことはできません。また、発声法がしっかりとしていれば、身体全体を使って声を出すので、健康にもいいし、ストレス解消にもなります。腹の底から出す声は明朗でよく響きますから、聞いていても気持ちいいですね。カラオケの設備がなくても、いつでもどこでも歌って楽しめますから、ぜひ発声法を学び、声美人(または美男子)になって幅広い歌を楽しみましょう。




どこで習うのか?


 私は中高生の頃からオペラのアリアや歌曲、ミュージカルに憧れ、ちょっとコーラスなどもやっていましたが、自分の声のひどさ、声域の狭さに悩んでいました。20才ぐらいの時に近所の人に音楽大学の声楽科を出たとても声の美しい先生を紹介していただき、自分のバイト代を注ぎ込んで発声の基礎を教えていただきました。
 今でも個人的に紹介を受けるという方法も多いかとは思いますが、カルチャーセンターや楽器店、音楽大学の一般向けクラスにも声楽の講座が開かれています。最初から個人レッスンでもいいのですが、それではちょっと…という方は、まずコーラスやカンツォーネなどの集団で受けるクラスを受講されるといいと思います。そうすれば恥ずかしくもないですし、みんなで楽しく歌いながら、先生の人柄や声の性質も徐々にわかってきて、自分の相性のいい先生を探すことができます。
 この先生との相性というのはとても大事です。それは単に先生の人柄というだけの話ではないのです。発声法というのはかなり微妙なもののようで、とらえ方も教え方も人によってそれぞれなのです。また、先生によって得意分野も違いますから、その先生がイタリアオペラやドイツリートなど、何を専攻しておられたのか、そのあたりも考慮しておくとよいと思います。
 費用は場所によっても違うと思いますが、楽器店やカルチャーセンターに問い合わせてみればわかります。私が個人レッスンを受けた時は30分〜1時間で3,000円〜5,000ぐらいだったように思います。有名な先生になると、もっとずっと料金は高くなります。料金は申し込み前に必ずどのくらいの時間でいくらなのか、を確認するようにしましょう。



どんな事をするの?

 個人であれ、集団であれ、まずは軽く身体をほぐし、発声練習から始めます。「ア〜〜♪マメミモ、マメミモマメミモム〜♪」という単純な音声を先生のピアノに合わせて発していきます。ここで喉をあたため、やわらかく開くようにします。いわゆる準備体操ですね。
 それから集団だと課題曲を歌っていきます。外国語の曲の場合、先生から発音の指導があったりします。また、その曲の成り立ちや裏話などを先生が話してくれる事もあります。
 個人レッスンの場合、発声練習の後はソルフェージュやコンコーネで更に声を出していきます。その後、やっと課題曲に入ります。課題曲は先生が指定することもありますが、よほど難しい曲を言わない限り、生徒の希望もきいてもらえる事が多いです。
 私は合計で3年ほどやったのですが、イタリア古典歌曲を何曲か歌わせてもらいました。カッチーニの「アマリッリ」やスカルラッティの「すみれ」、マルティーニの「愛のよろこびは」など、先生に伴奏してもらい、下手くそながらも歌えたのは楽しかったです。また伴奏付きでレッスンしたいなぁ、とよく思います。バレエばかりやっているので、暇がないのですが。



