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  別稿に記したとおり、私は無農薬栽培派ではありません。バラの美しさを引き出すために、必要最低限の農薬は使用します。この必要最低限という部分は、非常に重要で、個人差が現れる要素になっていると思います。例えば、病害虫が手に負えないほど蔓延したときに限定して農薬を散布するという方針は、一見理に適っているかのように見えます。ところが、実際には、蔓延を許したために農薬は高濃度の反復散布を要し、かえって減農薬という目標から遠ざかってしまう危険性があるのです。むしろ、予防散布を心掛けていた方が、結果として減農薬に繋がるかもしれません。
  ただし、私が予防散布推進派かといえば、必ずしもそうではありません。予防散布の有用性は理解していますが、それ以上にオーバー・トリートメント(過剰治療)になることを恐れているのです。
  それでは、私が考える減農薬とは何か。本稿では、この点に関して、実体験に基づいた記述を行っていきます。実体験に基づく以上、使用経験がない農薬や防除したことがない疾病に関するコメントは記すことができません。このため、バラの病害虫対策に関して、網羅的なことは記せないでしょう。
  私の基本方針は、耕種的防除(栽培環境の改善や物理的措置など、農薬を使用しない防除法)を徹底し、その補助療法として農薬を使用することにあります。また、農薬に関する知識を習得し、適正使用を推進することが、実は非常に大きな意義を有していることを強調しておきたいと思います。あわせて、病害虫の疫学(流行特性)について熟知することも重要な意味を有します。つまり、農薬と病害虫に対する知識を深めることが、減農薬に大きく貢献すると考えているのです。

<付記>
・農薬散布は最終手段として考え、日常的には生薬散布を優先しています。この内容は、別稿に詳述しました。
・農薬の希釈倍率は、各製品添付文書の記載事項に準拠していますので、本稿での記載は割愛しました。
・実際に効果があったという経験に基づいていますので、バラに対する適用がない使用法も含まれています。

▼減農薬を推進するための病害虫対策の実際(クリックすると別ウィンドウが開きます)

病害虫名 好発時期
春季 夏季 秋季
ウドンコ病 -
黒点病(黒星病) -
アブラムシ -
スリップス(アザミウマ)
チュウレンジハバチ
ヨトウガ
ハダニ -
クロケシツブチョッキリ(バラゾウムシ) - -


▼組織浸透性薬剤の効果増強
  植物組織への浸透性を有する薬剤(下表参照)は、病変や害虫の個体に直接作用するだけでなく、植物体内に移行することでも有用な効果を発現します。このような薬剤を使用する際に、展着剤の「アプローチBI」を併用すると、さらに組織浸透性が高まり、効果増強が期待できます。
  「アプローチBI」には、薬剤の粒子を細かくして植物体内への移行率を上げる効果があります。機序は、ミセルと呼ばれる集合体が形成されることで薬剤の可溶化能が高まるためと考えられています。また、薬剤の浸展性を向上させることでターゲットに付着しやすくするという性質も有しています。
  このように、明確な作用があり、積極的に機能することから、「アプローチBI」は、従来の展着剤とは異なる機能性アジュバント(補助剤)として、位置付けられています。他の多くの展着剤と違って、1000倍程度の濃い濃度で使用しますが、有害反応が誘発されるリスクは低く有用であると考えられます。
  「アプローチBI」の価格は、500mL1瓶(実際に散布する薬液として500L相当)で800円程度となっていて、大型のホームセンター等で入手が可能です。

植物組織への浸透性を有する主な薬剤 アプローチBIを併用する意義
殺菌剤 ・サプロール
・ラリー(ミクロブタニル製剤)
・ベニカ-X(ミクロブタニルと殺虫成分ペルメトリンの合剤)
・トップジン
・ミネラシン
植物体内に移行することで発現する治療効果の増強及び耐雨性の向上。
殺虫剤 ・オルトラン
・モスピラン
・ベストガード
植物体内に移行することで発現する持続性の向上、食害効果の増強及び耐雨性の向上。

(注)ペルメトリンには、組織浸透性がありません。

▼予防的薬剤の残効性向上
  黒点病の小病変が散見されたり、好発時期に発生の気配を感じたりした場合には、大発生前に手を打っておきたいところです。予防のための薬剤としては、ダコニールもしくはジマンダイセンが第一選択となりますが、降雨による薬剤の流出は、回避したいところです。
  両剤ともに、優れた耐雨性を有した持続性の殺菌剤ですが、パラフィン系の展着剤を併用すると、さらに耐雨性が向上できます。これは、パラフィンの被膜形成によって、物理的に薬剤の流出が減少するためです。ニームを散布する場合にも、パラフィン系の展着剤が有用であると考えており、使用する意義はありそうです。
  ただし、残効性が向上することは、有害反応のリスクにも繋がる問題となりますので、高温期にパラフィンで固着させる用法には、ある程度の経験に基づく、判断が求められます。通常は、500〜1000倍前後で使用しますが、一定濃度をルーチンで使用するのではなく、使用の中止を含めた濃度の調整が必要になると考えられます。
  パラフィン系統の展着剤としては、「アビオンE」「ペタンV」などがあり、500mL(実際に散布する薬剤として500L)で、800円程度となっています。


<展着剤の使用法に関する参考資料>
「ピシャッと効かせる農薬選び便利帳」岩崎力夫著(農山漁村文化協会)



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