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イングリッシュローズとの出会い
  園芸に興味を持ち始めた頃からイングリッシュローズの存在は認知していました。ただし、花容がバラらしくないということで、当初は興味の対象外となっていた品種でした。当時の私が思い描いていたバラとは、かの有名デパートの包装紙に描かれているような剣弁高芯咲きのモダンローズだったのです。
  バラ栽培1年目に約20品種を植えましたが、上述の経緯により、この中にイングリッシュローズはありませんでした。しかし、今から思えば、イングリッシュローズに傾注する素地は、この頃から確実に育まれていたと思います。バラの素晴らしさを理解すればするほど、益々イングリッシュローズの良さが光ってくるからです。
  実は栽培1年目において、私には、バラが1年に何回咲くかということや芳香などに関する知識がほとんどありませんでした。そのため、開花期には、想像していた以上の美しさに驚嘆し、毎日が新しい発見で歓喜の連続だったことを覚えています。「四季咲き性」「芳香」「色合い」などの素晴らしさを堪能し、「バラは手間隙がかかるのではなく、手間隙をかけたくなる植物なのである」ということが実感できるほど、充実した1年目でした。
  2年目の準備に入るのにあたり、「四季咲き性」に優れ、「芳香」を有し、なおかつ「美しい色合い」の品種を求めて、カタログ類を読み漁ることになりました。バラ関連の書籍も次々と読破していきました。この過程で出会ったのが、「デビッド・オースチンのイングリッシュローズ」(産調出版刊)です。この大著を読んだ私は、バラの育種に対して物凄い情熱と愛情を注ぎ込んでいる著者の半生に深い感銘を受け、畏怖の念を抱くほど強烈な影響を受けました。そして、「この人が作出した品種を育てみたい」と、心の底から思ったのです。
Book_David Austin
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イングリッシュローズの魅力

  イングリッシュローズは、系統的にはモダンシュラブローズに属し、いわゆるオールドローズではありません。しかし、オールドローズ様の花容を有していながら、本家本元には十分に備わっていなかった「四季咲き性」と「多彩な色合い」が付加されており、バラ育種の世界に革命的な影響を与える品種群となりました。
  イングリッシュローズの素晴らしさは、栽培していると徐々に分かるようになってきます。まずは、「花が美しい」「色が魅力的」「芳香が素晴らしい」というような要素毎の良さを感じることでしょう。特に、気温が英国での栽培条件に近づく秋の花には、「花容」「花色」「芳香」全ての面で格別のものがあります。やがて、これらの枠組みを超えたバラ自体の「本質的な美しさ」があることに気付くことになるかと思います。
  「本質的な美しさ」という概念は、デビッド・オースチンが自著の中で提唱しており、イングリッシュローズの育種において最も重視したと、述懐しています。「本質的な美しさ」を言葉に記すのは難しいのですが、バラ自体が見る人に訴える力であるとされています。見る側は、バラから湧き出てくる魅力に自然と惹かれていくというわけです。
  イングリッシュローズに備わっている「本質的な美しさ」は、デビッド・オースチンが妥協を排し、厳しい視点で徹底的に行ってきた育種段階でのスクリーニングの賜物であろうと推察します。「デビッド・オースチンのイングリッシュローズ」(産調出版刊)には、イングリッシュローズの育種コンセプトと交配の戦略が詳細に記されており、栽培と鑑賞の楽しさを倍加させるものとなるはずです。

6 English Roses

イングリッシュローズの芳香

  イングリッシュローズは、芳香に関して高い評価を得ています。これは、デビッド・オースチンが育種戦略の中で芳香の面を重視してきたことに他なりません。
  実際に栽培してみると、全ての品種が強香というわけではありませんが、平均点が非常に高いことは確かであると思います。
  そして、特筆すべきことは、複雑な香りが交じり合った印象的な品種が多いということです。これは、芳香の質が高いというように換言することもできます。イングリッシュローズの中で最も香りが強いとされている「エヴリン」は、単に強香というだけでなく、複数のフルーツが交じり合った実に甘い香りがします。「ヘリテージ」は、香りの強さという面で僅かに劣りますが、複雑な甘みが入り混じった独特の香りは忘れ難く、普通の強香種よりも印象に残っています。
  デビッド・オースチンは、イングリッシュローズの香りを「ミルラ」「オールドローズ」「ティー」「フルーツ」の4系統に分類しています。同じ系統であっても微妙に芳香成分が異なっている点が面白く、それぞれが魅力的です。イングリッシュローズの記念すべき第1号となった「コンスタンス・スプライ」には、強いミルラ香が宿りましたが、この芳香が代々引き継がれ、さらにはブレンドされる形で発展していったものと思われます。
  私は、香りの強さだけが良し悪しを測る指標ではないということをイングリッシュローズから教わった気がします。そして、芳香の種類から品種の選定を行うという全く新しい経験をさせて頂きました。「ミルラ系2本、ティー系2本」というような選び方をできるのは、イングリッシュローズならではのことです。

