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そうなると今まであんまり我々も関心を持っていなかったんですが、宗教ですね。 宗教の役割はこれから大きくなるのではないかと思います。これは学界でも少々問題になり始めていて、今まではあまりにも宗教というものを自分の視野の外に置いていたんです、全く関係ないと。でも日本では、江戸時代までみんなお寺とか神社で治療していたんですね。あと、温泉とか湯治場ですね。今でもよく聞いてみると、宗教にすがっている方がかなりいるんですが、現代医学の教育を受けた我々はどうもあれは科学的じゃないとか、極端に言うと非科学的だとか迷信だとか言っていた。でもこれからはそうも言ってられないんじゃないかと。 実際、東北地方なんか、まだかなり盛んなようですね。青森県津軽地方での調査によれば、神様という民間の宗教家がいて、外来で通ってくる当事者を調べると、半数くらいがこの神様の治療を受けながら薬を飲んでいるという状態だそうです。 うまく、現代医療と調和すればいいんですが、必ずしもそうでない所があって、今月初めに神戸での病院地域精神医学会のシンポジウムで、訪問看護をやっている方の発表がありました。それによると、新興宗教に入って治療を受けている方がかなりいて、宗教によっては医療を敵視して、薬を飲むことを止めさせるとか、病院へ行くなと言うらしい。その辺が、医療機関とうまく調和してやると非常にいいんですが、そこがどうも上手くいかないことがあるように思います。信じている人の中には、宗教に入ったらすっかり病気が良くなった、という人がたまにいるそうですね。 発表された訪問看護の方は、宗教をやった後で、良くなったからといって、宗教が原因で良くなったのは間違いだと言ってましたが、私は逆に、そうも言えないんじゃないかと。宗教で良くなった可能性もあると思うんですね。 これは薬でも同じようなことが言われていて、医者の方は、薬を飲んで患者さんが良くなると、薬が原因で良くなったと言うわけですよ。それはあまり変わらないんですね。 元々薬で良くなったのかも知れないし、たまたま良くなる時期に薬を飲んだのかもしれない。私が今関っている方の中に、クリスチャンで幻聴が聞こえているけれども、お祈りをしている間は幻聴が止むので、結構お祈りを利用している方がいます。こういう点はこれからの精神医療で検討すべき課題ではないかと思います。 それからもう一つ。昔からあるんですが、今サプリメントが結構流行っています。 実は私のクリニックに紹介してくださる方の中に、サプリメントを専門にやっている方がいて、その方のお子さんが、今まで薬でどうにもならなかったのが、サプリメントを飲んで非常に良くなったという経験を基に、ご自分でもそういうのを仕事にし始めたんです。新潟に住んで居られる別の人の話ですが、私のところに電話をかけてきて、とにかくすっかり治っちゃったと。今まで西洋医学は全然だめだと言っていたのに、誰に言っても信用してくれない、医者に言ったら一笑に付されてしまった、どうにもならないので話を聞いてくれと、わざわざ上京して来られました。それは確かに非科学的だなんていうことは言えないんです、実際にもう、ドラマチックに良くなっている方も居られると思います。ただまあそういう方は自分がいい経験をしたから、何とかこの経験をみんなに話してやりたい、とお思いになっているわけですけれども、ただ今の医療行政では十人中一人では、いくら良くなっても医薬品として認められないんです。医薬品として認めるということは、保険が適用できるということですね。ですから大勢にやってみて6〜7割は効かないと医薬品としては認めないわけですよ。しかも、いろいろ面倒な手続きが必要なんで、いわゆるプラシーボ(偽薬)を飲んだ人と、サプリメントを飲んだ人を比較して、あきらかにサプリメントで良くなった人のほうが多いというデータを出さなければ許可しないんです。