CD ベッリーニ歌曲集 レコード芸術誌の批評 (1995年12月号掲載) リコルディ社からベッリーニの歌曲集は一冊出されており、これには15曲ほどが収められている。 この楽譜のおかげで、日本の声楽学習者たちはベッリーニの歌曲を学んできた。 もちろん独唱会にもロッシーニ、ドニゼッティとともに、近代イタリア抒情歌曲の流れの中で、プログラムに組み入れられることが多い。この全15曲に挑戦し、しかもリコルディ版にない「追憶」を加て 16曲、ソプラノの佐藤由子が、川口耕平のピアノで全曲録音を完成させた。 佐藤由子はミラノのヴェルディ音楽院で学び、いろいろの当地のコンクールに上位入選を果たしたソプラノ・リリコである。正統的な歌唱力の持ち主で、低い声域から高い方までムラのない良く訓練の行き届いた発声を修得している。この15曲の中の抒情的なものから、オペラ・アリアのような大曲まで、相当幅広い表現が要求されるが、いずれの曲もしっかりと歌い切っている。 ベッリーニが12歳の時の《蝶々》はじめ、佐藤が加えた16曲目の《追憶》(死の前年1834年)までのあいだの歌では、〔7〕から〔9〕までの《三つのアリエッタ》や、〔10〕から〔13〕までの《六つのアリエッタ》が最も多く歌われ、ベッリーニの代表歌曲となっている。 最後の《追憶》は《清教徒》の中のエルヴィラのアリア〔あなたのやさしい声が〕のメロディがここに聴かれるのも興味深い。 佐藤は低い調子のものは少し高く移調したり、少しヴァリアンテを加えたり、オクターブ高く歌って効果を高めたりしている......ベッリーニの歌曲をこれだけにまとめた企画はほかになく、貴重な資料ともなろう。 (畑中) |
佐藤由子CDコレクション |
CD「ベッリーニ歌曲集」 |
ベッリーニ 1801(カターニャ)〜1835(パリ) |
ペッリーニの父はオルガニストだった。幼い頃から父親ゆずりの音楽の才能に恵まれていた。 イタリアのカターニャ(ベッリーニの生地)にある博物館には、自作の譜面を手に持った6歳のベッリーニの像がある程で(その曲は残念ながら現存していない)、若い頃から才能を発揮していた。 ベッリーニは34歳の若さで亡くなったが、10作のオペラを作曲している。中でも「夢遊病の女」 「清教徒」は現在でも世界の大歌劇場でしばしば上演されている。 ベッリーニはイタリアのベルカント唱法を確立させた作曲家とも言われ、旋律はただ耳あたりの良い甘美なメロディーであるだけではなく、深い憂愁と気品に満ち溢れ、心に染み渡る美しさを持っている。 短い生涯であった為、それ程多くの歌曲は残されていないが、オペラ創作の合間に作曲された歌曲も、感性の極めて繊細な、そしてとてもインパクトのある甘美な旋律で作られている。 この時代に確立されたベルカント唱法で歌われる事により、その真価が発揮される。 声楽を志した人々の100%と言える程、ベッリーニの歌曲を1曲も歌った事がないと言う人はいないのではないかと思われるくらい、多くの人に歌われている作曲家の一人である。 |
ロマン派の作曲家 ヴィンチェンツォ・ベッリーニについて
リコルディ出版社ベッリーニ歌曲集15曲と追憶 (ワシントン学術図書館で発見された曲)を含んだ16曲を収めて録音されたCD。 (現在の所この16曲が収められているのは、このCDだけである。声楽を勉強する若い人たち、ベッリーニを知らない人たちにとっては、とても貴重な音源と言えるでしょう。) 1 La Farfalletta 蝶々 2 Quando incise su quel marmo あの石に刻んだ時 3 Sogno d’infanzia 幼い日の夢 4 L’abbandono 棄てられて 5〜10 Sei melodie(六つのメロディーエとして1905年に出版されたが、作曲年代は異なる) 5 L’allegro marinaro 陽気な水夫 6 Torna、vezzosa Fillide 戻っておいで、美しいフィッリデよ 7 Il fervido desiderio 熱い願い <3つのアリエッテ> 8 Dorente immagine di Fille mia 私のフィッリデの悲しげな幻よ <3つのアリエッテ> 9 Vaga luna,che inargenti ゆかしい月よ <3つのアリエッテ> 10 Marinconia,Ninfa gentile マリンコニーアよ、やさしい妖精 <6つのアリエッッタ> 11 Vanne,o rosa fortnata お行き、幸運なバラよ <6つのアリエッタ> 12 Bella Nice,che d’amore 美しいニーチェよ <6つのアリエッタ> 13 Almen se non poss’io せめて、私にかなわぬなら <6つのアリエッタ> 14 Per pieta,bell’idol mio 後生だから、私の美しい愛してやまぬ人よ <6つのアリエッタ> 15 Ma rendi pur contento 喜ばせてあげて <6つのアリエッタ> 16 La ricordanza 追憶 |