Heritage

イングリッシュローズの欠点
  イングリッシュローズは、バラの総合的な美しさを兼ね備えています。また、耐病性に関しても優秀です。育種のコンセプトも明確になっているため、どの品種を選んでも一定以上の満足は得られます。いわば、非常に信頼性の高い品種群であると思います。
  しかし、関東地方のような暖地で栽培すると、露呈してしまう欠点があります。具体的には、高温多湿な日本の気候と合わないことです。最も影響が出てくるのは地植えした場合の樹高であり、品種によっては、カタログ値の2倍以上に大型化してしまいます。そのため、デビッド・オースチンがブッシュローズとして紹介している品種でも、日本ではつるバラになってしまうことがあります。
  連続開花性に関しても、気候が冷涼なイギリスでの栽培のようにはうまくいかないことがあります。例えば、「グラハム・トーマス」は、国際的に高い評価を得ている素晴らしい品種ですが、暖地では本来の魅力を存分に引き出すことは困難です。この他、四季咲性を有するとされている品種でも、気候によっては、春だけしか開花しないという事態が起こり得ます。
  花持ちに関してもイングリッシュローズは全般的にあまりよくありません。美しい花が咲いたかと思うと、早々と褪色し、一気に散ってしまう運命にあります。色の変化を長所として歓迎したり、散る姿が潔くて良いという愛好家の方もいますが、平日は会社勤めで鑑賞時間に限りがある私は、花持ちの悪さを実に口惜しいと思っています。
Graham Thomas, Sharifa Asma

イングリッシュローズの樹高
  上述のとおり、暖地でイングリッシュローズを栽培すると、樹高が問題となってきます。実際に、地植えで栽培したら、あっという間に2メートル超級になってしまったという話をよく聞きます。デビッド・オースチンが、「コンパクトで狭い庭にも適合する」としている品種でも巨大化することがあるため、注意が必要です。
  はじめから、つるバラとして栽培する用意ができている場合には問題ありませんが、下調べなしに、ハイブリッドティーローズのような感覚で地植えするのは早計であると思います。
  対策としては、まず大型の鉢植えで栽培してみることをお奨めします。鉢のサイズとしては、直径37cm以上、深さ30cm以上は欲しいところです。鉢の場合、水の管理が少々大変になりますが、樹高を抑制したうえで良好な花付を得られることが多く、狭いスペースでもイングリッシュローズの魅力を堪能することができます。
  私は、最低1年間、大型の鉢植えで様子を見てから、地植えに切り換えるかどうかを決めています。こうして、1年間様子を見てみれば、樹形や樹勢などから地植えした際に要するおおよそのスペースが見えてきます。一般則として言い切ることはできませんが、年間を通して繰返し花を付ける品種は、比較的地植えに向いていると思われます。花を咲かせる際には、上方への成長が止まるからです。参考書としては、「バラ図鑑」(寺西菊雄ら、講談社刊)に、代表的なイングリッシュローズの樹形と樹高に関する情報が記されており、非常に役立っています。
Graham Thomas, Sharifa Asma, Iceberg

My Best Rose
  日本の気候とマッチし、デビッド・オースチンのカタログどおりに成育する品種としては、「シャリファ・アスマ」が挙げられます。地植えでもコンパクトにまとまり、良好な花付と素晴らしい芳香を有しています。
  「チャールズ・レニー・マッキントッシュ」も日本の気候にマッチしている品種でしょう。年間5回以上の一斉開花をし、見事な空間を演出してくれます。私のローズガーデンでは、「アイスバーグ」と並んで、よく開花する品種です。
  「エヴリン」の比類なき素晴らしい芳香には忘れ難いものがありますが、地植えでは2メートル台にまで大型化してしまうことが多いようです。鉢植えでも芳香を十分に堪能できますので、庭のスペースとよく相談してから栽培方法を決めるのがよいと思います。
  「パット・オースチン」は、やや大型化しますが、イギリスでの花容が暖地でも再現できると思います。頑固なデビット・オースチンが奥様の名前を与えたほどの品種ですから、庭に1本は欲しいところです。
  日本の気候とは明らかにマッチしていませんが、「キャサリン・モーレー」も素晴らしいと思います。一番花の美しさは、言葉では形容し難いものがありました。7月上旬に二番花の蕾が膨らんだ時には、他のどの品種よりも開花を心待ちにしていましたが、カップの浅い貧弱な花しか見られず愕然とさせられたものです。秋の花は少なめですので、結局、花の美しさを堪能できたのは最初の1回きりとなってしまいました。実質的には、一季咲きのような品種ですが、それでも私の中ではbest roseの1つです。
  この他、「ジュビリー・セレブレーション」「アンブリッジ・ローズ」「ジュード・ジ・オブスキュア」「メアリー・マグダレン」「メアリー・ローズ」「セント・セシリア」「セプタード・アイル」「ウィリアム・シェイクスピア2000」「ウィリアム・モリス」「ガートルード・ジェキル」などを栽培していますが、作出時期の新旧を問わず、どれも甲乙付け難い素晴らしさです。
Katharyn Morley

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