だからといってサプリメントを飲んで本当に良くなった人を、そんな馬鹿なことは無い、と決め付ける理由は全くないので、私は、サプリメントを飲んで良くなれば、それに越したことはないと思いますけどね。勿論、宗教で良くなればそれでいいんだし、ただ、それを皆に納得させるのが難しいんですね。それだけの話だと思います。 今、サプリメントというのは、代替治療とか補完治療とかいう名前がつけられていて、西洋医学で効果が不十分の場合とかに変わりに使いましょう、とか、あるいは西洋医学で効果を補うために使いましょう、とかで、こういう名前になっているんですが、本来、西洋医学が出てきたのは最近のことで、今、統合失調症の方が飲んでいるのは、約50年前に出来た薬で、だから50年しか経っていません。他の身体の病気の治療薬も20世紀に入ってからですね。それまでの何千年間は今言った、サプリメントでやってきたわけですよ。ですから、私の考えで言うと、歴史的に見た場合は、今の西洋薬は補完治療、あるいは代替治療で、本来は、やはりサプリメントとか漢方薬とか、そういうものが基礎だろうと思います。だからそれで良くなってしまう人方は、それでいいんじゃないかという考えを、最近は持っています。 皆さんの中にもやっぱり飲んでいらっしゃる方もいるんでしょう? ただ値段が高いんですよね。そこが問題で、確かに10人に1人位しか効かないとしても、サプリメントがワアッと売れるようになったら、売ってる人はとても儲かるだろうと思いますし、多分儲かることを利用して、また何かそういう商売を企む人もいることから、必ずしも厚生労働省はサプリメントを、全部許可するというわけにはいかないのでしょう。多分そういう考えもあって、簡単には許可しないんだと思いますが、まあ、使ってみる価値はあるんだろうと思います。 だんだん薬の話になりましたので、チョット新薬の情報を申し上げておきますと、昔から言われている「クロザピン」ですね。クロザピンは世界中で使われていて、日本では使われていないんですけれども、ようやくいろいろな学会がまとまって、厚生労働省に働きかけている最中で、近いうちに発売される方向で話がまとまるのではないかという情勢になっているようです。ただし、厚生労働省からは、「学会が責任を持ってやってくれ」と言われているそうで、これが誰にでも使えるということになると、非常に問題があるんです。効く反面、血液の毒性があって、下手をすると死んでしまいますから。 だから、「クロザピン」を使っていいという認定医を決めて、「そのドクターなら処方していい」、というふうにするようです。 この薬は。もう30年前に一回、日本で臨床試験をやって、血液の副作用で亡くなられた方がいて、開発が中止になったんです。欧米でもやはり、血液の毒性で問題になったケースがいくつかあるようです。日本で最近行われた臨床試験でも、一人か二人、やはり血液の副作用を起こした方がおられます。 * * * ご質問にお答えいたしましょう。 Q1 病気になられて9年目で、ようやく説得に応じて医療に繋がった。 処方された薬が今月1月には、リスパダール2r1錠、ピレチア(抗ヒスタミン薬)3錠、サイレース(睡眠薬)1錠、ハルシオン(睡眠薬)1錠、これにレスリン(抗鬱薬)とデパス(抗不安薬)を朝昼夕の3回。6月には一日中眠くてやる気が出ないので「自分は鬱病ではない」と言ってレスリンは飲まなかった。9月になってリスパダール3r、ピレチア3錠、ハルシオン2錠、アモキサン2錠に変わった。アモキサンは抗鬱薬ですね、これは朝一回出ていたけれども効かないからと言って次回からは貰わなかった。アモキサンを処方された理由はやる気を出すためと言うことだった、と。 これが良くある間違いですね。鬱病の薬は鬱病の人が元気になるというので、統合失調症の人でも元気がないと、これでやる気が出るとか、気持ちが明るくなると言いますが、これは完全に嘘なんです。私は鬱病の方が書かれた手記を沢山読んでいますが、決して鬱病の人が抗鬱剤を飲んでも気分は上がらないんです。