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if〜bitter〜



こちらは80000hit企画「もし、稜が劉以外と付き合っているとしたら誰がいいですか?」というアンケート結果に基づき、
投票数の多かったキャラと稜で、もしも話をかいてみようという企画です。

「稜が劉以外と付き合ってるとかゴミッ!」と不快感をおぼえる方はご注意ください。
どんと恋ッ☆なみなさんはこのままスクロールをお願いします↓↓↓



















「――――おい、バカ。なにアホ面してんだよ」

センパイのご要望により、男二人でケーキバイキングなう。
俺は甘いモノはそこまで得意なわけでもないので、3個目の途中でダウン。
対する甘いもの好きなセンパイは、5個目のケーキを満足気にたいらげていた。

榛名央未。一個上の部活のセンパイ、兼俺の恋人。
恋人であるはずの俺のことを「バカ」呼ばわりするし、ドSな言動も付き合う前から何も変わることなく進行中だ。
俺としてはもっと甘い・・そう。それこそ目の前のケーキのようにあまーい関係になりたいと思ってるのに、
センパイときたらせっかくのデートだというのにそんな雰囲気はてんで見せようとしない。

「センパイ、・・俺とケーキどっちがすき?」

テーブルに突っ伏しながら、じろっとセンパイに目を向ける。
ケーキを運ぼうとする手を止め、センパイは僅かに顔を歪めた。

「・・は?バカ丸出しなこと言ってんなよ」

そうやって一瞬呆れたような顔をしたかと思うと、すぐに甘ったるそうなケーキを再び口にした。
俺、ギョクサイ。瞬殺。

「はいはい、どーせバーカですよう」

これじゃ付き合う前と何も変わらない。
こんな関係のままで、果たしてセンパイはいいと思ってるんだろうか。
少なくとも俺はもっと進展したいと思ってるし、センパイのこと大事にしたいし大事にだってされたい。
そんなギブもテイクもあるような恋人同士って、普通なようだけどすげーいいと思うんだよね。
だから、俺がセンパイの恋人な以上、せめてこのくらいの願望は聞いてほしいと思うわけで・・。


と、ぼーっとしばらくは叶いそうもない夢物語を頭の中で展開していると、ふとキャッキャと甲高い笑い声が近づいてきたのに気づいた。
どうやら俺達の席の隣に新しい客がきたようだ。

席に着くなり、隣から視線を感じたのでなんとなしに目を向けてみると、
そこには俺達と同い年くらいの今風の女の子二人組が、ちらちらとこちらを見て話しているのが見えた。
なんとなく嫌な予感がしながらセンパイの方を見てみるけど、センパイは何も気にする風もなく黙々とケーキを食べている。


「あのー」

きた!と思いながら声のする方を向くと、やはり隣の席の子たちがどことなくきょどきょどしながらセンパイに声をかけていた。
対するセンパイは気づいているのかいないのか、何も応対する様子はない。

「もしかして、モデルさんとかだったりします?」

ドSな性格はともかくとして、見た目は本当にモデルかと思うほどにイケメンなセンパイは、
こういった逆ナン的なことやスカウトなんかをわりとよくされたりする。
つまり今回も、そういった流れに捕まってしまったというわけだ。
いつも一緒にいる俺としてはもう珍しい光景でもないが、それでもまあやっぱりいい気分はしなかった。

「お友達もカッコいいですねー!モデル仲間さんですか?」

取ってつけたように褒められても、微塵も嬉しくないんですけど!!
・・と心の中の俺が叫ぶが、表面上では「全然モデルとかじゃないっす」と、とりあえず愛想笑いを浮かべておくオトナな俺。

「よかったらご一緒しません?私たちも女二人でさみしくってー」

今時の女の子は積極的だなと思いつつも、なんて答えたらいいのか分からず、慌ててセンパイに目線を送った。
目は合った。合ったけど、その目は「めんどくせーから、お前がどうにかしろ」と言ってた、確実に。

俺はべつにこの子たちみたいにセンパイの顔目当てで付き合ってるわけじゃないし、
自分の恋人をそういう目で見られるのも正直腹がたつ。
そりゃセンパイの顔だってひっくるめて好きだけど、こういう時はこのカッコよさが嫌だと思うよ。
・・・・だから、センパイがどうにかしてください。

そんな旨を視線に込めて再度送ってみたが、まあ伝わるはずもなく、
相変わらずセンパイは女の子たちにシカトをキメていた。

やっぱ俺がなんとか言って退いてもらうしかないか・・と考えていると、
不意に隣側に座っていた子が俺の服の裾をついっと引っ張ってきた。

「私はあなたの方がタイプだなー。お名前なんて言うんですか?」

胸元のあいたなんとも目のやり場に困る襟口の服を着たその子は、大きな目をぱちぱちさせながら、俺の方に寄ってきた。

ここで名前を教えたら、きっともっといろいろ要求されるに決まってる。
俺だってこういう逆ナンみたいなのは好きじゃないし、それより何より俺には榛名センパイがいるんだ。
こんなのどうにか跳ねのけたいに決まってる。
でも、ヘタになんか言って泣かれでもしたら更にめんどうだし・・とかいろいろ考えてしまって、
なかなか行動に出せないでいた、ザ・へたれの俺。