声楽の難しさ

 まず挙げられるのは、大きな声が出てしまうので、下手をすれば近所迷惑になってしまう、という事です。練習をする時は窓をしめるなど、ご近所への心使いを忘れないようにしましょう。「下手くそ〜!やめろ〜!」と怒鳴られる前のエチケットです。(「どらえもん」のジャイアンを思い出しましょう。)
 そしてまた、特に最初の頃は自分の声のひどさに自分でまいってしまうのです。「喉から出さない、お腹から声を出して!」と叱咤激励されるのですが、それがどういう事なのか、なかなかわかりません。喉から出さないなんてそんなの物理的に無理だ、と思ったり。お腹を意識しすぎるあまりにお腹がポコンと出るだけで全く使えなかったりもします。
 結局は喉だけでがんばらないで、喉をいっぱいにやわらかく開いて、お腹からズド〜ンと息を突き上げて声を出すという事らしいんですが、言うは簡単、行うは難しです。1年ほど耐えてがんばれば、声も少しずつまとまってきます。ヴァイオリンだって最初はひどい音が出るといいますから、根気よくがんばりましょう。
 そうやって段々と自分なりのいい声が出るようになると、今度は自分の身体を楽器として使うがゆえの悩みが出てきます。楽器も温度や湿度によって音色は変わってくるのでしょうが、人間の身体は楽器よりなお不安定です。体調の悪い時、風をひいた時、強いストレスを感じている時などは、がんばればがんばるほど、喉が硬くなって声がでなくなります。体調の維持にはかなり気を使う必要があると思います。 
 また、よい声を出すには太鼓のような体型が望ましいのですが、それは「太る」という事を意味します。オペラ歌手などはとても人間とは思われないほど太っている人がいます。あまりに太りすぎて動きのある演技をする事ができず、演出を変えなければならなかったオペラの公演もあるほどです。「椿姫」の初演も病気で死んで行こうとする薄幸の美女をすごく太った歌手がすごい声量で演じたために失笑を買い、失敗に終わったそうです。
 素人はそこまでの体格になる必要はありませんが、それでもあまりスリムだと声が響く場所がないので、声が貧弱にもなりかねません。音大でも先生が「やせたらダメだ」と指導したりするそうです。まあ、確かにあまりに貧弱にやせると健康にもよくありませんけどね。そのあたりは自分の好みと相談して、オペラ歌手のような声を出したいのか、流行の洋服が着こなせる体型を保ちたいかは、自分で決めましょう。ミュージカルの方たちは、バレエやジャズダンスの訓練もしているせいか、声はきれいでも、身体はスリムで素敵な人が多いです。



演奏会

 どこかの合唱団に入っていれば、1、2年に一回ぐらいは演奏会があるところが多いです。また、合唱連盟主催のコンクールなどもあって歌う機会はけっこうあります。カルチャセンターの講座の場合は必ずしも発表の場まで用意されているとは限りませんが、カルチャーセンター自体が演奏会を催さなくても、先生があちらこちらから自分の生徒をかき集めて演奏会を開く事もあります。
 歌の練習は自分が楽器になってひたすら体力勝負をしているようなところがありますが、演奏会ともなると、ロングドレスなどを着てスポットライトを浴びて歌うこともできます。ちょっと度胸がいるような気もするけれど、普段から熱心に練習している人にとっては成果を披露する絶好の場です。そういう機会があったら、ぜひ参加してみましょう。



最後に

 私の祖父が若い頃は、三味線の伴奏で小唄を歌うのが流行りでかっこよかったらしいです。そして私が幼い頃は演歌の全盛期。中学、高校ぐらいになると、フォークやニューミュージックが力を持つようになってきました。そしてそのうちカラオケが流行りだしました。立派な伴奏がつき、ついでに声にエコーがかかったりして風呂場の名歌手的雰囲気を味わえるのは良いのですが、やはり自分自身を鍛えない事には歌心を表現する事は難しいです。
 最近はいろんなジャンルの歌が楽しめるようになってきました。アカペラも一般的になってきましたから、声を磨いておけば、幅広く歌を楽しめますね。
 ミュージカル志望の人たちにとっても歌は大事だ思います。歌とダンスがそろえば、あなたはもっと輝ける!(宝塚出身者を思い出しましょう。)声楽=オペラとというわけではありません。身体全体を使って良い声を出す訓練、という風に考えるといいと思います。
 さあ、歌のある潤いのある生活を目指して、華麗なミュージカル等の舞台を目指して、声楽のレッスンを始めましょう!


MIYU (2009年3月)

このページの壁紙・画像は「みどりの素材屋さん」からいただきました。

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