むしろ気持ちが楽になるというふうに効くんですね。抗鬱薬という名前に、つい騙されて、あれでやる気を出させるとか、気持ちを持ち上げるというのは嘘なんです。十何冊の手記のどこにも、気分が上がるとは一言も書かれていないですね。 不安や、非常に不愉快な感じが取れてくるんですよ。ですから、統合失調症の人にやる気を出させる、という理由で、抗鬱薬を使うのは間違いだと思います。 幸い、この方は賢明で、効かないといって次回から飲まなかった。それで薬の量としては、リスパダール3錠と睡眠剤と抗ヒスタミン剤ですね、平均からいうと、別に少なくも多くもないと思います。ただしこれで本人に合っているかどうかは別問題なんですね。一番少ない量で処方されていても、ご本人に副作用が出たら多すぎるわけですし、人によっては、全く副作用は無いし上限まで使っても効果も無いという場合がありますから、薬の種類と量だけで一概には言えないので、一人一人について、ご本人に効果や副作用があるかどうかをチェックします。 この方は、やる気が出ないということで困っておられますが、やる気だけは薬で出そうというのは間違いでしょうね。やる気というのは中から湧いてくるものですから、薬でやる気を起こさせるのは無理じゃないでしょうか。やはり、基本は、好きなこと、面白いこと、楽しいことから、やる気が出てくるわけですから、そっちの方の配慮をするのが先決です。 ご本人は、結婚されてお子さんもいらっしゃるけれども、家事も何も出来ない。それは「やる気が無いんじゃなくて、眠くて身体が動かない」からだそうですが、住んでいるのは田舎の庭の広い閑静な所で、それでも庭先の向こうで、自分の悪口を言うのが聞こえてくる、と。それを幻聴や妄想だと、本人に分からせることは出来ないか、ということですが、本人が気がつかない限りは、まず説得しても無理ですね。本人にとっては、何らかの意味で必要なんだと思いますよ。でも、だんだんなんかの拍子に幻聴だと分かってくることはあります。別に無害なら、あってもいいんです。無いにこしたことはありませんが、ただ幻聴だけを消そうと思って、いろんな事はやらないほうがいいと思います。 必要なものであっても要らなくなれば消えるし、本人に邪魔になってくれば分かるようになりますよ。 「いつも出て行け出て行けと言われているらしいけども子供がいるから出て行かない」ということですが、結婚してお子さんを作った実績があるんだったら、大丈夫じゃないですか、将来的にはちゃんとしていくんじゃないでしょうか。 Q2 17歳で発病されて今32歳の男の方で入院したことは無い。本人には統合失調症じゃなくて鬱病だと言ってあるそうですが、発病した頃は精神分裂病という名前だったんですね。 名前が変わって、私は良かったと思うんですが、でもやっぱり統合失調症と言われると皆ショックのようですね。病名はいろいろな使い分けをするのがいいと思うんです。年金を貰う場合は統合失調症と言う名称が通りやすいから、これを使う。それから、この薬は保険を通さないといけないので、保険の適用病名は統合失調症だとしか書かれていないから、保険の病名としてそれはしょうがない。 あとは、ご本人が嫌がる病名は絶対言わないほうがいいと思います。嫌がる病名を言われてしまったら、それは年金や保険に必要だからだとして、ご本人には、当人が悩んでいる問題に合った個別の病名を、一人一人考える方がいいと思います。私は精神混乱症とか情緒不安定症とか、今ストレス状態にあるとか、というふうに言います。さっき言ったように、幻聴を消すための薬だとか、幻聴に効く薬だとか言って、ご本人はとりあえず渋々薬を飲まれたとしても、心から納得はしないと思いますね。ところが、混乱とか不安定とか、日常語で言えばご本人も納得しやすい場合が多いようです。 この方は、ジプレキサ10r、インプロメント1r、これはあまり飲まない。不穏な時にリスパダール液、睡眠薬はアモバン、ベンザリン、レボトミン。 