ザンドナイはオペラ「フランチェスカ・ダ・リミニ」で聞こえている。と言っても知る人はあまりいない。
わたしもディスクでこのオペラを聴いたことがあるのみ。ザンドナイは他に「ジュリアーノ」や「ロメオとジュリエット」など十数曲のオペラを作曲しているが、これらに接する機会はまるでない。
     歌曲を聴くのはこれがはじめて。よくぞわが国からザンドナイに挑戦する歌い手が
                      出てきたものと、意を強くする。 

 ザンドナイはオペラ以外にそれほど多くの作品を残していない。オーケストラ曲や、オーケストラ付き声楽曲、それにわずかの室内楽曲があり、そのうち未刊のものも少なくない。歌曲は、このCDで
歌っている佐藤由子のライナーノートによれば、三十五曲知られているという。

     佐藤由子の声と解釈は、ザンドナイの”独自の内面性”を解きはぐし、わたしたちに
         親しめるものとするにはもう一息。とはいえ、見過ごされやすい埋もれた
音楽を掘り起こし、耳にとどかせてくれた彼女のパイオニアとしての努力は多としたい。(喜多尾)


 ドニゼッティ、ベッリーニ、ロッシーニ、ヴェルディあたりのイタリア近代歌曲も、オペラ同様、わが国でもその普及率は高く、イタリア系声楽家たちの独唱会の定番プログラムとなっているが、これらの     サロン的歌曲に飽き足らず、ニ十世紀イタリア歌曲の開拓が進んできた。
      
     と言っても、戦前からピッツェッティ、レスピーギ、アルファーノたちの歌曲は
歌われてきてはいるのだが、いずれも単発的のものであり、系統的、意図的なチョイスではなかった。イタリア古典様式のなかで曲を書いたドナウディも日本では人気はあるが、CDでもアルファー
ノ、チマーラなどの歌曲をまとめる声楽家が出てきたことは注目されてよい。

 先年、ベッリーニをCD一枚にまとめたソプラノの佐藤由子が、今度リッカルド・ザンドナイ(1883〜1944)
の歌曲を、世界初録音や未出版のものまでふくめて全二十三曲まとめたこの企画、発売は大きな意義がある。

 ザンドナイは、まだ日本では一部の歌曲ファンにしか知られていなく、彼の代表作、オペらの「フランチェスカ・ダ・リミニ」もまだ日本では初演されていない。辛うじて演奏会やコンクールの自由選択曲として「みみずく」「セレナータ」「最後のバラ」「八月の夜」などが歌われるくらいである。ダンテ原作、ダヌンツィオ台本による《フランチェスカ・ダ・リミニ》はぜひ日本で初演してほしい名作である。

 彼はもちろんオペラ以外にも器楽、オーケストラ作品は多いが、その中では《アンダルシア協奏曲》などがよく演奏される。彼はマスカーニに師事し、プッチーニの後を継ぐオペラ作曲家としてその地位を占めているが、このアルバムに収められた歌曲の数々は、叙情性に富み、そのなかで劇的展開を見せるあたり、さすがオペラの作曲家と思わせる曲も多い。

    佐藤由子はこれらのザンドナイ歌曲に真摯な情熱をもって挑み、パオロ・スブリーツィの的確な解釈と、多彩な変化をみせるピアノのタッチの
デリケートさを支えにザンドナイ歌曲の全貌を浮かび上がらせている。彼女の声は中声区に豊かな
表現力を発揮している。「冬の幻」「みみずく」「汚れなき女性」などはそのなかでのすぐれた歌唱である。1895年の初期歌曲RZニ十五番から年代順にRZ一一二番まで編集されてあるには文献的にも価値を高めている。    (畑中)



                   レコード現代誌 2002年9月号掲載

 シミオナートやデル・モナコといった往年の名歌手の
薫陶を受け、オペラ出演のほかイタリア歌曲でも研鑽を                     積むソプラノ佐藤由子の注目盤。