すると今までたんたんとケーキを食べていたセンパイが、フォークを皿の上に置くのが視線の端に映った。
目線を向けてみるけど、その表情には相変わらず変化がない。

そしてセンパイは、なんともかったるそうにようやく口を開いた。

「おいブス、そいつは俺のなんだよ。気安く触ってんじゃねえ」

俺を含めたその場にいた全員の目が点になった。
女の子たちも、まさかこんな綺麗な顔から暴言が吐かれるなんて思ってもいなかっただろう。
俺だってさすがにそこまで考えてなかった。

「つーか、よくそんな顔で男に声かけられんな。顔ケバすぎ」

いくらセンパイでも普段は女の子相手にここまで言ったりしないし、
学校の取り巻きっぽい子たちにもこんな風に言ってるのは見たことがない。
一体、どうしたんだ・・・?

「ち、ちょっとイケメンだからって調子のってんじゃねーよ!バーカ!!」

涙目で捨て台詞を吐きながら、二人組は足早にその場を去っていった。
まあ、あそこまでズタボロに言われれば当然ですよね・・。ちょっと同情する。

てか俺もあの子たちも気が動転しすぎてスルーしてたけど、
榛名センパイ・・俺のこと「そいつは俺の」とか言ってなかった・・・・?


「は、榛名センパイ」

軽く深呼吸してから、センパイのことを呼んでみる。
センパイはいつの間にか自分の皿のケーキを食べ終えていて、次のケーキを取りに行くのがめんどくさいのか、
俺の皿の食べかけにフォークを伸ばしていた。

「なんだよ。・・あ、これもうまいな」

まるでさっきまで何もなかったかのように平然と返事をして、ケーキの感想なんかも述べている。
ほんとにツワモノだ。

「俺の聞き違いじゃなければ、さっき俺のこと”センパイのモノ”って言った・・?」

内心ドキドキしながら問う。
センパイがあんな風に、他人に俺のことを言うのは初めてだった。
しかも、強引なセンパイらしい言葉だったから、なんか嬉しくて。
俺がセンパイに言い寄る女の子に嫉妬したのと同じに、もしかしてセンパイもそんな気持ちになってくれたのかな?

そんな風にいろいろ考えると、あの子たちに絡まれたのもある意味ラッキーだったかもしれない。
こんなこと思っちゃってる俺って、ちょっと乙女すぎ・・?


「は・・?」

しかし目の前にいるセンパイは、俺の問いに対して「意味がわからない」といった風にポカン顔。
ま、まさかそんなこと言った覚えはないとか言うつもりじゃないだろうな。

次のセンパイの反応を緊張しながら待っていると、センパイは深い溜息をついて、少し困った顔で俺を見る。
俺が意図とすることがわからないといった表情だ。
え?俺そんなに難しい質問した?これってイエス・オア・ノーで答えられることじゃない?
逆に質問した俺のほうが困惑してしまう。

そんなこんなしていたその数十秒間になにを思ったのか、やがて口端をわずかに上げてセンパイはどこか満足気にこう言った。


「俺のものを俺のものと言って何が悪い?」

薄くて血色の良いセンパイの唇から漏れた言葉は、それこそなんとも横暴で俺様な発言。
だけど、それだけでも俺の気持ちを安堵させるには充分だ。

だってそれって、当たり前のことのようにセンパイは俺のこと「俺のものだ」って思ってるってことだろ?
つまりセンパイからしたら「そんな当然なこと聞いてんじゃねーよ」ってところだったわけだ。
なにそれ?これ以上に嬉しいことなんかないっての。

「へへへ」
「・・・・・・何ニヤけてんだ、気持ちわりー‥」

たしかに俺の考えてたような理想のカップル像には、まだまだほど遠いかもしれない。
それでも俺達のペースで長々とやってけば、それはそれでいいんじゃないかって思い始めてる。
態度とか言葉に出さなくったって、センパイはちゃんと俺のこと思ってくれてるんだって分かったから。

だからセンパイ、これからも俺へのイジメはほどほどに・・気長にやってきましょーね?






END







前述のとおり、80000hitお礼で「もし、稜が劉以外と付き合っているとしたら誰がいいですか?」というテーマで
アンケートをさせていただいたところ、榛名が最も多かったということでこのお話を書かせていただきました。
アンケートにご協力くださった方、有難うございます!

こちらは一応、bitterサイドということで、ぶっちゃけいつもの二人とあまり変わりませんでしたね‥。
そして榛名は性格が悪いイケメンというのがデフォです、すみません(^o^;)
sweetサイドでイチャラブしたのを書けたらいいなー。




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