ご質問は、この薬は適しているかどうかということですが、さっき申し上げたように、これは普通の平均的な量だからあまり文句はつけにくいんですが、副作用があるのかどうか、効果があるのかどうかは本人に聞いてみないと分かりません。ただ、リスパダールの液。さっきも頓服でリスパダールの液を飲ませているということでしたが、リスパダールという薬は作用時間が非常に長いんです。 だからあんまり頓服には適していないと思うんです。製薬会社は何とかして使わせたいんですよ。 それと、飲み薬を嫌がる人は、液だからご飯とか飲み物に混ぜ入れやすいんですね。今はチョット流行りになっていますが、私はこれは製薬会社の思惑が絡んでいるんじゃないかと思っているんです。頓服に飲む薬は作用時間が早くて、すぐ効いて、すぐ効果がなくなる方がいいんですけれども、リスパダールには「1日・1r・1回」という飲み方があるくらいだから、あんまり頓服には適していないと思います。 それから睡眠薬のアモバン。これは睡眠がとれないのは良くないので、本人の睡眠状態に応じて使用したらいいと思いますが、出来れば「眠れない時だけ」飲むようにされたらと思います。アモバンは作用時間が短い薬なので、寝つきが悪い時によく使う薬ですが、朝起きた時に、口の中が苦いという人がいますね。ベンザリンは比較的スタンダードで作用時間が長いですから、これを併用するということは、寝付きを良くして、睡眠時間を長くしようということですかね。レボトンは抗精神病薬で、これも眠気の強い薬ですから、量が多いと朝起きにくくて、だるくて、眠くて、気持ち悪い、ボーッとする、事がありますから、それが無ければいいのではないかと思います。 40歳以降は被害妄想が弱くなると言われているが、それは本当か?ということですが。 被害妄想というより統合失調症という病気は、平均すると発病して5年か10年くらいが一番大変な時で、それから少しすると安定する時期があって、50歳60歳になるとだんだん良くなってきて、普通の人とあまり変わらなくなる、というのが平均的な経過です。 個人差があって何ともいえないんですが、だいたいご家族のご相談は5年から10年くらいの方が多いので、そういうことを申し上げています。今が頑張りどころで、20代、30代、40代は大変ですが、もう少しすればいい時期が来るから、と言っています。 一応世界的なデータですが、私も40年間同じ精神病院に勤めていますけれど、昔は大変な状態だったけど、退院して今は共同住宅に入って何とかやっているのを見ると、それは本当だな、という気がしますね。老後になると経済的な問題が出てきます。若い頃、バリバリ働いていた人は少し金を貯めているから、経済的にはちょっと差がついてしまいますが、私はそれは、人間の価値とは関係が無いと思います。むしろ、人間の価値としては、苦労して同じ歳まで生きてこられた方が価値が高いと。今は金本位の世の中だから、お金を持っている人の方が。なんか羨ましく見えるけれども、本当はやっぱり苦労をして、きちんと生きてきた人の方が、人間の価値としては上の方だと、私は見ているんです。 あと、ジプレキサ以降の新薬は何か?ということですが。 これはさっき言った、アルピプラゾールというのが、来年春(H17)になると出ますので、今までの薬で上手くいかない方は使ってみるといいかと思います。 *(追記) 幻聴で「電車から飛び降りろ」って聞こえてくることがあったが、飛び降りたら自分の命は無かった、というお話を今されましたが、その通りです。幻聴の中で一番怖いのは「命令幻聴」なんですね。 「死ね!」とか「飛び込め!」とか「火をつけろ!」とか、それが一番怖いんですよ。 さっき私は、幻聴があってもいいと申し上げましたけれども、これは発熱と同じで、高すぎると害があるんです。今おっしゃったとおりです。ですから幻聴があると、私は「命令の幻聴がありますか?」と必ず聞くことにしています。今日、私の所に来られた方もそうでした。「飛び込め!」とか。 それは危ないんで、これだけは叩かなければ(すぐに止める服薬治療)いけないんです。