[展示室5]       アメリカの鉄道と時刻表

1930年代全盛期を迎えたアメリカの鉄道は、その後の自動車の発達に押されて衰退し、第2次大戦後は鉄道は斜陽産業と言われて長距離旅客列車は逐次姿を消していった。 それを補うべく設立されたAMTRAK も赤字に苦しんでいる。 この様な状況で日本人はアメリカの鉄道はもうダメだと思っている人達が殆どであろう。 しかしこれは長距離旅客列車のことで、航空機と比べられたら広いアメリカのこと時間的に太刀打ちできないのは当然である。 しかし、大都市近郊をその鉄道網から見たら、どうしてどうしてアメリカは依然として鉄道大国である。 稠密な鉄道網と高頻度のダイヤ、鉄道ファンには楽しいところである。ただ車両の種類は各鉄道毎にほぼ統一されて余り面白味がないのは残念である。

 今回は,余り知られていない時刻表について記してみたい。 それからアメリカの大都市近郊の鉄道、地下鉄を除く所謂通勤鉄道網について一寸触れたい。

 鉄道について余り知られていないと同様に、時刻表についても殆ど知られていない。

現在米国へ行って汽車に乗ると言えば、アムトラックに乗ることを意味し、大都市の通勤鉄道などは地下鉄を除いて観光旅行では先ず乗らないから、時刻表の存在など考えたこともないであろう。 外国の鉄道に詳しいという人でも時刻表については先ず知らない、そのような存在である。

 我が国では時刻表は鉄道マニアにとってはバイブル的な存在であり、 旅行に行くときは先ず時刻表を開くほど一般的である。 特に日本、韓国、台湾では驚くべき事に月刊誌でもある。 この様な国は珍しい。

上の写真は、アメリカの総合時刻表(上段)と鉄道別時刻表(下段)である。 下段の時刻表はアメリカの各1級鉄道が自社路線の時刻表を発行したもので、アムトラック発足前は各社の駅に置かれていたと思われる。 アムトラック発足後はアムトラック時刻表が各駅に置かれているのでご存知の方も多いでしょう。 ここで強調したいのは上段の総合時刻表である。

上段左は1955年2月発行の全米総合時刻表1500頁約1000(半分以上は貨物専用鉄道)が掲載されている。 中央は196811月発行の時刻表でこちらは936頁約800社、本の厚さも5cmから3cm位に減り大分鉄道が廃止され列車本数も減ったことが窺われる。出版社は National Railway Publishing Co.,N.Y. である。 内容はパナマ以北の北アメリカ州の全鉄道(と思われる) が収録されていてその全容が分かるのは圧巻であり、すばらしい情報量を持っている。 ただ一般旅客にとって、この様な詳細な時刻表は不要であろうから、これらは業務用として使用されていたのであろう。

右のはアムトラック発足後なのでアムトラックとカナダ、メキシコの鉄道が掲載されている。 1981年発行320The Official Railway Guide 発行である。 すべて月刊のようである。 サイズはB5,アムトラック版はA4 である。

国内でもそうであるが、海外では不明な鉄道を探すとき先ず時刻表から探すのが第一歩である。 欧米先進国の時刻表には駅名一覧が付いているのが通例で、鉄道名か駅名で大凡の見当が付けられるから、調査のためには絶対必要な資料である。 始めてこの総合時刻表を手にした時正に欣喜雀躍したものである。 アメリカの鉄道最盛期は1930年代、此の時代の総合時刻表があれば、鉄道の調査には更に威力を発揮するので目下探索中である。

下の写真はアムトラックと大都市近郊線の路線別時刻表である。 

アムトラックの時刻表は駅へ行けば置いてあるのでご存知の方は多いと思う。 東海岸線と西海岸ロス付近を除いては本数は1日1本程度で余り面白くはないが、現在の旅客の流動状況を見るには参考になる。

下段は各地の通勤路線の時刻表である。 これは都心のターミナル駅へ行けば路線別に棚にずらりと並んでいるので簡単に入手でき、一般旅客にとって便利な資料である。この路線別時刻表を見てゆくと、アメリカ通勤路線の典型的なダイヤが分かり、なかなか興味深いものがある。

こここに掲げたのはその中のごく一部で、右からMetra(Chicago), SEPTA(Philadelphia),

Long Island, Boston, , NJ Transit, Metro-Northの時刻表である。

次の写真をご覧下さい。 これは Metro-Northの時刻表で概略次のようなパターンである。

即ち、始発駅を出た列車が途中駅(A)まで各駅停車、そこから都心のターミナルまで無停車、次の列車はA駅始発でB駅まで各駅停車、そこから都心ターミナル駅まで無停車。 次の列車はB駅から 

C駅まで各駅停車C駅から都心ターミナルまで無停車、次の列車はC駅から都心ターミナルまで全線各駅停車、というようなパターンで運行されている。 

遠方の客を出来るだけ早く都心へ運ぼうというアイディアから出来たダイヤで面白い。 夕方の下り列車はこの反対で運行される。 すべての通勤路線ではないが一部でこの様なダイヤが組まれていて非常に興味がある。 又朝は都心方向へのみ、夕方は反対に都心から外方へのみという

一方通行的なダイヤもある。 これは完全に通勤輸送のみであるのがダイヤから分かって面白い。


最後に蛇足ながら付け加えたのが次の写真である。 これはAMTRAK Santa Fe 鉄道の業務用の時刻表である。 通常の列車発着時間以外にAMTRAKの方は連絡バスの詳細が、SantaFe

のは最高速度、速度制限、線路標識の説明、緊急時の処置等が記載されていて興味深い。