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キラとの決着がついて数ヶ月。ニアはLとして活動を始め、体制を整え
たりLとしての仕事をこなしたり、忙しい日々を送っていた。ニアと呼ばれ ワイミーズハウスで過ごしていた日々が遠い昔のように感じられた。 そんなある日。
「ニア・・・」
久しぶりにその名前を呼ばれ、ニアは一瞬と惑った。自分の呼び名を
呼ぶ声は、自分と同じくキラとの決着がついてから立場が変ってしまっ たロジャーのものだ。声に応じ、ニアは声の元に向かう。 「何か用ですか?」
「これを・・・」
ロジャーに手渡されたのは封が切られている以外は何の変哲も無い
封筒。宛名はロジャーになっている。どうやら、キラとの決着がついた直 後、ワイミーズハウスに届いた様だ。自分宛ではないその封筒を手に し、ニアはロジャーを封筒越しに見た。 「中身は、貴方宛ですから。」
ニアの視線に気付き、ロジャーは一言告げて、中身を見るように促
す。ロジャーに促され、ニアは封筒の中身を出した。中から出てきたの は手紙と思われる1枚便箋。そして、見覚えのあるロザリオだった。それ を見て、差出人が誰なのか分かり、ニアは不思議そうな表情を浮かべ た。自分が予測する差出人は、自分に手紙など書くはずがない。まして や、身に着けていたものを寄越すはずが無いのだ。 差出人の意図がいまいち分からず、ニアは手紙を読むことにした。手
紙の文面は短く、1番になることを好む彼らしい内容だった。 『ニアへ。これを読んでいるという事は、キラとの決着が着いて、お前が
勝った様だな。 そして、俺は死んでいるだろう。
これは、俺の最初で最後の手紙。
でも、この手紙に理由は無い。俺は最後に、お前に勝ちたかった。
ただそれだけだ。お前の困惑した顔が見れないのが残念だ。
俺が勝った証として、このロザリオをお前に託す。』
手紙の通り自分は彼の意図が読めなかった、とニアは苦笑した。ニア
の様子を見て、ロジャーは、自分宛の手紙も入っていた事を告げた。ロ ジャー宛の手紙は、ニアがキラに勝ち自分が死んでいたら、この手紙と ロザリオをニアに渡して欲しいという内容だった。彼はきっと、自分の将 来を悟っていたのだろうと、ロジャーは静かに呟いた。 「そうですね・・・」
そう言ってニアは静かに部屋を出て行った。そして、誰もいない部屋へ
向かう。一人きりの部屋には慣れているはずなのに、その日は何故か とても寒く感じた。その寒さは、一人きりの孤独感を更に増長させた。ふ いに、床へ雫が落ちる。そこには、ニアが誰にも見せたことが無い姿が あった。Lが死んだその時でさえ流れることの無かった涙が、次から次 へと床に落ちた。 ひとしきり涙を流し、少し落ち着いたニアは、受け取ったロザリオを自
分の首にかけ、窓際へと向かう。部屋の窓を開け、まるで天を仰ぐよう に窓から体を乗り出して空を見上げた。 「メロ・・・私が貴方のために流す最初で最後の涙です。自分でも、予
想できなかった、こんな姿・・・。確かに、貴方の勝ちです。・・・勝利は、 届きましたか?」 空に向かって語りかけ、ふと笑みを零す。そこには、やはり誰も見たこ
とがないニアの笑顔があった。 END
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