ご質問された方は、今はもう大丈夫だそうです。何か命令じゃなくするコツはありませんか?ということですが。 「入院して薬を飲んでて幻聴が聞こえなくなったんです。確か一週間か二週間くらいベットの上でずっと聞こえてました」 「幻聴と分かっても抵抗できないんでしょう、抵抗しにくいんでしょう、死ね!とか命令されると」 「いや、勇気が無かったから」 「ああ良かったですね」 「気が小さいから、飛び込まなかった」 「勇気があったらやってしまった?」 「ええ、身体の方から聞こえてくるから。それで、手すりにつかまって飛び降りようとしたんだけど、怖さがあった。気が弱いから命が救われた」 「そうですか。幻聴も命令幻聴だけは怖いんですね。いいお話を伺いました」 Q3 次の薬で適当なのかどうか?というご質問ですが。 まず、レスリン25r6錠、ワイパックス0.5rが1日3錠、ピレチア25rが1日3錠、テトラミド10rが寝る前に1回。これだけ見ると「鬱病」の治療です。統合失調症の薬は一つも無いです。注射はしていないそうですね。眠気が強い薬が多いです。それ以外の副作用では口が渇く、便秘するということがあるかな。発病してから1年近くになり、ここ何ヶ月も朝6時から昼の12時まで働いているが、仕事のためかどうか最近右手が痺れると言っている、ということですが。 統合失調症ではないんじゃないんですか?鬱病にしても治ったんでしょうか? 病名としては、一番最初の時に統合失調症と聞いておられて、それからずっと同じ薬が出ている、と。それじゃあ、私の本をご覧になって、統合失調症の診断基準チェックしていただいたらどうでしょうか?本人にはすぐ分かりますよ。統合失調症はどうかは、国際的な診断基準があって日本語で書いてありますから、それを見ればだいたい見当がつきます。 むしろ今は、医者の方がおかしいんですよね。症状らしいものがあるとすぐに、統合失調症にしてしまう。ですからこれは診断を、もう一度別の病院でやってもらったほうがいいんじゃないですか? 当時どんな症状があったか、とか。お話によると、自殺をしたくなったので、そのとき用心して統合失調症という病名をつけられて、2〜3ヶ月入院して治った。それからまた同じ状態になったそうですが、鬱病と考えたら矛盾は無いですね。病名の見直しが必要でしょう。 Q4 36歳の女性の方で、鬱状態、強迫神経症、不眠、この3つの病名で処方されているのは、レキソタン、リスパダール、ユーロジン、・・・・・、アローゼン、・・・・・・、こういう病名は病名として、薬は統合失調症の薬、鬱病の薬、セルシオンだから神経症の薬。これは診断の要らない薬の使い方ですね。全ての病気に効くようになっていて、どれか当たれば、という考え方ですよ。よく言えば漢方薬みたいな処方で、ワアッとやっといて自分のほうの身体が選ぶ、身体にお任せ、ということですね。 西洋薬の使い方としては、ちょっと違うんですけれども、日本の医者は漢方薬みたいな使い方をする人がいるんです。こういう薬を飲んでいてどうなんですか?あまり良くない、寝られないし、手を一生懸命洗っている、ということですか。他の病気の薬は全部入っていても、強迫神経症の薬だけは入っていませんね。前にルボックスを貰って飲んだらすごくイライラしたので、貰うのを止めてしまった、ということですか?身体に合わなかったわけですね。 それにしても、睡眠薬が3種類。睡眠薬というのは、薬だけで眠ろうとすると、薬だけ増えてかえって睡眠の質が悪くなるんです。薬以外の睡眠法はいろいろありますから、運動するとか、風呂に入るとか、それをやった上で薬を使うということと、一晩ずっと眠れないのではなくて、チョコチョコ起きてしまう、ということだそうですが、長い間飲んでいると、睡眠薬で睡眠の質が悪くなっている可能性があるんですね。リスパダールは要らない思います。レキソタンとセルシンの2種類・・・・・もうちょっと整理しないと。 ご本人として一番悩んでいらっしゃるのは、夜眠れないことと手を洗うこと、だそうでですが、手が汚い、ということにこだわるんですね。