「夏の観察」
  「四季咲性」と「繰り返し咲き」。
  両者は、似ていて非なる性質である。
  最近のバラ図鑑では、この両者を明確に区分していることが多くなり、分かりやすくなった。前者は周期的に返り咲き、一方の後者は不定期に返り咲くことを意味する。すなわち、日本の暖地において、四季咲性では最高5回くらいの反復開花が望めるのだ。この差は大きい。
  初期に作出された一部の例外を除いて、イングリッシュローズには、春の一番花の後に、最低1回は返り咲く性質がある。実際に育ててみると、「四季咲性」と「返り咲き性」の差は歴然としており、夏場に大きな差が現れる。
  「返り咲き性」の代表品種として、私は、「ウィリアム・モリス」を挙げたい。非常に鋭い棘を持った枝に、芸術的な美しさをまとった花を付ける姿は、壮麗そのものである。フォーマルロゼットとは、実に見事な形容であり、花弁が整った見事なロゼット咲きとなる。しかし、気温が上がる梅雨の後半辺りから、生育に変調が現れる。明らかに、枝を伸ばす方に生育が傾いていき、どんどん巨大化するのだ。枝が大きく伸長しているうちは、蕾が付くことはない。すると、少し猿蟹合戦の蟹の心境になってしまう。
  「その枝の伸長を止めて蕾を付けないと、切ってしまうぞ」。
  梅雨が明けてからは、病害虫の退治が忙しくなるが、その合間に、私は「ウィリアム・モリス」の観察を怠らない。花がないのに気になる存在なのだ。蕾が付く兆候がないか、秋花に繋がる有力なシュートがないか、入念に観察している。この間の観察中に病害虫を発見することもあり、一石二鳥だ。
  夏花は良花が望めないという意見もあるだろう。確かに、秋花のような完全無比の美しさは発現しにくい。しかし、炎天下に咲く姿には生命力が溢れ、ときに感動を覚えることもある。また、花数は少なくても、夏には夏の楽しみ方があることを見出している。「返り咲き性」の品種を観察し、蟹になり切るのも悪くないものだ。

ウィリアム・モリス
初夏の陽射しを浴びる「ウィリアム・モリス」。
この芸術的な花弁の巻きを象徴する意味で、歴史的芸術家の名前を付けたのであろうか。



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