 95年にはベッリーニの歌曲集で賞賛を集めたが、今回は《フランチェスカ・ダ・リミニ》や《エケブーの騎士たち》等、伝統的な手法の上で激しい感情表現を聴かせるオペラれ注目されたイタリアの作曲家ザンドナイ(1883〜1944)の歌曲を取り上げている。全23曲の収録中、世界初録音が13
      曲、うち未出版のものが4曲とのことで資料的にも注目すべき構成となっている
          が、オペラでの印象とは裏腹に、どの曲も繊細な響きを見せていて
興味深い。佐藤の歌は「二匹の木喰虫」での中音域の濃厚な表現や、「セレナータ」での穏やかな
歌いまわし、それに仏語での「ケラズールの日没」のフォーレを思わせるようなさらっとした表現力を
特筆したい。スブリーツィのピアノも「最後のバラ」など、優げな様子を描写して秀逸。(岸 純信)


         ザンドナイ歌曲集 ドレミ楽譜出版社 定価(本体2,000円+税)

 CDリッカルド・ザンドナイ歌曲集に収められた23曲に下記の4曲を加えて2002年11月ドレミ楽                          譜出版社より発売。
            Ballade de Miss Hobhause ミス・ホブハウスのバラード
                      Soror dolorosa 哀しみの婦人
                      Idillio Cosacco  コサックの恋人
                       Casa lontana  遠くの家  
佐藤由子CDコレクション
リッカルド・ザンドナイ歌曲集
ヴォイストレーナー佐藤由子声楽教室
CD リッカルド・ザンドナイ歌曲集 レコード芸術誌の批評(2002年9月号 掲載)
ザンドナイ歌曲集

  佐藤由子(ソプラノ)

  パオロ・スブリーツィ(ピアノ)

    2001年録音

   \3,045(税込み)
 

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1 Un organetto suona per la via アコーディオンの音が通りに響く
2 Ninna nanna ニンナ・ナンナ
3 Attiomo 一瞬のうちに
4 Il rosicchiolo 硬くなったパン
  Sei melodie(5〜10)  
5 Visione invernale 冬の幻
6 Ultima rosa 最後のバラ
7 I due tarli 二匹の木喰い虫
8 Serenata セレナータ
9 Lontana 遠くの声
10 L'assiuolo みみずく
11 Ariette アリエッテ
12 Coucher de soleil à Kèrazur ケラズールの日没
13 Notti d'agosto 8月の夜
14 Campane! 鐘の音
  Sei melodie(15〜20)  
15 Mistero 神秘
16 Notte di neve 雪の夜
17 Mistica 汚れなき女性
18 Portami via 私を連れて行っておくれ
19 Sotto il ciel 空の下で…
20 La serenata ラ・セレナータ
21 Domani (Una canzone di Natale) 明日(クリスマスの歌)
22 Con li angioli 天使達と一緒に
23 Terra di sogni 夢の大地
近代の作曲家 リッカルド・ザンドナイについて

ザンドナイ1883(サッコ・ディ・ロヴェレート)〜1944(ペーザロ)

ザンドナイはとても若い頃から作曲を始め、その才能も発揮していた。
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才の頃には村の楽団の為に曲を書いたり、様々な楽器を弾きこなしたりしていた。ロヴェレートで師事した先生の進めも有り、ペーザロの高等音楽院でマスカーニの指導を受けた。

高等音楽院卒業の頃には将来性を認められ、その頃歌曲も未発表ながら沢山作曲していた。オペラも13曲ほど作曲しており、ガヴリエレ・ダヌンツィオの悲劇のオペラ「フランチェスカ・ダ・リミニ」で大成功し、作曲家としての名声を確立した。

オペラだけでなく歌曲に於いても、詩の持つ意味をとても重要視し、詩と音楽を一体化させ、感動とも調和することを目的としていた。
憂鬱、不安、哀愁、郷愁、躊躇、不満、生活苦と様々な事柄、概念を詩のテーマとしていた。愛や死に関してもありきたりの内容ではなく奥深い感情を考察している。独自のこだわりを持った作曲家と言えよう。


CD
「リッカルド・ザンドナイ歌曲集」では、23曲収められているが、これは世界でも初めての事である。現在日本ではザンドナイの名前はあまり知られていない。真に残念な事に、ザンドナイは第二次世界大戦中に亡くなっている。もしあと10年生きていたらきっと世界的にもっと彼の名声は知れ渡っていた事と思う。

代表作のオペラ「フランチェスカ・ダ・リミニ」も日本では未上演なので、もし上演されたなら、ザンドナイの曲に興味を持ち、歌曲も歌ってみたいと思う人が沢山いることでしょう、とても残念な事です。