強迫神経症が主な症状であれば、抗鬱薬がみんな効くんです。保険の上ではルボックスだけですけど。あと、トレドミンも抗鬱薬。パキシルとかアナフラニールというのもあります。あとは精神療法という行動療法というか、薬だけではなかなか強迫神経症は難しいですよ。強迫神経症になる人は、几帳面で用心深いという、良い性格もあるわけで、性格が半分くらいありますから、そちらのほうから不安を和らげるようなことを、いろいろ工夫したほうがいいと思います。漢方薬も良かったらやってみてもいいんじゃないですか?とにかく薬だけで何とかしようという考え方を、まず改めたほうがいいですね。薬は確かにうまく使えば効きますけど、薬だけでやるというと、うまくいかないんですよ。 Q5 今、慎重162cmで体重97kg、36歳。これはちょっと太りすぎですよね。 4週間に1回ハロマンスを100r注射している。肝臓も少し悪いそうですが、肝臓が悪いと脂肪肝になったりするでしょうね。よく食べて薬を飲むとすぐ寝ちゃう、と。ハロマンスの他に薬(名前聞き取れず)を飲んでおられるそうですが、薬のせいで太るのではないと思います。薬そのものが太らせる場合というのは「ジプレキサ」と「セロクエル」だけなんです。 確かに、食欲を出したり、寝ていることが多くなることはあるでしょうけど、基本的には運動量と食事の量のバランスですから、食べたら食べただけ運動すればいいのですが、運動しないから太るので、そっちの方を考えたほうがいいでしょうね。あんまり眠いとかいうようなことであれば、薬は減らさなければいけません。よく。薬を飲んでいるならハロマンスの注射も要らないと思いますけどね。 だんだん減らして止めていったほうがいいんじゃないでしょうか。 Q6 男性の方で、統合失調症と言われて6年目。リスパダール8r、テグレトールが125、ピレチア、アキネトンを飲んでいる。この方は3年間、食事をして5分、10分すると必ずトイレに行って吐く。 最初はなんとなく気持ちが悪くて吐くように見えたが、最近は、ハッとかヘッとか外からも聞こえるような、わざとらしい所もある。別に気分は悪くないという。慎重176cm体重80kgチョットで、もっと痩せたいと言って体重を気にしている。主治医は何の異常も無い、最初の先生も気持ちの問題だろうと、別の医師も、胃がどうのこうのではない、ということで今に至っている。親御さんとしては、何も言わないようにしているが、どう対応したらよいか?ということです。 「吐く」という行動は習慣になりますね。はじめに吐いたのが何だったのか、ということによりますが、拒食症の人は吐くことが習慣で、条件反射みたいになるんですね。今そうなっているのではないでしょうか?自分はそういうことは無い、と言っていても、始まりはそういうことがあったのかもしれない。まず、原因にさかのぼって、ということですが、習慣になると昔の原因が分からなくなります。 お話によれば、昔レストランで食事をして帰りにチョット吐いたとか。大学の通学途中で食べたオレンジを吐いて、気分が悪くなったとか。今は多分、吐かないと気がすまない状態なんでしょうね。 しかしお母さんの作る三度三度の食事は吐くけれども、自分で夜食にカップラーメンなんかは作って食べてご機嫌だとか。何処かで一人暮らしでも始めてくれればよくなるのかな、と、お母さんは考えておられる。身についた習慣はなかなか抜けないですね。癖ですから慣れちゃうと治りにくいですが、癖から脱するには、言葉は悪いけど、動物の調教みたいなことをやるしかないんでしょうね。 強迫神経症の薬なんかは効くかもしれませんが、何かの働きかけを前提にしてやらないと効かないでしょうね。たとえば、吐くのが治るといいね、というようなことを、本人に言うとか、モチベーションを与えた方がいいでしょうね。3回のうち1回は我慢しなさいとか、徐々にね。2〜2年続いたものを急にゼロにするわけにはいきませんから。 (完) |